第142回接近遭遇「彼女に言えない秘密」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 ただいま恋愛モード激走中♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ レンに頬を殴られ、 サーフィスはソファに頭から突っ込んだ。 カミラが短く叫び、桃子も絶句して、 ただ驚いて2人を見守るしかなかった。 レンは、サーフィスの桃子への暴言に対して彼を殴ったのだ。 切れた唇を抑えたサーフィスは低く呻いていたが、 すぐに胸倉をレンにつかまれた。 「レ、レン。ボクの顔の骨が砕けたらどうするんだ?」 するとレンは素っ気なく答えた。 「大丈夫だ。手加減はした」 「…これで手加減したって?ボクの美しい顔に手をあげるなんて」 その抗議には答えず、レンは彼を突き放し、 その青灰色の瞳でひたと見据える。 「次は容赦をしない」 「!」 静かな怒りに、さすがの彼も黙り込んだ。 カミラはごめんなさいと小さな声で呟いて、 ふらふらなサーフィスを伴って玄関の方へと歩いた。 その時、桃子をチラッと見て悲しそうに微笑だけ返したので、 彼女も目でごめんねと伝えた。 彼らが居なくなったリビングは急に静かになった。 あまりなことに、桃子の憤りがきれいに消えている。 「…遊太郎の友達なのに、ごめん。 あたし、さっき酷いこと言っちゃってさ」 初対面の人間に、思いっきりタンカを切ってしまったからだ。 謝る彼女の方へレンは歩み寄り、頭を下げた。 「僕こそ、すみませんでした。 サーフィスは悪い奴ではないんですが。 あなたに嫌な思いをさせてしまいました」 「いいよ。どうせ、あたしはすぐ頭に来ちゃうし。 まあ、確かに上品なお嬢様とは違うもん。 アイツの言ったこと、ちょっと当たってたからムカついただけだよ」 桃子は少年のように頭をかいて苦笑いをしてみせた。 「それより、殴っちゃって大丈夫? あの人、遊太郎にはるばる会いに来たんでしょ」 ふと心配になってきいてみると、 レンは小さくため息をついて、いいえと答えた。 「あれくらいやらないと、彼にはわからない。 何不自由なく育って来た男ですから」 何不自由ないのは、レンも同じかそれ以上だろうが、 明らかにサーフィスとは違う。 それは彼の性格ばかりではなく、 背負っている厳しい過去や経験のせいなのかもしれない。 「でも。…ありがと」 あたしのために、と そう言おうとして、桃子の目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。 気が緩んだからだろうか。 「あ、あれ?なんでかな。ごめん…ごめんね。遊太郎」 「桃子さん…」 レンは驚いて桃子の肩にふれ、自分の方へそっと引き寄せた。 「…遊太郎」 彼が桃子の涙ごと、優しくふんわりと抱いてくれている気がした。 だから、彼女は安心して泣くことにした。 ああ、この人の前なら強がることもない。 泣いたり笑ったりできる。 ずっと一緒にいたい。ずっと… 「桃子さん」 抱きしめたまま、レンが話しかけた。 「なに?」 抱かれながら、その心地よさに桃子が甘い声できくと、 彼は少しだけ間を置いて、こう言った。 「僕は、しばらく部屋を出ようと思います」 「えっ…?」 一気に気分が急降下して顔を上げる。 「な、何で?あたしたちのことが、お母さんにバレたから?」 「そうではありません」 「じゃあ何よ?」 またケンカ腰しになりかけて、桃子は彼から離れた。 そういえば、この間の雨の夜、 彼が急にベランダに飛び出して消えてしまったことを思い出した。 まるで何かに警戒しているような。 「ねえ、遊太郎。何か、あたしに隠してるでしょ」 桃子は確信を持って言った。 「……」 彼は一瞬言葉を忘れたかのように、そんな彼女を見つめる。 「ちゃんと話して。遊太郎はいつも1人で解決しようとするけど、 何も知らされずに、ただ待ってるのは、あたし、もう嫌だ」 「桃子さん…」 真っ直ぐに向けられた桃子の瞳。 レンの全てを共有したいという彼女の想いには応えたい。 しかし本当のことを知ったら、彼女はかなり心配をするだろう。 それに、いつまた何が起きるかわからない。 もう彼女を巻き込みたくはなかった。 何故なら、今度の敵はエイリアンではない。 故郷の星への帰還を要請しているレンの父親なのだから。 ~第143回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2009-02-01 12:06
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