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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2010年 01月 ( 9 )   > この月の画像一覧

第240回接近遭遇「記憶の中にいる男」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

遊太郎が同じ階の大倉健人の部屋を訪ねたのは、
10時半を過ぎた頃だった。
桃子から、風邪を引いている事を訊いて見舞いに来たと告げると、
大倉健人は、すぐに中へ入れてくれた。

「大倉さん1人で大変だと思って、オートミールを作って来ました」
遊太郎がそう言って、まだ温かい容器を開けてみせると、
健人は、嬉しそうに目を細めた。
「助かるよ。ありがとう、遊太郎くん」
「たくさん水分を補給して、すぐ横になった方がいいですよ」
「そうしたいけど、仕事たまってて。
あ、桃子は?あいつの方が熱高いだろ」
オートミールを早くも平らげつつ、心配そうに訊くので、
遊太郎は大丈夫ですと答えた。

「桃子さんは安静にして寝てます。
熱も出し切ったら下がるはずですし」
「そうか、良かった。
遊太郎くんが優しいナースに見えて来た。
食事のデリバリーまでしてくれて。おかげで腹からあったまったよ」

足の踏み場がない男1人の部屋。
長時間、窓も締め切っているらしく室内は乾燥していた。
遊太郎が換気をした方が良いと提案し、少しだけ窓を開けた時、
健人は、ふっと漏らした。


「……実は、記憶がおかしくてさ」
「え」

一瞬、虚をつかれて、遊太郎はゆるりと振り向いた。
写真や雑誌だらけのフローリングの上で、
胡座をかいた健人が、窓際に立つ遊太郎を見つめている。
「……あ、ごめんな。急に変なこと言って」
「どうかしたんですか?」
さりげなさを装って訊いてみる。
すると、彼がうん、と考えながら話し出した。

「こないだの取材。ほら、遊太郎くんが行きたがってた」
「ああ、あの時は急用が出来てしまって……
せっかく取材に同行しても良いと言ってくれたのに、
申し訳ありませんでした」
「ううん、そんなのはいいんだ。ただ……」

どうも符に落ちないという風に首を傾げる。
「あの夜、自称宇宙人って人物を取材したはずなんだよ。
けど、記憶があやふやで。こんなのは初めてだ。
結局、ガセだったから原稿はボツにして良かったんだけど……」
「ガセ?」
「ガセネタってこと。妄想グセがある大学生だったんだ。
それは別によしとして。……妙な人物見た気がしてさ」
「妙な人物」
それとなくうながすと、健人は思い出すように眉間にシワを寄せた。


「銀色の髪の男なんだ」
「……」

遊太郎は気取られぬように、スッと息を呑み込んだ。
銀色の髪の男。
それは間違いなく遊太郎自身の事である。
あの時、健人の記憶を断片的に操作はしたはずだが、
どういうわけか、遊太郎の素顔だけが健人の中で残像になっているようだ。

健人がちょっと咳をして続ける。
「夢を見たのかもしれないけどね。
あのホテルの部屋じゃ、俺と取材相手しかいなかったはずだから。
でも、もしかして……」

健人は、同意を求めるように遊太郎を見たので、
彼はつとめて平静に次の言葉を待った。
「……もしかして、あれ、異星人だったりとか思ってさ」
「異星人」
「切れ長の青い目で俺より背が高くて。
そうだなあ。北欧系外国人に見えない事はないんだけど。
ひょっとしたら取材を阻止する為に現れた、
銀河連盟から来たホンモノの異星人かなって」
「……」

遊太郎が黙って聞いているので、健人は頭をかいた。
「ごめん。呆れただろ?宇宙人情報誌の記者なんかやってると、
日常で妙な事があると、何でもそっちに結びつけてしまう。
全く悪いクセだよ。いまの忘れて、遊太郎くん」

苦笑いしたとたんくしゃみをし、ゴホゴホと咳が立て続けに飛び出した。
慌てて遊太郎が健人の背中をさすり、
咄嗟に生体エネルギーを注入してしまった。
とたんに咳が止まり、全身が温かくなる感覚に戸惑った健人は、
驚いたように遊太郎を見つめた。


「遊太郎くん、君……?」


〜第241回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-01-31 12:53

第239回接近遭遇「桃子、風邪を引く」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

桃子が風邪を引いた夜。
遊太郎がマンションに帰ったのは、9時を回った頃だった。
リビングのソファで、猫のように丸くなっている桃子を見つけ、
彼は声をかけた。

「桃子さん?」
「……お帰り。遅いよ、遊太郎」

怒ったつもりなのだろうが、あいにくひどい鼻声だ。
遊太郎はすぐに桃子の額に手を当てた。
「熱があるじゃないですか。大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない」
彼の手を払いのけ、気だるそうに起き上がり、
「話があって待ってたのよ」
と、熱で潤んだ目で睨みかける。

