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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2009年 09月 ( 9 )   > この月の画像一覧

第205回接近遭遇「桃子の小さな家出」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「しばらく泊まるって。遊太郎ちゃんとケンカしたの?桃子」

母親の博子が、湯呑みに茶を淹れながら尋ねた。
桃子は返事もせず、居間に寝転がってテレビのお笑い番組を見て笑っていた。

遊太郎と気まずい事になった翌日、彼女は小さな家出を実行したのだ。
実家に転がり込んだので正確には家出とは言わないが、
いまはマンションに居たくなかった。
もちろん大人の礼儀としてメモは置いて来ている。
ものすごく簡潔な文章だったが……

「さては、遊太郎ちゃんに愛想をつかされたんじゃないの?
そりゃ、遊太郎ちゃんはまだまだ若いし、
あんたみたいなヒネた年上女より、
同い年か年下の可愛い女の子の方が良くなったのよ」
「うるさいなあ。テレビが聞こえないでしょ」

博子の際限ないお喋りを防衛するかのようにボリュームを上げると、
風呂上がりの父親が、ビールグラスを2つ持って、
のそのそと居間に現れた。

「いいじゃないか。久しぶりに娘が顔を見せてくれたんだ。
何なら、ずっと居ていいんだぞ。一杯やるよな?桃子」
「サンキュ、お父さん」

桃子は父親っ子である。
2人して乾杯し、ゴロゴロやり始めたので、
博子は、もう、とふてくされながら、おつまみを用意するために、
台所へ戻って行った。

そう。
遊太郎の事は棚上げして、のんびりしようと決めたのだ。
今まで本当に色々ありすぎた。
しかも、普通人が考えられないような非現実な。
だから、この機会に普通の生活を味わっても、罰は当たらないはずだ。

幸い、少し早起きすれば通勤出来ない距離でもなく、
博子が桃子の部屋を、いつ戻って来ても良いように綺麗にしてくれていた。
父親と親交を深めたあと風呂に入り、二階の自分の部屋に入ると、
桃子は窓から見える月を眺め、伸びをした。

誰が信じるだろう。
あの丸く遠い月の裏側に、
巨大な銀河連盟ステーションが浮遊してることを。
その巨大な要塞から、異星人である調査員が派遣され、
各企業や学校に在籍し、地球人に紛れて暮らしている。
こうして実家に戻って来てみると、あの世界全てが夢だったのではないかと思えた。

鼻歌を歌い、濡れて湿った髪をタオルで拭きながら、
机の上に置きっ放しにした携帯電話をふと見る。
いつもなら、心配した遊太郎から電話が入るはずなのだが、
どういうわけか全くかかって来る気配がない。

「さすがに嫌われたかな……?」

そう口にして、桃子は我に返って頬を叩いた。
いけない。
しばらく遊太郎の事は封印する事に決めたんだ。
普通の生活を満喫しなきゃ。
電源を切った桃子は、気になる月も視界から消すために窓を閉めた。



遊太郎は、出社するなり桃子の姿を探した。
営業一課のデスクに彼女の姿はなく、
ホワイトボードには研修という文字が書かれている。

「やだ、森田クン。知らなかった?
桃子、今日から3日間研修だよ」
ボードを見つめる遊太郎へ清美が教えた。
清美だけは、桃子と遊太郎が一緒に住んでる事を知っているため、
彼が何故知らないのかと不思議がる。
「研修場所は、ここから近いし、連絡出来るけど、なんかあった?」
「いえ。大丈夫です。ありがとうございます」
遊太郎は礼を言って、清美から離れた。

『実家に帰る』

マンションに残されていた桃子のメモを思い出す。
角張った男性的な文字で、それだけしか書かれていない。
いつまで居るのか、思い切り省いた桃子らしい書き置きだ。

やはり桃子は、笹川夏希に言われた事を気にして、
自分を避けているらしい。
会社に来れば会えると思ったらアテが外れた。
この状況で、電話やメールは避けた方がいいだろう。
明日にでも実家に桃子を迎えに行くべきか。
それとも、しばらく好きにさせた方が良いのか。

「桃子さん……」

遊太郎は桃子のいないデスクを見つめ、溜め息をついた。


〜第206回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-09-30 20:15

第204回接近遭遇「孤高の狼」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「俺は、俺の意志でここに居る。
誰と何をしようと、ナーディア、君には何の関係もない」

高層ビルの屋上。
レンが放った言葉に、
笹川夏希、いや、ナーディアは紫色の双眸を大きく見開いた。
明らかに読み取られていたからだ。
今日の夕刻に彼女が桃子に接近し、何を話したのかを……

