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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2009年 11月 ( 9 )   > この月の画像一覧

第222回接近遭遇「空気が読めないセレブ宇宙人、再登場!」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ある夕刻。
桃子は仕事を終えて帰る所だった。
あれから遊太郎は彼女の忠告をよそに、
大倉健人と「ご近所づきあい」とやらを続けている。
例えば、遊太郎が作りすぎた料理を大倉におすそ分けしたり、
男2人でまったりと雑談をしたり、呆れて怒る気もしなくなっていた。

「そりゃあ、大倉君は良いヤツだけどさ」
ブツブツ言いながらマンションのエレベーターに乗る。
大倉健人は彼女の大学時代の友達で、人柄は悪くはない。
しかし問題は彼の職業だ。
大倉が宇宙人情報誌のライターである以上、
このままどんどん親しくなっていくと、遊太郎の正体がバレそうな気がする。


「あれ?」
エレベーターから降りて部屋に近づいた桃子は、
ドアの前に立つ若い外国人の男を見て、思わず柳眉を上げた。
彼は赤い薔薇の花束を手に、自信たっぷりに微笑んだ。
やけに輝く金髪、明るいグリーンの瞳は、
彼女の記憶に新しい。

「やあ、桃子サン。久しぶりだね。ボクのレンは元気かな?」
「なっ……!」

サーフィス・ロード。
遊太郎が、まだ母星にいた頃の友人である。
数カ月前このサーフィスに、遊太郎がひどい目に遭わされる事件があった。
それを思い出した桃子は、一気に怒りを再燃させて、
ファイティングポーズに構え、拳を高く振り上げた。

「何しに来たの?疫病神」
この剣幕にサーフィスはビックリして、
花束を目の前にかざしながら弁解した。
「待って、桃子サン。女性が暴力を振るうのは美しくない。
今日は久しぶりに、レンの顔を見に来ただけなんだ」
「残念でした。遊太郎ならまだ仕事よ。
全く、あんたが来ると、ロクな事がないんだから。
遊太郎が許しても、あたしはあんたのやらかした事は忘れてないんだからね。
さっさと消えなさいよっ!」

言い放ったあと桃子はギョッとした。
ちょうどその時、大倉健人が通りかかったのだ。
彼女は慌てて拳を下ろし、苦笑いを作った。
「お、大倉君、いま帰り?」
すると大倉は怪訝な顔でサーフィスと、表情が不自然な桃子を見比べた。

「桃子。誰、コイツ?」
派手な外人男に押しかけられていると思ったらしい。
桃子はぎこちなく口を動かした。
「ちょっとした、知り合いよ」
「知り合い?本当か」
「う、うん。久しぶりに日本に来たらしくて」
するとサーフィスは、調子を取り戻してサラッと自己紹介をした。

「ボクは、このお嬢さんと一緒に住んでいるレン、
……失礼。森田遊太郎クンの大親友、サーフィス・ロードです。
以後、お見知りおきを」

バカっ!
なに勝手に名乗ってんのよ!
桃子はサーフィスを恐ろしい目で睨みつけた。
一見、派手な外国人に見えるが、サーフィスは異星人で、
しかも厄介なことに空気が読めないセレブ野郎である。
これ以上、ここに居ると絶対ボロが出てしまう。

「遊太郎君の親友?」
大倉健人は疑うようにサーフィスを見た。
彼が知っている地味な遊太郎と、
目の前のド派手な美男子が親友だと言われても、
にわかには信じられないのだろう。
桃子は急いでサーフィスの腕をつかんだ。

「そ、そうなの。ちょっとウチで会う約束してたみたい。
じゃあまた、大倉君」
「あ、ああ」
まだ妙な顔の大倉にバイバイと手を振り、
桃子はサーフィスをムリやり部屋の中に押し込むと、
すぐに内側からドアをロックをした。


……ヤバい。
大倉健人は絶対怪しんでいるはずだ。
玄関に張り付いて息を弾ませている桃子へ、
大量の薔薇の花束がぬっと迫って来た。
「さっきの地味な地球人。キミの新しい恋人かい?」
「はあ?」
「あんな冴えない男に乗り換えたのなら、
ボクに大事なレンを返してもらいたいな」

激しいカン違いをされてしまった。


〜第223回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-11-29 14:07

第221回接近遭遇「錯綜する想い」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

夕飯をふるまった事がキッカケとなり、
遊太郎はライターの大倉健人と、
マンション近くで時々顔を合わせては、
親しく会話を交わすようになっていた。

「散らかってるけど、入って。遊太郎君」

ある日の夕刻、遊太郎は彼の部屋へ案内された。
お邪魔しますと入って、まずびっくりする。
壁という壁に映画のポスターや風景写真が貼られ、
本棚に収まり切れない雑誌や切り抜きが、
部屋全体を占拠していたからだ。
机らしき家具の上には、パソコンが2台と数種類のカメラ、
書き散らしたメモ類と無数のフィルムが雑然と置かれていた。
小さな冷蔵庫からペットボトルの茶を出してきた大倉に、
礼を言った遊太郎は、足元のスクラップの中に見覚えのある記事を見つけた。

