第130回接近遭遇「エイリアン商人の愚痴」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 最近ようやく恋人モードに♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ライブハウスの地下倉庫。 江原オーナーと謎の白衣の男によって、 アリサと晴彦は手足を椅子に固定され、縛られていた。 もちろん彼女が言うには、捕らえられたことは予定通りらしいのだが… 江原オーナーが白衣の男に向かって、 「まあ、男の方はあとで港にでも沈めるとして…」 と、恐ろしいことをさらっと言った。 「アリサは殺すには惜しいのでね。 まだまだ利用価値はあるし。あんたに任せようと思うが?」 すると男はアリサの方を意味ありげに見てニヤリとした。 「なるほど。確かに彼女は健康的で美味しそうな匂いがしますね」 晴彦は総毛立った。 この白衣の男こそ、 地球へ不法侵入して来た者らしい。 「じゃあ、アリサ。楽しい夢を見させてもらいなさい」 江原は下品な笑いを張り付かせ、太った腹をさすりながら、 側近たちを引き連れて倉庫から出て行った。 晴彦は焦った。 縛られた縄は想像以上にしっかりと自分たちを固定している。 どうやって逃げればいいのか。 隣のアリサへ想念を飛ばそうとしたが、 見えない壁を感じてうまくいかなかった。 まるで彼女がテレパシーの会話をわざと遮断しているかのように。 薄ら暗い地下倉庫で、居るのは3人だけになった。 とたんに白衣の男が饒舌になる。 「…しかし予想外でした」 「なにが?」 彼女が野性的な瞳で睨みつける。 真っ赤に逆立つ髪に、猫のように生意気な顔。 真夏でもないのに肩やヘソや長い脚をさらした恰好をして、 まるでセクシーな小悪魔のようだ。 そんな彼女へ投げた男のセリフは、もっと予想外なことだった。 「銀河連盟から、そろそろ目につけられる頃だと思ってたが、 私もナメられたものですねえ。 まさか、潜入捜査されるにしても、 あなたみたいな若い女性が派遣調査員とは」 いま、なんと言った? 晴彦はわが耳を疑った。 このアリサが、銀河連盟の調査員だと感づいていたのだろうか。 しかし当の彼女は興味なさそうに男に質問した。 「銀河ナントカ?なにそれ。バンドか何かの名前?」 そのトボケた態度に、彼は平然と説明する。 「銀河連盟です。 我々のような商人の自由取引を取締り、 平気で介入をしてくる迷惑な特殊機関ですよ。 ただ私は金儲けをしたい地球人に貢献している商人なだけなのに」 「麻薬で貢献かい?悪徳商人が」 怒りを抑えきれなくなった晴彦は思わず口を開いた。 白衣の男が眉をしかめて眼鏡をかけ直す。 「人聞きが悪い。麻薬に似せてはいるが全く違います。 少しだけ若い女性の生体エネルギーを頂き、 見返りに江原オーナーには金を渡しているだけです。 本人たちもストレスフリーになって喜んでるじゃないですか」 「自己正当化もはなはだしいな」 「外野は黙っていなさい」 エイリアン商人は不満げにブツブツと愚痴をたれる。 「どうせなら、もっとプロの調査員を派遣してくれればいいものを。 こんな小娘1人寄越して来るとは」 ようするに、犯罪者にもプライドがあると言いたいらしい。 しばらくして彼は白衣の胸元から、 小さな細長い銀色の箱を取り出した。 注射針である。 「江原オーナーはあなたの正体など知らないし、 かなりお気に召しているようです。 仕方ないので、あなたの生体エネルギーを少し頂いて、 良い気分にさせてあげますよ。 地球のマリファナなんかよりは、よほどハイになれますからね」 晴彦はギョッとした。 銀河連盟調査員と知りながら、 この男はやっぱりアリサの生体エネルギーを摂取する気のようだ。 「やめろ。そんなもの、どうするつもりだ?」 怒鳴った晴彦へ男がうるさそうに答える。 「君は本当にうるさいですねえ。 健康的で良いエネルギーをたくさんストックしたいんですよ。 私の雇い主がお喜びになるからです」 「雇い主?」 晴彦のことなど無視して、 エイリアン商人の注射針が、 アリサのしなやかな腕に突き刺ささろうとしていた。 ~第131回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2008-12-21 16:44
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