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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2009年 07月 ( 9 )   > この月の画像一覧

第187回接近遭遇「初めての合コン☆注意事項」

~もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「合コン…って、君が?」

翌日の昼下がり。
セルフサービスのコーヒー店で、
佐々木が森田遊太郎に聞き返していた。
食品会社の営業マンである佐々木は、
神経質そうな三角形の顔に、
メタルフレームの眼鏡をかけた知的な男である。

「はい。同僚に誘われてしまって。断れなくて」
遊太郎が困ったような表情をするので、
佐々木が、彼を上から下まで観察した。
確かに、まん丸メガネは愛嬌があるが、
全体的に子供っぽく、およそ合コン向きとは思えない。
佐々木はブラックコーヒーをひと口飲んで答えた。

「断れないのなら、地球人調査の一環として、
割り切って参加すればいいんじゃないかな」
「調査、ですか?」
「そう。実にくだらないけどね。僕には」
相変わらずシニカルな言い方をする。

佐々木も遊太郎と同じくサラリーマンだが、
実は、地球に派遣された銀河連盟調査員の1人である。
ただし管轄エリアも違うし、そのキャリアは比べようもなく長い。
直接的には遊太郎との交流はないが、
たまたま仕事を通じて知り合って以来、時々会っている程度だ。

「でも、同居をしている彼女が、僕が合コンに行くと知ったら、
怒ってしまったんです」
遊太郎は頭を掻いた。
ルームシェアしている五十嵐桃子が激怒して、
昨日から口も利いてもらえないのだ。
すると、佐々木が冷静に口を開いた。

「地球人女性は嫉妬深いからね。
たかが男女の交流パーティー。
君がお持ち帰りなんかしなければ、すぐに忘れてくれるよ」
「お持ち帰り? 何を持って帰るんですか」

大真面目な質問に、佐々木が珍しく声を出して笑ったが、
すぐに我に返って咳払いをした。
「これは失礼。とにかく対策としては、
気に入った女性がいても、うっかりメルアドの交換はしないこと。
そういうのは、絶対に同居人の女性にバレる。
君、正直過ぎるし」
「僕、知らない女性とそんなことはしません」
また真顔で否定するので、佐々木は苦笑いをするしかなかった。
「君みたいな地味な男なら、たぶん、大丈夫だろうね」
何が大丈夫かわからなかったが、
先輩調査員から貴重なアドバイスを受けた気がして、
遊太郎はお礼を言った。
「佐々木さん。ありがとうございます」


その夜。
マンションに帰宅した遊太郎を桃子がリビングで待っていた。
幾分反省しているようで、罰が悪そうに謝る。

「昨日はごめん。一方的に悪く言って。
やっぱり、マジで合コン行くつもりなの? 」
遊太郎はすまなさそうに頷いた。
「すみません。桃子さん。でも、すぐ帰って来ますから」
「っていうかさ。ああいう場ってアルコールは当たり前だし、
無理やり飲まされて、正体バレても知らないよ?」

そうなのだ。
信じられないことだが、彼は変身機能を使って地球人を装っている。
しかし、アルコールを一定量摂取すると、
自分の意志と関係なく、
一時的に素顔に戻ってしまうことがあり、
桃子は、これまで何度か冷や冷やしているのだ。

「桃子さん。大丈夫です。
これでも耐久時間が、少しは長くなったんですよ」
呑気にそう答える遊太郎に、彼女はわざとらしく眉を釣り上げた。
「はあ?耐久時間ってなによ」
「アルコールを摂取してから、元にもどるまでの時間です」
「ふうん。どれくらい保つわけ?1日?半日?3時間?」
「い、いえ、そんなには…」

じゃあ、全然ダメじゃん。
コイツ、バカじゃないの?
「あっそう。良かったね。
あたし疲れたし、もう寝るわ。おやすみ」
呆れ果てた彼女は、脱力したように部屋に戻って行った。

「桃子さん?」

なんとなく、また桃子を怒らせた気がする。
初めての合コンは明日に迫っていた。


~第188回をお楽しみに♪~

石井→佐々木でした。訂正させていただきます。^^;(祐)
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by yu-kawahara115 | 2009-07-29 23:26

第186回接近遭遇「宇宙人、合コンに誘われる」

~もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「俺が五十嵐を狙ってるの、前から知ってんだろ?
あんな弁当なんか作りやがって、五十嵐の気を引くつもりか。
ドンくさくて超ウザい、のび太のクセによ」

社内の資料室。
係長の高山が因縁をつけるように凄み、
遊太郎のネクタイを引っ張った。
遊太郎はいきなりなことに、
まん丸メガネの下で子犬のような黒目をキョトンとさせる。