「ああ、それ。この間のファミレス強盗事件」
喋りながら、大倉が座る場所を作って座布団を敷いてくれた。
「ここからちょっと離れた場所だけど、
最近、正体不明の大男が暴れたみたいでさ。
不思議なことに、警察が駆けつけた時には消えてたらしい。
報道は小さなもんだったけど、一応ピックアップしといたんだ」
「気になったからですか?」
「う〜ん。なんかね。宇宙人が絡んでると思った」

遊太郎は、そうなんですかと、のんびりした調子で相槌を打った。
そのファミレスを襲った大男なら知っている。
遊太郎が偶然居合わせ、確保した肉食系エイリアンで、
今頃は銀河連盟ステーションで取り調べの真っ最中のはずだ。
もちろんそんな事実など知らずに大倉は続ける。

「その事件だけじゃなくてさ。
去年から、近所で謎だらけな事件が頻発してるだろ?
黒人じみた集団が街を暴れたあと、忽然と消えたり。
ウチの編集部じゃ、絶対、銀河連盟が事件を消したってにらんでる」
「……」

なかなか鋭い指摘だ。
宇宙人情報誌の編集部の人間たちは、
何をどこまで掴んでいるのだろうか。
遊太郎はニッコリして訊いた。

「僕、大倉さんの出版社に行ってみたいです」
「いいよ」
無邪気に大倉が喜んだ。
「宇宙人の分野に関心を持ってくれることは嬉しいし。
今度連れて行ってやるよ。秘蔵UFO写真をいっぱい見せてやる」
「ありがとうございます」

桃子が聞いたら激怒するかもしれないが、
これも遊太郎の任務のうちである。
正体を隠してはいるが、
遊太郎こそ、大倉健人たちが追いかけている地球人に紛れた異星人だからだ。


「最初、焦ったんだよね」

しばらく雑談したあと、茶を飲み干した大倉がポロッとこぼした。
「桃子と一緒に住んでるイトコが女の子じゃなかったから」
「え?」
「ホントは同棲とかなんじゃないかって。
でも、君と桃子はさ、マジ姉弟みたいな感じで正直ホッとしたんだ」
ボサボサの頭をかく。
「俺みたいなヤツでも、チャンスあるかなあって。
変だろ?桃子には男として見られてないのになあ」

遊太郎には何も言えなかった。
やはり、大倉健人は桃子に関心を持っているようだ。
すると、彼は慌てて遊太郎に囁いた。
「あ、遊太郎君。これは桃子には言わないでくれ。
絶対、玉砕するからさ」
「玉砕?」
「フラれるって意味」

情けなさそうに笑う。
純朴を絵に描いたような男で、人柄の良さがにじみ出る。
もし、と遊太郎は思った。
自分がこの惑星へ来て桃子と出逢わなければ、
彼女の人生はもっと違っていたはずだ。
ひょっとしたら、以前会った、桃子の元恋人である一の宮貴志が、
彼女と再び付き合って結婚をしていたかもしれず、
新たに現れた、この大倉健人が桃子のパートナーとして、
彼女のそばにいたのかもしれない。

……運命を狂わせているのは、自分なのだ。

大倉の部屋を出た遊太郎は、
やるせない想いに身を委ねながら、
透明な宵の空にかかる、上弦の月を見上げた。


〜第222回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-11-25 22:52

第220回接近遭遇「宇宙人情報誌ライター・大倉健人」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「もしかしたら、君ら、付き合ってる?」

大倉健人がポロッと訊いた。
とっさに桃子は答えに詰まったが、彼は人懐っこい笑みを向けた。
「さっきから見てて、仲良いなって思ったからさ」
すると桃子がぶんぶんと手を振る。
「大倉君。あたしたち、イトコだよ?」
「イトコでも関係ないじゃんか、ねえ?」
遊太郎の方をくいっと向く。
ちょうど新しいお茶を淹れかえていた遊太郎は、
大倉の視線を受けて、ニッコリと答えた。

「姉のような桃子さんには、僕はいつもお世話になってるんです」
「そ、そうなのよ」
桃子がたたみかけるように合わせた。
「遊太郎って、大学までカナダにいたから、
日本にも慣れてないし、社会人1年だし、
親の命令で面倒見てやってるのよね」