「話?」
「何で、大倉君の取材になんかついて行ったのよ。
あたし、聞いたんだからね」
「え?」
何故、桃子が知ってるのかと考えていたら、
ブツブツと文句が滑り出した。
「さっき病院で大倉君に偶然会って」
「病院で?」
「大倉君も風邪引いたんだって。それで、こないだ……」

残念ながら、ゴホゴホと咳が飛び出し、話が続けられなくなった桃子を、
遊太郎は彼女の部屋へ連れて行く事にした。
脱ぎ捨てられた服や鞄を踏まないように気をつけて、
ベッドに寝かせ、もう一度額に手を当ててみる。

「38度くらいですね」
「あんたの手って体温計?」
「薬は飲んだんですか」
「飲んだけど、まだ効かないのよ。ああ、最悪」

かなり気分が悪そうだ。
遊太郎は、彼女の鎖骨の下や胸元へ手を押し当てた。
思わず桃子がギョッとして、じたばたと騒ぐ。
「ちょ、ちょっと、いきなりさわんないでよっ!バカ」
「暴れないで下さい。診てるだけです」
「医者でもないくせに」
「すみません」

桃子は知らないが、派遣調査員である遊太郎は、
地球人の医師以上に、ある程度の病気や怪我の処置は心得ている。
遊太郎はかけていたメガネを外し、
桃子の額へ、そっと自分のそれを近づけた。

「風邪、うつるよ?」
「かまいません」
「地球のウィルス、ナメてんでしょ。遊太郎」
「黙って」

不審げな彼女の顔を両手ではさみ、額同士を重ねたとき、
彼からふわっとかすかな香りがした。
最初、桃子は遊太郎がフレグランスをつけているのかと思ったが、
彼は元々、人工的な香水を好まない。
では、この清々しい香りは、いったい……

いつの間にか、
遊太郎は素顔、……レンの顔に戻っていた。
ヒーリング能力を発動させたためだろう。
意識を集中して、閉じたられた瞼から長く伸びた繊細な睫は、
透き通って、より神秘性を増していた。
レンは、真剣に桃子に向かって生体エネルギーを注入しているのだ。

このまま、彼にキスしたい。
桃子がそんなことを考えたとき、レンはゆっくり顔を離した。

「仕事で疲れが溜まってしまうと生体エネルギーが失われます。
だから、風邪になりやすい。気をつけて下さい」
「年中無休で仕事してる、あんたに言われても全然説得力ないし」
つい憎まれ口をたたくと、彼は微笑した。
「声が普通に戻って来たようですね。もう大丈夫です。
でも、まだ熱は上がりますから安静にしてください」

立ち上がった時、レンだった彼は、もう遊太郎に変わっていた。
ずっとついててくれると思った桃子が訊く。
「どこか行くの?もう少しここにいてくれたって……」
「大倉さんの様子を見て来るだけですよ」
「大倉君?」

きょとんとしたが、桃子はああ、と思い出した。
同じ階に住む大倉健人も風邪を引いていたと、
さっき漏らしたのを覚えていたようだ。
「ふうん。自分のカノジョより、大倉君なんだ」
「え?」
「ごめん。何でもない。
それよりさ、ヒヤヒヤするから、変な事に首突っ込んでバレないようにしてよ?」
「はい」

そう言って、遊太郎は一度キッチンに立ち、
消化の良いオートミールを作った。
桃子にそれを食べさせてから、
大倉健人の分を容器に移し、持って行くために部屋を出た。


〜第240回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-01-27 20:09

第238回接近遭遇「操作された記憶」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

(体温計が壊れてる?)

会社から帰った桃子は、ゴソゴソと体温計を探し、
計ってみたら銀色の目盛りが果てしなく伸びていた。
そういえば、寒気がして気分が悪い。

(ただの風邪なら良いけどインフルエンザだったら、やだなあ)

歩いて行ける距離の病院なら、まだ受付時間に間に合いそうだ。
厚手のジャケットを羽織り、マスクをして病院まで行ってみると、
待合室に見知った顔を発見した。

「大倉君?」

同じようにマスクをかけた大倉健人が、やあと苦笑いした。
同じマンションに住んでいる彼は、桃子の大学時代の友人だ。
いまはトンデモ系雑誌の記者をしている。

「バカは風邪引かないんじゃなかったか?桃子」
大倉健人がイヤミを言い、桃子が鼻声で怒ってみせた。
「卒論、あたしの方がランク高かったの、忘れた?」
「よく覚えてんな。4年前なのに」
「バカじゃない証拠。で、大倉君も風邪?」
「ん。引き始めに医者に行っておこうかなって。
体力落ちたかなあ。最近、もの忘れもひどくてさ」
「なにそれ。26で完全にオジサンじゃん」

