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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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第163回接近遭遇「ふれあう恋人たちのココロ」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「君は、一体俺の何だったんだ?」

桃子はレンにそう訊かれて、一瞬戸惑った。
…急に、そんなこと。
なんて言えばいいんだろう?
まさか記憶喪失の人間に向かって、
あなたと私は恋人同士でした、とは答えられない。

「急に、何よ。あんたの上司から教えられてるでしょ?
あたし達は表向きはイトコで、まあ、同居人っていうか」
すると、レンは桃子をじっと見つめた。
なんだか緊張した。
見透かされているようでドキドキする。

「俺は、答えにくい質問をしたのか…?だったら、悪かった」
彼が意外に気遣うような感じを見せる。
「だが、知らなければ、いつまでも思い出せない。だから訊いた」
「遊太郎…」

…ああ、そうなんだ。
なんとか思い出そうと努力をしているんだ。
確かに、過去に時間が戻っている彼には、本当の事を話すには抵抗がある。
でも、知ることで、少しでも一歩進むなら…
カフェラテを一口飲んでから、桃子は彼を真っ直ぐに見た。

「あたしにとって遊太郎は、単なる同居人じゃなかった。
そばに居てくれなきゃ困る人。
だから、最初、あたしのこと忘れてるって聞かされた時は、
もの凄く悲しかった…辛かったんだよ」

それを聞いたレンが、ふっと伏し目がちになった。
桃子は慌てて付け加える。
「あ、でもね。遊太郎を責めてるわけじゃないんだ。
ごめん。あたし、うまく言えなくて。
記憶が無くたってさ、遊太郎は遊太郎だもん。
こうやって会えるだけでも嬉しい…」
途中で、ちょっと涙が出そうになったが、我慢して笑う。

レンは、しばらく黙ったまま、
テーブルに飾られている名もない白い花を見つめていた。
桃子は後悔し始めた。
あたしってなんて説明がヘタなんだろうと。
自己嫌悪に陥りそうだ。

しかし、ややあって口を開いた彼は、独り言のようにつぶやいた。
「やっと、分かった」
「え?」
「何故、どうしても君に会いたいと思ったのか」
「遊太郎…」
「そうか。君は、俺にとっても、大切な…」
「大切な…?」

その時、桃子の脳裏に、ある場面が浮かんだ。
それは遊太郎の社員寮を訪ねた時のことだ。
彼はふんわりと桃子を抱きしめてつぶやいたのだ。


(桃子さんは、僕にとって宝物です)


その言葉を昨日のことのように思い出し、
桃子の目から、さらりと涙がひと粒こぼれ落ちた。
「……」
驚いたレンが、無意識に彼女の顔に手を移し、その涙に触れた。
「ご、ごめん。ち、違うの。目にホコリが入って」
桃子はさっと彼の手から顔を外して、指で不器用に涙を拭った。
…危ない、危ない。
最近涙もろくなり過ぎだよ、と自分を戒める。
そして、素早くハンカチを取り出し、目が痛いと文句を言ってみるが、
レンは嘘を見抜いていて、わずかに視線を下に落とした。

気まずい雰囲気だ。
せっかくデートっぽい日を過ごしているのに。
桃子はわざと話題を変えた。
「ね。今度は遊太郎の服を見に行かない?」
次いで元気良くテーブルから立ち上がる。
「あたしにプレゼントさせてよ。
どうせ地上で自分の服なんか買った経験ないでしょ?」


そこへ。
桃子達のテーブルに、1人の初老の紳士が近づいて来た。
時代がかった燕尾服に、黒い帽子。
丸い眼鏡に白髪の上品な姿は、
映画から飛び出した執事そっくりだ。

「お話中、申し訳ありません。
お懐かしいお方を、お見受けしまして、
つい、ご無礼を承知でまかりこしました」
謙虚に深々と頭を下げる紳士に、
レンは眉を潜め、一転して冷たい表情に切り替わった。
「…お前は、ラグローシュ」
桃子は、ギョッとして彼を見る。
「し、知り合いなの?遊太郎」

すると、ラグローシュと呼ばれた紳士は、
帽子を取って、桃子に微笑みかけた。
「失礼致しました。お嬢様。私はラグローシュ。
このレン王子様が以前お住まいになっておられた城を取り仕切る、
筆頭執事でございます」


~第164回をお楽しみに♪~
by yu-kawahara115 | 2009-04-19 20:43
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