すると大倉は素直に納得した。
「なんだ、そうか。言われてみたら、桃子と遊太郎君って、
姉弟って言った方がしっくりくるもんな」
そして嬉しそうに頷き、小さく「じゃ、フリーなんだ」とつぶやくのを、
遊太郎だけが聞いていた。

「あ、忘れてた」
大倉は鞄からクシャクシャの紙包みを取り出した。
「桃子はこういうのは興味ないだろうし、
遊太郎君。良かったら読んでみて。
こないだ創刊したウチの宇宙人情報誌」
現実に引き戻されたように、桃子はギョッとなった。
異様に目が大きな宇宙人が描かれた表紙が、
視界に飛び込んで来たからだ。
左上には鮮烈的な見出しが踊っている。


『あなたのとなりに宇宙人は住んでいる!』

心臓が跳ね上がった。
そんな彼女とは対照的に、遊太郎は無邪気にそれを手に取って眺めた。
「面白そうですね。ありがとうございます」

全然面白くないじゃん!バカ。
焦る桃子に遊太郎は気づかず、大倉の話に耳を傾けている。
「遊太郎君、宇宙人は銀河連盟という巨大機関に所属してるらしいよ」
「銀河連盟?」
「地球以外の惑星が加入しているんだよ。
もし遊太郎君のすぐ近くに、
銀河連盟から来た、地球人そっくりに化けた宇宙人がいるとしたら、どう思う?」
「それは、会ってみたいです」

……ああ。なんて心臓に悪い光景なんだろう。
桃子はリビングから、そろそろと離れた。
銀河連盟などというリアル過ぎる単語が出てくるとは、
大倉健人の雑誌は予想外に本格的なものらしい。
それなのに当の遊太郎は、全く無頓着だ。
もう知らない。勝手にすればいいんだ。
色々心配して損した。

ひとしきり盛り上がったあと、
大倉はじゃあご馳走さまと礼を言い、引き上げた。
玄関まで送る遊太郎に、コソコソと何やら楽しげに会話を交わし、
おやすみと出て行った。

「ちょっと遊太郎。2人でなに話してたの?気持ち悪い」
リビングで仁王立ちした桃子が詰問すると、
遊太郎は戸惑いながら答えた。
「また遊びに来るとおっしゃってました。
……あの、さっきから、どうしてそんなに怒ってるんですか?」
のん気な質問に桃子はキレて一気にまくし立てる。
「はあ?あんたには危機感ってもんがないわけ?
大倉君は、確かにあたしの友達だけど、宇宙人情報誌のライターで、
しかも、おんなじマンションに住んでるのよ。
これ以上親しくなって、あんたの正体バレたらどうするつもり?」

遊太郎は、ああ、とのんびりと言った。
「バレませんよ」
「バレません?そんなに楽観視していいわけ?」

すると彼は逆らわない方がいいと思ったのか、小さく謝った。
「すみません」
とにかく、と桃子が高飛車に命令した。
「あたしがいない時に、大倉君を部屋に入れないこと。
不用意な言動は慎むこと。
マンション付近でパッと消えたりしないでよ」
「わかりました」

しかし遊太郎は、別の事を考えていた。
大倉健人は桃子に好意を持っているらしい。
それは、宇宙人情報誌のライターである以上に、
遊太郎の心を揺らせていた。


〜第221回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-11-22 14:01

第219回接近遭遇「珍客」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

(全く何やってんのよ。月なんかに主張してる場合じゃないでしょ?
んっとに遊太郎の仕事バカ!)

桃子は会社で、昨夜帰って来なかった遊太郎にイライラしていた。
あたしたちのマンションに、
宇宙人の記事を書くライターが引越して来たんだから。
しかも、そいつはあたしの大学時代のゼミ仲間。
もしひょんなことで、遊太郎の正体にカンづかれでもしたら、どうする気?

「やっぱ、全然メール見てないんだ。遊太郎のアホ」
携帯電話の送信ボックスに向かって毒づいていると、
同僚の清美が訊いた。
「なになに?森田クン、返信して来ないの」
「あ、うん。ちょっと至急の用事あって」
さりげなく誤魔化すと、清美が調子に乗ってからかう。
「森田クンってさぁ、一年中ぽややんとして超鈍感だもんねえ。
方向オンチなヒヨコっぽいし」
「ヒヨコ?」
「だからぁ、仕事でもないメールなんか、
一生気づかないって。あ、ゴメンね。桃子のイトコなのに」
言いたい放題の上にケラケラ笑われたが、
清美の言う通りだから怒る事も出来ない。

森田遊太郎の姿をしている間、彼は日常的に動作がのんびりしている。
よくわからないが、他人のDNAをコピーすると、
人格やクセもコピーされて、ああなってしまうのだろうか。
とにかくメールなどに頼らないで、やっぱり直接話そう。
そう思った桃子は、携帯電話を閉じた。


