第117回接近遭遇「寂しい宇宙の迷い子」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 最近ようやく恋人モードに♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 桃子を繭の中に閉じ込めて、 植物の群生を操っていたエイリアンの正体。 それは、まだ幼い普通の少年だった。 しかし、高山や祥子は戦慄を覚えて後ずさった。 何故なら、少年の両目は燃えるような金色に光っていたからだ。 (おねえさんを消さないで) 少年はテレパシーでレンに訴えた。 繭の中に捕らえた桃子を、何故か大切に思っているようだ。 (そんなことはしない) レンはサイキックガンを下におろして少年に近づいた。 (君は1人で地球に来たのか?) すると少年は、とたんにうなだれた。 (違う。お母さんと一緒だったけど、すぐに死んでしまった。 だから、植物の種とかくれていたんだ) (植物の種?) (うん。ぼくの星から持って来た) 背後の植物の群生がザワザワと揺れた。 地球に来て急成長したのかもしれないが、 少年の思いに感応しているところを見ると、 場合によっては危険な武器にもなるだろう。 (ひとりでさびしかった。でも、おねえさんがきた。 びっくりして逃げられちゃうと思って、 繭の中に閉じこめたんだ) 見知らぬ星に来て母親を亡くした少年は、 空屋のビルに植物と一緒に引きこもっていたらしい。 そんな時にひょんなことから、 桃子がこのテナントビルのドアをノックしたのだ。 (君の気持ちはわかる。 でも、彼女は解放してあげてほしい) レンは諭すように思念を送る。 (どうして?) (地球人だから。繭の中では生きられない) (………) 少年はじっと目を下に向けたまま唇を噛んだ。 (…おにいさんは、ぼくをつかまえに来たの?) 違法侵入者を摘発することが、 銀河連盟調査員のレンの仕事である。 (いや。君は宇宙の迷い子だ。連盟が保護することになる) (そこは、こわいところ?) (こわくはない。君のような子供がたくさんいる。 きっと友達もできるよ) (ほんと…?) 一方。 遠巻きにして異様な光景を眺めていた高山と祥子は、 レンと少年が何を話しているのか分からず混乱していた。 なんなんだ。あの子供は? と高山に至っては怯えつつも苛立つ。 それに、あの銀髪野郎は驚きもしないじゃないか。 「藤井。逃げるぞ」 彼がそう囁くと、祥子は少し眉をひそめた。 「五十嵐さんは?助けるんじゃなかったんですか」 「知るかよ。もうたくさんだ。気が変になっちまう。 警察を呼んで、ここから出る」 自分達が招いた結果なのだが、結局は自己防衛本能が勝った。 「あんな気味の悪いガキや、 バケモノみたいな植物なんか相手にできるか? あの銀髪野郎はヘンな銃を持ってやがるし。 ありゃあ、ぜってぇカタギじゃねえ」 「ひょっとしたら刑事かもしれないですよ? あの身のこなし、警察関係者みたいに思うんですけど」 祥子がうっとりとして話すので高山は舌打ちした。 女という生き物は、こんな事態でも平気で甘い妄想に浸れるのか。 「馬鹿。あんな髪の刑事がいるか。 とにかく普通の警察を呼ぶんだ。 うん?圏外か。外に出るしかねえな」 高山は少年に気づかれぬようエレベーターへ忍び足で近づいた。 祥子も好奇心を残しながら彼の背中について行く。 しかしエレベーターホールの前まで来て高山は焦った。 おかしい。1階のボタンを押しても動かない。 再び携帯電話をかけようと試みた時、 その右手に植物の触手が巻きついた。 「わっ!」 後ろを振り返った2人は震えあがった。 少年が金色の目を光らせて、こちらを凝視していたからだ。 無表情であり髪は逆立っている。 (けいさつって何?やっぱり、ぼくをつかまえに来たんだ) いけない、とレンは危険を感じた。 少年の怒りは植物に感応する。 「くそっ!」 触手に右手を捕まれ、恐怖に引きつった高山は、 もう片方の手でライターに点火し、 触手を伸ばしているおおもとの植物に向かって投げた。 カッと、嫌な光が生まれ、すぐに真っ赤な炎が踊り狂った。 ~第118回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2008-11-07 22:28
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