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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2009年 10月 ( 8 )   > この月の画像一覧

第213回接近遭遇「仲直りのモーニング♪」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

遊太郎が事件の後処理を終えてから、
マンションに戻ったのは明け方近くだった。
少しひんやりした空気を全身に受けて部屋に近づくと、
よく知っている、ほの甘い波動を感じた。

「桃子さん……?」

遊太郎は急いでカギを開けた。
靴を脱ぐのももどかしくリビングに走ると、
桃子はオレンジ色のソファーで猫のように丸くなって眠っていた。
帰って来てくれたのだ。
しばらくは実家に居座るのかもしれないと覚悟していたのに。

薄いブランケットをかけただけで風邪を引くといけないと思い、
彼女の丸まった背中に手をかざした。
暖かなエネルギーが放射されると、気持ち良くなったのか、
彼女は寝返りを打った。
その際、腕を伸ばして遊太郎の頬に当たってしまう。

「?」

寝ぼけ眼の桃子が、ぼんやりと目の前の遊太郎を見た。
どうやら起こしてしまったらしい。
彼は、はにかんだように微笑んだ。

「おはようございます。桃子さん」

その声に、桃子は今度は目を大きく見開いて、
いきなり謝った。
「ご、ごめんっ!ごめんね。遊太郎。あたし……」
「どうして謝るんですか?」
不思議そうに訊くと、桃子は鼻白んで見せた。
「どうしてって……、あたしが勝手に飛び出したからに決まってんじゃん」
「桃子さんは実家に帰っていただけじゃないですか」
「だから、それは……」

その時、タイミングを図ったように桃子のお腹が鳴った。
昨夜は急いで戻ったために、夕食抜きで寝てしまったようだ。
恥ずかしそうに顔を真っ赤に染める彼女へ、
遊太郎は、にっこりして立ち上がった。
すぐに上着を脱いでレモンイエローのエプロンを身につける。

「少し待っててください。朝食、作りますから」

まず温かいミルクをテーブルに置き、
手慣れた動作でキッチンに立つ彼を、桃子はぼんやりと見つめていた。
「朝帰りってことは、あっちの仕事だったんだ?」
「そうです」
手を動かしながら答える。
「でも、そう大した事ではないので」
まさか連続傷害事件の犯人を捕まえるために、
誘拐されたと見せかけて確保しました、とは言えない。

「遊太郎」
「はい」
「あんまりムリしないで」
「え?」

朝の定番のオレンジジュースと、
湯気の立つオムレツを乗せたトレーを運びながら、
遊太郎は小首をわずかに傾げた。
テーブルにトレーを置いた時、桃子が遊太郎の手を捕まえる。
彼は少しだけ、ドキッとした。
見上げる桃子がとても愛しく感じられたからだ。

「あたしの前では、ホントの自分、出しなよ。
それでなくたって、遊太郎はいつも会社とかで……」
「僕はいつでも僕ですよ?」
「そうかなあ?遠慮とかしてない?」
「はい」

なんとなくはぐらかされた桃子は、彼の手を解放した。
いまはとにかく空腹だった。
用意してくれた朝食を美味しそうに口にする。
その食べっぷりが素晴らしく、つい観察していると、
桃子は、なによ?と睨んだ。

「すみません。久しぶりに桃子さんが食事するところを見た気がして」
「あ、そうか。3日ぶり?もう4日かな。
実家のお母さんが作るのより、
正直、あんたの手料理の方が美味しいよ」
「そんなことは」
「ううん。なんか、ホッとするしさ」

桃子はご馳走さまと言って、食器をかた付けようとしたが、
遊太郎がさっさとキッチンへ運んでしまった。

「洗いものくらいさせてよ、遊太郎。
これじゃ、メイドをこき使うワガママなお嬢みたいじゃん」
ムクレると、遊太郎は意味がわからず変な顔をした。
「メイド?誰がですか」
「あんたよ。人が見たら呆れられちゃうよ。
女のくせに年下の男に、家事まるごとさせてるって」
「でも、桃子さんより僕の方が上手ですから」