その日の夜。
マンションに帰り着くと、キッチンから良い香りがした。
取引先から直帰したらしい遊太郎が、夕飯を作っていた。

「お帰りなさい。桃子さん」
玄関まで迎えに来た、レモンイエローのエプロン姿の遊太郎を見て、
本当にヒヨコみたいだと呆れながら訊いた。

「あんたさぁ。あたしのメール読んでないでしょ?」
「メール?」
「昨日は帰って来なかったし、大事な話があったんだけど?」

すると遊太郎は、わずかに戸惑ったような顔をした。
しかし、すぐ素直に謝った。
「……すみません。気づかなくて」
「ふうん。仕事熱心だよね」
イヤミを言うが、遊太郎はすみませんと言うばかりだ。
「……あの。実はいま、お客様が来られてて」
「お客?」
ご機嫌斜めに桃子がリビングへ歩いて行くと、
美味しそうに夕飯を食べている男が居た。

「や、桃子。お帰り。
引越の挨拶に来たら、イトコくんがいてさ」
「お、……大倉君?」
「ちょうど、なんも食べてなくて腹ペコだったし。
桃子を待ちきれなくて、勝手にメシを食わせてもらってる。
めちゃくちゃ美味いよ。イトコくんの手料理」
「……」

あまりの事に一気に腰が砕けそうになった。
桃子は遊太郎に小声でなじった。
「バカ!初対面のヤツを部屋に入れて、ご馳走までしてどうするのよ?」
「ごめんなさい。でも、桃子さんの大学時代の友達だと聞いて。
それに、とても良い人みたいですから」
人の良さに呆れかえって言葉も出なかった。
これじゃ、何のために警戒していたかわからない。

桃子の思惑をよそに、
素朴な大倉と、おっとりした遊太郎は馬が合うようだった。
まったりと茶呑み友達のように和んでいる。
「遊太郎君は営業マンか。大変だろ?
俺もサラリーマンだったけど、向いてないから辞めた。
で、いまはライターさ」
「ライターのお仕事も大変そうですね」
「いんや。日本中飛び回れて、ご当地のうまいもんも食えるしな」

おかわり、と大倉が茶碗を遊太郎に差し出し、
遊太郎もごく自然に、炊き立てご飯をよそっているので、
桃子はバカバカしくなって来た。
もう、知らないからね。
すると、遊太郎が冷えたビールを持って来て、
げんなりした彼女へハイと渡した。
その様子を何気なく見ていた大倉はポロッと訊いた。

「もしかしたら、君ら、付き合ってる?」


〜第220回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-11-18 22:49

第218回接近遭遇「非難の声を受けながら」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

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「彼女を幸せに出来るのは、普通の男だ。
……僕じゃない」

レンは抑えた声音でそう答えた。
まるで自分に言い聞かせているようにも聞こえ、
上司のロータスは一瞬だけ眉根を寄せたが、
すぐに温厚な表情で受け止めた。

「君は桃子君の事を愛して、大切に思っている。
もちろん彼女もだ。
だが君は、感情をせき止めているようにも見える。
それは、君自身の生い立ちがそうさせているのかね?」
「……」

その質問に答えず、レンは失礼しますと低く言って、
コントロールセンターから立ち去った。
デスクでロータスは首を振り、
「やれやれ。時間がかかりそうだな」
と、溜めていた息を吐き出した。


コントロールセンターを出たレンは、
サイキックジムへ直行し、長時間の射撃訓練に身を投じた。
肉体を酷使することで、全てを忘れられるとは思わなかったが、
精神的な冷静さを取り戻すには役に立つ。
サイキックガンで仮想敵をオールクリアしたあと、
スコアを確認するため、セピア色のアイガードを外し、
ジム共有のフロアに戻った。
そこへ、同じ調査員らしい1人の男が近づいて来た。

「やあ。君がレン・ソリュート君?
近くで見ると、噂以上のクールビューティーだね」

知らない顔だった。
乱れた前髪を長い指で払いながら、レンは目礼をした。
無愛想な彼に、話しかけた男は少しムッとしながらも喋り出す。

「レン・ソリュート君。
僕が担当エリアを留守にしている時に、
侵入エイリアンを確保してくれたんだってね。
連続傷害事件の犯人2人組どころか、
肉食系エイリアンも捕まえるなんて、
しかも担当エリアを超えて、凄い腕前だけど」
言葉の端々に、ねっとりした嫌味が含まれていた。
どうやら、先日の肉食系エイリアンが出現した地域を担当しているらしい。

