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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2010年 10月 ( 5 )   > この月の画像一覧

第286回接近遭遇「見え透いた企み」

翌日の夕刻。
遊太郎は車の中で係長の高山の際限ないお喋りを聞かされていた。

「見ろよ。高い金を探偵に払った甲斐があるってもんだ。
ちゃんと銀髪野郎の素性がわかったんだからな」
話題は、探偵事務所に依頼した銀髪男の身辺調査の件だった。

「五十嵐の周りに影のようにまとわりついてる、
あの忌々しい銀髪野郎、フリーのルポライターだったんだぜ。
イギリス人で、旅先で五十嵐と出会ったらしい。
しかしよ、ルポライターって胡散臭い奴が多いから、
五十嵐もだまくらかされてるにちげえねえよな」

遊太郎は黙って聞きながら真面目に運転を続けていた。
取引先企業には全て足を運んだので、あとは帰社すれば良いのだが、
延々と高山のお喋りを聞く羽目になってしまったのだ。

「おい、森田。俺の話をちゃんと聞いてるのか?」
「聞いてますよ」
「少しは興味を持って相づちを打つとか、
質問をするとかしたらどうなんだよ?
ったく、なんの面白味もねえ。
独り言してる気分だぜ」
「すみません」
「お前のイトコの五十嵐が、うろんな奴と関わってんだ。
お前だって気になるだろうが」
「はい」

遊太郎は仕方なく同意した。
気になるも何も、高山が目の敵にしている銀髪男は、
遊太郎の本来の姿なのだ。
しかし高山が依頼した探偵が遊太郎の知人であり、
うまくカモフラージュした銀髪男の素性を、
高山が信じているらしいので、内心安堵はしていた。

「銀髪野郎のパソコンのメアドもゲットしたし、
これでいつでも、奴を呼び出せる」
高山は好戦的に拳を握った。
そのあたりで遊太郎はさりげなく質問する。

「高山係長はその男を呼び出して、どうするんですか?」
「ブチのめす。わかりきったこと聞くな」
「すみません」
「お前、さっきからすみませんしか日本語知らねーのか?
まあ、いいや。とにかくマトモにいくと、またやられちまう。
あいつ、カタギじゃねえみたいにクソ強ぇからな。
普通にケンカするんじゃ不利だ。
五十嵐の目の前で大恥をかかせる方法を考えないとな。
五十嵐の目を覚まさせて、俺の方に向かせるためにさ」

楽しげに笑い、探偵から渡されたらしい調査資料を眺めた。
もちろん遊太郎には何が書かれているか見なくともわかっている。
ダミーのプロフィールを考えたのは遊太郎自身だからだ。
高山がストレートに自分に連絡を取れるようにしておかなければ、
高山が懲りもせず別の探偵に調査を依頼しかねない。

「でもよ」
ふと、資料から顔を上げて高山が遊太郎を見た。
「お前、この銀髪野郎と、本当は影でつるんでたりしねえよな?」
鋭い勘ぐりに遊太郎は慌てることなく、
のんびりとした調子で訊き返した。

「つるむ?」
「いや、だってよ。イトコだし、
俺よりかは五十嵐のプライベートは知ってそうじゃね?
なんたって弁当まで作ってたりするし」
「はあ」
「それくらい親しけりゃあ、五十嵐の男関係、なんとなくわかりそうなもんじゃねえか。
それにお前も、五十嵐に惚れてるみたいだしよ」
「そんなことないですよ」

あっさり否定するが、まるで信じてない高山は、
皮肉たっぷりに言った。
「どうせ、片思いだし、自分にゃかなわない。
けど、いつもイジメられてる俺を応援する気もねえ。
だとすりゃ、胡散臭い奴でも銀髪野郎の味方でいようとかさ。違うか?」
「違います。もうすぐ会社に着きますよ」

全く関心のないフリをして、
遊太郎は社有車をチューリップ生命本社の地下駐車場へ動かした。


社内にいる社員はまばらだった。
斎藤課長に帰社報告を済ませた遊太郎は、
待ち伏せしていたらしい桃子に腕を後ろからつかまれ、ヒヤッとした。
周りの目があるため、桃子の顔は事務的に笑みを作ってはいたが、
目は怖かった。