「……ごめんなさい。出過ぎた真似をして」

彼女は潔く謝った。
すると、夜景を見ていたレンがこちらを向いた。
彼は硬質なオーラを纏っている。
漆黒のサングラスと、
闇に溶け込んだ黒ずくめの全身がそうさせるのかもしれない。

「ナーディア」
先ほどとは違うニュアンスで、彼が彼女の名前を呼んだ。
そして真の用向きを伝える。
「今夜、呼び出した理由は別にある」
「え……?」
どうやら、かなり深刻な話題を用意しているようだ。
ナーディアは大人しく次の言葉を待った。

「派遣調査員が連続して狙われた事件は知っているか?」

凍るような沈黙が降りた。
距離を保つ2人を、取り巻く大気が張り詰める。
ナーディアは、しばらく考えて、ふっと微笑した。

「……私が疑われているのね」
「ああ」
「そう。あなたには嘘は通用しないから、正直に言うけれど。
残念ながら、犯人は私じゃない」

きっぱりと否定するナーディアの波動を、
彼は速やかにスキャニングしながら尋問を続けた。

「それなら、何故、被害者の周りをうろついていた?」
「それは……」
一瞬だけ眉根を寄せる。
「私が派遣調査員を辞めたがっているのは、知ってるでしょ」
同時に回想がリアルに展開してゆく。
見知っている仲間に会い、自分の考えを話している場面だ。

……平和を貪るだけの地球人を、
侵入者から守る銀河連盟の調査機関なんて、
地球人を甘やかせている過保護なシステム。
やるだけ無駄だわ。こんな仕事。そう思わない?

「残念ながら、私の意見を誰も聞いてくれなかったけど。
でも、いくら仕事に不満を持っているからと言って、
同じ仲間を傷つけたりはしないわ」

レンは頷いて、深く考察した。
確かにナーディアは嘘を言ってはいない。
しかし、引っかかる。
彼女に罪を着せるように影で動いているのは何者だろうか……?

「分かった。上にはそう報告しておく」
「ありがとう。
でも、もし犯人が不法侵入者だとしたら、やり方が巧妙ね。
捕まえるのなら、私も協力させて」
「駄目だ」

言下に言い放ち、立ち去ろうとするレンへ、
ナーディアは紫色の髪や瞳を黒く変えながら、
今度は笹川夏希として声をかけた。

「ねえ、レン。
さっきの話の続きだけれど。
……私、やっぱり桃子さんには謝った方がいいわよね?」
余計な事を話して気が咎めていたからだ。
しかし彼は、あっさりと首を振った。
「何もしなくていい」
「でも……」

レンは振り返り、彼女を黙らせるように見つめた。
笹川夏希が桃子に言った事は的外れではないからだ。
何故なら、自分は、いまだ桃子さえ知らぬ火種を幾つも抱えている。
非常事態に備えて、最低限のボーダーラインを張り巡らせておかなければならない。
だから、桃子にも、ありのままをさらけ出す事は極力避けて来た。
大切だからこそ、言えない事もある。
もちろん嘘をつく事も……

「……本気で好きなのね。桃子さんの事を」

笹川夏希がポツリとつぶやいたが、
既に、孤高の狼は、高層ビルの屋上から消えていた。


〜第205回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-09-27 14:07

第203回接近遭遇「かき乱された心」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ムリして、あたしに優しくしないでよ」

感情が先走り、口が勝手に動いてしまった。
さすがに桃子は、ハッとして遊太郎に小さく謝る。
「……ごめん」
そのまま、自分の部屋へ入ろうとする桃子の腕を遊太郎が掴んだ。

「桃子さん。僕、何か気に障るような事をしましたか?」
「何も」
「え?」
「何もしてないよ。
遊太郎は、いつだって、あたしに文句一つ言わないし」
「桃子さん……?」

掴んだ手が自然に離れた。
桃子が背を向けたまま、早口で喋った。
「遊太郎は、仕事をする為に来てる派遣調査員だったよね。
ここにいるあいだ、同居人のあたしに合わせて、
優しく色々してくれてるだけなんだ。
あたし、鈍感だからさ。今まで気づかなくて図に乗ってて、ごめん」
「……」

どう答えて良いかわからない遊太郎を一切見ずに、
桃子は部屋に入ってドアを強く閉めた。
そしてベッドに力なく横になる。

先刻、笹川夏希から聞かされた話に心が乱されていた。
そうなのだ。時々忘れてしまうのだが、
遊太郎は普通の男ではなく、
イトコの森田遊太郎のDNAをコピーしているだけの異星人だ。