「あ、あの。すみません。高山係長。もう一度言っください」
「ああ?」
「いまの、聞き取れなかったんです」
「な……っ?」

普通、凄まれて、啖呵をリクエストをする人間はいない。
拍子抜けした高山は、
つかんでいた遊太郎のネクタイから手を放し、
小さな子供にするように彼の頭髪をクシャクシャにした。
「お前、若ぇくせに耳が遠いのかよ。ん?
ほんっとに、しゃあねぇバカだなあ」

考えてみたら、と高山は思った。
五十嵐桃子とコイツは姉弟みたいなイトコだ。
弁当を作って彼女に渡したぐらいで、
2人の仲を勘ぐるのも大人気ない。

「ま。お前みたいなチビでガキで、垢抜けねえヤツ。
振り向くオンナもいねえよな。
その会議資料、早く会議室に運んどけよ」
仕事を押し付け、彼はくわえ煙草で、ぶらぶらと資料室を出て行った。
遊太郎は伸びきったネクタイを締め直し、
クシャクシャにされた頭をちょっと撫でた。

不思議だ。
地球人は、感情的になると早口になりやすい。
そうなると、本当にヒアリングが難しくなる。
それにしても、高山はまだ桃子を諦めていないようだ。
純粋に好きだからではなく、
女性は自分の所有物と思い込んでるようで、
今後、桃子の為に気をつけなければならないと思った。


その日の会議のあと、
営業部へやって来た数人の若い男性社員が、
遊太郎に声をかけた。
配属部署が違うが、同期入社の同僚ばかりである。
「森田。今週末、開けといて」
「はい。何かあるんですか?」
「合コンだよ。合コン。もちろん行くだろ?」
「合コン?」

あまり縁のない単語だ。
確か見知らぬ男女が一同に介し、
飲食をするイベントだったかと思う。
仕事ではないので、断ろうかと、遊太郎が口を開きかけた時、
彼らの1人が肩を強くつかんだ。

「おおっと。ダメダメ。
森田を入れた人数で店の予約してあるんだから。
当日も、ドタキャンはナシ」
「いや、あの。でも、僕は……」
「どうせ彼女いないんだし、チャンスじゃね?
それにさ、同期のよしみで誘ってやっただけでも、
ありがたく思って、付き合えって」
じゃあな、と言って彼らは遊太郎から離れた。
なんで森田なんか誘うんだと誰かが訊いて、
バカ、引き立て役だよ、と嘲り笑っている声が聞こえた。


「へえ。あんたでも、合コン行くわけ?」

突然、女の声がして、遊太郎は振り向いた。
背後で桃子が睨んでいたのだ。
おそらく全部聞いていたのだろう。顔が怖い。
彼は慌てて弁解を始めた。

「すみません。桃子さん。付き合いで、断れなくて。
これっきりにしますから……」
「いいわよ。遠慮しなくても。初めてなんでしょ。合コン」
「桃子さん、怒ってるんですか?」
「別に。なんで?」
「顔が、あの、怖いです」
「失礼な」
眉と目尻をピンと上げ、フンと鼻息を荒くした桃子は、
遊太郎に向かって小声で言い放った。

「あんた、いつも仕事、仕事って。
あたしとは付き合う時間はないくせに、合コンには行くんだね。
せいぜい可愛い女と楽しく社会勉強して来れば?」

言い捨てて、桃子は自分のデスクへ戻って行ってしまった。
どうやら本気で怒らせたようだ。
遊太郎は困り果てた。
さて、この場合どうすれば良いのだろう?
当然、対地球人マニュアルには載ってはいなかった。


~第187回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-07-26 11:55

第185回接近遭遇「宇宙人が作った弁当?」

~もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?~
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「めちゃくちゃ凝ったお弁当じゃん。どうしたの。桃子?」

会社での昼休み。
桃子が休憩室で広げた弁当に、
同僚の清美が珍しそうに眺めた。

「ひょっとしたら、作ったの、森田クン?」
「ま、まあね」
「家事とか全部やらせてるのは知ってるけど、
お弁当まで作らせてんの?」
「違うって。今朝、初めて作ってくれたんだよ」
すると、清美はニヤリとした。

「カレ、桃子のこと好きなんじゃない?」
「へっ?」

素っ頓狂な声が出たのを誤魔化すために咳払いする。
だが、清美はさらに突っ込んで来た。
「だって、わざわざお弁当まで作る?
前から怪しいと思ってたけど。
森田クン、桃子のこと好きなんだよ。きっと」
「遊太郎は、あたしのイトコだよ。なに言ってんの」
「イトコったって結婚できるじゃん」
「はあ?」

