第60回接近遭遇「通り魔の犯人」 |
~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~ ●森田遊太郎(23)・・・童顔のメガネ男子で天然系営業マン。 実は、銀河連盟より派遣された地球調査団メンバー。コードネームはレン。 ●五十嵐桃子(26)・・・遊太郎の正体を知る、勝ち気で現実的なOL。彼氏いない暦3年。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この二人、表向きイトコ同士でルームシェアをしているのだが・・・? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 土曜日の午後。 待ち合わせ場所で、時任晴彦は派手な見出しの週刊誌を手にしていた。 『通り魔は、本当に吸血鬼か?』 『狙われるのは若い女?』 溜め息とともにゴミ箱に投げ捨てる。 そこへ柔らかな声がかかった。 「時任さん。遅れて申し訳ありません」 清掃な美しい令嬢、朝野玲子である。 「いえ、僕も今さっき来たばかりです」 破顔する時任晴彦が捨てた週刊誌に、朝野玲子はさりげなく視線を落とすと、 歩き出しながら彼がこう言った。 「物騒な世の中です。朝野さんのような若いお嬢さんは、きっと狙われやすい。 外出される時は気をつけた方がいいですよ」 「通り魔事件、のことですか?」 そうです、と晴彦は真顔で答えた。 二人は美術館巡りをしたあと、オープンカフェで休憩を取った。 「これ、僕がお勧めの推理小説です。 よかったら、退屈しのぎにどうぞ」 晴彦は玲子に、きちんとカバーをかけられた本を渡した。 嬉しそうに微笑む彼女。 「ありがとうございます。SF推理小説なんですね?」 「地球に恋人を探しに来て、殺人事件に巻き込まれる男の話です」 サラっと晴彦が言った。 (この男、何を考えている?) 朝野玲子に変身している調査員レンは、 小説に集中するフリをして、彼の波動をスキャニングした。 ・・・やるせない哀しみや怒りが感じられる。 それは晴彦自身に向けられているようだ。 ブルーマウンテンの香りが緑揺れる空間を満たし、 晴彦はつぶやくように口を開いた。 「馬鹿な男の物語です。故郷の星を飛び出した恋人の女性を追い掛けて、 地球に探しに来てみれば、彼女は地球人を食い物にする殺人鬼になり果てていた。 男はどうしたと思います?」 「さあ・・・」 玲子は真意をはかりかねたように困った顔をした。 すると晴彦はフッと人懐っこく笑い、頭をかいた。 「すみません。話の結末なんか先に教えたら、読む楽しみがなくなりますよね。 つい感情移入してしまって・・・」 「時任さん、何かあったのですか?」 玲子は素直に聞いた。 ・・・先日訪れた晴彦の事務所にも、吸血鬼の記事を載せた週刊誌があった。 彼は明らかに何かを知っている。 「朝野さんに、僕が探偵だった話はしましたよね」 「ええ。昔好きだった女の方を捜すためだと、時任さんはお話してくださいました」 そうです、と彼は深い溜め息を吐き出した。 コーヒーを一口飲む。 「彼女が見つからなかったなんて、嘘なんです。 見つかったけれど、そのまま放置してしまった」 「え・・・・?」 晴彦の波動に、後悔と怒りが混ざって押し寄せていた。 それは、例え話にしてみせた推理小説に重なるようだった。 「でも、後悔してるんです。あの時、無理にでも彼女を故郷へ連れ帰るんだった。 そうしなかった自分が恨めしい。 僕が野放しにしなければ、彼女はあんな風にはならなかったかもしれないのに 「時任さん・・・」 晴彦は険しい顔をゆるめた。 そして玲子に向き直る。 「すみません。今日は変な話ばかりしてしまいました。 朝野さんは聞き上手だから、つい愚痴をこぼしてしまう」 「いいえ。時任さんのお話は何でもお聞きしたいです」 玲子は微笑み、晴彦は癒される思いに浸された。 これで玲子、いやレンは推測していた事に確信を得た。 時任晴彦の昔の恋人こそ、巷を騒がす通り魔事件の犯人であり、 生体エネルギーを奪う宇宙の吸血鬼シーマ星人であることを。 ・・・・・そして、その女は身近にいるはずなのだ。 ~第61回をお楽しみに♪(^O^)/~ |
by yu-kawahara115
| 2008-06-08 18:46
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