さらっと応酬した遊太郎に、桃子は何も言えなくなった。
いつの間にか、ペースに乗せられている。
遊太郎は微笑み、ムクレた彼女に新しいおしぼりを渡した。


〜第214回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-10-29 19:15

第212回接近遭遇「遊太郎×3人のエイリアン」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

深夜のファミレスに侵入したスキンヘッドの巨漢。
それは肉食系エイリアンだった。

「このガキをエサにするんだ。
その隙にオレたちが逃げるしかない」
ボックス席に身を隠しながら、
卑怯なアイディアを口にしたのはテスだった。
それを聞いたヤスが、遊太郎の首ねっこをつまんで引きずり寄せ、
その幼さが残る顎をぐいとつかむと、ニヤリとした。

「……ということだ。悪いな、ガキ。
銀河連盟に嫌がらせをするために、お前を誘拐したが、
あんな不気味なヤツに邪魔されたせいで、予定変更だ」
「はあ」
おっとりした返事をする遊太郎に、ヤスとテスは肩をすくめた。
「自分の置かれた立場ってもんを分かってんのか?鈍臭いガキだ。
まあ、運が良けりゃ、また誘拐してやるよ。
そらっ、行け!」

ヤスが遊太郎を力任せに突き飛ばした。
大男の足元に転がった遊太郎は、男の片腕で軽々と持ち上げられてしまう。
「今だ!逃げろ」
ヤスとテスがファミレスの入口に向かって走り出した。
反射的に他の客達も勢いついて逃げ始め、2人は焦った。
自分たちだけ助かればいい、そう思っていたからだ。
入口に突進した客たちを押しのけたテスは、
不意に何者かに後ろから首を捕まれた。

「?」
ヤスは信じられない光景にしばらく呆然となった。
大男の腕がクレーンのように伸びて、テスを捕まえていたからだ。
「テス!」
ヤスも動けなくなる。
その間、客たちは全員逃げ出して、ファミレスは彼ら4人だけになった。
大男の両手にぶら下がっているのは遊太郎とテス。
交互に見比べ、どちらが旨いか品定めをしてる。

「この化物、ガキだけ食ってりゃいいんだよ。テスを離せ!」
恐怖と苛立ちが立ちのぼったヤスは、懐から銃を取り出した。
それを見た大男は、一瞬妙な表情になった。

「お、な、じ、か、お」

2人が双子のようにソックリなことに興味を持ったようだ。
遊太郎をオモチャのように放り投げると、ヤスに向かって前進を始めた。
「うわっ!」
近づいて来た男に、ヤスが思わず発砲するが、
弾丸は強固な肉に弾き返され、床に散らばって乾いた音をたてた。

「……なんなんだ、こいつ」
あまりのことに銃を取り落としたヤスへ、クレーンのような腕が伸びる。
大男は同じ顔の2人を手に入れ、満足げに舌舐めずりをした。

床に投げ飛ばされてしまった遊太郎が、ゆっくりと立ち上がる。
テスが叫んだ。
「ガキっ!もたもたしてねえで、助けを呼べよっ」
「助け、ですか?」
ホコリを払っている遊太郎へ、今度はヤスが怒鳴った。
「オレたちを助ける為に助けを呼ぶんだ。
不法侵入エイリアンを捕まえるのが、派遣調査員の仕事だろ?」

すると遊太郎が困ったようにつぶやいた。
「あのう、でも、ヤスさんたちは、
派遣調査員に怒っていたんですよね?」
「ああ?」
「だから、何人も調査員に傷を負わせたり、
僕をこうして誘拐したんでしたっけ」
「バカッ!いまそんなこと言ってる場合かっ?
早く、お前の仲間を呼んで、オレたちを助けろよ!」


その時。
遊太郎の姿が映画のCGのように変貌した。
そこに現れたのは、スラリとした長身の男。
プラチナの髪に青灰色の瞳が強い光を放っている。
「!!」
遊太郎の真の姿に驚いて、もう声すら出ないヤスとテスに、
レンはサイキックガンを構えながら、低いトーンで事務的に言った。

「目を閉じろ」

瞬間。
眩いばかりの閃光が、あたりを凍結していった。



真夜中のファミレス専用駐車場。
駆け付けた銀河連盟パトロール隊員たちが事後処理に走る中、
ヤスとテスが自分たちの車のバンパーに背を向け、
混乱と疲労が入り混じった表情をさらし、両手を挙げていた。
レンは、そんな2人へサイキックガンを向けたまま、
クール過ぎる質問をした。