しかし、内心では結婚という単語にドキッとしていた。
お構いなしに清美の妄想は続く。
「森田クンの健気なキモチが、かわいそ。
これって報われない恋だよね。だって、桃子には彼氏がいるし」
「いないって、そんなの」
「またまたぁ。まだ続いてるんでしょ?
あたしに、いつ紹介してくれるのよ。
あの奇跡的にカッコいい、モデルみたいな超美形彼氏」
「……」


桃子はウンザリした。
口が裂けても言えないことだし、
言ったとしても信じてもらえないが、
森田遊太郎と、清美の脳内に浮かんでいる男は同一人物だ。

そこへ。
一番会いたくない男が、
桃子たちのテーブルに近づいて来た。
エリートで女癖が悪いと噂の係長、高山である。
「へえ、ちゃんと作って来てるんだ。
五十嵐君って女らしいんだね。
オレの弁当も、お願いしちゃおうかな」
「イヤです」

キッパリ言い放つ。
高山は、おおこわ、とオーバーに引いてみせたが、
清美が喋ってしまった。
「高山係長。このお弁当、森田クンが作ったみたいですよ」
「清美っ!」
面白がって、つい口を滑らせた清美は、桃子に鋭く睨まれてゴメンと謝った。
ところが既に遅く、高山が顔を嫌そうに歪ませる。

「森田ぁ?なんでヤツが弁当なんか」
「ええっと。それは…」
桃子は苦笑いしながら三文芝居を打った。
「あいつ、料理を作るのが趣味なんです。
味見して欲しいって、今朝も会社まで持って来たんで」
イトコ同士なのは周知のことだが、
遊太郎とルームシェアしていることは、清美と斉藤課長しか知らない。
遊太郎の正体がバレなくても、
不必要に詮索されることは出来るだけ避けたかった。

「男のくせに手作り弁当?女々しいヤツ」
高山はつまらなさそうに言い、休憩室から出て行った。
すぐに桃子が清美の腕をつかむ。
「ちょっと、清美。調子に乗りすぎ!
一緒に暮らしてるの、高山なんかにバレたら、
色々うるさいんだからね」
「ホントにゴメン、桃子」
必死に謝る彼女に、ため息をついた。
遊太郎には悪いが、こんな弁当は最初で最後にしてもらおう。


一方、高山は資料室に顔を出していた。
依頼していた会議資料を取りに来たのだ。
大量のコピーに埋もれているのは、
高校生のような童顔の若い男。
つまり、森田遊太郎である。
ズリ落ち気味のまん丸メガネを直さずに、
生真面目に人数分のレジメをコツコツと作っている。

「森田。お前1人に任せちまって悪いなあ。
得意先の電話に捕まって、抜けられなくてよ」
白々しいウソをつく高山に、
遊太郎は、にっこりして、いいえと笑った。
「大丈夫です。高山係長。もうすぐ出来ますから。
午後からの会議には間に合いそうです」
「ふうん」
一瞬探るような表情に変わって、彼は遊太郎の前に立ちふさがった。


「お前さ、五十嵐桃子に気があんのか?」
「え?」
おっとりした子供のような顔が、やや固くなる。
高山が鼻先で笑い、遊太郎のネクタイをぐいとつかんで引き寄せた。

「オレが五十嵐を狙ってるの、前から知ってんだろ?
あんな弁当作って、気を引くつもりか。
ドンくさくて、超ウザいのび太のクセによ」


~第186回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-07-23 00:13

第184回接近遭遇「復活のルームシェア」

~もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

桃子は、
プレーンオムレツの優しい匂いで目を覚ました。
元気良く起きて部屋からキッチンへ顔を出す。

「おっはよ。遊太郎!」
「おはようございます。桃子さん」

レモンイエローのエプロンをつけた遊太郎が、
タイミング良く、搾りたてのオレンジジュースを、
彼女の目の前に置いてくれた。
オムレツは美味しそうに湯気を立て、
ソファーに座った桃子は伸びをしながら新聞を広げた。

すっかり元の生活に戻った2人のルームシェア生活。
あれから桃子は、すぐ退院して、元気に会社にも出勤しているし、
遊太郎も社員寮から、再び引っ越して来た。

「ねえ。今夜こそ一緒に晩ご飯食べられる?」

桃子は新聞に目を通しながら訊いた。
遊太郎は器用にも、作り置きした惣菜を、
手際良く冷蔵庫に格納しているところだった。
既に桃子の分も洗濯が終わって、いつもながら家事全般完璧だ。
どちらが男で女なのか分からない。

「すみません、桃子さん。今夜は接待で遅くなるんです」
エプロンを外しながら、遊太郎が謝った。
とたんに桃子の顔がふくれる。
「ええ~? またあ?
復帰してから、接待とか残業ばっかじゃん」
すると、彼は困ったように頭を掻いた。