(あたし、何を期待していたんだろう……)

遊太郎が大切にしてくれて、いつも守ってくれるのは、
自分への恋愛感情からくるものだと思い込んでいた。
しかし笹川夏希の言う通り、
それはただ、地球人に対してのマニュアル的な優しさかもしれず、
生身の彼を、本当の意味で知らない。

その証拠が幾つかある。
一緒にいても、遊太郎は桃子に逆らったりした事がなく、
感情をぶつける事もないので、ケンカにもならない。
普通の男のように、
好きだと露わな感情を見せてくれた事も。

急に遊太郎が遠い存在に思えて来た。
同居を始めて、ほんの1年しか経っていない自分より、
笹川夏希の方が、本当の彼を良く知っている。
それがたまらなく悔しく、やりきれなかった。


「……桃子さん」

桃子の部屋のドアを見つめていた遊太郎は、
彼女のただならぬ様子に戸惑っていた。
遠慮がちに、そっと桃子をスキャニングをした彼は、
彼女にまとわりついた残留思念の中に、ある特定の波動を捉えた。

「笹川夏希……?」

補足出来た人物の波動は、最近再会したばかりの昔の知り合い、
そして現在、同じ派遣調査員である笹川夏希のものだった。
桃子は彼女と会ってひどく傷ついている。
ドア越しに伝わる桃子の想念から、それを感じ取った遊太郎は、
少しの間、目を閉じ、やがて意を決したように、
ズボンのポケットから携帯電話を取り出した。



「あなたから会いたいなんて、嬉しい。
ゆっくり、昔話でもしましょうか」

煌びやかに輝く夜景が一望できる高層ビルの屋上。
待っていたのは、すらりとした長身の美人、笹川夏希である。
ノンフレームの眼鏡を外すと、髪と瞳を本来の淡い紫色に戻した。
そして自分を呼び出した男に微笑んでみせたが、
ほどなくして、笑みをふっと消した。
現れた男が無言で、彼女と距離を置いて立ったからだ。

「……怒っているの。レン?」

夏希は、うかつに近づけない空気に息を呑んだ。
漆黒のサングラスをかけたレンは、
恐ろしくクールな横顔を夜景に向けていた。
遊太郎の姿を纏っていた時には想像すらつかない、
圧倒的な威圧感がある。

風が強い夜だった。
レンは端正な横顔を微動だにせず、初めて、形の良い唇を開き、
良く通る声で夏希の名前を呼ぶ。

「ナーディア」

夏希は思わずピクリと肩を震わせた。
レンの声は抑えられていたが、
静かな、しかし潜めた怒りが込められていたからだ。
彼は決定的な言葉を放った。


「俺は、俺の意志で地球に居る。
誰と何をしようと、ナーディア、君には何の関係もない」


〜第204回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-09-23 15:44

第202回接近遭遇「元カノからの牽制?」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「五十嵐さんは、レンのどこに惹かれたんですか?」

カフェで、桃子は笹川夏希に質問された。
咄嗟に桃子は言葉に詰まってしまった。
「……どこって言われても」

どこなんだろう?
遊太郎と一緒に暮らすうちに、
いつの間にか好きになっていたのだが、
改めて聞かれると、はっきりした答えが出て来ない。

「えっと、優しいところ、かな?」
かろうじて口にする。
「優しい……、彼がですか?」
夏希が怪訝な表情をしたが、桃子は調子に乗って喋った。
「そう。優しいところ。
あたしって怒りっぽいんですけど、
文句も言わないで黙って受けとめてくれるし。
困った時は、すぐに飛んで来てくれるから」

この間も、高山に迫られたところを助けに来てくれたのだ。
すると夏希は淡々と言った。
「わかりました。
あなたは、派遣調査員としての彼に惹かれたんですね」
「え?」
桃子は彼女の言う意味が分からず妙な顔をした。

「ごめんなさい。五十嵐さん。
私は以前のレンを知っているから、
あなたに見せているのは、本当の彼とは思えなくて」
「じゃあ。遊太郎が、あたしに優しいのはお芝居ってことですか? 」

桃子がストレートに訊くと夏希は少し考えて、
ニュースを読むように話した。

「お芝居というわけではありませんが、
私達、銀河連盟調査団は、
地球人のプライベートに、必要以上干渉してはいけないんです。
ですから、自分の感情を出来る限り抑えて、
努めて温厚に対応するように訓練されています。
もちろん私達も人間ですから、個性がありますし、
中には例外な調査員もいますけれども」
「……」