「君さ、新人でも規則ぐらいは知ってるよね?
普通は他人のテリトリーを踏み荒らしてはいけないんだよ。
担当外で事件が発生した場合、
銀河連盟パトロールに任せていればいいんだ。
それを勝手に独断で捕まえ、被害者も出してる。
これじゃ、僕の立場がないんだけどね?」

その時、便乗して囁き始める集団がいた。
いずれもレンとは異なる所属の派遣調査員たちだ。
聞こえるのを承知で非難する。

「あの男だろ?特殊能力の持ち主だから検挙率が高い新人」
「調査員というより、獲物を仕留めるハンターだな」
「どこの出身?」
「ソリュート星団の第一王子らしい」
「そんな大帝国の王子様が、何でまた辺境惑星の調査員に?」
「あんな美しい顔をしているが、実は黒王子。
何かやらかして追放されたんじゃないか?」


(危険な男)
(隠された謎の経歴)
(迷惑)
(化け物じみた特殊能力者)

……耳障りな波動がフロア全体に渦巻いた。
集団になると、ネガティブな想念の塊を制御するのは難しい。
レンは共有フロアから離れる事にした。
黙って去ろうとする彼の背に、
先ほどの調査員が追い討ちをかける。
「礼儀知らずな新人だな」


誰も使っていないシャワールームへ入り、
服を脱ごうとしたレンは目眩を感じて、
こめかみを押さえ、壁に寄りかかった。
「……」
久しぶりに頭痛がする。
並外れて優れた特殊能力者であるが故に、
普通人には感じ取れない想念を受け止め過ぎると、
決まってこうなる。
前に被ったマイナス波動の後遺症も消えてはおらず、
こればかりは薬を飲んでも効かない痛みだった。

ふと、桃子の屈託ない笑顔が脳裏に浮かんだ。
彼女の生涯の相手は、やはり自分ではありえない。
あまりにも背負う業というべきものが多過ぎるからだ。
しかし、いまは離れたくはない。
そばにいて見守りたい。
桃子を真に幸せに出来る地球人が現れるまで……


壁際にもたれたレンは、全てをあきらめたように目を閉じた。


〜第219回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-11-15 13:30

第217回接近遭遇「さりげない危険因子」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「え?大倉君、ここに住んでるの?」

桃子は驚いて妙に高い声になった。
先刻再会したばかりの大学時代の友人、大倉健人が、
桃子と同じマンションの方角へ歩いて行くからだ。
彼は人懐っこく笑い、頷いた。

「職業柄、住む場所は転々としてるんだけど、
こないだ引っ越して来たばっかでさ」
答えながら、桃子の驚いた顔を見て、まさかという風に目を見開いた。
「ひょっとして、桃子の住んでるマンションってここ?
すっげえ偶然。もしかして運命ってやつ?」
冗談を言いながら、エレベーターに乗り込んだ大倉が押したボタンを見て、
さらに桃子はギョッとなる。

(お、同じ階?)

彼の部屋は角部屋の桃子から、わずかふた部屋離れているだけだ。
キーを指でジャラジャラと回しながら、彼は悪戯っぽくニヤリとした。
「まだ散らかってるけど、入る?」
「い、いいよ」
「だよなあ。いちおう男の部屋だし。
で?桃子も1人で住んでんのか」
「あたしはイトコといっしょ」
「女の子2人かあ。それって不用心じゃない?」

イトコは男だから、とは言えずに、桃子は作り笑いをして、
じゃあと自分の部屋の中へ逃げるように滑り込んだ。
全く冗談ではない。
大倉健人の人柄は素朴で親しみやすいし、
特に危険人物ではないが、最大の問題は彼の職業だ。
まさか宇宙人情報を記事にするという雑誌の取材記者になっていたとは……

「ちょっと、ヤバイかも……」
思わずリビングのソファーにへたり込んでしまった。
同居している遊太郎は、表向きは確かにイトコだ。
カナダの山奥で遭難した、本物の森田遊太郎のDNAをコピーしているので、
戸籍もちゃんとある。
それに普段は、本当に地味な新米サラリーマンだし、
普通に接していれば、遊太郎の正体がバレることは絶対ないはずなのだ。
だけど……

桃子はイライラしながら携帯電話を取り出した。
あいにく遊太郎は、電波が届かない場所に居るようだ。
まだ月の基地に跳んだままなのだろう。
「早く帰って来なさいよ。遊太郎。
隣にマスコミ関係者が住んでたんだから。
あたしたちの一大事なんだよ」
だんだん腹が立って来た。
月なんかに行ってる場合じゃないでしょ?バカ!と怒鳴りそうになる。



その遊太郎は、
元のレンの姿に戻って、
月の裏側に浮遊する銀河連盟ステーションに居た。
もちろん上司ロータスへ定期的な調査報告をする為だ。
打合せのあと、去りかけた長身の部下へ、
ロータスが呼び止めた。