「得意先との約束とか、たまっちゃってて」
「はあ? ちょっと待ってよ。
たまっちゃってたって。
あんたの代わりにハトルってエージェントが働いてたんじゃないの。
何のための影武者?」
「あ。いえ、エージェントはきちんと代わりをしてくれていました」
「つまり、時間外労働の、接待とか余計な仕事までは、
やってくれてなかったってこと?」

遊太郎が記憶障害を起こしていた1ヶ月、
エージェントのハトルが遊太郎に変装して、
営業マンとして仕事をこなしていたはずだ。
ところが事務的過ぎて、
時間外労働までは真似していなかったようである。

「せっかくまた一緒に暮らせるようになったのに、
スレ違いだよね」

ため息をついて、立ち上がった彼女に、
遊太郎は、にっこりしてフォローした。
「その代わり、というのはおかしいですが。
桃子さんのお弁当を作りましたから、食べてみてくださいね」
「へっ?」

なんだって?
これには桃子は目を大きく見開いて絶句した。
彼が、可愛いピンクのランチボックスを出して来たからだ。

「い、いつの間に?なんで?」
「前から気になってたんです。
桃子さんは、いつも昼はコンビニ弁当みたいで、
栄養が取れてないんじゃないかって」
「いや、あ、あのね。キモチは嬉しいんだけどさ。
遊太郎は、あたしのお母さんじゃないんだから、
お弁当まで作んなくっていいんだよ?」
「でも夕飯の仕込みと一緒に簡単に出来るし、
作るのは楽しいですから、気にしないで下さい」
行ってきますと言って、
遊太郎は足早に出て行った。

残された桃子は、ピンク色の弁当箱を前に考え込んだ。
とても嬉しいし、正直いって有り難い。
もちろん食べたいのは山々だが、
これじゃ、逆転カップルだ。

朝のシャワーを浴びたあと、身支度をしながら反省をする。
26なんだし、そろそろ女らしく、
掃除も料理も出来るようになった方がいいんだろうな。
一緒に住んでる年下の男に全部やらせて、
自分はオヤジみたいに新聞読んだり、夜はビールを飲んで、
作ってもらった夕飯を肴にゴロゴロしてるなんて。
これじゃ一生、お嫁なんかに行けないかも。

それでも、遊太郎が忙しいなか、
一生懸命作ってくれたお手製弁当を持って、
桃子は会社へ出勤することにした。


~第185回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-07-20 00:02

第184回接近遭遇「父、ソリュート星へ帰る」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「あのバカを何とかしてくれ。ドクター律子。
私の命令を綺麗に無視して、あんな身体で、
桃子君に会いに行ったのだからな」

銀河連盟ステーションのコントロールセンターで、
ロータスがモニターに向かって怒鳴っていた。
そこに映し出されているのは、
地球在住のヒーラーであり、女医の天野律子である。

「それが恋人というものよ、ロータス。
レンは、きっと桃子さんのそばに行ってあげることが、
最優先だと感じたのよ」
「それは分かるが。
記憶障害こそ免れたものの、
今回は、隕石の破片をまともに胸に受けていたのだ。
それなのに平気で動き回っている。
どうなっても、私は知らんからな」

肩をそびやかすロータスへ、天野律子は柔らかくフォローした。
「私が定期的に彼をヒーリングするから、許してあげたら?」
「他のメンバーのように、
大人しく君のクリニックに通う男と思うかね?」
「そうだったわね。彼、私のことが苦手なのかも。
こんな美女をつかまえて、失礼よね」
冗談を言うが、ロータスは聞いていなかった。


しばらく間をおいて、律子が真顔で尋ねる。
「ところで、レンのお父様は?
和解したと聞いているけれど」
その質問に、温厚さを取り戻して深く頷いた。
「ソリュート陛下なら、まもなく帰星されるそうだ。
先刻、ステーションに戻って来たレンと、会っておられる」
「そう。じゃあ、親子の別れを邪魔できないから、
あなたのお説教は、やっぱり後回しね」
悪戯っぽく片目を瞑る美女に、
ロータスは、ムスッとしてそっぽを向いた。


噂のレンは、透明な天蓋に覆われた巨大ホールに居た。
長椅子に腰掛けているのは、ソリュート王である。
遠巻きにソリュート騎士団が仰々しく警護するなかで、
天の川を眺めながら2人は対話をしていた。

「本当に、心配をおかけして申し訳ありませんでした」

レンが頭を下げると、王は素っ気なく答えた。
「別に心配などしてはおらん。
お前に傷を負わせたまま帰れば、
寝覚めが悪いと思っただけだ」
相変わらず無愛想な態度だが、不思議ともう気にはならなかった。
不器用ながら、この王の愛情表現なのだと理解したからだ。