「それで?  誘拐の続きでもやるか」

もちろん彼らは、へたり込んで首を横に振った。


〜第213回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-10-25 15:40

第211回接近遭遇「肉食系エイリアン登場!」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

週末も深夜。
遊太郎は、ヤスとテスという異星人の2人組に誘拐され、
ファミレスで食事をとらされていた。

「遠慮せずに食えよ。派遣調査員のガキ。
お子様ランチっていうんだろ、これ」
ヤスがスプーンを遊太郎に持たせるので、
仕方なくアメリカ国旗を飾ったチキンライスを口にしながら質問をした。

「あのう……、僕は、いつ帰してもらえるんですか?」
「飽きたらゴミと一緒に捨ててやるから心配するな」
冗談とも本気ともつかない回答だ。
「お前が2、3日帰って来なかったら、お前のボスは、どう思うだろうな?
誘拐犯は、なんと取締りされる側の侵入者。
驚くぜ。調査員としてのプライドは当然ズタズタ、
銀河連盟全体の責任問題だろうよ。いい気味だ」

誘拐犯ヤスとテスは、
虫の好かない銀河連盟に嫌がらせをするために、
派遣調査員を傷つけたり、誘拐をして楽しんでいるようだ。
そういえば、とヤスが話題を変える。

「中には、えらく手強い派遣調査員もいるらしいな。
そいつ、凄腕で、何人も更正センター送りにしてるらしいぜ」
「へえ。かと思えば、こんな弱っちいヤツもいて、
調査員っつってもピンからキリまであるんだな」
テスがお子様ランチを食べている遊太郎に失笑する。

嘲り笑いをされている中。
遊太郎はさりげなく周囲にアンテナを張り巡らせていた。
何かが近づいて来ているからだ。
禍々しい何かが……

(地球人じゃない。この波動は、まさか)

読み通り、深夜のレストランに入って来たのは、
スキンヘッドの大男だった。
見るからに凶悪な波動を撒き散らし、並べられていた皿を割り、
止めに入ったウェイターをぶっ飛ばした。
悲鳴と共に恐怖が深夜のファミレスを支配してゆく。
「な、何だ。あいつ!」
テスがかすれた声で叫び、ヤスがジャケットに隠し持っていた銃を手にした。
そこへ、遊太郎はスプーンをゆっくりテーブルに置いて、
不安げにささやいた。

「……あのう、あんまり刺激しない方が」
「バカか!撃たなきゃ、殺られちまうかもしれねえ。
あんなデカい男に殴られたら死ぬぞ」
テスも銃を構え、ボックス席に深く身を伏せて、
スキンヘッドをうかがう。

隙をついて逃げようと横切った客の1人が捕まえられていた。
「旨そうだ」
そうつぶやいたスキンヘッドが、
あわあわと震える客の肩つかむと、ジュッと焦げた匂いがした。

「!」

一瞬だった。
まるで映画のCGを見ているかのように。
1人の人間が縮まり、スキンヘッドの口の中に吸い込まれたのだ。
遊太郎は眉をひそめた。
見かけは人間の姿をしてはいるが、肉食系エイリアンに違いなかった。
これほど堂々と侵入して来たという事は、
このエリアには、遊太郎のような派遣調査員が不在なのかもしれない。

「おい、ガキ。ありゃ、正真正銘、不法侵入エイリアンじゃないか?」
テスが今更のように小声で遊太郎に訊くので、
「ああ、そうみたいですね」
と小さく答えると、彼は急に苛立った。

「みたいですね、だと?
エイリアンを捕まえるのが、お前らの調査員の仕事じゃないか。
なにビビってんだよ、腰抜け!」
自分たちを棚に上げてなじるテスにヤスが顔をしかめる。
「止めろ、テス。こんなガキに太刀打ち出来る相手じゃねえだろ。
それより、いくらオレたちでも逃げなきゃヤバイぜ」
「ああ。オレらは腹ごしらえに立ち寄っただけだ。
巻き込まれて食われちゃ、シャレにならない」