「ところで、桃子君とは順調なのかね?レン」
「順調?」
問い返す彼に上司は思わず苦笑いした。
「いや、私の質問が悪かった。
君と桃子君の仲が、うまくいっているのかと聞きたかったのだ。
この間、桃子君に距離を置かれたと、言っていただろう?」

それを聞いてレンは、先週の一件を思い出した。
笹川夏希の出現がきっかけで、
桃子が実家に帰ってしまう出来事があった。
いまは彼女は戻って来て、問題は解決したかに見えたが。
「別に、変わりはありません」
レンは素っ気ない回答をした。
あまり触れて欲しくなかった。
しかしロータスは止める気はないらしい。

「君は桃子君と深く関わるのを避けているようだが」
「……」
「そんな調子では、そのうち桃子君を、他の男に取られてしまうかもしれない。
それでもかまわないのかね。レン?」
「他の男」
「そう。普通の地球人の男にだ」

沈黙が流れた。
レンは黙って虚空を見つめている。
おや、怒ったのかね、とロータスが冗談めいて訊くと、
やがて抑揚のない声で彼は答えた。


「それならそれで構わない。
彼女を幸せに出来るのは、普通の男だ。
……僕じゃない」



〜第218回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-11-12 22:38

第216回接近遭遇「新たな隣人は、超常現象取材記者!」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

桃子がレンタルビデオショップで再会した男の名は、大倉健人。
大学時代のゼミ仲間で、人懐っこい好青年であり、
まだ時間があるからと、近くのセルフコーヒー店で話す事になった。

「へえ、じゃあ、桃子は普通にOLやってんだ」
カフェで大倉健人が感心したように言い、桃子は軽く睨んで見せた。
「それ、どういう意味?」
「や。イメージ出来ないだけだよ」
「そう?案外、保険会社の事務ってハードなんだけど。
大倉君こそ、雑誌の取材記者してたなんて予想外だよ」
「ああ。さっき転勤っていうのはウソで、実は会社やめて転職したんだ」
だから引っ越して来たのだと闊達に笑う。
素朴でイヤミがなく、人の心をつかむのがうまいのは変わっていない。

「どんな記事書いてるの。もしかしてゴシップとか?」
「違う違う。超科学とか、量子力学の月刊誌」
「なにそれ」
「おっ?あんまり関心のないジャンルだと思って、
いま、スルーしかけただろ?」
「だって、科学とか物理って苦手だし。
ファッションとかグルメ情報誌だったら良かったのに」

すると大倉がサラッと口にした。
「今年からに新しい雑誌も創刊されてさ。
いま、宇宙人情報を追っかけてるんだ」
「えっ?」

一瞬、桃子はギクリとした。
宇宙人情報。
軽く聞き流すには、あまりにも重要過ぎるキーワードだ。
彼は戸惑う桃子に気づかず、マイペースに説明する。

「桃子は昔っからリアリティストだし、信じないだろうけど。
異星人ってのはホントにいるらしいんだ。
俺たちと変わらない姿で、
正体を隠して生活してる宇宙人もいるって」
「正体を隠して?」
「ほら、やっぱ、胡散臭いって顔した」

大倉健人に指摘された桃子は、ゴメンねと苦笑いしながら、
内心では動揺していた。
日頃はすっかり忘れているが、
桃子がルームシェアをしている遊太郎は、紛れもなく異星人である。
しかも今まで、エイリアン絡みの事件に、桃子も巻き込れたことさえあるのだ。
そんな事実が大倉健人に知られたらと、一瞬だけ不安が駆け巡った。


「大倉君。それよりさ、まだ結婚とかしてないんだっけ?」
話題をムリやりそらせると、彼は眉を釣り上げた。
「大きなお世話。
桃子も、日曜にレンタルビデオを漁ってたってことは、
彼氏もいなくてヒマしてたんだろ」
「悪かったね」

彼氏はいる。
さっき仕事の為に、銀河連盟の基地へ跳びました。
……とは、口が裂けても言えない。
すると今度は、大倉がボソッともらした。

「俺、桃子がまだ一の宮先輩と付き合ってるのかと思ってた」
「へっ?」

ここで、一の宮貴志の名前が出て来るとは思わなかったので、
コーヒーを飲みそこねてむせてしまった。
「あ。地雷踏んだ?俺」
「う、ううん。よく覚えてたね」
「そりゃあね。一の宮先輩と仲が良かったから、とっく結婚したかと思ってた」
「残念でした。お互い働き出して自然消滅だよ」

正しくは、去年再会して復活しそうになったのだ。
でも、もうその頃は遊太郎の存在が大きくなっていた。
大倉は、そうかと意味ありげに虚空を仰ぎ、
冗談めいたセリフをつぶやいた。