笑いかけて咳が出た。
どうやら本格的に風邪を引いたらしい。
しかしこの混み具合では、名前が呼ばれるまで時間がかかりそうで、
ウンザリしていると、大倉健人がポツリと漏らした。


「記憶が飛んでてさ」
「え?」
「こないだの取材中の記憶が無いんだ」
「どういうこと?」

桃子の質問に、大倉健人はかいつまんで説明した。
自称宇宙人と名乗る男に取材で会いに行ったのだが、
予想通りとんでもない妄想壁の大学生で、記事はボツになった。
妙なことに、取材中の会話を録音したレコーダーは壊れていて、
さらに……

「あの取材、遊太郎君も同行してもらったはずなんだけど」
「はあ?遊太郎が?」

声が大きくなり、他の患者たちが不愉快そうに睨んだ。
すみませんと小さく謝って、桃子は怒りを抑え心の中で怒鳴った。
遊太郎のバカ。何で取材なんかについて行ったのよ?

大倉は頭をくしゃっと揉みながら、首を傾げる。
「おかしいんだよなあ。遊太郎君に聞いたら、
急に用事が出来て、一緒じゃなかったって言うんだ」
「あ、そうなんだ」
少し怒りがクールダウンする。
しかし、その先の話に肝を冷やすことになった。

「でも、誰かもう1人居た気配がしてさ。
……すらっと、背が高い、黒ずくめの男。
髪は銀色で、目が青かった」
「……」

熱っぽい桃子の頭の中で、見慣れた画像が作られるのに、
さほど時間はかからなかった。
大倉が見た男は、おそらく遊太郎の素顔であるレンに違いない。
彼が本当の姿を現したということは、
取材中に何か事件が起こったことを意味する。

「夢でも見たんじゃない?」
桃子は作り笑いで誤魔化した。
「夢?」
「だって取材したの、妄想壁のあるヤツだったんでしょ。
怪しげな催眠術とか使われたんだよ、きっと」
「そっか」
「そうだよ。だから風邪も引いちゃったのかもよ」
強引に話をまとめた桃子は、拳を密かに握り締めていた。

(全く、あたしに内緒で何やってんのよ?遊太郎のヤツ。
帰って来たら、ぜんぶ吐かせてやるんだから。
ヒヤヒヤするじゃん。バカ!)

それでも熱とだるさで、その怒りはいつもよりは半減していた。
薬をもらった桃子は、大倉健人と共にマンションへ帰った。
彼女の部屋の前まで送った彼が心配そうに訊く。

「桃子、平気か?熱あるんだろ」
「平気。遊太郎もじき帰って来るし。大倉君こそ、1人で大丈夫?」
「俺は頑丈に出来てるから、寝たらすぐ治るよ」

お大事にとお互い笑い合い、
桃子はすぐに部屋の中に入った。
彼女が消えたドアを、大倉健人はしばらく切なげに見つめていた。


〜第239回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-01-24 16:44

第237回接近遭遇「レンが採用された理由」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ニセ派遣調査員を確保出来て一件落着か。
それにしても人騒がせな事件だったな」
上司ロータスが肩をそびやかせた。

ここは月の裏側に浮遊する銀河連盟ステーション。
その中枢コントロールセンターへ、レンは事件の報告をする為に帰還していた。
デスクでは、詳細な報告データを見ながらロータスがつぶやく。

「憧れだけでは、派遣調査員という面倒な仕事は出来ない。
例え優秀だったとしても、
忍耐、慎重で正確無比な判断力、強いメンタリティも求められる。
毎回、大量の候補生たちが容赦なく落とされてしまうが、
今回の事件で、ますます採用テストは厳しくなるだろう」

そしてデスクの前に立つレンへ訊いた。
「……ところで、記者の大倉健人という地球人にケガは?」
「ありません。ショックを受けて気を失っただけです」
「記憶処理は?」
「大丈夫です。
桜井忍は宇宙人と語る妄想の激しい普通の大学生だったと、
大倉健人の記憶を断片的にですが、書き換えました。
もちろん、今回の取材内容も記事になりません」

それは何より、とロータスはリポートを閉じた。
これで、ニセ派遣調査員事件は解決したが、
今回のような歪められた銀河連盟関連の事件は、
また発生する可能性もあると考えていた。

