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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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第204回接近遭遇「孤高の狼」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「俺は、俺の意志でここに居る。
誰と何をしようと、ナーディア、君には何の関係もない」

高層ビルの屋上。
レンが放った言葉に、
笹川夏希、いや、ナーディアは紫色の双眸を大きく見開いた。
明らかに読み取られていたからだ。
今日の夕刻に彼女が桃子に接近し、何を話したのかを……

「……ごめんなさい。出過ぎた真似をして」

彼女は潔く謝った。
すると、夜景を見ていたレンがこちらを向いた。
彼は硬質なオーラを纏っている。
漆黒のサングラスと、
闇に溶け込んだ黒ずくめの全身がそうさせるのかもしれない。

「ナーディア」
先ほどとは違うニュアンスで、彼が彼女の名前を呼んだ。
そして真の用向きを伝える。
「今夜、呼び出した理由は別にある」
「え……?」
どうやら、かなり深刻な話題を用意しているようだ。
ナーディアは大人しく次の言葉を待った。

「派遣調査員が連続して狙われた事件は知っているか?」

凍るような沈黙が降りた。
距離を保つ2人を、取り巻く大気が張り詰める。
ナーディアは、しばらく考えて、ふっと微笑した。

「……私が疑われているのね」
「ああ」
「そう。あなたには嘘は通用しないから、正直に言うけれど。
残念ながら、犯人は私じゃない」

きっぱりと否定するナーディアの波動を、
彼は速やかにスキャニングしながら尋問を続けた。

「それなら、何故、被害者の周りをうろついていた?」
「それは……」
一瞬だけ眉根を寄せる。
「私が派遣調査員を辞めたがっているのは、知ってるでしょ」
同時に回想がリアルに展開してゆく。
見知っている仲間に会い、自分の考えを話している場面だ。

……平和を貪るだけの地球人を、
侵入者から守る銀河連盟の調査機関なんて、
地球人を甘やかせている過保護なシステム。
やるだけ無駄だわ。こんな仕事。そう思わない?

「残念ながら、私の意見を誰も聞いてくれなかったけど。
でも、いくら仕事に不満を持っているからと言って、
同じ仲間を傷つけたりはしないわ」

レンは頷いて、深く考察した。
確かにナーディアは嘘を言ってはいない。
しかし、引っかかる。
彼女に罪を着せるように影で動いているのは何者だろうか……?

「分かった。上にはそう報告しておく」
「ありがとう。
でも、もし犯人が不法侵入者だとしたら、やり方が巧妙ね。
捕まえるのなら、私も協力させて」
「駄目だ」

言下に言い放ち、立ち去ろうとするレンへ、
ナーディアは紫色の髪や瞳を黒く変えながら、
今度は笹川夏希として声をかけた。

「ねえ、レン。
さっきの話の続きだけれど。
……私、やっぱり桃子さんには謝った方がいいわよね?」
余計な事を話して気が咎めていたからだ。
しかし彼は、あっさりと首を振った。
「何もしなくていい」
「でも……」

レンは振り返り、彼女を黙らせるように見つめた。
笹川夏希が桃子に言った事は的外れではないからだ。
何故なら、自分は、いまだ桃子さえ知らぬ火種を幾つも抱えている。
非常事態に備えて、最低限のボーダーラインを張り巡らせておかなければならない。
だから、桃子にも、ありのままをさらけ出す事は極力避けて来た。
大切だからこそ、言えない事もある。
もちろん嘘をつく事も……

「……本気で好きなのね。桃子さんの事を」

笹川夏希がポツリとつぶやいたが、
既に、孤高の狼は、高層ビルの屋上から消えていた。


〜第205回をお楽しみに♪〜
by yu-kawahara115 | 2009-09-27 14:07
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