「じゃあ、もしもこの先、嫁ぎ先がなくて困ったら、
俺が仕方なく貰ってやるから安心しろよ」

それを聞いた桃子は、弾けるように笑い出した。
「またまたぁ。相変わらずスベること平気で言うんだから」
「狙ったわけじゃないけどね。
オトコいなきゃ、すぐ歳くうぞって話」
「それこそ、余計なお世話だっつうの」

時計を見た桃子につられ、大倉もそろそろ出るかと腰を上げた。
すっかり日が暮れ落ちている。
「またメールするよ」
「うん」
そう別れ際に交わしたあと、同じ方向に歩き出した大倉健人に、
桃子はギョッとした。
彼が引っ越して来たのは、なんと桃子と同じマンションだったのだ。

( ど、どうしよう。遊太郎……っ! )


〜第217回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-11-08 14:13

第215回接近遭遇「近くて遠い恋人」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

テーブルの上を片付けようとして、2人の指先だけが触れた。

「ご、ごめん」
桃子はぎこちなく謝り、いいえと控え目に答えた遊太郎は、
ティーカップをキッチンへ運んだ。
その後ろ姿をチラッと見て、彼女はわずかにホッとする。

……全く、変に意識しちゃうじゃん。
さっき、お母さんが遊太郎に向かって、
どこまでいってるの、なんてストレートに訊いたりするから……
そんなことを考えていると、

「リンゴ」
と、キッチンから遊太郎に声をかけられたので飛び上がった。
「へっ?」
「リンゴ、むきましたから食べませんか。桃子さん」
いつの間にか、遊太郎が皿に並べていたのは、
可愛らしいウサギの形をしたリンゴだった。
器用というのか、一体どこで覚えて来るのだろう。

「あ、ありがと」
焦った事を誤魔化してソファに腰かけた。
涼しげな音をたてながらリンゴを食べていると、
意外に美味しくて、癒やされ始める。

「叔母さんは、桃子さんが心配なんですよ」
遊太郎が食器を洗いながら彼女に言った。
「だから、色々気になってるんだと思います。
……親って、いいものですね」

え?そう来るのか?と桃子は少しガクッとなった。
色っぽい方向に話が展開するのかと思ったが、
アテが外れて妙な気分だ。
しかし遊太郎はいたって真面目に続ける。
「あまり叔母さんたちには、心配をかけてはいけない。
僕はそう思います」
「え。ああ。……そ、そうだね」

桃子も彼に合わせて頷いた。
心配をかけてはいけないから、
深い付き合いはしないでおこうという意味なのか。

「ね、ねえ、遊太郎。邪魔が入ったけどさ。
これから2人でどこか行かない?」
母親も撃退した事だし、貴重な休日の残りを楽しみたかった。
すると、遊太郎がすまなそうに謝る。

「すみません。僕、これから仕事で」
「仕事って、日曜だよ?」
「色々、報告書がたまっていて」
「ふうん。あっちの仕事なんだ」
桃子が納得すると、エプロンを外しながら、遊太郎がはい、と答えた。
「本当にすみません。でも、夕飯は作り置きしてありますから、
温めて食べてくださいね」
じゃあ、と遠慮がちに笑って、遊太郎は部屋の中に入ってしまった。
おそらく瞬間移動してステーションへ跳んでしまうのだろう。

桃子は溜め息をついた。
決して甘い生活を夢見ているわけではない。
でも、恋人と呼ぶには、やっぱり彼はまだよそよそしいのだ。
キスも、優しく抱き締められたこともあるのに、
それ以上はボーダーラインを敷かれている気がして、
近いのに、ひどく遠く感じられることがある。
その理由は、遊太郎が地球人ではなく、
桃子と同居しているだけの、派遣調査員だからなのか。

ぐるぐる考えても仕方がない。
映画のDVDでも借りて見よう思い立ち、軽く髪を整えてパーカーを着た。


夕暮れの商店街をぶらぶら歩いていると、気持ちも落ち着いて来た。
レンタルビデオショップで、見たかった洋画を幾つか物色し、
身体の向きを変えた時、
誰かがぶつかって、手にしたDVDがバラバラと床に落ちた。
「すみません!」
必死に謝って来た相手は男性だった。
落としたDVDを拾い上げ、桃子に渡しながら、
その男は、あれ?という風に声を高くあげた。

「桃子?」
「え?」
「やっぱり、桃子だ。
ほら、俺。大学で同じゼミだった大倉」
「お、大倉君?」

桃子は目を大きく見開いた。
大倉と名乗った男は、人懐っこい笑顔が印象的な好青年だった。
「こんなところで桃子と会うなんて、何年ぶりかなあ?
この辺に住んでたんだ」
「うん。大倉君も?」
「転勤で引っ越して来たんだよ」

