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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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第118回接近遭遇「小さな友人との友情」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

テナントビル6階が瞬く間に火炎に包まれた。
植物の群生が叫ぶように猛り狂い燃え盛る。

高山や祥子は、
もう自分達は死ぬんだと思って目を固く閉じた。
しかし煙にまかれて苦しくなるはずが、
熱ささえ感じないのは何故だろう。

「変だな、熱くねえ」
目を恐る恐る開いて、フロアを見渡した。


確かに建物も植物も真っ赤に燃えている。
しかし、まるで巨大なスクリーンに映る立体映像のようなのだ。
レンや少年、そして繭の中の桃子も無事生きていた。
まるで全員を守るような透明なシールドが、
張られているかのように。


(燃えちゃう…)
金色の目をした少年が、
自分の友達でもあった植物が、
ゆらゆらと燃えてゆくのを茫然と見ていた。
レンがそんな彼の髪を撫でる。

(いまシールドを張って火から守っているが、
あまり時間がない。
彼女を繭から解放してくれないか?)
(…うん)

ドームのような繭には桃子が膝を抱えて、
胎児のように丸くなって眠っている。
少年が触れたとたん、それは溶けるように消え、
桃子が倒れそうになるのを、
レンが素早く支えて床に寝かせた。

( おにいさんは、おねえさんを助けに来たんだね )

少年は気づいた。
寂しさのあまり閉じ込めてしまった桃子だが、
彼女の身を心から案じている人間がいたことを。
レンは少年の肩に触れ、
真摯な気持ちを込めて想念を送った。

( 彼女は、とても大切な人なんだ。
君が、お母さんを愛するように、
誰にだって大事に思う人がいる )
( うん。うん。 本当に、ごめんなさい…)

頭を垂れる少年に大丈夫だと諭し、
レンは高山達の方へ向き直った。


フロアの隅の方で、
へたり込んでいる彼らに近づいたレンは、
いきなり高山の胸ぐらをつかんだ。

「な、なんだよっ」
撃たれるか、それとも殴られるかと思いながら、
高山は早口で弁解をした。

「そ、そうさ。オレ達が五十嵐を引き込んだ。
あんたを誘い出すゲームのつもりだったんだ。
だけどな、こんなバケモノがビルに居るなんざ、
本当に知らなかったんだよ。だから…」

「これは夢だ」
「へっ?」
レンは漆黒のサングラスを静かに外した。
高山の後ろに小さくなっていた祥子もはっと息を呑む。


プラチナの前髪の下に隠れていたのは、
海のような青に灰色が溶けた神秘の瞳。

「今夜の事は、全て夢だ」

彼の瞳から放たれた特殊な波形。
それは記憶を塗り替える力を持っていた。
本来ならば、
レンに関わる全ての記憶消去をするべきだが、
条件が揃わない上に時間的な余裕がなかった。

強力な暗示を受けて、
呆けたように眠りこけた高山と祥子。
そこへ動かなかったエレベーターのゲージが点滅し、
黒服の男達が現れた
銀河連盟パトロール隊員である。
高山達の避難や後処理をパトロール隊員達に任せ、
桃子を抱き上げたレンが少年に視線を流した。

(さあ、ここは危ない。行くぞ)

少年は燃えゆく植物を悲しそうに見ながら、つぶやいた。

(さようなら…)



ビル火災は、幸い近隣へ燃え移ることもなく半焼に終わった。
事件を引き起こす要因となった高山と祥子は、
パトロール隊員によって、
駅前に移動された車中に運ばれた。
彼らは、自分達が何をしようとしたかさえ分からず、
狐につままれた様子で帰る事となった。


「全く人騒がせな連中だったな」
黒いBMWで、
そうもらしたのは部長の神崎だった。
後部座席へ桃子をそっと運び入れたレンは神崎に言った。

「桃子さんをお願いします。
僕は、彼をステーションまで送らなければなりません」
「任せておきたまえ。しかし君も派手にやったな?
君を怒らせたら怖いということが分かったよ」
「何のことですか?」
レンにクールに返されて、
肩をそびやかす神崎を尻目に、
彼は車のドアを閉めた。
あとは少年を銀河連盟の保護センターまで送り届ければいい。


(また、会える?)
少年がレンを見上げたので、
彼はその小さな手を握りしめた。

(君が望めば、いつでも)


宇宙の片隅で巡り会った、
孤独な者同士が心を通わせた瞬間だった。


~第119回をお楽しみに♪~
by yu-kawahara115 | 2008-11-09 21:53
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