ヤスとテスが遊太郎の首ねっこを猫のようにつかみ、
引きずって移動しかけた。
その時、スキンヘッドの1人がこちらを向いた。
その無表情な顔は恐ろしかった。
目が真っ黒で白目がない。
テスが、卑怯な事を口にした。

「なあ、ヤス。このガキ、盾にして逃げようか?」


〜第212回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-10-21 23:53

第210回接近遭遇「真夜中の珍ドライブ」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「森田遊太郎が拉致されたようです。
相手は連続傷害事件の犯人2人組」

黒いベンツの中で、秘書が部長の神崎に報告した。
「拉致でも誘拐でも、どっちでもいいがね」
緊張感のないセリフを吐いた神崎は、ロータスの仮の姿である。
普段は地上で、遊太郎の会社で人事部長を務めているのだ。
秘書が訊く。
「あの車、追跡しなくても良いんでしょうか?」
すると神崎は穏やかに首を振った。

「森田君に任せてある。
それよりも犯人たちは命知らずな。
知らないとはいえ、寄りによって、森田君……レンを誘拐してしまうなど」
「同感です」
苦笑いしあう2人を乗せたベンツは、誘拐車に背を向けて立ち去った。


深夜の高速を、遊太郎を強引に連れ込んだ車は快調に走っていた。
運転中のヤスは、後部座席のテスが遊太郎をいじくりまわしているのを見て、
顔をしかめながら訊いた。

「おい。さっきから、なにやってんだ?テス」
「いや。派遣調査員って目立たないように地球人に変身してるっていうからさ」

テスは遊太郎のぽわんとした小学生のように柔らかい頬をつまんだり、
まん丸メガネを外して子犬じみた目を覗き込んでみたり、
猫毛を引っ張ったりしている。
ヤスはバカバカしいと一蹴した。
「別に外見なんか、どうでもいいじゃないか。
へっぴり丸腰の新人調査員には変わりはないだろ」
「だな」

笑いあう2人へ、遊太郎が間抜けな質問をした。
「……あの、ヤスさんたちは、身の代金を目当てで、
僕を誘拐したんですか?」
これにはテスが吹き出した。
「おいおい。地球でやってるテレビドラマじゃないんだから、
お前みたいなチンケなガキの身の代金なんか要求してどうするよ?」
「はあ……」
「理由はな、嫌がらせ」
「い、嫌がらせですか?」

ヤスがバックミラーに映る遊太郎を睨みながら、
溜めているものを吐き出すように答えた。
「正義ヅラして不法侵入者を取り締まってる銀河連盟とやらに、
前々からムカついていたからさ」

……嫌がらせ。
遊太郎はメガネの奥の瞳を一瞬だけ細めた。
派遣調査員を何人か怪我を負わせたのもそうだというのか。

「あの笹川夏希ってお仲間の女も」
高速を降りたヤスが笹川夏希の名前を口にした。
「あの女だって愚痴を言ってたよな。テス?
地球人を侵入者から過保護に守ることに不満だらけでよ」
「そうそう。お陰でオレたちは派遣調査員がどいつか、
見つけやすかったんだよな」

なるほど、と遊太郎は裏を取った。
このテスとヤスの2人のせいで、笹川夏希が犯人ではないかと疑われた。
本人達は、懲りずに今度は誘拐までやっている。

「どうでもいいけど腹が減ったな」
ヤスが腹部をさすり、テスも同意した。
「地球のコンビニにも飽きてきた。お前も腹が減ったろ?ガキ」
テスが遊太郎を横目で見た。
「僕は、別に、おなか減ってないです」
「あっそ。緊張して食欲ないか。
けど、オレたちは食わせてもらうぜ」

ヤスとテスは、遊太郎を小脇に捕まえて、
深夜営業中のファミリーレストランへ入った。
そして、目立たないボックス席に陣取り、
メニューの中で肉類をメインに選び、片端から持って来させる。

「逃げようと思うなよ?ガキ。オレら、狙撃の名手だからな」
2人に凄まれ、窓側に押し込まれた遊太郎は、
ヤスとテスを交互に見た。
連続傷害事件のやり口を見た限り、ウソではなさそうだ。
ラフなジャケットの内側に銃の膨らみがうかがえる。
「ちなみに、ここの支払い、全部お前のポケットマネー」
「……は、はあ」

