第44回接近遭遇「懐かしい笑顔」 |
~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~ ●森田遊太郎(23)・・・童顔のメガネ男子で天然系営業マン。 実は、銀河連盟より派遣された地球調査団メンバー。コードネームはレン。 ●五十嵐桃子(26)・・・遊太郎の正体を知る、勝ち気で現実的なOL。彼氏いない暦3年。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この二人、表向きイトコ同士でルームシェアをしているのだが・・・? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「遊太郎?ホントに遊太郎なの・・・?」 「ただいま、桃子さん」 にっこりしている遊太郎へ、桃子は反射的な行動に出た。 いきなり遊太郎の頬を指でつまんでみたのだ。 ちゃんと人間らしい感触があったが、うたぐり深い彼女は、 彼の鼻もつまんだあと、髪をあちこち引っ張り始めた。 とうとう遊太郎は小さく悲鳴をあげてしまう。 「い、痛いです、桃子さん」 「やっぱり、ホンモノ?」 ようやく手を放した桃子へ、遊太郎がはにかんだように笑う。 「はい、残念ながらユーレイじゃないです。 今まで心配をかけてすみませんでした」 そして無邪気にペコリと頭を下げた。 「!」 とたんに桃子が体当たりするように遊太郎に抱き着いた。 ・・・夢じゃない、ちゃんと体温もある! 「すっごくすっごく心配したんだから! ああ、でもよかった!元気になったんだ。 ホントによかった・・・・!」 「桃子さん・・・」 二人はしばらく確かめあうように抱き合っていた。 お互いの温かい波動が伝わる。 ・・・間違いない、これは現実だ。 神崎があの時に諭してくれたように、信じ続ける気持ちが彼に通じたのかもしれない。 夢中になって遊太郎にしがみついていた桃子は、しばらくしてハッと我に返った。 「あっ!ゴ、ゴメンね!」 耳まで真っ赤になって飛びのいてしまう。 「ヨシ、飲みなおそう!遊太郎、ビール持って来て」 テレ隠しに命令する。 「えっ!これからまだ飲むんですか?」 さっき空き缶を片付けたばかりの遊太郎が驚く。 しかし桃子は何言ってるの、と怒る真似をした。 「あったり前じゃん!あんたの復活祝いをしてあげようって言ってんの。 それに遊太郎は長いこと休んで忘れてるかもしれないけど、 今日は金曜日!って、もう土曜日かな?」 桃子はテレ隠しに笑いながら、心の中で喜びをかみしめていた。 ・・・本当は泣きたいくらい嬉しい。 生きてちゃんと帰って来てくれたのだ。 桃子に命じられて冷蔵庫へビールを取りに行った遊太郎は、 キッチンに並ぶコゲた料理を見つけた。 桃子が慌てて飛んで来る。 「ち、違うのっ!これはね、失敗作!あとで捨てるから」 「捨てるなんて。大丈夫ですよ。食べられます」 「いいって!」 「僕がちょっと手を加えてみますから、桃子さんは待っててください」 遊太郎は手慣れたようにエプロンをかけた。 その姿を見て、桃子は顔を赤くしながらも嬉しくてたまらなかった。 ・・・本当に彼だ。 男のくせにエプロンが似合って、 料理も家事も器用にできてしまう遊太郎だ。 すぐに桃子の失敗作が見事にアレンジされ、美味しそうにテーブルに並んだ。 桃子はビール、遊太郎はウーロン茶で乾杯をして二人は再会を祝う。 安心したのか、桃子は食べて飲んで熟睡してしまった。 遊太郎は彼女が握っているチーズをそっと取り除いてやり、 薄い毛布を背中にかけた。 そしてその寝顔をしばらく見つめる。 怒ったり笑ったりする彼女を、再び自分は見ることができた。 ゼルダから彼女を護る為に毒刃を身に受けた時、 もう二度と会えないと覚悟をしていたのに・・・ 遊太郎は桃子の額に柔らかなキスをした。 何故か、自然にそんな行為をしてしまう自分に少し驚きながら。 いつかは、本当に別れがやって来るだろう。 しかしそれまでは、彼女を護りたい。どんなことがあっても。 そして地球にいるあいだ、少しでも長く彼女を見続けていたい。 遊太郎、いや・・・地球へ派遣されている調査員レンは、 初めて人間らしい感情を抱き始めていた。 ~第45回をお楽しみに♪(^O^)/~ |
by yu-kawahara115
| 2008-05-06 12:30
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