今度は、レンがロータスへ質問した。
「一度、キャプテンにはお聞きしたかったんですが」
「うむ?」
「何故、僕を派遣調査員に採用したんですか?」
それを聞いた上司は、口の端をニヤリと曲げた。
「タイムリーな質問だ」
そして回想するように茶褐色の目を細める。

「地球時間で、2年ほど前になるかな。
君は、それはもう、どうしようもなく荒れた波動を出していた。
わかるかね?レン、
この私でさえ、君に話しかけるのに手に汗をかいていたのだよ」
「よくそんな男を採用しましたね」

レンも調子を合わせて他人事のように切り返すと、
ロータスが苦笑いを作った。
「ああいう行き場を失ったエネルギーを有効に役立てるには、
ハンパなく地味で、ひどく忍耐が必要な調査員をさせるのが一番いい。
身体能力、特殊能力もズバ抜けていたからね。
しかし一番の理由は、君の目だ」
「僕の目、ですか?」
レンが青灰色の神秘的な瞳を見開いた。
ロータスは頷く。

「そうだ。宇宙のあちこちで嫌というほど戦って、
数多の命が消えてゆくのを見て来た君は、
一見荒れたように見えているが、内側では違うのではないかと思った」
「……」
「今度こそ、誰かを守り誰かの為に生きてみたい、
支えたいと願っている事が、君の瞳の奥を見て感じたからだ」

レンも思い出すように虚空へ視線を流した。
宇宙を放浪し、死ぬ事も出来ず戦う事にも疲れきったあの頃、
自分を拾いあげてくれたのは、このキャプテン・ロータスだった。


『派遣調査員の採用テストを受けてみたらどうだ?』

当時、ロータスにそう言われたレンは、不遜にも、
突き放したように言い放った。

『派遣調査員?俺が?
バカバカしい。そんなものになって意味があるのか?』

『意味があるかどうかは、厳しい幾つものテストに合格し、
研修期間を経て実際に地球に降り、
彼ら地球人と交流した時に初めて分かる事だ』

『地球……?』

『君の瞳のように青く美しい惑星だよ。
今までにない経験が待っているはずだ』


そんな会話を思い出したレンは、苦笑を隠すように、
コントロールセンターを後にした。
ロータスの言葉通り、彼は派遣調査員になって、
他では得られない多くの事を体験している。
そして地球人女性、五十嵐桃子に巡り逢えた事が、
彼自身の内面を大きく変えた。

彼女の怒っている顔がふっと浮かんだ。
喜怒哀楽を豊かに表現する桃子は、彼とは対極にあって、
惹かれずにはいられない。
レンは微笑し、少しの切なさを胸に、
彼女の居る地上へと瞬間移動をした。


〜第238回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-01-20 20:00

第236回接近遭遇「暴かれたニセモノの正体」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「あなたは本当に、銀河連盟派遣調査員ですか?」

遊太郎の質問に、桜井忍がソファから立ち上がった。
品の良い顔立ちが険しく変わっている。
大倉健人は慌てて頭を下げて詫びた。
「すみません、桜井さん。失礼な事を。
彼は悪気は全然ないんです。どうか、お許し下さい」

しばらく眉をしかめていた桜井忍は、再び座り直した。
遊太郎を凝視しながら言う。
「じゃあ、君に証拠を見せてやろう」
「証拠?」
「超常能力さ」
「それは、やめた方が……」

戸惑う遊太郎へ向かって、桜井忍は右手を広げた。
そして大倉健人にも宣言をする。
「大倉さん。いまから僕がパフォーマンスをして見せます。
派遣調査員は超常能力を持っていて、
侵入者を捕まえる時に使うのですが、ちょうど良い。
証拠として、彼に披露しましょう」
「えっ、ちょ、ちょっと待って下さいっ!」

大倉健人はギョッとした。
桜井忍の顔が残忍そうに歪み、
周りの空気がピリピリと放電したからだ。
これはウソではい。彼は本当にやる気だ。
遊太郎が危ない、そう思った矢先……


ビシッ!