「だから、五十嵐さんが惹かれているのは本当のレンではないんです。
人間としての、生身の彼を、知らないだけ」

テーブルのカフェラテが冷え切っていた。
確かに遊太郎は、感情を桃子にぶつける事はない。
守ってくれて、大切にはしてくれるが、
当たり前の恋人のように、情熱的に好きだと告白された事すらない。
夏希の言う通り、桃子は、
本当の遊太郎と触れ合ってはいないのかもしれない。

視線を膝の上に落とした桃子を見て、夏希は立ち上がった。
腕時計を確かめながら微笑む。
「お買い物の途中に引き止めてしまってごめんなさい。
今日は五十嵐さんとお話が出来て良かったと思います」
「あ、……いえ」

妙にぎこちなく桃子も立ち上がり、2人してカフェを出る。
外はすっかり暗くなっていた。
別れ際、夏希がふっとこんな事をもらした。

「レンは、派遣調査員として、不満はないのでしょうか。
地道で、苦労ばかりの仕事に……」
「え……?」
「ごめんなさい。独り言です」

それでは、と笹川夏希は丁寧に会釈して、雑踏の中へ消えて行った。
桃子は誰かにぶつかりながら、ふらふらと歩き出した。
もう買い物をしたり、料理を作ろうという気力も失せていた。


「お帰りなさい。桃子さん」

マンションに戻ると、遊太郎が先に帰っていた。
いつも通りに夕食の支度をして、桃子にふんわりした笑顔を向ける。
しかし、彼女は彼に視線を合わさず、自室へ入ろうとした。
「あたし、今日は夕飯、いい。おやすみ」
遊太郎は驚いて、付けていたレモンイエローのエプロンを外し、
彼女のそばに近づいた。

「お腹でも壊しましたか?」
「何でよ」
「桃子さんが食欲ないなんて、珍しいですから」
「あたしだって食べたくない時ってあるの。
放っておいてよ。ウザいな」

言い方がきつくなり、しまったと反省する。
遊太郎が戸惑ったように、桃子の背中を見つめた。

違う。
こんな事を彼に言いたくないのに……
抑えていた感情が、爆発しそうで桃子は眉をきつく寄せた。

「ムリして、あたしに優しくしないでよ」


〜第203回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-09-20 13:48

第201回接近遭遇「宇宙人女性の悩み相談」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

桃子は笹川夏希に誘われ、駅前のカフェへ足を運んだ。
モデルのように長身の彼女は、知的で美しく、
他の客に注目されるため、桃子は奥まった席を取る事にした。

「カフェインは駄目なんです」

笹川夏希はそう言って、果汁100%のグレープフルーツジュースを頼んだ。
そういえば、遊太郎もコーヒーが飲めない。
異星人は皆、そうなのだろうか。

「この間の事……」
彼女がいきなり核心に触れたので、
桃子は膝の上で手をキュッと握り締めた。
海で、遊太郎が笹川夏希と2人きりで会っているのを見て、
彼をひどくなじってしまった、あの事だ。
夏希は、ストレートの長い髪をサラリとかきあげながら、
品の良い唇を開いた。

「あの時、私が勝手に海に現れただけで、
森田さんと内緒で会っていた訳ではないんです」
「え?」
「私は森田さんに、いえ、……レンに相談したい事があったんです。
本当に、五十嵐さんには誤解をさせてしまってごめんなさい」
嘘を言っているように見えなかったが、
桃子があまり納得していないのを察したか、夏希はこんな事を打ち明けた。

「実は私は、派遣調査員を辞めようかと悩んでいて……」
「辞める?」

これにはビックリして声が高くなり、慌ててトーンを落とした。
話が予想外な方向へ展開しそうだ。
「あ、あのう、笹川さん。
そんな大事な話、あたしなんかに話して良いんですか?」
「はい。五十嵐さんは、お話がしやすい方ですし。
それにレンは、あの通り無口で、あまり反応がなくて」
「そりゃあ、遊太郎は口下手っつうか、
身の上相談には向かないヤツだよね」
話しながら妙な気分になって来た。
てっきり三角関係のドロドロした話になるのかと構えていたが、
ちょっと調子が狂う。

「笹川さん。あたし、よくわかんないんですけど。
銀河連盟の派遣遣調査員の仕事って、ストレスたまるんですか?」

我ながらバカな質問だなと思いながら、訊いてみた。
夏希は気にする様子もなく、きちんと答える。

「……そうですね。やはり、正直ストレスは感じてます。
まだ3年目ですが、継続することが大変に思えて来て」
「どんな仕事だって大変だと思うけど」
「それはその通りですが」