深夜とはいえ、レストランには客が多すぎる。
泳がせてはいるが、いつ、どこで確保すれば良いか。
ヤスとテスが食事をしている間、
遊太郎は、さりげなくタイミングを待っていた。


〜第211回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-10-18 12:29

第209回接近遭遇「遊太郎、誘拐される?」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

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「遊太郎。ただいま。あたし、帰って来たよ!」

プチ家出3日目の夜。
実家へ帰らずにマンションへ直行した桃子は、
すぐにガッカリした顔を作った。
会いたかった遊太郎が、まだ仕事から帰っていなかったからだ。
良く考えれば当たり前で、
週末になると営業マンは特に忙しい。
3日間研修で残業もなく、さっきまで友人たちと遊んでいた桃子とは違うのだ。

……あたし、勝手な女だな。

誤解がとけて家出から帰ったら、またスレ違い。
反省と共に溜め息をついて携帯電話を取り出した。
実家に置いてきた少しばかりの荷物は、
明日にでも取りに帰るからと母親に電話をする。

そのあと、3日ぶりの自分の部屋を見て、ふっと笑みがこぼれた。
ベッドの上に、きちんとたたまれた桃子の衣類が乗っている。
遊太郎が、いつ桃子が帰って来ても良いように、
掃除や洗濯など、家事全般を変わらずに引き受けてくれていたようだ。
「ごめんね。遊太郎」
桃子は爽やかな香りがするそれを抱きしめて、
心からの言葉を漏らした。


その頃。
遊太郎は、斎藤課長と会社を出て駅前通りを歩いていた。
「森田。腹が減ったろう?飯でもどうだ」
あの高山とは違い、酒が飲めない遊太郎をムリ強いすることはなく、
遊太郎は、はいと素直に頷いた。
まさか、桃子がマンションに戻っている事など知らないからだ。
「金曜日だってのに、遅くまでつき合わせたからなあ。
今夜は森田に旨い寿司を食わせてやるぞ」
そう言った課長の前に、男二人が立ちはだかった。
アジア系外国人に見え、双子のように同じ顔をしていた。

「な、何だ。君たち?」
その問いに男たちは答えず、怯む課長の後ろにいる小柄な若い男を睨んだ。
そしてグイと腕を伸ばし、彼の肩をつかむ。

「お前が森田遊太郎?チビだな」

なんだなんだと人垣が作られる中、
男たちは遊太郎を難なく連れて行こうとした。
「ま、待てっ!警察を呼ぶぞ」
泡を喰った斎藤課長に、
彼らがやってられないという風に笑う。

「あのね。深夜の遠足をするだけ。
オッサンは関係ないから、オレたちのことは忘れてくれる?」
そう言い、視線を送ると斎藤課長は一瞬硬直した。
その隙に遊太郎はナンバーを隠した黒い車に放り込まれ、
男たちは車を悠々とスタートさせた。
その後、人々は呆けたように動き出し、
斎藤課長もまるで夢から覚めた者のように頭を振った。
「ん?……も、森田?」



「誘拐しちゃったよ。派遣調査員のガキ。
簡単過ぎて、どうも面白くないんだけど」
鼻歌を歌いながら運転する男は、
バックミラー越しに後部座席の同じ顔を見やった。
仲間の男も、おとなしく連れ込まれた遊太郎をしげしげ観察している。

「子犬みたいなガキだな。
他のヤツらを傷つけたように、いたぶる気が失せる」
「全くな。こんなガキに調査員やらせてていいのか?
弱っちくて、トロそうだしよ」

一方さらわれた遊太郎は、キョトンとした顔をして、
2人の似た顔を眺めていた。
隣の男が濃い眉をひそめて訊いた。
「なんだよ。怖くて声も出ないのか?
お前は誘拐されたんだよ。メガネの坊や」
「……あの、あなたがたは誰なんですか?」
遊太郎が初めて質問した。
そのおっとりした風情に男たちが、はじけたように笑い出す。

