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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2009年 06月 ( 6 )   > この月の画像一覧

第179回接近遭遇「ソリュート王の涙、桃子の想い」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ソリュート王は、ロータスの案内により、
レンの個人ケアブースへ向かった。
入口のセキュリティーロックを解除しながら、
ロータスが、こんな事を話した。

「あなたのご子息のレンは、
私の部下の中では最年少の調査員です。
ですが、誰よりも平然と、危険な任務に飛び込んでいく。
特に気負ったところもなく、
それが普通に出来てしまうのです。
死ぬ直前まで、超然と荒野を歩き続ける野生の獣に似ています。
少しも、自分を大切にしない。
何故、あんな風なのか、あなたには分かりますか」
「……」

ソリュート王は何も答えられなかった。
レンが、そういう風になったのは、
父親である自分のせいかもしれない。
特殊な能力を持つ子供だった彼を、
ずっと疎ましく思い、遠ざけていた。
そして、あの隕石事故の時から今まで、
お前など生まれなければ良かったと、恨み続けて来たのだ。


「こちらです」

ロータスがブース内部へ入るよう誘導した。
そのあとソリュート王を残し、立ち去ろうとしたため、
少し皮肉を込めて訊いた。
「息子を殺そうとした父親と、こんな密室に2人きりにして良いのか?」
すると、ロータスは溜め息混じりに首を振った。
「あのような状態のレンをご覧になれば、
もう、そんな気は起きないはずです。
私は外のフロアでお待ちしていますので、
何か変わったことがあれば、知らせて下さい」
ドアが閉じる電子音が消えると、
王は、ゆっくりとブースの奥に設置されたベッドに近づいた。


そこに、
真っ白な肌の青年がベッドに横たわっていた。
魂が何かにさらわれたような、生ける屍に見えた。

「レン…」

息子の顔など、今まで間近に見た事はなかった。
王妃やソフィ王女に顔立ちが酷似している事が、より憎々しくて、
ありのままの彼を受け入れようとはしなかったからだ。

今、ようやく、ぎこちなくではあるが、
額から頬にかけて触れてみた。
やはり体温がないかのように冷たい。
ふと、首筋に視線が落ちた。
先刻、締め殺そうとした自分の指の跡がまだ青く残っていて、
再び激しい後悔と罪悪感が襲って来た。
あんな危険な隕石を持ち出し、
何故、彼の真意を試すなどという、恐ろしい真似をしたのだろう。

「私を、…許してくれ。レン」

管に繋がれた彼の手を握り締めた。
そして、今さら気づく。
数年前の隕石事故で、一番深い傷を負ったのは、
他でもない、息子だったのだと。
それなのに全責任をレンに押しつけ、現実から逃避して来たのだと。

「戻って来い。レン。
お前は、私の、たった1人の息子なのだぞ…!」



そのレンの魂が堕ちていたのは、暗黒の想念世界だった。
隕石がもたらした強力に渦巻くマイナスの磁場に、
精神もろとも取り込まれていたのだ。
十字架にかけられているかのように、
全身を縛り付けているものは、蛇の形態をした想念の塊である。
塊の、ひとつひとつの顔は人間のように見え、
呪詛に満ち、牙を隠しながら、
彼の生命エネルギーを残らず呑み干そうと隙を伺っていた。

( 遊太郎…! )

偶然にも、
その想念世界に足を踏み入れていた桃子は、
この光景に遭遇し、恐ろしくて、ただ震えていた。
しかし、いつまでも怖がっているわけにはいかなかった。

今まで、何度も何度もレンに命を救われて来た。
どれほど危ない目に遭わせて来たか、よく分かっている。
だから、今度は自分が彼を助けなければ。
好きだからこそ、絶対に救いたいと思った。

桃子は、レンの俯いた顔へ両手を伸ばし、
包み込むようにして自分の方へ向かせた。
周りにひしめく無数の蛇が、
鎌首を持ち上げて、おぞましくも睨んでいるが、
構わず彼女は、彼の唇にキスをした。
想像した通りの冷たい唇。
気が萎えそうになったが、心から想いを込めて熱いキスをした。

( お願い。あたしのところに戻って来て。遊太郎! )


~第180回へ続く~
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by yu-kawahara115 | 2009-06-28 00:17

第178回接近遭遇「想念世界の十字架」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

その頃。
何も知らない桃子は、日曜日の気怠い午後に、
マンションで母親の博子の電話に不機嫌になっていた。
「なんの用?」
乱暴に出ると博子が呆れる。
「なに、親に向かってその言い方。
せっかく遊太郎ちゃんとの仲を認めてあげようと思ったのに」
「はあ?」

彼女は頬を丸く膨らませた。
何よ、急に。
イトコ同士で付き合うのは反対だって言ってたくせに。
すると博子が大袈裟に咳払いをした。
「どこの馬の骨ともわからない男より、
イトコで、三つも年下でも遊太郎ちゃんなら安心だって、
お父さんが言い出したのよ」
「へえ?」

つまり、自分と遊太郎の付き合いを許したという意味だろうか。
「ひょっとして」
「そうよ。遊太郎ちゃんが出て行って、あんた、ずっと変だったでしょ。
だから、お父さんが心配してうるさいの。
まあ、最初、あんた達を一緒に同居させたのは、こっちだし。
別にイトコ同士で、そうなって悪くないわけだし」
「そんなの、最初っから言ってるじゃん」