桃子はストレスの原因を言い当てようとした。
「もしかして、地球で暮らすのに疲れたとか?」

桃子の知る限り、銀河連盟から派遣されている調査員は、
その素性全てを隠し、地球人として各企業や学校などに在籍。
裏では様々な調査や、不法侵入者の取締りをしているらしい。

夏希は考えながら、言葉を丁寧に紡ぎ出す。
「はい。確かに地球はバイブレーション……波動が荒くて、
長時間過ごすと、かなり負担にはなります」
「負担?」
「ええ。調査員メンバーは普通、ステーションで時々休まなければならないし、
定期的に心身のヒーリングを受けるよう義務づけられています」

初めて聞いた、と桃子は首を傾げた。
一緒に暮らしている遊太郎といえば、年中働きっ放しで、
何も言わないけど、平気なのかな。

「それに、メンタル面でも色々……」
その先が、どうも言いにくそうだ。
そこで桃子はトンチンカンな事を訊いた。
「わかった。職場イジメがあるとか?」
「職場イジメ?」

夏希は眼鏡の下で美しい瞳を丸くしたのち、やがてクスクスと笑い出した。
「本当にユニークですね。五十嵐さんは」
「ご、ごめんなさい」
桃子の顔が真っ赤に染まった。
恥ずかしい。
次元の低い事しか考えつかない自分の馬鹿さ加減に情けなくなる。
しかし、目の前の知的美人は馬鹿にはしなかった。

少し間を置いて、笹川夏希が桃子を静かに見つめ、
スッと質問をした。

「今度は、私からお訊きします。
五十嵐さんは、レンのどこに惹かれたんですか?」


〜第202回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-09-16 23:42

第200回接近遭遇「笹川夏希の接近」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「森田。お前ホントは、あいつの事知ってるんじゃねえのか?」

高山が見透かすように運転席の遊太郎を睨んだ。
遊太郎は安全運転をしながら、さりげなく聞き返す。

「誰をですか?」
「だから、五十嵐の男。
お前、オレの話ちゃんと聞いてたか?」
苛立ったのか、遊太郎の頭をクシャクシャにする。
運転中で危ないですから、と言うが、気にも止めない。

「オレを殴った銀髪野郎の事だよ。
お前は五十嵐のイトコで、姉弟みたいに仲が良さそうだからな。
本当は、付き合ってる男の事とか知ってるはずなんだ」
「僕は、何も知りません」
「ウソつけ!」

高山は、桃子の近くにいつもいる遊太郎を疑っていた。
「お前だって、本当は五十嵐のことが好きなんだろ?イトコ同士のくせによ」
「……」
答えないのを肯定として捉え、ニヤニヤする。

「けどな、あんな男がライバルじゃ無理だ。
チンケで頼りないお前にゃ、200%以上、勝ち目がねえって。
ひとひねりであいつに殺されるぞ。
……どういうのかな。ありゃ、ちょっとヤバイ野郎だと思う。
なんか、久しぶりにゾッと来たっていうか」

一昨日前の夜、神社で桃子に言い寄った際に、
銀髪男は音もなく背後に現れた。
あの時に見た、恐ろしく冷然とした男の姿が記憶に焼き付いている。
漆黒のサングラスをしていて表情は分からなかったが、
高山より上背があって脚も長い。
結局、全ての動きが素早過ぎて、
ケンカ慣れを豪語している高山が、手も足も出なかった。
もちろん、プライドにかけて、それを口には出来なかったが。

「まあ、五十嵐の事は、すっぱり諦めて、オレに味方しろ」

遊太郎は心の内で、溜め息をついた。
その銀髪男こそ、実は高山の目の前にいる遊太郎の本来の姿である。
それにしても、不思議に思う事があった。

何故、地球人は異性の自由意志を尊重せずに、
自分の所有物として捉えてしまうのだろうか。
飽くことのない独占欲と見栄。
もちろん、そんな人間ばかりではないが、
遊太郎には、未だ理解出来ないでいた。

「いいか?森田。
入社以来ずっと、お前の面倒見て来たのはオレなんだからな。
銀髪野郎の情報は、何でもいいから流せよ」
どうやら高山はリベンジを誓っているようで、
オーバーに拳を作る真似をした。


その日の夕刻。
定時に仕事を終えた桃子はスーパーに立ち寄った。
今夜こそ、遊太郎に手料理を作って食べて貰うためだ。
家事一般は、遊太郎が上手いので任せっきりにしているが、
先日危ないところを助けてくれたお礼もしたい。
遊太郎ほど上手に作ることは出来ないが、
料理はハートが大事だし、頑張って作っとみようと思った。