「お疲れ様、森田くん。
ちょっと事務処理で打ち合わせしたいことがあるんだけど」
「あ。は、はい」

首根っこを捕まえられた猫のように、
遊太郎は桃子のあとをついてフロアを出て、
自販機前のドリンクカウンターへ案内された。
彼女の話はわかっている。
スレ違いを理由に、今回の素性調査がどうなったのかを、
まだ桃子に話していなかったからだ。


〜第287回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-10-31 17:18

第285回接近遭遇「彼氏のキモチ」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

部長の神崎から、
桃子と遊太郎の結婚には特に反対の理由もなく、
逆に望ましいとさえ言われたが、
問題なのは遊太郎の意思なのだと桃子は諭された。

「その様子では、まだ森田くんには話してないようだね」
「……はい」

桃子は勢いを失って下を向いた。
言うタイミングがわからないし、実のところ勇気がないのだ。
ひょっとしたら、遊太郎は何も考えてなくて、
結婚したいと思っているのは自分1人なのではないか。
何故なら、遊太郎は前に言ったからだ。
誰ともそうなる気はない、と。

神崎はワインを一口飲んで、優しい表情で桃子を見た。
「桃子くん」
「はい」
「森田くん、いや、レンをそれほどまで好きになってくれて、
私は嬉しい。礼を言わなければ。本当にありがとう」

その言葉を聞いて桃子は真っ赤に顔を染めた。
慌てて両手をバタバタさせる。
「なんで、お礼なんて。そんな……神崎部長!」
「いや。今まで本当に色々な事件に巻き込まれながらも、
桃子くんは一途に彼を思いやり、信じてくれたのだから。
異星人という壁を超えて、愛を育んで来た桃子くんは素晴らしい」
「素晴らしくないですよ。
もっと女らしい地球人だったら良かったけど、
あたしなんか、自慢できるとこ1つもないし、
でも、出会って好きになっちゃったから、仕方ないというか。
遊太郎には、ずっとずっと、
そう、あたしがおばあちゃんになってもそばにいて欲しいんです」

穏やかな神崎が目の前だと、素直に本音が言える。
神崎はしばらく黙って、
何かの思念を読み取るように虚空を眺めたあと、口を開いた。

「森田遊太郎。つまりレンは、幸せとは程遠い場所に身を置いて、
長い間、孤独だった。
そんな彼の心をつなぎとめるには、
生半可な感情や意志では太刀打ちできない。
本気で、ぶつからなければ伝わらないのだよ。
それだけ、レンという男の中には喪失感が在るということだ」
「喪失感」

桃子は息を呑み込んだ。
それは遊太郎、いや、レンがいまだ過去を背負って苦しんでいるからだろうか。
それを完全に克服できる日が来るのか。
克服しなければ、彼は幸せにはなれないというのだろうか。

「桃子くんが本気ならば、レンを地上につなぎとめられるかもしれない。
私はそう信じているのだがね」
「あたしが?」
「そう。全身全霊をこめてぶつかれば。
あるいは、自己犠牲に傾きやすいあの男の心を、
暖かく人間らしいぬくもりで満たすことが出来る可能性はある。
桃子くん次第だな」

応援しよう、と神崎が大きな手をさしのべ、
桃子はおずおずと自分の手をそれに近づけた。
ぐっと強く握られ、彼女は暖かいメッセージを受け取った。
それは、まるでレンの父親のように深く大きな愛情を込めたものだった。

( レンを幸せにしてくれたまえ。
桃子くんなら、それが出来る。私は信じているよ )

桃子は涙が出そうになるのをこらえた。
神崎がこんなにも自分たちを気遣い、支えてくれている。
なんて有り難いことなんだろう。
自分に出来るかどうかわからないけれど、
やれるだけやってみよう。
遊太郎、レンと幸せになるのだ。