火のような魂が彼の手から飛び出した。
一瞬、部屋が真昼のように明るくなり、
大倉健人は不意にショックを感じてソファへうつ伏せた。

「大倉さん!」
遊太郎が大倉の身体に触れる。
気絶をしているだけだと知り、安堵の表情になる。
しかし逆に驚いているのは桜井忍である。
かなり力を放出したはずなのに、
コントロールが効かず、空回りに終わったからだ。
遊太郎がポツンと言った。


「気が済みましたか」

まさか……?
桜井忍の中で嫌な予感がした。
思わずソファから離れ、部屋の奥へと後退する。
遊太郎がゆっくり近づいて来た。
のんびりした童顔が、徐々に別人へと変貌してゆく。

「!」

桜井忍の目の前に現れたのは、漆黒の服に身を包んだ長身の男。
遊太郎、いや、銀河連盟派遣調査員レンは、
驚愕している桜井忍に向かってこう呼んだ。

「モーリス」

瞬間、キュッと身体が縮み上がった。
それが自分の本当の名前だったからだ。
レンは、スキャニングした桜井忍のデータを確認するように口にした。

「モーリス。あなたはエリダヌス星から、
地球へ滞在していた旅行者ですね」
「……」
「過去に何度も、銀河連盟調査団の採用テストを受けていた」
「あ……」

桜井忍、本名モーリスは全てを知られている事を悟り、
その場に、ガクガクと膝を折った。
「……知られてたのか。どうりで」
そして目の前に立っている銀髪の男を見上げる。
「そうか、君が本物の、派遣調査員だったんだ……」

モーリスは落胆の色を濃くにじませ、疲れきった声でつぶやいた。
「……憧れだったんだよ。
僕はずっと、君みたいに銀河連盟の派遣調査員になりたかった。
人知れず悪いエイリアンをやっつけるヒーローに。
だから頑張った。なれる自信はあった。
僕は毎回優秀な成績を出したはずだった。でも……」

レンは頭を垂れたモーリスに近づいた。
彼の心情は理解出来なくもない。
何度も挑戦しテストに敗れた。
しかし、だからといって派遣調査員だと地球人に偽り、
マスコミに情報を流そうとした事は、見過ごす事が出来なかった。

「モーリス。あなたを連行します」
「……」
彼を立ち上がらせたあと、レンは静かに言った。

「派遣調査員は、ヒーローではありません」
「え?」
「現実は過酷です。
地球人に紛れて、悟られないよう生活をしながら、
裏では命のやり取りをする。
……日々、自分と戦いです」

経験をした者でしか語れない言葉の重みに、
モーリスは、複雑な思いでレンの端正な横顔を見つめた。
そして諦めたかのように、ふっと疲れた笑みを浮かべた。


〜第237回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-01-17 14:43

第235回接近遭遇「ニセ派遣調査員・桜井忍」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ビジネスホテルの一室。
遊太郎は情報誌の記者の大倉健人と共に、
桜井忍という人物に会っていた。
桜井忍は、茶色の髪に品の良い顔立ちをした大学生だが、
自分を「異星人」だと明かし、さらに……

「僕は、銀河連盟から派遣された調査員です。
地球人に紛れて生活をしながら、
危害を加える侵入エイリアンを捕まえる事を任務にしてるのですよ」
と、語ったのだ。

大倉健人は目を輝かせながら質問をした。
「例えば、どんなエイリアンが地球に侵入しているんでしょう?」
すると彼は少し考えるようなポーズを取り、脚を組み替えた。
「そうですね。地球に不法に侵入し、地球人を騙したり、
無断で生体エネルギーを吸い取ったりします。
脅かす訳ではないのですが、多様な種が地球には侵入しているんですよ」

「本当なら、それは怖い話ですね」
大倉健人は心底ゾッとするように顔をしかめると、
桜井忍が、明るい瞳を細め柔らかい微笑を作る。
「安心してください。
だからこそ、あなたがたを守るために、銀河連盟が存在するのですから」
「……いや、なんというか、驚きです」

この奇妙な取材を、助手の真似をしながら観察していた遊太郎は、
おもむろに口を開いた。
「あの」
小さく手を上げる遊太郎に、大倉健人がうん?と見やる。
「なに、遊太郎君?」
「すみません。聞いてみたい事があるんですが……」

すると桜井忍が余裕たっぷりにどうぞと促し、大倉も頷いた。
話の展開が予想外なものだったので、
大倉の頭の中では、少し整理が必要だった。
遊太郎は素人で、そう大した内容を訊かないだろうと思って了解する。
きちんと礼を言ってから、遊太郎は質問した。


「桜井さんは情報誌に正体を明かして、大丈夫なんですか?」
「え?」
桜井忍は少し妙な顔をした。
遊太郎は、はにかんだように笑った。
「あ、すみません。
僕のUFOが好きな友達、銀河連盟に興味があって、
前に、色々聞いた話を思い出したんです。
銀河連盟の調査って凄く極秘なんですよね?」
「まあ、それは……」

