第55回接近遭遇「恋する観覧車」 |
~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~ ●森田遊太郎(23)・・・童顔のメガネ男子で天然系営業マン。 実は、銀河連盟より派遣された地球調査団メンバー。コードネームはレン。 ●五十嵐桃子(26)・・・遊太郎の正体を知る、勝ち気で現実的なOL。彼氏いない暦3年。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この二人、表向きイトコ同士でルームシェアをしているのだが・・・? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 日が傾きオレンジ色に染まる、ハッピードリームランドの公園広場。 女性たちの憧れの視線の先には、 観葉植物を背に立つ長身の青年がいた。 桃子が近づくと、彼はゆっくりこちらを見た。 遊太郎からレンに戻ってしまったようだが、黒髪と黒い瞳に変えている。 それでも目立つことには変わりはなかった。 「なんか、あった?」 桃子が周りを気にしながらささやいた。 するとレンは微笑して桃子を見つめた。 「少しアクシデントがあって・・・。でも解決しました。 待たせてすみません」 「いいけど・・・」 何があったのか聞こうとしたが、レンは彼女の手をスッと取った。 「行きましょう、桃子さん」 そのまま彼がエスコートしたのは、観覧車だった。 暮れ行く世界を見下ろす観覧車の中で、 桃子は何故か急にドキドキして来た。 気付かれないよう顔を窓の外へ向ける。 花火が上がり、いくつもの光の輪が彼らを歓迎していた。 「桃子さん?」 窓に張り付いたままの桃子へ、向かいに座るレンが不思議そうに声をかけるが、 桃子は顔をますます赤くしていた。 黒耀石のような彼の瞳をちゃんと見ることができない。 つい、ごまかすように言ってしまう。 「ホント。あんたが元に戻っちゃう時って、ロクなことないんだから」 ・・・せっかく、二人で定番の観覧車に乗っているというのに、 あたしは、どうして憎まれ口しか言えないんだろう・・・ それでも、さすがに気が引けてレンの方へチラッと見ると、 彼は腕を窓にかけて眠ってしまっていた。 「・・・・」 桃子はそっと近づいて、彼の寝顔を見つめる。 ・・・疲れてるんだよね。きっと。 仕事で忙しいのに、あたし、文句ばっかり言って。 ・・・でも、観覧車がこのまま地上に着かなければいいのに・・・ その時、何気なく彼の首筋あたりに淡いピンクの跡を発見した桃子は、 目を大きく見開いた。 (なに、これ???) もちろん、それは子供の格好で遊園地に現れた、宇宙の吸血鬼シーマ星人に、 レンが生体エネルギーを奪われた跡だったのだが、桃子は知るはずもない。 ・・まさか、キスマーク?いつの間に? 「桃子さん?」 フッと目を覚ましたレンは、腕組みをして立っている桃子を見上げた。 彼女の形相が一変している。 「遊太郎!迷子を連れて行ったきり全然戻らないから、 さっきはホントに心配して探していたのに。 いったい、どこでナニをしていたわけ?この浮気モノっ!」 「え・・・・?」 観覧車が落ちそうな勢いだった。 「それは災難だったな、レン?」 月の裏側のステーションで、上司ロータスが苦笑いをしていた。 レンが憮然としているので、それ以上聞かなかったが。 「それにしても真昼間から、子供のシーマ星人が堂々と現れるとは、 パトロールの強化を検討しよう」 そして巨大モニターにある人物を映し出す。 時任晴彦。 30代後半、落ち着きと精悍さが同居する男。 「あれから、時任晴彦の周辺を調べさせたのだが。 地球に住んでかなり長い。途中、地球人女性と結婚もしている」 「結婚?」 少しレンが反応する。 異星人同士が結婚するのは珍しくはないが、今まで関心がなかったのだ。 「他の惑星で現地人と結婚をして暮らすとは、 よほど住みやすかったのか、故郷シーマを忘れるほど」 「・・・・」 レンは黙ってモニターを凝視していた。 ロータスがニヤリと笑う。 「さて、朝野玲子の出番だ。 時任晴彦にもう一度、接近したまえ。いいね?レン」 「承知しました」 ~第56回をお楽しみに♪(^O^)/~ |
by yu-kawahara115
| 2008-05-28 21:54
|
<< 第56回接近遭遇「中年男と令嬢... | 第54回接近遭遇「キケンな遊園... >> |