「神崎部長、ありがとうございます。
あたし、なんか勇気が出た気がします」

桃子は強く手を握り返し、
茶目っ気たっぷりに笑顔を向けた。



〜第286回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-10-24 20:34

第284回接近遭遇「上司に向かってカミングアウト」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「神崎部長。あたし、どうしたらいいんでしょうか?」

高級レストランの大広間。
桃子はテーブルの向こうにいる神崎に、切羽詰まった表情で訊いた。
もう頼れるのは神崎しかいないと思ったのだ。

「桃子くんは心配性のようだ」
穏やかな笑みで神崎はワインを一口飲んだ。
いついかなる時もダンディで、受け入れる懐の深さを持つ上司である。
「そりゃ心配します。遊太郎はいつもぼやっとしてて、
自分の正体がバレそうになるかもしれないのに、
探偵に呼び出されてノコノコ行っちゃって、
あたしには電話もメールもして来ないんですよ?」

空腹が満たされてパワーが戻って来たらしい桃子は、
ドンとテーブルを叩いて、慌ててすみませんと謝った。
そんな彼女を微笑ましく観察しながら、神崎が答える。

「銀河連盟調査員は常日頃から、
あらゆるリスクに対応できるよう訓練されている。
従って、探偵やマスコミなどが調査しても、
まず真相にたどり着けないようになっているのだ。
何も心配することはないから、安心しなさい」
「そうですか?・・・・・・なら、いいんだけど」

上司である神崎がそう言うのなら、いたずらに焦る必要はないのだろう。
考えてみれば、彼らは地球人ではない。
細かい情報操作は朝飯前なのかもしれない。
豊富に並ぶデザートも終わり、桃子はひと呼吸置いてから、
神崎に真面目な表情を向けた。


「あの、ずっと前から相談したかった事があるんです」
「改まって何かな?」
「さっきの話とは別件で。……プライベートな事なんですけど」
「どうした。桃子くん。
そうかたくならずに遠慮なく話してみなさい」

柔らかく促されて、桃子は息を呑み込んでから、
思い切って溜めていた思いを口にした。

「・・・・・・あたし、遊太郎と結婚したいんです」

早口でそう言ってからキュッと目を瞑り、下を向く。
とんでもない事を、打ち明けてしまった。
でも止められなかった。
ずっと自分だけの胸に隠して、誰か頼れる人に相談をしたかったからである。
しかしすぐに後悔する。
普通に考えると、反対されないはずがないからだ。
恐る恐る顔をあげると、神崎がにこやかに桃子を見つめていた。

「よく言ってくれたね。桃子くん」
「え?」
「いつ決心してくれるのかと私は待っていたのだよ」
「は、はい?」

意味がわからなくて、桃子は目をぱちぱちさせた。
重大なカミングアウトをしたというのに、
神崎はくつろいだ様子で、新しいワインを持って来させ、
桃子にグラスを持たせた。

「神崎部長?あの、反対しないんですか」
「何故かね。結婚ほど素晴らしいイベントはない。
おめでとう、桃子くん。乾杯しよう」
「はあ」

のせられて乾杯をしてしまった桃子は、
神崎が満足そうに話すのを夢見心地で聞くことになった。

「実は最初から、こうなればいいと考えていたのだ。
というのは、調査員は通常1人で住居を構える事の方が多い。
しかし、あえて同居のモデルケースとして、
君たちを選んだのは、いつか異星間の交流を経て結婚をしてほしいと、
私が望んだからだ」

桃子は目を大きく見開いた。
反対どころか、神崎は2人がいつか結婚するように、
望んで同居をさせていたと言うのだ。

「銀河連盟調査団の規則には、
派遣先の現地人、つまり地球人との結婚を禁止する条項はない」
彼女の疑問を払拭するように神崎は説明した。
「私も昔、地球人女性と結婚した経験もある。
むしろ結婚こそ、地球人を知る上で貴重な経験になると、
我々は考えているのだよ」

