第144回接近遭遇「部屋から消えた遊太郎」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 ただいま恋愛モード激走中♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 土曜日の朝。 桃子は大きく伸びをして、パジャマの上にカーディガンを羽織り、 リビングへと歩いた。 土曜日はたいてい、遊太郎が新聞をテーブルに置いてくれていて、 搾りたてオレンジジュースを用意してくれるのだが。 「あれ、遊太郎?」 急な仕事が入って出かけたのだろうか。 ふと見るとテーブルにメモが残されていた。 『 桃子さん、おはようございます。 突然ですみません。 やっぱり社員寮に移ることにしました。 サンドイッチとサラダ、 オレンジジュースを作っておきましたから、 冷蔵庫に入れておきますね。 しばらくしたら、また戻ります。 心配しないでください。 今までありがとうございました。 遊太郎』 読むなり、桃子はメモを放り投げて、 遊太郎の部屋のドアを勢い良く開けた。 いつもそこに林立していた観葉植物や本、 パソコンやクローゼットが消えていた。 「!」 たった一晩で、何もかもが無かったことになっている。 「ちょっと、何なの、これ。あんまりじゃん!」 そう叫ぶなり、急いで自分の部屋に戻った。 遊太郎へ電話を架けてみる。 しかし電源が切れているのかつながらない。 仕方なくメールも飛ばしてみたが、なんとなく返信は来ない気がした。 「なんでよ。わかんないよ、こんなの」 お互いの離れがたい気持ちを、 分かり合ったのではなかったのか。 考えたいことがあるからと言っていたが、 何故、遊太郎は部屋まで出て行こうと思ったのか。 「そうだ。神崎部長が何か知ってるかも」 桃子はすぐに神崎のホットラインへ架けた。 しかし残念ながら、こちらも出ない。 結局、月曜日に会社に行って遊太郎を捕まえるしかなさそうだ。 唇を噛んでいると、玄関のベルが鳴った。 遊太郎かもしれないと淡い期待を抱きながら走り出る。 「おはよう。あら、まだ寝てるかと思ったのに早いじゃない。桃子」 母親の博子が、のんびりした調子で立っていた。 「土曜日だし、いまの時間なら、 遊太郎ちゃんもいるかなと思って来てみたのよ」 訪問の目的を述べる博子へ桃子はイライラして答えた。 「残念でした。遊太郎なら、ここにはいませんけど」 「何よ、朝っぱらからキゲン悪い。 遊太郎ちゃん、おでかけなの?」 「誰かさんのお陰で、出て行った」 「出て行った?」 驚く博子へ、桃子は鬱憤をぶつけるように思いきり怒鳴った。 「お母さんのせいだよ。 あたしたちのことを反対するから、 遊太郎が気を遣って部屋を出て行ったんじゃない!」 「え?」 博子は慌ててリビングに鞄を置き、遊太郎の部屋に入った。 後から付いてきた桃子が、その背中に向かって怒りを吐き出す。 「遊太郎はね、周りの人にすごく気を遣うヤツなの。 あたしたちが付き合ってるのを、 お母さんが良く思ってないって聞いて、 迷惑かけちゃいけないからって部屋を出ることを考えてて。 あたしは止めてたんだけど、 今朝起きてみたら、突然居なくなってた。 どうしてくれるのよ?」 あまりな剣幕に、たじろいだ博子は、 それでも母親の貫禄を思い出したように咳払いをしてみせた。 「あんたの言いたいことは分かった。 それで、どこへ行ったの?遊太郎ちゃん」 「社員寮。うちの会社の」 「社員寮?急なのに、よくあいてたわね」 博子の間の抜けた言い方に、キレそうになる。 「そんな問題じゃないでしょ。 あいつのケータイつながらないし。 来週、会社で会ったら連れ戻して来る」 「連れ戻すって、桃子。冷静になんなさいよ」 「はあ?」 「あんた、フラれたかもしれないわよ?」 「フラれた?誰に」 「遊太郎ちゃんによ。あんたに愛想をつかして出て行ったとか、 お母さんだけのせいじゃなくて、それもあるかもよ」 一瞬、博子を殴りそうになったが止めた。 確かに、本当のところは、博子のせいで遊太郎が出たのではない。 別に理由があったのだと、内心では分かっていたからだ。 ただ理由を聞かされていない腹立たしさから、 気持ちのやり場がなくて、 博子に八つ当たりをしただけだ。 とにかく、週明けには遊太郎を捕まえよう。 そう桃子は心に決めた。 ~第145回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2009-02-08 16:13
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