少し間を置いて、ソリュート王が訊いた。
「ところで。ソリュート星へ帰る前に確かめたいことがある」
「はい」
「あの五十嵐桃子とかいう地球人とは、
この先も、ずっと暮らすつもりなのか?」
「彼女に嫌われなければ」
わざと冗談のような答えをした彼だが、
ソリュート王は重々しい口調で諭すように言った。

「私は冗談で訊いたのではない。
長寿で不老な我々に比べ、地球人の寿命は、はるかに短い。
その前に、お前はあくまでも地球に派遣された調査員だ。
あの娘の人生を、お前の勝手で振り回すものではない」
「……」
レンは、少し眉を曇らせ、ソリュート王は語気を和らげた。
「誤解するな。お前を星へ連れ戻そうとして、
こんな酷な事を口にしている訳ではないのだ。
あの娘が好きなら、幸せを願うなら、
自分の立場をわきまえろ」
「……分かっています」

レンは広がる天の川を遠い目で眺めた。
言われなくても分かっている。
お互いに、住む世界も人種も立場も違う。
つかの間の同居人のスタンスでいるべきなのだ。
しかし、いまは彼女を大切に想い、出来る限り守りたかった。

「お前は、本当に馬鹿な奴だな」

レンの心を察したかのように、王はつぶやいた。
「この広い宇宙には星の数ほど美しい女がいるというのに。
寄りによって、銀河の外れの、あんな破天荒な娘が良いとは。
全く、お前の好みがわからぬ」
すると、レンは当然のように言い返した。

「彼女は、一本気な素晴らしい女性ですよ」
「ほう」

あまりにきっぱり言うので、ソリュート王は思わずふっと笑う。
先日の夜、生意気にも自分に意見した桃子の顔がよぎったのだ。
そんな、初めて笑う父親を見て、レンは驚いた。
それが桃子のもたらした一番の奇跡かもしれない。

「レン。あの娘に伝えろ。
料理ぐらいは出来るようになれとな」


~第185回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-07-16 23:58

第183回接近遭遇「そばにいて欲しいから」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「桃子さんが目覚めさせてくれたので、
あの世界から戻ることが出来ました」

緊急入院した桃子の病室を見舞ったレンは、
彼女の手にそっと触れた。
すぐに彼から温かな波動が伝わり、全身に行き渡る。
「遊太郎も無事だったんだ。良かった…!」
桃子は心の底から笑顔を見せた。
彼は気遣うように言う。

「僕のせいで、桃子さんを疲れさせてしまいました。
…本当に、すみません」
すると、桃子は平気だよ、と明るく舌を出した。
「だって、お母さんが大騒ぎして救急車を呼んじゃうんだもん。
明日には退院できるから心配しないで。
それより、何で、あんな怖い場所に捕まってたの?
お父さんとステーションで再会してたんじゃなかったっけ?」

入院中だろうと関係なく、
いつものようにストレートに質問攻めにするので、
レンは少し戸惑ったように答えた。
「ちょっと、アクシデントがあっただけで…」
「ちょっと?あれで?まぁた、なんか、隠してるでしょ」
彼を上目遣いに見やったが、
それ以上追及する気はなさそうだった。

「まあいいや。超手強いお父さんだし、
一筋縄にはいかないだろうと思ってたから」
「大丈夫です。父とは和解しました」
「えっ?ホント?」

彼女が目を大きく見開いたので、彼は微笑みながら頷いた。
父であるソリュート王との、長きに渡った確執が、
少しずつだが氷のように溶け始めているのだ。
奇跡が起きたとしか言いようがない。

「良かったね。遊太郎」
「桃子さんのお陰です」
「あたしは別に何もしてないよ。それで、お父さんといっぱい話せた?」
「いえ、まだ。あまり話さない人ですから」
「それは遊太郎もでしょ。
顔とか全然似てないけど、そういうとこ親子だよね。
ていうか、おじさんもテレくさいんだと思うよ」

ここまで喋った時、桃子はあることを思い出した。
「そうだ。ごめんね。あたし、遊太郎のマグ、割っちゃった」
リビングのソファから転倒した時、
手からマグカップが離れて、少し欠けてしまったのだ。
レンは謝る桃子の手をもう一度、握った。
「そんなことは気にしないで。ゆっくり身体を治して下さい」
「もう元気になったって。遊太郎が来てくれたから」
彼女は、にこっとして可愛い拳を作ってみせた。
彼から伝わる温かい波動が、すっかり彼女を癒やしてしまったようだ。


楽しい時間は早く感じられる。
桃子のそばに、もう少し居たいが、
レンはステーションへ戻らなければならなかった。
彼女には伏せてあるものの、
長時間マイナス磁場に滞留していたため、
森田遊太郎に変身するのが、やっとだったのだ。
絶対安静を上司ロータスに命じられたのに、
こっそり抜け出したのがバレたら、説教どころでは済まない。