しかし、と神崎はそこで桃子にやや真剣な眼差しを向けた。

「森田くんも結婚を望めば、の話なのだがね。
彼にはもう話したのかな?桃子くん」
「それは……」

桃子は答えに詰まった。


〜第285回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-10-17 17:00

第283回接近遭遇「桃子、神崎部長に相談する」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

桃子はイライラして残業も手につかないでいた。
遊太郎は外回りで帰って来ないし、
文句を言いたい係長の高山も接待の名目で、
ちゃっかりと遊びに出かけたようだ。

「どいつもこいつも、ムカつく!」

桃子は勢いつけて書類箱をデスクにドンと置き、
まだ居残った他部署の社員たちを震え上がらせた。
桃子が怒っている理由は、ひとつ。
高山が遊太郎、正しくは遊太郎の本来の姿である銀髪男の素性調査を、
探偵に依頼したという件だ。
遊太郎も遊太郎で、さほど慌てる様子もなく、
その探偵事務所からかかってきた電話に呼び出され、
仕事の帰りに立ち寄ると言って、
のんきに会社から出て行ったきり電話やメールの一本もない。

「まあ、もともと、あいつはマメにメールとかしないヤツだけど。
あたしがこんなに心配してんのに、
のほほんとしちゃって、どういう神経なのよ?」

ぶつぶつ文句をたれながら乱暴に仕事用具を片付け、
大股で更衣室に向かおうとした矢先、エレベーターから誰かが降りて来た。
ダンディにスーツを着こなした人物は、桃子を見て穏やかな笑顔を向けた。

「おや、こんな遅くまで残業をしていたのかね。桃子くん」
「神崎部長!」

桃子は天の助けだとばかり大きな声を出し、
慌てて他に誰もいないか辺りを見回した。
すると、神崎は静かに笑い、
せっかちに喋ろうとする彼女をまあまあと優しく制した。

「久しぶりに夕食でもどうかね?
どうせ、森田くんは連絡無しで出歩いたままだろうし、
桃子くんも少し落ち着いた方がいい」
「……はあ」

桃子は顔を赤くした。
おそらく神崎は、桃子がイライラしている原因を見通しているのだろう。
地下駐車場で待っているので着替えて来なさいと微笑んだ。

それからほどなく、部長の神崎と桃子を乗せた黒いBMWは、
夜の街をスムーズに走り抜け、郊外にあるレストランに向かった。
そこはまるでドイツの古城のような荘厳な建物で、
桃子は高い天井やシャンデリアを呆気に取られながら眺め、
神崎の背中を頼りにおぼつかない足取りで、ついて歩いた。
神崎が貸切にしてしまった大広間に通された桃子は、
運ばれてくる様々なコース料理を驚きとともに、
その一級品の味わいを堪能することになった。

「お腹はいっぱいになったかね?桃子くん」
数本灯るロウソクの向こうで、
紅茶を飲みながら、神崎が柔らかく訊いた。
桃子はデザートを口にし、とびきりの笑顔を返した。
さっきまであんなにイライラしていたのに現金なものだ。

「はい。ありがとうございます。
とってもとってもおいしかった。ご馳走さまでした」
「満足してもらえて良かった」
「それにしても、部長はやっぱりグルメなんですね。
こんなに高そうなレストラン、あたし初めてです」
「地球の食べ物は、一応は全て味わってみることにしているのだよ」

そう語った神崎も、遊太郎と同じく異星人である。
チューリップ生命本社人事部長の肩書きは表向き。
実際は、銀河連盟調査団日本支部のキャプテンという顔を持つ。
しかしいまは、50代のダンディな男として、
桃子の良き理解者だ。

「桃子くんのイライラはわかっている。
どうも、地球人は我々とは違う意味で、
相手の弱みを探し出そうと考えるようだ」
神崎が桃子の抱えた問題を先に口にしたので、
桃子は安心したように喋り始めた。
「はい。高山係長がまさか探偵事務所なんかに、
遊太郎の事を調べさせていたなんて知らなくて。
遊太郎も探偵からの電話に平気で呼び出されて行っちゃうし。
あたし、気が気じゃなくて」