「五十嵐桃子さん?」

スーパーで、ジャガイモを手にしていると、誰かに呼ばれた。
振り返ると、そこにパンツスーツの女性が立っていた。
ストレートな長い髪にノンフレームの眼鏡をかけた顔には見覚えがある。

「笹川夏希……さん」

声がかすれた。
笹川夏希は、遊太郎の元カノだと桃子が思っている女だ。
遊太郎と同じく派遣調査員として地球人に紛れて生活をしているらしいが、
ついこの間、遊太郎と久しぶりに再会したと聞いていた。
笹川夏希は、バスケットの入った紙袋を抱えて、近づいて来た。
申し分なく知的で落ち着いた感じの美人だ。

「夕飯の買い物ですか?」
「え、ええ」
「私も。今日は早く仕事が終わったので。偶然ですね」

本当に偶然?
桃子は不信感を隠せなかった。
偶然、遊太郎と地球で再会し、先日行った海で彼と会っていたのも、
ひょっとしたら偶然会ったと言うつもりだろうか。
疑惑がむくむくと桃子の中に生まれ始める。

「良かったら、少しだけお茶しませんか?」

笹川夏希は、桃子の胸の内を知っているかのように、
柔らかい微笑みを浮かべ、近くのカフェへ誘った。


〜第201回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-09-13 19:25

第199回接近遭遇「高山の疑い」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

誰もいない夜の海辺で、桃子はレンとキスをした。
言葉を交わさなくとも、ただ一緒にいるだけで良かった。
花火が夜空を幻想的に塗り替え、夏の終わりを告げていた。


翌朝、桃子は親睦会旅行の帰りのバスに揺られ、
まだ夢見心地で清美のお喋りを聞いていた。
「桃子ってば、昨日からおかしいよ?
縁日の時、急にいなくなったと思ったら、ボーッとして戻って来るし」
「ごめん。足、痛くて隅っこで休んでたんだ」
曖昧に答えた桃子を、
怪しがりながらも、清美は話題を変える。

「そういえば、高山係長、先に帰ったんだって。知ってた?」
「高山係長が?」
「うん。今朝、斎藤課長がケータイで話してるの聞いたんだけど。
あの人、神社の裏の階段から落ちて怪我したって」
「そ、そうなんだ」
「大袈裟に痛がってたらしいよ。一体どんな落ち方したんだか。
悪いけど、なんか笑っちゃうよね?」
「……」

これにはコメントに困ってしまった。
高山を殴ったのは、遊太郎……つまり、レンだ。
彼は、強引に迫って来た高山から、桃子を助けてくれたのだ。
ひとつ気になるのは、レンが記憶を消さなかったことで、
何か考えがあるのだろうか。

「でもさ。うれしそうだよね、桃子。
昨日の昼間は、むくれた顔してたのにさ」
清美が袋を開けたスナックを寄越し、桃子もつまんだ。
「そ、そお?」
「桃子ってホント、超分かりやすい。
昨日の夜、コッソリ彼氏を呼んで会ってたりして?」

相変わらずカンが鋭い清美にドキリとする。
昨夜の事件のあと、
桃子はレンと海辺でキスをした。ただそれだけなのだ。
考えてみれば、彼が昼間に笹川夏希と会っていたのは変わりはないし、
わだかまりは無くなっていないはずだが、
自分を守ってくれた事が、いまはただ嬉しかった。


翌日。
高山は顔にアザを作って会社に出社して来た。
桃子が上司にセクハラとして訴えたりしないのを、
最初から計算ずくで言い寄ったように思えた。
当然、謝罪もなく、ふてぶてしく姿を見せた男に、
桃子は、ますます嫌悪感を抱いた。

「最低」

ぼそりと口にする桃子に、清美が驚く。
「なになに?どうしたの。桃子」
「別に」
素っ気なく言って、桃子は仕事に気持ちを切り替えた。
あんな男など相手にしてはいけない。
いつかもっと痛い目に遭うはずだし、もう係わり合いになりたくなかった。



「森田。オレ、怪我人だし。お前が運転しろよ」
その高山は、さも当然のように遊太郎に命令し、営業に出かけた。
そして市街を走る車中、助手席でふんぞり返って言った。

「あのさ」
「はい?」
「五十嵐のイトコのお前だけに話すけど。
やっぱ、五十嵐桃子には銀髪野郎がついてやがったんだよ」
何くわぬ顔で出社していたが、
実は誰かに鬱憤をぶちまけたくてたまらなかったらしい。
遊太郎が、自分を殴った銀髪男と同一人物だと知らない彼は、
大袈裟に一昨日の話を脚色する。

