第195回接近遭遇「元カノの接近」 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。 おっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「おい、森田は? アイツ、どこまで、かき氷を買いに行ってんだ」 海の家まで使いを頼んで1時間以上戻らない遊太郎に、 斉藤課長が怪訝な顔をした。 他の社員達は馬鹿にしたように笑う。 「迷子のアナウンスでも頼みますかぁ?」 すると、高山がスポーツタオルを肩に引っかけて言った。 「ガキじゃねえんだし、そのうち帰って来るさ」 「そういえば、高山係長。サーフボードは?」 誰かから痛いところを指摘され、高山は引きつった笑いを張り付かせる。 「……いや、あれは捨てた。まあ、オレ的には相性悪かったっつうか」 「え?もしかして、ホントはひっくり返って、なくしたとか?」 「違う!捨てたって言っただろうが。馬鹿っ!」 怒って顔を赤黒くさせた高山は、バツが悪いので携帯をいじり始めた。 まさか本当に転覆して、気がついたら岸辺に流されていたとは言えない。 しかも海水をかなり飲んだはずだが、自力で立ち上がれた事も不思議だった。 そばに誰かが居たような気がしたが…… 一方、桃子は妙に気がかりで落ち着かなかった。 一体、遊太郎はどこへ消えたのだろう。 「清美。あたし、ちょっと見て来る」 「え?森田クン探すなら、あたしもつきあうよ、桃子」 「いいって。どうせ、なんかまたやらかして、トラブってるだけだと思うし」 桃子はビキニの上に薄いパーカーを羽織って、清美に手を振った。 その頃、沖で溺れた高山を助け出したレンは、 ひと気のない入江に身を潜め、休息していた。 そこに突然現れた人物が、いる。 彼と同じく派遣調査員、笹川夏希である。 「ムダに力を消耗させて、何故あんな地球人を助けたの? いつも色々、難癖をつけてくる男なのに」 まるで、ずっと観察していたような口振りだ。 笹川夏希は眼鏡を優雅に外しながら、ゆっくりと近づいて来た。 黒い瞳は紫色に染まり、それにつれてストレートな黒髪も同じ色に変化する。 おそらく、それが彼女の本性なのだろう。 レンは、沈黙を守って答えなかった。 岩の上に身を預け、潮風に吹かれているだけだ。 先刻助けた高山の身体に、自分のエネルギーを分け与えた直後であり、 体力の回復を待たなければ、遊太郎の姿は纏えない。 それでも意識のセンサーは、さりげなく彼女へ向けている。 何故なら、レンは笹川夏希を調査するよう、 上司より密かに命じられていたからである。 「無口なのね。相変わらず」 笹川夏希は、ふっと紫色の瞳で見つめる。 レンの白いワイシャツは濡れて、引き締まった身体が透けて見えていた。 整った白い顔にかかる幾筋かの前髪からは、雫がまだ滴り落ちている。 彼女は、彼の投げ出した長い両脚の間に立ち、 上体だけ前のめりにして、自分の両腕を彼の肩に絡めた。 「ねえ、レン」 耳元で囁く。 「虚しくならない? 私達、調査員はエイリアンから地球人をいつも守っているけれど、 彼らを過保護にしているだけじゃないかしら。 宇宙には、闘いの中で必死に生きている生命体もあって、 あなたも私も、それを良く知っている。 なのに、地球人は守られていることすら知らずに、 安穏と平和を貪り続けているんですもの」 妙に説得力のある言葉だった。 反論しないレンに、問いかける。 「あなたは、生まれた星を捨てて、宇宙を放浪していた。 それなのに何故いま、こんな惑星の調査員なんかしているの? 誰も信じなかった孤高の一匹狼。そんな、あなたが……。 それが、私には理解できない」 「……」 レンは黙って双眸を閉じた。 その時。 近づいて来る人の気配を感じてハッと目を開く。 笹川夏希も察知したように、紫色の髪や瞳を黒い色へと変化させた。 そこに。 遊太郎の行方を探していた桃子の姿があった。 驚きと疑いの目で2人を見つめている。 レンは思わず立ち上がった。 「桃子さん……!」 〜第196回をお楽しみに♪〜 |
by yu-kawahara115
| 2009-08-27 00:08
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