「え?もう帰っちゃうの?」
名残惜しそうに、桃子は彼を見上げる。
「今日は、時間があまりなくて…」
「やっと会えたのに?」
「すみません」
「いっぱい心配したんだよ?」
「…はい」
「仕事で忙しいのはわかるんだけど、
もうちょっと、いてよ」

彼を困らせるつもりなはかったが、
今日はワガママを言いたい気分だった。
色々なことがありすぎて、2人きりの時間がなかったせいもある。

しばらく黙っていたレンは、スッと高い背をかがめて、
桃子に顔を近づけた。
端正な白い顔が間近に迫る。
青く、青く、限りなく澄んだ瞳が、形の美しい唇が、
ふっと彼女を黙らせてしまった。
…ずるい、と桃子は心の中で思った。
こんな優しいキスをされてしまうと、文句が言えなくなってしまう。

レンはゆっくりと桃子から離れて、微笑み、そして消えた。
彼女は残像を目で追いながら、もう、と顔を赤らめる。
もっともっと話したかったのに。
もっと触れていたかったのに。

「遊太郎のバカ…」

それでも、指先を唇に当て、
ほのかに残る余韻に幸せを感じていた。


~第184回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-07-12 15:09

第182回接近遭遇「サプライズな見舞い客」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「桃子、何やってたの?
凄く体力が消耗してるって、先生がビックリしてたわよ。
やっぱり遊太郎ちゃんがついてなきゃダメねえ」

桃子の枕元で、母親の博子の説教がうるさかった。
あれから、偶然マンションへ訪れた博子に、
床に倒れて身動きできずにいるところを発見され、
大袈裟にも救急車で病院に運ばれたのだ。
医者は極度の過労だと診断したが、
まさか体外離脱して、妙な世界に飛んでましたとは、言えない。

あの暗闇の恐ろしい世界に、
そんなに長く居なかったはずなのに、
これほど消耗してしまうという事が信じられなかった。
あの時、桃子だけを現実世界へ逃がしてくれた、
遊太郎の事がとても心配になる。
部長の神崎に聞けば何か分かるかもしれないが、
強制的に病院送りになった為に、部屋に携帯電話を置いて来てしまった。


点滴を受けながら、あれこれと考えを巡らすうち、
いつの間にか眠ったようだ。
目を覚ますともう夕刻で、
病室の窓からオレンジ色の陽の光が差し込んでいた。
母親が誰かと話してる賑やかな声が響いて来たので、
入口が開けられた瞬間、桃子はギョッとした。

入って来た見舞い客は、
まるで高校生のような童顔の若い男。
黒縁のまん丸メガネをかけ、おっとりとした風情で、
持って来た花を博子に渡して、ニコニコと挨拶をしている。

(ゆ、遊太郎?)

ううん、そんなはずないじゃん。
桃子は落ち着いて考えようとした。
あれは、派遣されている影武者のハトルに違いない。
何故なら遊太郎、つまりレンが、
あそこから無事脱出したとしても、
自分と同じように相当体力を消耗してるはずで、
すぐには地球人・森田遊太郎の姿で、
復活など出来ないと思うからだ。


この少年のように小柄な見舞い客に、博子がヒソヒソ声で、
楽しそうに話していた。
「遊太郎ちゃん。あたしはお邪魔みたいだから、外に出てるわね。
どうぞ、2人で、ごゆっくりぃ~♪」
お調子者の博子の言い方が恥ずかしかった。
影武者のハトルに何と思われるだろう。
そんな博子が病室を出て行ったあと、彼が近づいて来た。
前は区別がついたが、もう自分でさえ見間違いそうなのだから、
ハトルは本当に影武者のプロだ。
礼儀正しく鞄を足元に鞄を置いて桃子に話しかける。

「大丈夫ですか?すみません。もっと早く来たかったんですが…」
言いかけた言葉を途中で遮って、桃子が喋り出す。
「ホント。ハトルさんって影武者としてカンペキですよね。
あたしなんかのお見舞いにまで、わざわざ来てくれるんだから」
「え?」
ハトルがキョトンと首を傾げるが、さらに付け加える。

「遊太郎のフリをするのは会社だけで充分ですよ?
ウチの母の手前もあるし、顔を見せに来て下さったんですよね。
ホントに、お仕事ご苦労様です」
「……」
すると、相手が不意に黙ってしまったので、
桃子は、おや?と思った。
仕事の一環とはいえ、
せっかくお見舞いに来てくれたハトルに、
ちょっと失礼だったかなと反省しかけた時…