滑らかだった桜井忍の答えが初めて詰まった。
「……確かに、むやみに知られてはいけないが、
情報が交錯する現在、
銀河連盟の正しい情報を流すのも、
僕ら調査員の大切な役割なんだよ」
「そうなんですか。でも記事になってしまったら、
桜井さんに危険はないんですか?」
「危険?」
「その、さっきおっしゃった、
地球に侵入しているエイリアンに、逆に狙われたりとか」

大倉健人も、そう言えばと同意する。
「桜井さんの写真が載る訳ではないですが、
あまり知られてしまうと、任務に支障が出るのでは?」
すると、桜井忍ははっきりと首を振った。
やや動揺しかけたかに見えたが、気持ちの立て直しが早い。

「僕はプロの銀河連盟調査員ですよ?
非常時にこそ、真価が問われる。ですから何の障りもありません」
「カッコイイですね」
人の良い大倉が喜び、桜井忍も大きく頷く。

そんな盛り上がりの中、遊太郎は遠慮がちに申し出た。
「あの、もうひとつ質問、良いですか?」
「いいですよ。できる限り情報は提供しますから」
余裕を取り戻し、悠然と構える桜井忍へ、
遊太郎は、全く予想外な方向から直球を投げた。

「桜井さんが、派遣調査員になりたかった理由を教えて下さい」
「えっ?」
「侵入者をやっつけたかったからですか?」

桜井忍のポーカーフェイスが、崩れかけた。
大倉も遊太郎の質問に、何とも形容しがたい表情を向ける。

……これは、本当に質問なのか。
桜井忍は目の前にいる小柄な若い男を、
見くびっていた事を次第に後悔し始めた。
しかし彼の焦りをよそに、遊太郎はサラリと問うた。


「あなたは本当に銀河連盟調査員ですか?」


〜第236回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-01-14 22:37

第234回接近遭遇「自称宇宙人を取材せよ!」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

翌日の夜。
遊太郎は「自称宇宙人」の取材に行く大倉健人の、
助手として同行する事になっていた。

バイト学生という設定なので、
水色のパーカーにジーンズというシンプルな服装だが、
童顔、まん丸メガネという風貌に似合って、
大倉健人は思わず笑い、取材前の注意点を幾つか教えた。

「遊太郎君。もし先方が、いかにもトンデモ系だとするよね?
でも、目の前で笑ったりするのは、ご法度だから」
「はい」
「いちおう助手らしくしなきゃいけないし、
インタビューが始まったら、レコーダーのセットだけ頼めるかな?」
「わかりました」
携帯電話より小さなレコーダーを手渡される。
そして2人はビジネスホテルへと向かった。

指定された部屋へたどり着き、
大倉が軽くノックをすると、若い男の返事が聞こえ、
失礼しますと言って中へ入ると、
簡単な応接セットから1人の男が立ち上がった。

黒のセーターにズボン、同じくラフな黒のジャケットを着こなし、
色白で茶髪の優男だ。
金色のピアスをしていて、いかにも女性にモテそうな容貌で、
大倉健人は、内心少し首をひねった。
これまでの経験から、自称宇宙人は、オタク系か、
個性的な輩が多かったからだ。

まず出版社の名刺を出すと、
彼は明るい茶色の瞳で、チラッと後ろに控えている遊太郎を見た。
大倉は、さりげなく、
「彼はバイトの助手です」
と説明すると、彼はああと適当に流して、
遊太郎から視線を外すと自己紹介をした。

「僕は桜井忍。いちおう大学生です」

大学生にしては落ち着き払い、
そこはかとなく品の良さが感じられ、
どこかの御曹司だと言われても納得するだろうと、
大倉健人は思った。

桜井忍の向かいのソファには大倉健人、
隣に遊太郎が並んで座り、
さっそくレコーダーをセットした遊太郎は、
平凡なバイト助手を装いながら、
桜井忍という大学生に意識を集中した。
速やかにスキャニングされる桜井忍。

(……これは)

確かに彼が発振している周波数は、
明らかに地球人のものではなく、
だからといって、銀河連盟関係者でもない。
地球に滞在中の旅行者か?それとも……


「UFO写真、気に入っていただけましたか?」
桜井忍は、そんな風に切り出した。
大倉健人は驚いて遊太郎に目を泳がせる。
「……まさか。前に編集部に届いていた差出人不明のUFO写真は、
桜井さんが送ったものだったんですか?」
すると彼は微笑んで肯定した。
「無記名投稿で失礼しました。よく撮れていたでしょう?」
「ええ、そりゃあ、ビックリして。あんなに鮮明なのは珍しいし」
「あの宇宙船は銀河連盟のものです」
「えっ?」