「誰なんですかって。緊張感ねえなあ。
ホントに調査員やってんのか」
すると遊太郎は、はにかんだように答えた。
「僕、まだ新人で。……あの」

ぶわっと吹き出した運転席の男が、誤ってクラクションを鳴らし、
慌てて真面目にハンドルを握り返した。
「オレはヤス。そっちはテス。似てるが兄弟じゃないぜ。
オレらの惑星はみんなこんなツラだ」
「しばらくデートしてもらおうか。銀河連盟派遣調査員の坊や?」

異星人が3人。
真夜中のドライブが始まった。


〜第210回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-10-14 23:14

第208回接近遭遇「やっぱり、好き」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

プチ家出をして3日目の金曜日。
桃子は、研修を終えた足で友人達と待ち合わせ、
カラオケで盛り上がった。
しかし遅くなると両親の小言が待っている。
いつものように終電で帰るわけにはいかず、
早めに解散して電車に飛び乗った。

混んでいる電車の中、酔っ払いのオヤジ達が寄りかかって来た。
慣れてはいるが、うんざりする。
そんな時、聞き覚えのある声で呼びかけて来た。
「こっち、空いていますよ。五十嵐さん」
車両の奥に誘導してくれたのは、
桃子がいま一番会いたくない女だった。

笹川夏希。
ストレートの長い髪にノンフレームの眼鏡をかけた知的美人である。
遊太郎と同じく、地球人のフリをしながら、
本当の正体は派遣調査員であり、
遊太郎の元カノではないかと桃子が疑っている女。

「私もいま帰りなんです。
偶然、五十嵐さんをお見かけしたので」
笹川夏希は、吊革に揺られながら微笑むが、
少しばかり酔いが回っていた桃子は、つっかかってしまった。

「また偶然?あたしに話があるから現れたんでしょう」
「まあ。カンが良いんですね。五十嵐さんは」
悪びれる様子もなく、サラリと答える彼女に、
桃子は一気に脱力した。天然ボケもはなはだしい。
とたんに気持ちが悪くなり、吐きそうになる。
今夜はアルコールを飲み過ぎていたからだ。

「大丈夫ですか?五十嵐さん」
驚いた夏希が桃子を気遣うが、それもまた面白くなかった。
「ほっといて下さい」
「でも顔色が……」

……ああ。ウザい。
この女が出現してから遊太郎と気まずくなり、家出中だというのに。
怒りと気分の悪さが混ざって爆発しそうだ。
その時、夏希が桃子の腕を強くつかんだ。
そのまま有無を言わさず次に止まった駅で降り、
空いたベンチに座らせる。

「五十嵐さん。ムリをしないで。少し休んだ方がいいです」
「……」

なんて勝手なことをするんだと思ったが、
夜の透き通った空気にあたると、吐き気がおさまって来たので、
途中下車して正解だと悟った。
ふと気づくと、彼女が自販機からミネラルウォーターを買って来て、
隣に座り、桃子へ飲むように優しく促した。

「……すみません」
出会い頭の強気は吹っ飛んで、桃子は罰が悪そうに小さく礼を言う。
冷静に考えてみれば、夏希は何も悪くはない。
彼女の方が自分より、遊太郎を深く知っていると思って、
嫉妬しているだけだ。
自己嫌悪に陥っていると、夏希がポツリと漏らした。

「私、五十嵐さんに謝りたかったんです。この間のこと……
余計な事を話して気を悪くさせてしまったので」
「え?」

ひと気の少ないホームのベンチ。
心地よい微風が、夏希の美しい髪をふわりと揺らせる。
桃子がまじまじと隣の美人を見つめると、
彼女は、困ったような笑みを浮かべた。

「あれから森田遊太郎さん。いえ、……レンに呼び出されて、
ハッキリと言われてしまいました。
自分の意志で地球に居ると。
どこで誰と何をしようと、関係はないって……」
「遊太郎が……?」
「ええ。彼、とっても怖かったんですよ?」
夏希は笑って肩をすくめる。

「レンは本当にあなたを大切に思っているみたい。
調査員としてだけじゃなく、
あなたにだけには、優しい一面を見せている。
それが、よく分かりました。
本当にごめんなさい」
「……」

ドキドキして来た。
酔いが覚めて、今度は甘やかな想いに反応して胸の鼓動が響く。
「桃子さん?」
不思議そうに問いかけた夏希は、
桃子の瞳に先ほどにはなかった、輝く光が生まれているのを感じた。

