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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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第60回接近遭遇「通り魔の犯人」

~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~

●森田遊太郎(23)・・・童顔のメガネ男子で天然系営業マン。
実は、銀河連盟より派遣された地球調査団メンバー。コードネームはレン。


●五十嵐桃子(26)・・・遊太郎の正体を知る、勝ち気で現実的なOL。彼氏いない暦3年。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この二人、表向きイトコ同士でルームシェアをしているのだが・・・?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

土曜日の午後。
待ち合わせ場所で、時任晴彦は派手な見出しの週刊誌を手にしていた。

『通り魔は、本当に吸血鬼か?』
『狙われるのは若い女?』

溜め息とともにゴミ箱に投げ捨てる。
そこへ柔らかな声がかかった。
「時任さん。遅れて申し訳ありません」
清掃な美しい令嬢、朝野玲子である。

「いえ、僕も今さっき来たばかりです」
破顔する時任晴彦が捨てた週刊誌に、朝野玲子はさりげなく視線を落とすと、
歩き出しながら彼がこう言った。
「物騒な世の中です。朝野さんのような若いお嬢さんは、きっと狙われやすい。
外出される時は気をつけた方がいいですよ」
「通り魔事件、のことですか?」
そうです、と晴彦は真顔で答えた。

二人は美術館巡りをしたあと、オープンカフェで休憩を取った。
「これ、僕がお勧めの推理小説です。
よかったら、退屈しのぎにどうぞ」
晴彦は玲子に、きちんとカバーをかけられた本を渡した。
嬉しそうに微笑む彼女。
「ありがとうございます。SF推理小説なんですね?」
「地球に恋人を探しに来て、殺人事件に巻き込まれる男の話です」
サラっと晴彦が言った。


(この男、何を考えている?)

朝野玲子に変身している調査員レンは、
小説に集中するフリをして、彼の波動をスキャニングした。

・・・やるせない哀しみや怒りが感じられる。
それは晴彦自身に向けられているようだ。

ブルーマウンテンの香りが緑揺れる空間を満たし、
晴彦はつぶやくように口を開いた。
「馬鹿な男の物語です。故郷の星を飛び出した恋人の女性を追い掛けて、
地球に探しに来てみれば、彼女は地球人を食い物にする殺人鬼になり果てていた。
男はどうしたと思います?」
「さあ・・・」
玲子は真意をはかりかねたように困った顔をした。
すると晴彦はフッと人懐っこく笑い、頭をかいた。

「すみません。話の結末なんか先に教えたら、読む楽しみがなくなりますよね。
つい感情移入してしまって・・・」
「時任さん、何かあったのですか?」
玲子は素直に聞いた。

・・・先日訪れた晴彦の事務所にも、吸血鬼の記事を載せた週刊誌があった。
彼は明らかに何かを知っている。

「朝野さんに、僕が探偵だった話はしましたよね」
「ええ。昔好きだった女の方を捜すためだと、時任さんはお話してくださいました」
そうです、と彼は深い溜め息を吐き出した。
コーヒーを一口飲む。


「彼女が見つからなかったなんて、嘘なんです。
見つかったけれど、そのまま放置してしまった」
「え・・・・?」

晴彦の波動に、後悔と怒りが混ざって押し寄せていた。
それは、例え話にしてみせた推理小説に重なるようだった。

「でも、後悔してるんです。あの時、無理にでも彼女を故郷へ連れ帰るんだった。
そうしなかった自分が恨めしい。
僕が野放しにしなければ、彼女はあんな風にはならなかったかもしれないのに
「時任さん・・・」


晴彦は険しい顔をゆるめた。
そして玲子に向き直る。
「すみません。今日は変な話ばかりしてしまいました。
朝野さんは聞き上手だから、つい愚痴をこぼしてしまう」
「いいえ。時任さんのお話は何でもお聞きしたいです」
玲子は微笑み、晴彦は癒される思いに浸された。


これで玲子、いやレンは推測していた事に確信を得た。
時任晴彦の昔の恋人こそ、巷を騒がす通り魔事件の犯人であり、
生体エネルギーを奪う宇宙の吸血鬼シーマ星人であることを。


・・・・・そして、その女は身近にいるはずなのだ。


~第61回をお楽しみに♪(^O^)/~
by yu-kawahara115 | 2008-06-08 18:46
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