彼は、そっとメガネを外した。
子供のような顔や小柄な輪郭が、徐々ににぼやけていく。
まるで映画のCGを見ているようだ。

「あ……っ!」

桃子は、思わず声を上げてしまった。
魔法が溶けたように現れた本当の姿は、
スラリとした長身痩躯の美しい青年。
プラチナの髪が、夕陽の光を帯びて透明に輝き、
涼やかな青灰色の瞳が真っ直ぐに桃子を見つめている。
見舞い客はハトルではなく、
本物の遊太郎、本物のレンだったのだ。

「え?ええ?…ゆ、遊太郎だったの?」

あまりの展開に、桃子が真っ赤になって慌てていると、
レンは微笑みながら、形の良い唇を開いた。

「桃子さんが目覚めさせてくれたので、
あの世界から戻って来ることが出来ました」


~第183回へ続く~
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by yu-kawahara115 | 2009-07-08 23:53

第181回接近遭遇「闇からの帰還」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

レンは、暗黒の想念世界から、桃子を現実へ押し戻した。
気にかかるのは、彼女が自分の肉体へ戻ったあとだ。
普通の人間は、強力なマイナスエネルギーに晒されると、
体力を激しく消耗してしまう。
もしかしたら倒れているかもしれず、
出来れば早く彼女のそばへ行きたかった。

その時。
レンの背後で、蠢く無数の蛇たちが、
一つの巨大な塊を形作っていた。
まるで、それは禍々しい黒い大蛇のように、
三角形の鎌首を持ち上げ、凄まじい速さで突進して来る。
ハッと気づいた時には遅く、
黒いエネルギーの奔流が、一気に彼の身体を貫通していた。


「…っ!」

レンは、激しい苦痛に顔を歪ませて地に転がった。
精神体とはいえ、胸に穴を開けられては、
急激に生命エネルギーを奪われてしまう。
暗黒のそらに、大蛇が大きく旋回しながら、
再び、襲いかかろうと狙いを定めていた。

(レン!)

不意に、自分を強く呼ぶ声に彼は顔を上げた。
上司のロータスのものではない。
誰……?

(戻って来い。レン。
お前は、私にとって、たった1人の息子なのだぞ…!)

すぐには信じられなかった。
響いてきた声の主は、あのソリュート王だったのだ。
生まれて初めて聞いた、父親の心からの言葉。

「お父…さ…ん!」

レンは、声がする方向へ意識を集中させた。
果てしなかった暗闇の世界に、一筋の淡い光が広がる。
現実の光だ。
巨大な大蛇が襲う直前に残った力を振り絞って、
迷わず光の中へ跳んだ。



突然、派手な音が響いた。
自分の肉体に戻ったとたん、レンはベッドから落ち、
そばにいたソリュート王が驚いて、反射的に彼を支えようと腕を伸ばした。
「大丈夫か、レン?」
「……」
深い海の底から生還した者のように、
レンは荒く速い呼吸をしながら、なんとか声を出そうと試みた。

「桃子さんを…」
「?」
「早く、…行かないと」
「何を言っているのだ、レン?」

王に事情を説明ようとしたが、
胸が痛み、激しく咳込んだ。
そこへ、タイミング良くロータスがブース内部へ現れる。

「やあ、レン。
あちら側は、けっこうハードだったようだな?」

こんな際にジョークを飛ばすロータスに、
ソリュート王は険しい表情で訊いた。
「あちら側だと?」
「ええ。ソリュート陛下。
彼は、たぶんマイナスエネルギー集積磁場に取り込まれ、
深いダイブから、こちら側へ還って来たところなのです」

ロータスは、素早く精神を集中させ、
レンの思念を読み取り始めた。
やがて、なるほどと頷きながら口を開いた。

「あの桃子君がマイナスエネルギー集積磁場に現れ、
君を目覚めさせたのか。
だが、先に桃子君を現実へ帰らせた。
長く居るとダメージは確かに大きいからな」

ロータスが意訳する話は、ソリュート王にとって理解不能なものだった。
あの生意気にも自分に意見した五十嵐桃子が、
レンを呼び覚ましたというが、
離れた場所にいるというのに、
そんな事がどうやって出来るのだ。
怪訝な表情の王に構わず、ロータスは親指を立てた。

「分かった。すぐに桃子君の様子を見に行かせよう。
君は安心して自分の身体の回復に努めなさい。
くれぐれも、こっそり抜け出すなよ?レン」

悪戯っぽく片目を瞑ってみせてから、
ロータスはソリュート王に目礼してブースを出て行った。

そのあと、2人きりになったところで、
レンは、立ち上がり、ソリュート王へ向き直った。
ようやく声が出るようになったからだ。

「僕が、現実へ戻って来れたのは桃子さんと、
あなたの声が、はっきり聞こえたからです」
「私の声が?」

それを聞いた王は、どう答えていいのか分からず、
伏し目がちに、もらした。
「…私は、酷いことを、お前にしてしまった」
「いいえ」
レンは首を振った。
ソリュート王は、自分をたった1人の息子だと言ってくれたのだ。
それだけで充分だった。

「ありがとう。お父さん」

父が驚いて、息子を見つめる。
言葉はもう必要がない。
長い間の氷が溶けてゆく、はじまりだった。


~第182回に続く~
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by yu-kawahara115 | 2009-07-05 15:38

第180回接近遭遇「キスで目覚めて」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

(お願い。あたしのところに戻って来て。遊太郎!)

