第100回接近遭遇「対決!レン×ガナック・ギア」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 最近ようやく恋人モードに♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「ようこそ。レン王子」 ガナック・ギアは、 滞在中のホテルの部屋の豪華なソファでレンを迎えた。 レンはそのガナックから少し距離を置いて立ち、 真意を探るように問いかけた。 「ガナック。あなたが望んでいることを教えてください」 「決まっているでしょう。 あなたに大切な恋人を殺された恨みを晴らす事ですよ」 「それなら、僕を殺せば済むはずです」 するとガナックは脚を組み替えて、おかしそうに笑った。 「ご冗談を。あなたをあっさり殺してしまったら、 愛するソフィの元へ逝かせてしまうことになる。 そんな楽なことはさせません」 言い終わると、ガナックが立ち上がり、 懐から細長い銃を取り出した。 やや曲線を帯びた金属製の小型光線銃である。 「古典的なやり方ですが、 あなたの目の前で私が自殺をすれば、 復讐の仕上げとしては効果的だと思いませんか?」 「ガナック!」 レンは驚いて、すぐにサイキックパワーを右手から放射した。 しかし、どういうわけか全く手応えがなく空回る。 「無駄ですよ。レン王子。 あなたにはサイキック能力が制限されているはずだ。 私があなたの右目を失明させた時に、 能力抑制チップを飛ばしていたんです」 「……!」 能力抑制チップ。 あの時レンの右目を貫通した赤い光は、 彼から視力を奪い、姉の幻覚を見せるだけのものではなかったのだ。 ガナックは余裕を見せて、 自分のこめかみに銃を押し当てた。 「レン王子。いいですか? あなたは自分の母親や姉だけではなく、 私までも死に追いやることになる。 精々、一生苦しんでください」 「やめてください、ガナック!」 「すぐに終わりますよ」 「!」 瞬時のことだった。 電光のような速さで、レンの身体がガナックに体当たりをした。 銃から無音の光線が乱射し、部屋のカーテンを斜めに裂いて、 二人は折り重なるように床へ倒れた。 「馬鹿なことを…」 レンに押さえつけられたガナックは、 肩や腕を打撲し、光線銃を手から放した。 転がった銃を回収しようとしたレンは、 自分のワイシャツの脇腹の辺りが、 真っ赤に染まっているのに気がついた。 ガナックがはっと眉を潜めたが、レンはかまわなかった。 「さっきの銃で、かすっただけですよ。…それよりも」 彼はガナックの身体をぐいと起こして、 強い光を宿した瞳で真っ直ぐに見つめた。 「あなたが信じてくれなくてもかまわない。 でも僕は姉を慕っていた。 あなたに負けないくらい好きでした。 彼女が幸福になることを、ずっと願っていたんです。 なのに、あの事故が起こって…」 引き裂かれた願い。 それは結婚を誓っていた姉の恋人ガナックを、 姉の幸せを思う弟のレンを、同じ地獄に突き落としたのだ。 「できるなら、あの頃に戻りたい。 あなたと姉が幸せになっている姿を見たかった。 でも全てを壊したのは僕だ。 あなたをこんな風に追い詰めたのも…」 ガナックは、もう精魂を尽き果てたようにうなだれている。 「ガナック。一生許してくれなくてもいい。でも…。 あなたには絶対死んで欲しくないんです」 初めて伝わる胸の内。 レンがガナックのこころの真ん中に入った瞬間だった。 しかし、それを感じたガナックは首を頼りなく振る。 「…もう、遅いんです」 そして信じられない事をもらした。 「ホテルに爆弾を仕掛けてしまいました」 「え……?」 何を言っているのか、すぐには理解できなかった。 レンは彼の肩を強くつかんだ。 「爆弾?ホテルの一体どこに?」 「…あなたのご両親が宿泊している部屋のドアに、です」 「ドア…?」 「内側から開けると、いつでも爆発するようになっているんです」 「……なぜ」 その時。 世界が一瞬歪んだように見えた。 レンの脇腹から、にじみ出した鮮血が流れ過ぎていたのだ。 ~第101回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2008-09-19 00:05
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