第33回接近遭遇「宇宙人と元カレと」 |
~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~ ●森田遊太郎(23)・・・童顔のメガネ男子で天然系営業マン。 実は、銀河連盟より派遣された地球調査団メンバー。コードネームはレン。 ●五十嵐桃子(26)・・・遊太郎の正体を知る、勝ち気で現実的なOL。彼氏いない暦3年。 宇宙人やスピリチュアル系には全く興味がないらしい。 この二人、表向きイトコ同士でルームシェアをしているのだが・・・? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 桃子は3年前に別れた男、一ノ宮貴志と再び会うことになってしまった。 金曜の夜。大学時代によく待ち合わせた駅前広場。 いまの自分はどんな風に変わっているだろうか? 少なくとも、一ノ宮貴志は商社マンとして大人っぽくなっているかもしれない。 遊太郎には何も言わないで来たが、きっと居所はこのピアスが教えてしまうはずだ。 別に知れたとしても、遊太郎には何の関係もないけれど・・・ 「桃子!」 その時、懐かしい陽気な声に桃子はハッと現実にかえった。 一ノ宮貴志は笑って手を振って走って来た。 日焼けした顔も程よい茶髪も、3年前と変わらない。「・・・貴志」 「久しぶり!変わってないなあ」 気さくな貴志に桃子は時間が戻るのを感じた。 彼女は予約してあるというフレンチレストランへ連れて行かれた。 貴志が、高級な店を選ぶところが3年前とは違う。 「大学の同窓会メールのおかげで会えてよかった。元気そうだな」 「うん、まあね。貴志も元気だった?」 「元気だけど、海外研修のロスから帰ったとこでバタバタでさ。 ようやく落ち着いた頃にメール貰って懐かしかったよ」 快活に笑い、貴志はワインを頼んで乾杯をした。 「で、いまは?」 「何が?」 「いや。だから、つきあってるヤツ、いるのかなって」 「・・・」 さらっと聞かれて、桃子は瞳が泳いだ。 「いきなりだね?」 「ってことは、あれからずっといないの?」 「貴志、ズケズケ言うとこ変わってなさすぎ!」 桃子がおもいっきり膨れっ面をすると、貴志は懐かしそうに笑った。 「それそれ!桃子が怒ると顔がフーセンみたいに膨らむだろ? 見たかったんだ、俺」 「バカ!」 会ってなかった年月が嘘のように、二人は気のおけない楽しい時間を過ごした。 別れ際に一ノ宮貴志は、またメールすると言った。 桃子はうなづいて、久しぶりに気分が晴れる思いで帰宅した。 ・・・会ってよかったかもしれない。 よく考えたら、嫌いで別れたわけじゃなかったし。 最初は躊躇したけど、同窓会メールを送らなければ、 いい気分で再会なんて出来なかった。 「桃子さん。お帰りなさい」 玄関を開けるとすぐに、遊太郎のエプロン姿が見えたので、 桃子はこちらの現実に戻った。 ・・・そうだ。いまは同居してるんだった。 一ノ宮貴志との再会が予想外に楽しくて、 表向きイトコの遊太郎とルームシェアをしていることを忘れている自分に驚く。 ・・・数日前の夜、遊太郎に少しだけ抱きしめられて、 その時、自分は本当は彼が好きなのかもしれないと思ったのに。 「桃子さん、食事は?」 いつものように無邪気に聞くので、 桃子はいい、と断ってしまった。 「大学の友達と食べて来たし。疲れてるから、もう寝るね」 「そうですか。おやすみなさい」 微笑む遊太郎を見ずに、さっさと部屋に入ってしまう。 ・・・何だろう、この後ろめたさ。 別に遊太郎に隠す必要もないのに。 ベッドにバタンと横になり、また無意識に耳のピアスに触れる。 物騒だからと遊太郎から貰ったピアス型発信機。 気になるなら外してしまえばいいのに、触ってばかりいる。 桃子の脳裡に、つもはにかんだような遊太郎の笑顔と、 陽気な一ノ宮貴志の顔が交互にあらわれた。 もし一ノ宮貴志に新しい彼女がいなくて、 自分にその気があるのなら、また付き合うつもりなのか? 実は他人で、しかも宇宙人らしい遊太郎とルームシェアをしたままで? 本当は、どうしたいんだろう? 桃子は大きな溜息をついた。 ~第34回接近遭遇をお楽しみに♪(^O^)/~ |
by yu-kawahara115
| 2008-04-12 00:13
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