レンが引きずり込まれていたマイナス磁場の想念世界。
桃子は意を決して、十字架に貼り付けられている彼の唇にキスをした。
想いなら、誰にも負けない。
きっと、目覚めさせてみせる。
そんな彼女の足元へ、ざわりざわりと、蛇たちが群がって来ていた。

その時。
レンの指がピクリと動いた。
閉じた両眼が静かに見開かれてゆく。
その青灰色の瞳から、闇を裂くように強い光が放たれ、
桃子は、息を呑んだ。

( 遊太郎! )

自分の想いが通じて、彼は目覚めたのだ。
しかし、喜んだのもつかの間、
足元から張って登って来た蛇たちが、
彼女の真後ろから、牙を向いて襲いかかろうとしていた。

…そこへ。


( 消えろ! )

レンの思念波が、ピンポイントで放射され、
桃子に群がろうとしていた蛇たちが呻き声を上げて飛散した。
この勢いで、彼の身体に絡みついた蛇たちも力を緩め、
レンは十字架から自由を取り戻すことが出来た。

(桃子さん、大丈夫ですか?)
( それは、こっちのセリフだよ。遊太郎。
でも、良かった。本当に良かった )

泣きそうになる彼女を、レンは優しく庇うように抱き締めた。

( 桃子さんのお陰です。
奴らに取り込まれて、身動きが出来なかったから。
…でも、どうやってここへ?)
( うん。遊太郎に気持ちが通じるかなって祈ってたら、
いつの間にか、来てたんだ。
でも、もう、これで大丈夫だよね?)

彼女の無邪気な問いに、
レンは険しい表情で首を振った。

( いえ。まだ油断は出来ません。
あなただけでも、早く現実世界へ戻さなければ。
あなたの身体が壊れてしまいます )

暗黒のそらに蠢く不気味な無数の顔。
恨みや悲しみ、絶望が入り乱れた想念が息苦しいほどに満ちていた。

( 桃子さん。ここへ来る直前、何か見ていましたか?
現実世界のシンボルをイメージ出来れば、帰れるかもしれません)
桃子は、突然の質問に怪訝な表情を作った。
そんなことを言われても…

( ええっと。確か、リビングのソファに座って。
遊太郎のマグカップを持って祈ってたら、
ウトウトしちゃって…)
彼女の脳裏に、レモンイエローのマグカップが鮮明に蘇った。
レンは、素早くそのイメージを捉え、固定した。

( それだ!)

そして急に、桃子を自分から突き放した。
いきなりだったので、彼女は抵抗も出来ず、目を大きく見開いたまま、
虚空へ飛ばされていった。

( 何するのよ、遊太郎っ!)

文句を言うが、どんどんレンから引き離され、上昇していく。
本当に悪夢のようだ。
彼が真っ直ぐ自分を見つめている姿が遠くなり、
やがて黒い想念に埋もれ、何も見えなくなってしまった。

( 遊太郎…!! )



気がつくと、
桃子の視界に見慣れた天井や窓のカーテンが映っていた。
現実へ戻って来たのだ。
あの暗黒の世界へ迷い込んで、それほど時間は経っていないはずだが、
身体が麻痺して全く動かなかった。
なんとか目だけ動かし、
手に持っていたはずのマグカップを探してみる。
それは数メートル離れたところに転がり、
取っ手の部分が欠けて砕けていた。

「遊太郎は…?」

自分を脱出させるために、現実世界へ突き飛ばしたあと、
彼はどうなったのだろう?
まさか、あの恐ろしい蛇みたいな黒いものに…

桃子は、身動きができないまま涙だけポロポロ流した。
せっかく、遊太郎を助けようと思って飛び込んだのに、
また逆に助けられてしまうなんて。
あたしだけ、こっちに戻っちゃうなんて。
全然、ダメじゃん。
こんなのって、嫌だよ。
遊太郎、遊太郎、遊太郎、遊太郎、遊太郎……!

あとからあとから、
涙がこぼれて止むことがなかった。


~第181回へ続く~
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by yu-kawahara115 | 2009-07-02 00:10