大倉が、大きな声を出し、口を押さえた
遊太郎も驚くフリをしながら、
先日見た写真の記憶を頭の中で再生していた。
それは細長い葉巻型のUFO写真であり、銀河連盟が所有する機体である。
それを知っているということは、やはり彼は……

抑えきれずに大倉健人が早口で質問をする。
「桜井さんは噂に聞く、あの銀河連盟の関係者だということですか?」
その問いに桜井忍は、さも当然のように頷いた。

「僕は、銀河連盟の派遣調査員なのです」
「!」

遊太郎は嘆息した。
どういう茶番か。
桜井忍がもし調査員であるなら、
同じ仲間である遊太郎が、完璧な地球人に変身していても、
すぐに識別できて当たり前である。
ところが、彼はあっさり無視していたのだ。

「……派遣調査員って?」
面食らいながら大倉が訊く。
これがもし本当なら、凄い情報が聞き出せそうだとワクワクしている。
少し間を置いて桜井忍は、よく通る声で、
まことしやかに言った。


「僕は、地球に危害を与える悪いエイリアンを、
この手で捕まえるために、銀河連盟から派遣されたのですよ」


〜第235回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-01-10 16:14

第233回接近遭遇「草食系男子の顔」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「遊太郎。
宇宙人ネタの本の編集部なんかに、
見学に行っちゃう宇宙人なんて、ベタ過ぎて笑えないんだけど?」

文句が山のように吐き出される。
この数日間、桃子はご機嫌斜めなのだ。
遊太郎が作る夕食を待ちながら眉尻を上げて言った。
「あたしがあれほど行くなと注意したのにさ。
怪しまれなかったから良かったけど、心臓に悪いっつうの。わかる?」
「はい」
「ほんっと、あんたって、呑気すぎ」
「すみません」

謝りながら、それでも遊太郎は桃子のために暖かい味噌汁を入れ、
炊きたてのご飯をよそう。
最近、彼は和食に凝り出したようで、
テーブルの上には、ぶり大根や、豆腐の味噌汁、肉じゃがなど、
桃子の母親顔負けな、おふくろの味が並んでいる。
忙しいはずなのに、いつ覚えたのだろう。

「お口にあいませんか?」

箸を中途半端に浮かせている桃子へ、遊太郎が心配そうに訊いた。
少年のような童顔にまん丸メガネ、
レモンイエローのエプロンがやけに初々しく、
桃子は、まるで自分が年上のワガママな夫に思えて、
引きつりながら笑いを作った。

「お、美味しいわよ」
「良かった」

ホッとした彼が茶碗蒸しを彼女の前に差し出した。
ここまでされては、これ以上怒れなくなるではないか。
桃子は怒る事をあきらめて、
食器を洗ったり、作り置きを冷蔵庫に納めるエプロン姿の彼を眺め、
はあっと息を吐き出して、肩をすくめた。

こんな遊太郎からは想像が出来ないが、
彼は地球に侵入するエイリアンを取り締まるという、
まるで刑事のような裏の顔を持っている。
どちらかというと、クールな異星人としての本当の素顔だ。

しかしながら、ふだんは家事全般が得意な草食系男子であり、
少しぐらいズレた言動を見せたとしても、
宇宙人とは疑われないのかもしれない。
桃子は、ムリやりそう納得して機嫌を直した。

満腹したあと、リビングでテレビを見始めた桃子をよそに、
遊太郎は、洗濯して乾いた衣類などを一枚一枚きちんとたたんだ。
そして、家事を一通り済ませてエプロンを外し、
自分の部屋に戻って、明日の準備をしようとした時、
机の上の携帯電話が振るえた。

「はい。森田です」
「もしもし、遊太郎君?大倉です」
同じマンションに住んでいる、大倉健人からだ。

「大倉さん。先日はありがとうございました」
「いや、こっちこそ、遅くまで付き合わせちゃって。
急だけど、明日空いてる?」
「7時以降なら大丈夫です」
「じゃあ、余裕で間に合うかな。
ほら、例の取材。明日になったんだ」

遊太郎は目を少し見開いた。
先日の「自称宇宙人」の取材の件だった。
助手のフリをして、大倉健人についていく事になっていたのである。
7時過ぎに駅前で待ち合わせをする約束をし、
遊太郎は携帯電話を閉じた。


……一瞬、
まん丸メガネの奥の子犬のような目の奥に、
青灰色の光が灯る。
まもなく、月の銀河連盟ステーションの上司ロータスへ、
テレパシーによる通信が行われた。

(キャプテン・ロータス。
銀河連盟関係者だと語る人物と、明日の夜に接触します)

すると、すぐにロータスが了承の通信を送って寄越した。

(わかった。
単なる思い込みが激しいだけの地球人なら、
特に害はないのだがね。レン)

