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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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2010年 07月 04日 ( 1 )

第268回接近遭遇「戦争を放棄した者」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「あなたは、オメガ星系惑星間戦争の逃亡者ですね?」

体育館の中。
遊太郎の投げた言葉に男は目を見開いた。
武器も壊されたいま、観念したかのように床へざっと座り込む。

「よくわかったな。派遣調査員。
いかにも、俺はオメガ星系の戦場から逃亡した男だ」

遊太郎の後ろで、緊張感の解けた息を吐き出す薬師丸の気配がした。
遊太郎はそんな彼に言う。
「薬師丸さん。銀河連盟パトロールは、まだ呼ばないでください」
「はあ?捕まえたんならさっさと引き渡してしまえばいいじゃないですか」
「事情をまず訊かなければ」
「事情?戦争が嫌だから、逃げただけですよね」

口を尖らせる薬師丸へ、男が挑みかかるように身じろいだ。
「なんだと?」

その迫力に薬師丸はちょっと怯みながらも、
相手がもう武器を持たない丸腰だとわかると増長する。
「だいたい惑星間戦争なんかに身を置く人間は、
物騒な人間ばっかりだと思いますよ。話なんか訊くだけムダです」
すると遊太郎がはにかんだように微笑し、サラッと言った。

「あの、すみません。僕も前は傭兵だったんですが」
「え」

これには男も、はっとした表情をしたが、
のんびりした遊太郎の風情を見て苛立つように怒鳴った。
「いい加減なことを言うな。お前みたいなのが傭兵であるはずがない」
薬師丸もそれには同感だった。
「森田さん、説得力のない冗談はやめて下さい。
惑星間戦争の傭兵なんていったら、無法者集団……」
言いかけて薬師丸ははた、と思い返した。
いや、あり得るかもしれない。
遊太郎は、茫洋として見えるが、
別人の素顔を持つ特殊能力者である事を思い起こしたからだ。

薬師丸の思惑をよそに、遊太郎は天気の話でもするように答えた。
「もう2年ほど前になりますが、
オメガ星系惑星間戦争では戦闘機のパイロットをしていました」
すると男が改めて遊太郎を凝視し、まだ疑い半分で訊いた。
「本当なのか?信じられん。
そんな奴がなんでまた派遣調査員になっている」
「はい。味方の部隊と離散してしまって、なりゆきで」
「なりゆき?バカな」

男は吐き捨てるように言い、警戒を緩めなかったが、
やがて精悍な顔が人間らしく疲れに彩られていった。

「もういい。正直に答えてやろう。
戦争から逃げたと言われるのは癪だが、
互いの利権争いのための長期戦争に嫌気がさして、
銀河連盟の貨物輸送艇に潜んだのは事実。
たどり着いた惑星が地球だっただけさ」

それを聞いた遊太郎が、察したかのように頷いた。
「確かに長い戦争ですから、お気持ちはわかります」
「わかる?そんなことを言って、見逃しはしないんだろう?」
「それが僕の仕事ですから」

ほらみろ、と斜め下に視線を落とす男に、
遊太郎はゆっくり近づいた。
そしてしゃがみ込んで彼の目をじっと見る。

「どこに逃げ込んでも、自分からは逃げられません」
「……」
「あなたは、現実と向き合うのが怖くて、こんな見知らぬ惑星の、
小学校の体育館に隠れて、答えを先延ばしにしているだけなんです。
いずれ自分の気持ちに決着をつけなければならない」

噛み砕くように、ゆっくり諭す遊太郎に、
男ばかりか離れて立っている薬師丸も考えさせられるものがあった。

確かに薬師丸自身も逃げようとしている。
派遣調査員の仕事が自分には手に余ると言って、
やる前から逃避を決め込み、
遊太郎に八つ当たりしていただけなのかもしれない。

「自分からは逃げられない、か」

男が、淡々と遊太郎の言葉を繰り返し、
きっぱりした態度で立ち上がった。
「あんたのセリフは胸に痛い。でもおかげでサッパリした。
俺を捕まえてくれ」
「いいんですね?」
「ああ」

男の決意に遊太郎は頷き、
背後の薬師丸に銀河連盟パトロール隊を呼ぶように促した。


〜第268回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-07-04 12:42