大倉は、桃子を懐かしそうに見つめ、
早速メアドを交換しようと言い出した。
桃子は苦笑しながらも、気持ち良く携帯電話を取り出した。


〜第216回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-11-04 22:28

第214回接近遭遇「ホントは友達以上、恋人未満?」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「遊太郎ちゃんと仲直りして良かったわね。桃子」

母親の博子がマンションに上がり込んで来たのは、
日曜日の昼下がりだった。
近くまで来たと口実をつけ、
桃子と遊太郎を偵察にやって来たから始末が悪い。

「叔母さん、いらっしゃい」
遊太郎は素直に笑顔で迎え、香り高い紅茶を淹れた。
クッキーを添えると博子が泣かんばかりに喜ぶ。
「遊太郎ちゃんは良い子ねえ。
なんて美味しいクッキー。もしかして遊太郎ちゃんの手作り?」
「はい。新作の豆腐クッキーです」
「ヘルシーだわぁ。ほんっと、いつでも、お嫁さんに行けるわよ。
桃子と大違い」

面白くないのは、桃子であり、
そっぽを向いてリビングの隅っこに座り込んでいる。
毎度のことだが、母親が断りもなく遊びに来て、
お気に入りの遊太郎を独占してしまうのだ。
せっかくの貴重な休日が台無しだとふてくされる。

「桃子ったら、なにスネてるの。あんたもこっちに来たら?」
博子がニヤニヤしてイヤミを言い、
遊太郎は、無邪気に声をかけた。
「桃子さんもクッキーをどうぞ」

「あたし、クッキー嫌いだし」
ぶっきらぼうに言うと、桃子は自分の部屋に入ってしまった。
機嫌がすこぶる悪いようだ。
鈍感な遊太郎が首をひねっていると、
博子が好奇心いっぱいにささやいた。

「で?遊太郎ちゃん。あんたたち、どこまでいってんの?」
あからさまな質問を浴びせる。
咄嗟に、言葉のニュアンスがわからない遊太郎は、
キョトンとした顔をした。

「どこまで?」
「だからぁ」
博子がトボケちゃってえと、肘でつつく。
「いいのよ、遊太郎ちゃんなら。
キスぐらいは当たり前。そ、の、あ、と、よっ♪」
「え」

これには遊太郎も固まってしまった。
ようやく日本語の意味が通じたらしい。
戸惑う彼に博子が面白そうにひやかし始めた。

「今どきピュアねえ。可愛いわぁ。
そりゃイトコ同士だし、遊太郎ちゃんはまだ社会人一年生。
あたしの妹の大事な1人息子を預かってる手前もあるしで、
最初は、あんたたちが付き合うの、どうかと思ったわよ。
でもねえ、桃子が本気みたいだもの。
まあ、あんな女らしくない娘で良かったら遠慮なく……」

その時だった。
部屋に引きこもったはずの桃子が、
凄まじい音を立ててドアを開け、
鬼のような顔で仁王立ちになった。

「お母さんっ!なんてこと遊太郎に訊くのよっ。
もうっ、信じられない」
「なあに怒ってんの?2人とも子供じゃあるまいし、
まさか、1年も同じ屋根の下に住んで、
何にも進んでないっていうんじゃないわよねえ?」
博子のツッコミに桃子はさらに真っ赤になり、
ずんずん近づいて、玄関の方へ人差し指を向けた。

「お帰りは、あちら!」
その怒りように、博子が驚いて遊太郎を見るが、
彼も俯いているので、素っ頓狂な声を上げる。

「はあ?中学生でも、最近じゃ……」
「うるさいっ!こっちには事情があるのよ」
「事情って、なに?」
「と、とにかく帰ってってばっ!」

娘の恐ろしい剣幕に、しぶしぶ腰を上げた博子は、
遊太郎には愛想笑いで手を振り、未練がましくクッキーをつまみ、
バタバタと出て行く羽目になった。
母親を玄関の外まで追い出した桃子は、
リビングに戻って、ふうっと大きく溜め息を吐き出し、
そこに居た遊太郎とつい目が合ってしまった。
さっと顔がピンク色に染まり、慌てて大笑いをする。

「あ、あはは。ごめんね。お母さんたら、節操ないっていうか。
あのひと、ヒマしてるから、妄想だけは逞しくてさ。
遊太郎は、ぜんっぜん気にしなくていいから」

早口でまくし立て、誤魔化すようにテーブルの上を片付けようと手を伸ばす。
その時、同じようにティーカップを持とうとした遊太郎の指と触れ合った。

「あ……」

触れ合ったとたん、電気を帯びたようになり、
2人の視線が、空中で微妙に絡まった。


〜第215回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-11-01 12:43