そうであればいい、と彼も思った。
しかし記者の大倉健人に不審を抱かせずに、
その人物から何かを探り出すのは難しいかもしれない。
相手の出方によっては、遊太郎の正体を、
大倉健人に疑わせてしまう危惧があるのだ。
その時は流れに任せるしかないだろう。

この事を知れば、桃子はまた怒るはずで、
遊太郎は、ふっと苦笑を浮かべた。


〜第234回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-01-06 23:29

第232回接近遭遇「怪しい自称宇宙人とは?」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

宇宙人情報誌の編集部。
遊太郎は、そこで秘蔵UF0写真や海外のビデオフィルムを見せられたあと、
編集長の熊野や大倉健人と共に、近くのドイツ料理店へ行く事になった。

「編集長。遊太郎君は、酒が飲めないんで」
最初に大倉が断ってくれたので、熊野が笑って了解してくれた。
ここで酒を勧められたら、困った事になるので遊太郎は内心ホッとする。
アルコールを一定量摂取すると、
地球人・森田遊太郎としての変装が一時的に解けて、
本来の姿に戻ってしまうからだ。

やがて運ばれて来たウインナーやポテト料理を肴に、
熊野と大倉は黒ビールを旨そうに呑んだ。
しばらく雑談したあと、熊野がヒゲ面を撫で回しながら、上機嫌で話した。

「実は、例の銀河連盟関係者だって言う自称宇宙人を、
大倉君に取材してもらうつもりなんだよ」
「あ、俺でいいんですか?」
大倉は少年のように喜んだ。
「木村や他の記者は、いまスケジュール調整が難しいからね。
で。その人物、どうも見た目は普通の男なんだが」
「自称宇宙人。最近多いですね」
「うん。ガセネタ掴まされるのも、
トンデモ系記者の仕事のうちって事で、頼むよ。大倉君」
「はい。そりゃ、わかってます。任せてください」

すると、初めて遊太郎が口を開いた。
「僕も、その宇宙人って人に会ってみたいです」
すると、熊野がああと破顔した。
「森田君、なんなら大倉君の助手で行ってみる?」
「あ、いえ。ちょっと、言ってみただけで。
素人の僕なんか、取材の足手まといになりますから」

慌てた遊太郎に、大倉が片目を瞑ってみせた。
「遊太郎君なら、バイト学生で通るって」
熊野も名案だと、ビールを一気に飲み干す。
「そうだな。森田君も昼間は仕事あるだろうし、
取材日時が決まったら知らせるよ。
都合がつけば、大倉君のバイト助手でついていけばいい」


……自称宇宙人。
引っかかるものを感じた遊太郎は、
熊野の頭の中を、さりげなくスキャニングした。
まだシルエットしか見えないその人物は、確かに普通の男のようだ。
つい最近、編集部ホームページに「自称宇宙人」がメールを送信、
怪しげな情報が集まる中、内容に興味を持った熊野が、
メールと電話でやり取りを始め、取材予定が2日後……

そこまで読み取った遊太郎は、実際会って確かめた方がいいと考えた。
本当に自称宇宙人なら、適当に取材すれば済むが、
もし相手がタチが悪い人物なら、人の良い大倉健人の身が案じられる。
出来れば遊太郎が同行して、出方を見た方が良いだろう。


夕食が終わり、熊野に礼を言って別れた遊太郎は、
大倉健人とマンションまで一緒に帰ることになった。
すっかり夜も遅くなり、ヒンヤリした空気を吸いながら、
ふっと大倉が遊太郎に訊いた。

「あの、こんなこと聞くのは、アレなんだけど。
……その、桃子ってさ」
「はい」
「一緒に暮らしてて、どうかな」
「?」
「彼氏とか、ホントにいないのかなって。
……遊太郎君、何か知ってる?」

思わず返す言葉に詰まった。
マンションへ下る坂道を、2人は何も話さず登った。
やがて、ゆっくり遊太郎が答えた。


「……わかりません」
「そうか。だよな。変な事訊いてごめん」

大倉は誤魔化すように苦笑いして、また黙りこくって歩いた。
素朴で純粋な大倉健人は、桃子の事が好きなのだ。
桃子の将来を考えれば、大倉の想いを応援すべきだろう。
しかし……
部屋の前で、大倉健人は、じゃあメールするからと手を振り、
遊太郎も丁寧に今日の礼を言い、ぺこりと頭を下げた。

その少しあと。
心の内を寂しい風が吹き抜け、
遊太郎は、その感情を振り切るように桃子が居る部屋へ帰った。


〜第233回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-01-03 13:07