……遊太郎に会いたい。

桃子は、素直にそう思っていた。
彼の全部を知らなくてもいい。
いまの遊太郎が好きなのだから……

「あたし、帰らなきゃ」
桃子は、しっかりした足取りで立ち上がった。


〜第209回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-10-11 12:01

第207回接近遭遇「連続傷害事件の真犯人とは?」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

取引先との接待を終えて帰宅した遊太郎は、
シンと静まり返った室内を見て、わずかに溜め息を漏らした。
ルームシェアをしている桃子が、実家に帰ってしまって2日目。
妙にひんやりとしたリビングで立ち尽くしていると、
遊太郎の上着のポケットに入れた携帯電話が振るえた。
上司からのコールだ。

遊太郎は気持ちを切り替えて自分の部屋に入り、スーツの上着を脱いだ。
ネクタイや腕時計を外し、まん丸メガネを取って、
転送装置のクローゼットを開けると、
彼は速やかに本来の姿へと戻っていた。


転送先は、
月の裏側に浮遊する銀河連盟ステーションである。
中枢部のコントロールセンターでは上司ロータスが、
遊太郎、……いや派遣調査員レンの報告を待っていた。

「やあ、レン」
ロータスは流線型デスクに座り、
茶褐色の瞳を入室して来た長身の青年に向けた。
「君に秘密裡に調査依頼をしていた連続傷害事件。
あの笹川夏希が犯人ではないとすると、
真犯人の手がかりは見つかったかね?」

するとレンは、返事の代わりに用意しておいた1枚のチップを見せた。
ロータスが目配せすると、スタッフの1人がそれを預かり、
コンピュータで情報を読み取った。
すぐに足元の立体モニターから、2人の男の映像が浮かび上がった。
短い黒髪に黒い目。アジア系に見えなくもない同じ顔。

「双子か?」
「そのようです。実は先刻、尾行されました」
「なるほど。その時にスキャニングしたものを、
もうチップに転写するとは仕事が早い。
次に狙うターゲットに君を選んだのは、相手も運が悪かったようだな」
ロータスは双子の男の映像を見ながら、ニヤリとした。

レンも腕組みをして映像を凝視する。
「奴らは笹川夏希をエサにして、誰が調査員かを特定しています。
おそらく、僕が彼女と会っているところを見たんでしょう。
その時の写真を手にしている姿も読み取れました。
森田遊太郎として、ですが」

普通、派遣調査員は地球人に変身していて、
一見して誰がそうなのか、識別は難しい。
この双子の男達は、何らかのきっかけで、笹川夏希という調査員の存在を知った。
そして彼女が接触する仲間を突き止め、
彼女の犯行に見せかけて調査員を狙撃しているようだ。

「身元はエントリーを調べてみるが、それにしても犯行の動機は何だ?
派遣調査員に恨みを持っているのだろうか」
「分かりません。
もしかしたら、我々を混乱させる事が目的とも考えられます」
「混乱?」

呆れたように肩をすくめ、
「恨みよりも悪質だな。とにかく確保しろ」
と命じたが、レンは考えながら答えた。

「捕まえるのは、簡単です。
しかし、少し奴らの遊びに付き合ってやろうと思います」
「付き合う?」
呆れたように言うロータスへ、彼は冷ややかに言い放った。
「奴らが、事件をゲームのように楽しんでいるからです。
明らかに面白がっている。
しばらく泳がせて、丁重に礼を返さなくてはなりません」
「怖いな」
これにはロータスは苦笑した。
そして、立ち去ろうとする部下に、別の意味をこめて声をかけた。

「ところで、レン」
「はい」
「桃子君とケンカでもしたのか?」

レンはゆっくりこちらを向いた。
やはり、上司の目は誤魔化せないようだ。
「……距離を置かれてしまっただけです」
「桃子君が、よそよそしいと?」
「よそよそしいのは、たぶん僕の方です。だから、彼女は……」

それを聞いて、ロータスには想像がついた。
レンは不法侵入者には容赦はないが、
1人の愛する女性にはストイック過ぎる。
彼の尋常ならざる生い立ちがそうさせるのかもしれないが……

