第204回接近遭遇「孤高の狼」 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。 おっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「俺は、俺の意志でここに居る。 誰と何をしようと、ナーディア、君には何の関係もない」 高層ビルの屋上。 レンが放った言葉に、 笹川夏希、いや、ナーディアは紫色の双眸を大きく見開いた。 明らかに読み取られていたからだ。 今日の夕刻に彼女が桃子に接近し、何を話したのかを…… 「……ごめんなさい。出過ぎた真似をして」 彼女は潔く謝った。 すると、夜景を見ていたレンがこちらを向いた。 彼は硬質なオーラを纏っている。 漆黒のサングラスと、 闇に溶け込んだ黒ずくめの全身がそうさせるのかもしれない。 「ナーディア」 先ほどとは違うニュアンスで、彼が彼女の名前を呼んだ。 そして真の用向きを伝える。 「今夜、呼び出した理由は別にある」 「え……?」 どうやら、かなり深刻な話題を用意しているようだ。 ナーディアは大人しく次の言葉を待った。 「派遣調査員が連続して狙われた事件は知っているか?」 凍るような沈黙が降りた。 距離を保つ2人を、取り巻く大気が張り詰める。 ナーディアは、しばらく考えて、ふっと微笑した。 「……私が疑われているのね」 「ああ」 「そう。あなたには嘘は通用しないから、正直に言うけれど。 残念ながら、犯人は私じゃない」 きっぱりと否定するナーディアの波動を、 彼は速やかにスキャニングしながら尋問を続けた。 「それなら、何故、被害者の周りをうろついていた?」 「それは……」 一瞬だけ眉根を寄せる。 「私が派遣調査員を辞めたがっているのは、知ってるでしょ」 同時に回想がリアルに展開してゆく。 見知っている仲間に会い、自分の考えを話している場面だ。 ……平和を貪るだけの地球人を、 侵入者から守る銀河連盟の調査機関なんて、 地球人を甘やかせている過保護なシステム。 やるだけ無駄だわ。こんな仕事。そう思わない? 「残念ながら、私の意見を誰も聞いてくれなかったけど。 でも、いくら仕事に不満を持っているからと言って、 同じ仲間を傷つけたりはしないわ」 レンは頷いて、深く考察した。 確かにナーディアは嘘を言ってはいない。 しかし、引っかかる。 彼女に罪を着せるように影で動いているのは何者だろうか……? 「分かった。上にはそう報告しておく」 「ありがとう。 でも、もし犯人が不法侵入者だとしたら、やり方が巧妙ね。 捕まえるのなら、私も協力させて」 「駄目だ」 言下に言い放ち、立ち去ろうとするレンへ、 ナーディアは紫色の髪や瞳を黒く変えながら、 今度は笹川夏希として声をかけた。 「ねえ、レン。 さっきの話の続きだけれど。 ……私、やっぱり桃子さんには謝った方がいいわよね?」 余計な事を話して気が咎めていたからだ。 しかし彼は、あっさりと首を振った。 「何もしなくていい」 「でも……」 レンは振り返り、彼女を黙らせるように見つめた。 笹川夏希が桃子に言った事は的外れではないからだ。 何故なら、自分は、いまだ桃子さえ知らぬ火種を幾つも抱えている。 非常事態に備えて、最低限のボーダーラインを張り巡らせておかなければならない。 だから、桃子にも、ありのままをさらけ出す事は極力避けて来た。 大切だからこそ、言えない事もある。 もちろん嘘をつく事も…… 「……本気で好きなのね。桃子さんの事を」 笹川夏希がポツリとつぶやいたが、 既に、孤高の狼は、高層ビルの屋上から消えていた。 〜第205回をお楽しみに♪〜 |
by yu-kawahara115
| 2009-09-27 14:07
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