「オレはただ、1人で物騒な場所にいた五十嵐が心配で話しかけただけだぜ?
そうしたら、どこからともなく奴が現れて、有無をを言わさず殴りやがったんだ」
思い出して悔しげに前方を睨む。
「ありゃ、ぜってぇ普通の人間じゃねえな」
「……どういうことですか?」

遊太郎は、さりげなく訊いた。
すると高山はしばらく唸っていたが、渋い顔をした。
「うまく言えねぇけど、なんかオレ達とは違うんだよな。
どっちにしても、オレだってあの時、
浴衣でなきゃ負けたりしなかった。今度会ったらリベンジだ」
「……」

高山から自分の記憶を消さなかったのは、
これ以上桃子をつけ狙わないよう警告する必要があったからだ。
しかし、どうにも懲りていないらしい。

しばらくして、高山は遊太郎をじいっと見た。
「お前、ホントは、あいつの事、なんか知ってるんじゃねえのか?」


〜第199回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-09-10 23:57

第198回接近遭遇「花火とキスと」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

神社奥深くに広がる鎮守の森。
桃子は大樹の下で、高山にじりじりと迫られていた。
そういえば携帯電話をホテルに忘れていた。
なんて運が悪いんだろう。
とにかく隙をついて逃げようと脚に力を入れてみるが、
あいにく慣れない下駄を履いている上、
指に鼻緒が食い込んで飛び上がるほど痛い。
もし遊太郎が気づいてくれなければ、
高山をかきむしって裸足で逃げようと思った。

「そんなに警戒するなよ。五十嵐さん」

高山は、桃子の身体を挟み込むように両腕を木にかけた。
「オレのこと、もうちょっと知って欲しかっただけなんだぜ。
でも、五十嵐さんてビキニも浴衣も似合うよね。
会社で制服ばっかり見てるから、今日は見違えたよ」

自慢の白い歯を光らせて、高山のニヤついた顔が近づいて来る。
桃子はたまらないほど怖気がした。


その時。
ふっと高山の顔が歪んだ。
誰かに後ろから右肩を強く掴まれている。
桃子は背後に現れた人物を察知したが、声も出せずに見守っていた。

「な……っ!」

高山は、右肩から腕を高くねじり上げられ、
呻きながら背後の人物を睨みつけた。
そこに立っていたのは、
闇に溶け込むように黒服を着た長身の若い男。
白い顔には漆黒のサングラス、髪は夜目にも輝く銀色をしている。
彼は遊太郎から本来の姿に戻り、桃子を救出に現れたレンだった。

「お、お前……っ!」
相手を見た高山は一気に頭に血が登った。
……そうだ。こいつ。
五十嵐桃子の影で、見え隠れする謎の銀髪野郎。
「上等じゃねえかっ!オレは、お前に会いたかったんだよ」

高山は、レンが遊太郎と同一人物だとは夢にも思ってはいない。
掴まれた腕を怒りに任せて振り払い、凄んでみせた。
肩や腕は悲鳴をあげているくせに、女の手前もあって、
見栄やプライドが先に立ったのだ。
しかし、飛びかかろうとした高山を、レンは造作なくかわした。
まるで大人と子供以上にレベルが違うのだが、
レンは、わざとじゃれあったあと、鋭い一撃の手刀でケリをつけた。

「ぐぇっ!!」

腹を押さえて転がる高山へ、
サングラス越しに氷のような視線を投げて、低いトーンで言い放つ。


「安心しろ。一応手加減はした」

これを聞いて高山はゾッとした。
それでも、悔しさを滲ませて立ち上がり、ひと声吠えた。
「……覚えとけ。銀髪野郎!」
そして、睨みつけながら這い出すように、その場から逃げ去った。


「遊太郎……ありがと」

桃子は遠慮がちに礼を口にした。
昼間、笹川夏希に会っていた事で罵詈雑言を浴びせたのに、
彼がちゃんと助けに駆け付けてくれたので、
どんな顔をすればいいか分からなかった。

それに、硬質なサングラスのせいかもしれないが、
今夜のレンからは、静かだが容赦ない怒りを感じる。
高山の行動が、よほど腹に据えかねたのかもしれない。
そこへ、ひゅるひゅると花火が空を登る音がして、
満天の夜空に光の華が幾つも咲いた。

「綺麗……!」

つい感嘆の声をあげた桃子の身体が、次の瞬間フワッと浮く。
「あ……っ」
いきなり視界が変わった。
桃子はレンに抱き上げられ、瞬間移動をしていたのだ。

誰もいない海と砂浜。
レンは桃子を、打ち捨てられている枯木の上に座らせた。
浴衣を汚さないように配慮したようだ。
そして彼女の前に膝をつき、足元を見た。
何をしているんだろうと訝しんでいると、
素足にスッと手を置いたので、ぎょっとした。
彼の手は冷たい感触だったが、やがて温かいエネルギーが伝わり、
指の痛みが和らいでゆく。