こうなったら、遊太郎の直々の上司に聞いてもらうしかない。
桃子は紅茶を一口飲んで、神経な眼差しで神崎に向き直った。

「あたし、どうしたらいいんでしょうか?
教えて下さい。神崎部長」


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by yu-kawahara115 | 2010-10-10 15:41

第282回接近遭遇「幸せとは?」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

遊太郎が手渡したニセのプロフィールに目を通した時任晴彦は、
なるほどと顎に手を当ててニヤリとした。

「銀髪の男はイギリス人系外国人、レン・ソリュート。
職業はルポライターで、不定期に来日している。
旅行好きな五十嵐桃子さんとはソーシャルネット上で知り合った友人同士、か」
読み上げて、メールアドレスを眺め、時任は質問した。

「このアドレスは高山に教えて大丈夫なのかな?遊太郎くん」
「はい。世界中を飛び回るルポライターという設定なら、
電話よりeメールでやり取りをする方が説得力あるでしょう」
「で、高山が会いたいとメールを飛ばしたら、
君はレンくんの姿に戻って会う、と?」
「そうです」

わかったと時任は立ち上がり、インスタントコーヒーを淹れかえた。
しばらく黙ったのち、遊太郎の向かいのソファに座り、
柔らかく口を開いた。

「ところで、遊太郎くん」
「はい?」
「君と桃子さんとのことだけど」
「……」

遊太郎は不意に固い表情になった。
訊かれるだろう事を予測して、少し伏し目がちになる。
「立ち入ったことだとは思うけど、気になるんだ。
君はこれからも桃子さんと暮らすのかな」
「派遣期間が終わるまでです」
「桃子さんがずっと君と暮らしたいと言ったら?
つまり、地球人と結婚することになったらという意味だけどね」
「……それは、ありません」

曇りがちになる遊太郎の顔を、
時任はやっぱりという風に覗き込み、
やがて、失礼と断って煙草を取り出した。

「ごめん。俺も地球人女性と一度は結婚した経験があるから、
君と桃子さんを見ていたら、なんなくほっておけなくて、
つい心配してしまうんだ。
答えにくい質問だったね」
「いえ、いいんです」

今回、係長の高山が遊太郎とは知らずに、
銀髪男の素性調査を探偵に依頼した件で、
ますます桃子の事は慎重に考えなければならないと、
遊太郎は思っていた。

「桃子さんは普通の地球人と結婚をした方が幸せになれます」
「そうかな」
「そうです。僕は調査員で、常に危うい立場にいます。
いつ桃子さんを危険な事に巻き込むかわからない。
平和な生活を保証することが難しいんです。
だから……」

遊太郎はあとに続く言葉を呑み込んだ。
胸の奥が、刺すように痛み出したからだ。
思わず眉を寄せ、右手で抑える。
時任が怪訝な顔になり、慌てて煙草を灰皿の中にねじ込んだ。

「遊太郎くん?」
「大丈夫です。時々、痛くなるだけで」
「ケガでもしているのか?」
「ちょっと。色々あって……」

まさかエネルギー体に穴を開けているとは言えず、
遊太郎はしばらく黙り込んで痛みが通り過ぎるのを待った。
時任が水を運んで来てくれたので、礼を口にして少し飲む。

「相変わらず、君は無茶をしてるんだ」
あえて何も問いただしたりせずに、時任が苦笑いを作る。
遊太郎という男が、普段のんびりしたサラリーマンに扮していながら、
裏では侵入エイリアンを摘発する仕事をしている事を、
時任もよく知っている。

「もっと自分を大切にした方がいい。
遊太郎くんだって、幸せになる権利はあるんだよ」
「……」
「桃子さんもそうだ。
幸せってのはさ、なるとか作るもんじゃなくて、
感じるだけでいいんじゃないのかな」

時任が語る染み入るような言葉を、
遊太郎は目を閉じて聞いていた。
幸せとは何だろう。
桃子にとって、一番幸せを感じられることとは。
胸に虚無の穴を抱えながら、遊太郎は繰り返し模索していた。


〜第283回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-10-03 13:45