「とにかく、だ。レン。任務遂行の成功を祈る」

そう言って、ロータスは片目を瞑って見せた。


〜第208回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-10-08 00:08

第206回接近遭遇「プチ家出二日目の夜」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

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プチ家出を決行して二日目の夜。
研修中だった桃子は、会社でも遊太郎に会わずに済んでいたが、
ふと気がつくと携帯電話のディスプレイを開けたり閉めたりを繰り返していた。
相変わらず、遊太郎からは何も言って来ない。
睨みつけていると、いきなり派手な楽曲を奏で始めたので、思わず素早く開く。
残念ながら、相手は同僚の清美だった。

「もしもし桃子?研修お疲れ。二日ぶりだよね」
「清美」

母親の博子が何気なく耳を澄ませているのを感じたので、
話しながら二階の部屋へ上がる。
「仕事、大丈夫?ごめんね。清美」
「うん。大丈夫。特に変わったことはないよ。
まあ桃子がいないから、高山係長がウロウロしてたくらいかも?」
「ふうん」
高山の事は、言い寄られた一件でますます毛嫌いに陥っていたので、
どうでも良いことだった。
たわいないお喋りを続けたあと、清美が思い出したように言う。

「そういえばさ。森田クン、桃子が研修行くこと知らなかったみたいじゃん?」
「え?」
心臓が跳ね上がる。
家出は誰にも話していないはずだからだ。
カンの良い清美が、好奇心いっぱいの声を出した。
「ひょっとして、なんかあった?」
「……別に」
すっとぼける。
「ホント?森田クン、一瞬さみしそうだったからさ。
カレ、桃子を慕ってんだから、イジメちゃダメだよ」

桃子は絶句した。
清美は、普段の遊太郎しか知らないので、
そう茶化すのは無理はないが、
それにしても、さみしそうというのは、本当だろうか。
詳しく聞いてみたい気がしたが、詮索されてはいけないので、
適当な話をして電話を切った。

居間に降りると、博子が茶菓子を運んで来ていた。
「ホントは遊太郎ちゃんからの電話待ってんじゃないの、あんた」
「な、なんでよ?」
清美をやり過ごしたかと思ったら、今度は母親が待ち構えていた。
煎餅をかじりながら、見透かしたように言う。

「あたしはあんたの母親なんだからね。なんでもお見通し。
遊太郎ちゃん、きっと心配してるわよ。桃子の方から電話してあげなさいよ」
「うるさいなあ。別になんでもないんだから、放っておいてよ」
「気になるくせに。意地張っちゃって、バカな子だねえ」
「……」

居心地が悪くなって、桃子はまた急いで二階へ駆け上がった。
母親は少し前まで、、
桃子と遊太郎がイトコ同士で付き合っている事に反対していたが、
今では逆に面白がっているから始末が悪い。

今夜は月が雲間に隠れて、窓からは見えなかった。
こうして毎晩、月の姿を探していると、
自分がまるで、月に帰ってしまったかぐや姫を慕う若武者みたいに思えてくる。

……本当はどうしたいんだろう。あたし。
桃子は飽くことなく窓の外に広がる夜空を眺めていた。


その同じ夜。
遊太郎は斎藤課長と共に得意先企業の接待を終えるところだった。
遊太郎は先に会計を済ませ、
タクシーを呼ぶ為に、電波状況を確認しながら外に出た。
そんなどこにでもいるようなサラリーマンの遊太郎を、
遠方からうかがっている者がいた。

「なんだ。アレがターゲットか?
ずいぶん地味で、チビじゃないか」

男がガッカリしたようにつぶやくと、
隠し撮りした写真と見比べるように、もう1人の男も感想を述べる。

「ああ。日本人は若く見えるらしいが、それにしても、まだ子供だよな」
「あんなメガネの坊やで間違いないのか?
普通の地球人そのものだぞ」
問われた方の男も、やや疑わしげに考えながら頷く。

「たぶん。
笹川夏希という女が接近していたから、同じ仲間だろ」
「そうか。じゃあ、銀河連盟から派遣されている調査員のはしくれか。
あんなのじゃ、襲うって言っても簡単過ぎて面白くないけど」
「いいじゃないか。ゆっくり遊んでやろうよ」

不審な男2人は含み笑いをしながら、車を出した。


〜第207回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-10-04 16:11