花火が再び打ちあがり、海を幻想的に塗り替えた。
レンが漆黒のサングラスを外すと、海より青い瞳が桃子を捉えた。
言葉も交わさずに、2人の唇が自然に重なった。


〜第199回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-09-06 00:04

第197回接近遭遇「夏の縁日で揺れる危険な影」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

営業一課の親睦会で訪れている海。
ビーチでバーベキューのあと、社員達は近くの神社へ、
縁日と花火大会を楽しむ為に繰り出していた。

1人むっつり膨れているのは桃子である。
濃紺に大輪の華を染め抜いたスタンダードな浴衣を着て、
髪を女らしくまとめた姿は、普段とは違う色香を漂わせているのだが、
怒っている彼女自身は全く無頓着だった。
同じく、ピンク色の派手な浴衣を着こなした清美が、
屋台で買ったばかりのりんご飴を舐めながら言う。

「また彼氏と何かあった?」
「違うよ」
「あたし、恋バナには敏感なんだよ?
桃子がそういう顔してる時って、だいたい彼氏がらみ。
さては、浮気してるとか」
「浮気?」

聞きたくない嫌なキーワードだ。
思わず立ち止まる。
「桃子?」
驚く清美に、桃子は苦笑いを作り、ごまかした。
「ごめん。鼻緒、慣れないから痛くて。ちょっとトイレ行って来るね」
「じゃあ。あたしも行くよ」
「ううん。すぐ戻るから。鳥居のとこで待ってて」

とにかく1人になって気持ちを落ち着かせなくては。
桃子は境内に設置された女子トイレに行き、
怒って赤くなっている顔を両手でパンと叩いた。
そして、静かな場所で頭を冷やそうと、
意外に奥深い鎮守の森へと足を踏み入れる。

もうすぐ花火があがるはずで、
本当は、遊太郎とお揃いの浴衣を着て、一緒に見たかった。
それも、この状況では無理な夢に終わりそうだ。
昼間の岩場で、彼が笹川夏希と会っていた場面がよみがえって来る。
自分という彼女がいながら、コソコソ会っているなんて、
やっぱり彼は元カノに未練があるのだろうか……

樹の下で、立ち尽くしていると誰かの気配がした。
「?」
桃子は振り返ったとたん、身を竦ませた。


その頃。
人混みで溢れ返る参道。
男性社員ばかり固まって歩いていた時、
遊太郎は高山の姿が消えた事に気がついた。
「高山係長は?」
「さあて。えらく気張った浴衣を着ていたし、
あいつの事だから、嬉しそうにナンパでもしてるんだろう」
いつもの事だと言う斎藤課長に、遊太郎は一抹の不安を感じた。


そして鎮守の森の桃子の前には、その高山が現れていた。
黒地に銀と茶が混ざった縞模様の浴衣を着て、
桃子に接近していたのだ。
「何か用ですか?高山係長。顔、近いんですけど」
「人を痴漢みたいに言わないでくれよ。五十嵐さん。
オレの気持ちは前から分かってるだろ?」
「分かりません。興味ないし」
「相変わらずキツいなあ。その気の強さが気に入ってるんだけどね」

高山自身、ずっとこのチャンスを狙っていたようだ。
いくら桃子が気が強くても、強引にキスでもすれば、
そのうち大人しくなるはずだとタカをくくっていた。
口説き落とすテクニックに過大な自信を持っているのだ。

桃子はじりじりと迫られ、樹に背中を押し付けた。
心の中で警鐘が鳴り響く。

( 助けて。遊太郎……! )

「!」

一帯を駆け抜ける想念。
遊太郎は、それが桃子の呼び声だと察知した。
同僚達から1人抜け出した遊太郎は、途中、鳥居の前で清美と出会った。

「宮本さん、1人ですか?桃、……いえ、五十嵐さんは?」
「桃子ならトイレ。下駄の鼻緒がキツくて痛いんだって。
でも遅いから、ケータイかけたけど、通じなくて」
清美が携帯電話を耳に押し付けながら、浴衣の袖を振る。
「僕、見て来ます」
「女子トイレだし、あたし、行こっか?」
「いえ。大丈夫です」

すぐに遊太郎は走り出した。
いよいよ、桃子からの警鐘が酷くなる。
それは鎮守の森の方から伝わって来た。


〜第198回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2009-09-02 23:49