第106回接近遭遇「空港でサプライズ」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 最近ようやく恋人モードに♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ あれから数日。 桃子は現実の生活に戻っていた。 遊太郎は急な出張に出向いた事になっていて、 会社では誰も怪しむ者もなかったので、神崎部長がうまく手を回したのだろう。 困ったのは、遊太郎の両親への対応である。 まさか遊太郎が怪我をしています、などとは言えない。 大騒ぎになるだろうし、入院先を聞かれても困る。 そのため遊太郎の事を色々聞こうとする洋子に、 桃子はひと芝居を打つハメになった。 「すみません。叔母さん。 遊太郎、急な出張で2、3日帰って来ないんです。 叔母さん達がカナダに帰る日に間に合うかどうか」 すると洋子は電話の向こうで、がっかりしたようにため息をもらした。 「そう。やっぱり遊太郎、忙しいのねえ。 残念だけど仕方ないわよね。いまは仕事の方が大事だし。 気を遣わせてごめんなさいね。桃子ちゃん」 「ううん。遊太郎の代わりに、 あさっての夜はお見送りに行きますね」 この時、桃子は洋子が普通の状態に戻っていることに気がついた。 ガナック・ギアにマインドコントロールをされて、 遊太郎をニセモノだと疑っていたのに。 最も桃子は、 ガナックが既に洋子の催眠暗示を解いていることを知らなかったので、 それは当然の驚きなのだが… その2日後。 ついに洋子と春樹がカナダへ帰る日が来た。 会社を早めに終えた桃子は急いで空港ロビーに駆けつけた。 既に搭乗手続きを終えた2人が、誰かと親しく話している 「!」 一緒に居る人物を見て、桃子はもう少しで叫ぶところだった。 そんな桃子に洋子が気づいて手を振った。 「桃子ちゃん。わざわざありがとう。 遊太郎ったらね、見送りたかったから、 出張を早めに切り上げて来てくれたのよ」 とても嬉しそうな洋子がつかんでいる袖は、 遊太郎のものだった。 「桃子さん」 その遊太郎が振り返る。 「僕の方が空港に来るのが早かったですね」 まるで何事もなかったかのように、 まんまるメガネをかけた童顔でにっこりしている。 ( 遊太郎!なんで?傷は大丈夫なの?) ついこの間まで重体だったくせに、平気な顔をして笑っている。 夢なのかと頬をつねりたくなったほどだ。 桃子の驚きをよそに、 搭乗までのわずかな時間を、 彼らは温かい雰囲気で過ごしていた。 父親の春樹が遊太郎の肩をポンと叩く。 「仕事は大変だろうが頑張れ。 きっとお前にとって良い経験になるからな」 「うん、お父さんも身体に気をつけて」 すると洋子が遊太郎の顔にすっと手をやって、 愛おしそうに言った。 「久しぶりに会って、変わったのかしらと思ったけど。 ちょっと大人になったのかもねえ。 遊太郎も身体に気をつけて、桃子ちゃんに迷惑かけないように、 ちゃんとやるのよ?」 「分かってるよ。ありがとう、お母さん」 搭乗アナウンスが別れの時を告げた。 また会いに帰って来るからと、洋子と春樹は笑って手を振った。 夜空を2人の乗った飛行機が飛び立ち、 遊太郎と桃子は空港の屋上で見送った。 「行っちゃったね」 そう言って桃子は視線を遊太郎に移した。 「何よ。帰るなら帰るって先に教えてくれても良いじゃん。 叔母さん達に誤魔化すの、大変だったんだよ?」 思わず口を尖らせる。 半分は会えた嬉しさをテレ隠すためだ。 「すみません。 でも、すぐ戻らなきゃいけなくて」 遊太郎は困ったように頭をかいた。 「え?」 「実はこっそり抜け出して来たので、 バレたら怒られてしまうんです」 これには呆れて、桃子は怒鳴った。 「ダメじゃん!せっかく治りかけた傷口が開いちゃったらどうするのよ? ホント、あんたって無謀なとこあるよね」 すると遊太郎はまた、すみませんと謝った。 「でも、両親がカナダへ帰ってしまう前に、 遊太郎として、どうしても会っておこうと思ったんです。 それに…」 「それに?」 誰もいない夜の屋上。 遊太郎が桃子のすぐ隣にやって来た。 魔法のように、瞬間レンの姿に戻る。 「桃子さんに、どうしても会いたかったから」 「バカ…」 2人のシルエットは、 少しのあいだだけ、ひとつになった。 ~第107回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2008-10-05 23:04
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