第163回接近遭遇「ふれあう恋人たちのココロ」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「君は、一体俺の何だったんだ?」 桃子はレンにそう訊かれて、一瞬戸惑った。 …急に、そんなこと。 なんて言えばいいんだろう? まさか記憶喪失の人間に向かって、 あなたと私は恋人同士でした、とは答えられない。 「急に、何よ。あんたの上司から教えられてるでしょ? あたし達は表向きはイトコで、まあ、同居人っていうか」 すると、レンは桃子をじっと見つめた。 なんだか緊張した。 見透かされているようでドキドキする。 「俺は、答えにくい質問をしたのか…?だったら、悪かった」 彼が意外に気遣うような感じを見せる。 「だが、知らなければ、いつまでも思い出せない。だから訊いた」 「遊太郎…」 …ああ、そうなんだ。 なんとか思い出そうと努力をしているんだ。 確かに、過去に時間が戻っている彼には、本当の事を話すには抵抗がある。 でも、知ることで、少しでも一歩進むなら… カフェラテを一口飲んでから、桃子は彼を真っ直ぐに見た。 「あたしにとって遊太郎は、単なる同居人じゃなかった。 そばに居てくれなきゃ困る人。 だから、最初、あたしのこと忘れてるって聞かされた時は、 もの凄く悲しかった…辛かったんだよ」 それを聞いたレンが、ふっと伏し目がちになった。 桃子は慌てて付け加える。 「あ、でもね。遊太郎を責めてるわけじゃないんだ。 ごめん。あたし、うまく言えなくて。 記憶が無くたってさ、遊太郎は遊太郎だもん。 こうやって会えるだけでも嬉しい…」 途中で、ちょっと涙が出そうになったが、我慢して笑う。 レンは、しばらく黙ったまま、 テーブルに飾られている名もない白い花を見つめていた。 桃子は後悔し始めた。 あたしってなんて説明がヘタなんだろうと。 自己嫌悪に陥りそうだ。 しかし、ややあって口を開いた彼は、独り言のようにつぶやいた。 「やっと、分かった」 「え?」 「何故、どうしても君に会いたいと思ったのか」 「遊太郎…」 「そうか。君は、俺にとっても、大切な…」 「大切な…?」 その時、桃子の脳裏に、ある場面が浮かんだ。 それは遊太郎の社員寮を訪ねた時のことだ。 彼はふんわりと桃子を抱きしめてつぶやいたのだ。 (桃子さんは、僕にとって宝物です) その言葉を昨日のことのように思い出し、 桃子の目から、さらりと涙がひと粒こぼれ落ちた。 「……」 驚いたレンが、無意識に彼女の顔に手を移し、その涙に触れた。 「ご、ごめん。ち、違うの。目にホコリが入って」 桃子はさっと彼の手から顔を外して、指で不器用に涙を拭った。 …危ない、危ない。 最近涙もろくなり過ぎだよ、と自分を戒める。 そして、素早くハンカチを取り出し、目が痛いと文句を言ってみるが、 レンは嘘を見抜いていて、わずかに視線を下に落とした。 気まずい雰囲気だ。 せっかくデートっぽい日を過ごしているのに。 桃子はわざと話題を変えた。 「ね。今度は遊太郎の服を見に行かない?」 次いで元気良くテーブルから立ち上がる。 「あたしにプレゼントさせてよ。 どうせ地上で自分の服なんか買った経験ないでしょ?」 そこへ。 桃子達のテーブルに、1人の初老の紳士が近づいて来た。 時代がかった燕尾服に、黒い帽子。 丸い眼鏡に白髪の上品な姿は、 映画から飛び出した執事そっくりだ。 「お話中、申し訳ありません。 お懐かしいお方を、お見受けしまして、 つい、ご無礼を承知でまかりこしました」 謙虚に深々と頭を下げる紳士に、 レンは眉を潜め、一転して冷たい表情に切り替わった。 「…お前は、ラグローシュ」 桃子は、ギョッとして彼を見る。 「し、知り合いなの?遊太郎」 すると、ラグローシュと呼ばれた紳士は、 帽子を取って、桃子に微笑みかけた。 「失礼致しました。お嬢様。私はラグローシュ。 このレン王子様が以前お住まいになっておられた城を取り仕切る、 筆頭執事でございます」 ~第164回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2009-04-19 20:43
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