第274回接近遭遇「苦手なヒーリングタイム」 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。 おっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「急用ですか。キャプテン」 森田遊太郎、いや、いま素顔に戻っているレンは、 中枢コントロールセンターへ入室した。 ここは月の裏側に浮遊する銀河連盟ステーション。 センターの流線型デスクで上司ロータスは、 「やあ、レン」 と、いつものように穏やかに彼を迎えた。 ロータスのそばには、 真っ赤な服に身を包んだ美女もいて、 呼ばれた理由を察知したレンは、形の良い眉をわずかに潜める。 「あら、露骨に嫌そうな顔をするもんじゃないわ。レン」 美女は冗談半分に肩をすくませた。 彼女の通り名は天野律子。 天才ヒーラーであるが、地上では女医の顔を持ち、 派遣調査員の健康管理を一任されている。 ハリウッド系美女の外見にそぐわずオープンでサッパリした性格だ。 ロータスが苦笑いを作り、自分の部下へ説明した。 「察しの通り、君を強引に呼んだのは、 ヒーリングをしっかりと受けてもらう為だ」 「ヒーリング」 「ああ。派遣調査員メンバーは全員、 少なくとも2週間に一度、 Dr.律子の地上クリニックへ顔を出すという規則がある。 それをきれいに無視して、サボっているのは君ぐらいだからね」 「……」 その通りなので、口ごたえはしなかった。 レンの頬にかかる長めの前髪が、うまく表情を隠してはいるが、 あまり気が進まない雰囲気なのはロータスにはバレている。 「調査員は多忙で時間的余裕はない。面倒なのはよくわかるが」 と、ロータスがフォローをしかけると、Dr.律子がピシャリと言った。 「若い男って、ホント、面倒くさがりなんだから。 でも、それは職務怠慢。 今日こそは逃さないから覚悟なさい。レン」 ようやく捕まえた不良生徒を前に勝ち誇った担任教師のように、 Dr.律子が得意げに微笑み、 ロータスは、観念しろと彼に片目を瞑って見せた。 レンにとってみれば、 定期的に皆が受診するヒーリングなど正直なところ面倒で、 地球人的表現を使えば、「ウザい」ものだった。 もちろん、環境が劣悪な地球に身を置く以上、 クリーンな状態へ波動調整をしなければならないし、 汚染に伴う原始的なウィルスや、 人々の吐き出すマイナス想念もバカには出来ない事も承知している。 しかし孤独に慣れた彼には、 他人にあれこれ心配されたりする事が苦手だった。 「聞いてるの?レン」 ふと気づくと、Dr.律子が美しい眉を釣り上げていた。 メディカルセンターへ渋々連れて行かれたレンは、 ヒーリングポッドで横になり、トータル的な波動測定をされたのち、 別室のカウンセリングルームへ呼び出され、 精査された数値に対する指示を仰いでいた。 「思った通り、全身あちこち、環境汚染による波動の乱れがあるわ。 ちゃんと除去しておいたけど、 ヒーリングを怠けると、そのうち痛い目にあうわよ。わかってる?」 まるで授業をサボる常習犯に向かって、 教師が説教をするかのように、 手元のモニターを磨かれた美しい指でトントンと叩く。 レンは興味なさそうに眺めるだけだ。 ヒーリングなど早く終わらせて、 サイキックジムで射撃訓練をしたかった。 そんな彼へ、女医がいつになく厳しい顔を向ける。 「ちょっと、いい?」 「え?」 「手荒だけど我慢して」 そう断るなり、Dr.律子の魔法の手が、彼の胸にかざされた。 その瞬間、紫色の光がレンの胸を貫き、彼は低く呻いた。 「……っ!」 紫色の放射線によって、レンの胸から飛び出したホログラムは、 禍々しく穿った暗黒の穴だった。 〜第275回をお楽しみに♪〜 |
by yu-kawahara115
| 2010-08-12 11:53
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