はいはい、と博子の鼻白んだ顔が想像できた。
「だから、早く遊太郎ちゃんを社員寮から呼び戻しなさいよ」
言い捨てて、一方的に電話を切った。

桃子は、現金にもバンザイをした。
実際、遊太郎はイトコのフリをしているので、
良心が少しばかり痛んだけれど仕方がない。
あとは、彼が父親のソリュート王と和解するだけだが…
ふと、桃子は彼が使っていた、お揃いのマグカップを手にした。

そういえば昨日、離れた場所でも、彼は気持ちを送ってくれていた。
だから、強気でソリュート王に意見も出来たのだ。
同じことが自分に出来るとは思わないが、
月にいる遊太郎、つまりレンへ、気持ちを送ってみよう。
桃子はカップを温めるように両手で持ち、
レンの顔を思い浮かべてみた。


勢い込んだのは良かったが
いつの間にかウトウトしたようだ。
気がつくと桃子は暗闇の中を歩いていた。
きっと夢を見ているんだろうなと思いながら、

( ねえ。遊太郎、どこかにいるの? )

と、話しかけてみた。

(こんな真っ暗闇、ひとりじゃ、夢でも怖すぎるよ。
遊太郎に会いたい…)

すると、闇の一角が淡く薄れて、白い何かが見えた。
恐る恐る近寄ると、人の顔のようだ。
下を向いている端正な横顔に前髪がかかって、
目もとは見えなかったが、レンであることはすぐに分かった。

( 遊太郎! )

喜んで、さらに近づいた彼女は、ハッとして怯んだ。
彼の全身が、何か得体の知れない黒いものに縛り付けられていたからだ。
両側には、彼の手首から下がだらりと落ちている。
まるで黒い十字架に貼り付けにされているようだ。

( ねえ、どうしたの? 何でこんなことになってるの? 遊太郎! )

問いかけてみたが、深く俯いたレンに反応はない。
よく観察すると、彼の喉元まで黒い何かが覆っていて、
生き物のようにぞろぞろと蠢いて、無数の蛇に見えた。

脚が震える。怖い。
こんな気味悪いものは見たことがない。
絶対、普通の蛇じゃない。
でも、絡みついた蛇のようなものを引き剥がさないと、
彼が、どんどん生気を吸い取られてしまうと思った。
どうしよう…
桃子は、悪夢のような想念世界の中で途方に暮れた。



同じ時。
月の裏側にある銀河連盟ステーションのゲストルームに、
ロータスが訪れていた。
彼の足音を聞いたソリュート王は、
額に押し付けていた手を外した。

「…レンは、どうなのだ?」
「人並みに、心配ですか」

温厚な人柄のロータスには珍しく、皮肉をさらりと口にする。
それでも、憔悴した王の様子を見て取り、
少し労るように付け加えた。

「レンの全身に及んでいた、隕石の放射線や有害波動は除去しました。
まだ深い昏睡状態ですが、さっき個人ケアブースに移したところです。
お会いになりますか?」
「……」

ソリュート王は、重い表情のまま、黙って立ち上がった。


~第179回へ続く~
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by yu-kawahara115 | 2009-06-24 23:48

第177回接近遭遇「大きな代償」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「レン?」

ソリュート王には何が起こったのか、分からなかった。
手にした隕石をレンの胸に落とした瞬間、
まるで見えない触手に蝕まれるように、
彼から急速に血の気が引いていったのだ。
レンは苦悶の表情で、浅い呼吸を繰り返したあと、ふっつりと意識を失った。


「失礼」
VIPルームへ、慌ただしい足音を響かせて、
上司キャプテン・ロータスが現れた。
数人のスタッフを引き連れている。
おそらく不穏な波動を捕捉したのだろう。
ソリュート王の足元に横たわっているレンを見て、
すぐに険しい表情に変わった。
彼の白い首筋に、締め付けた指の跡を認め、
訊かなくても誰のものか想像出来たようだ。
さらに胸に置かれていた石をすぐに取り外して、やり切れないように頭を振る。

「ソリュート陛下。彼に、一体何をしたのです?」
ロータスは、王に向き直って詰問した。
「まさか、あなたは、ご自分の息子に手をかけたのか?」
それに対して、王は抑揚のない声音で答えた。

「試したのだ」
「試した?何を」
「レンは、私の望む通りにしていいと言った。
もう過去から逃げないと。
その意志が、嘘かどうかを、試したのだ」
「それで、この隕石を使ったと?」

王が無言で肯定すると、ロータスは厳しく糾弾した。
「何ということを!
この有害極まる隕石が、特殊能力者に、どれほど危険なものか、
あなたは、全く分かってない」
「分かっている」
「いや。本当に分かっていたら、このような事は出来ないはずです。
以前、あなたの指示でランドエル博士が持ち出した同じ石の破片で、
彼は記憶障害を引き起こし、ようやく回復したのですよ。
それを承知で、今度は自ら、このような真似をされるとは。
それでも、あなたは父親か」

厳しい言葉に、ソリュート王は独り言のようにつぶやいた。
「まともに、受け止めるとは思わなかったのだ。
地球まで来た私を、疎ましく感じて、
うまくやり過ごそうと企んでいると考えていた。
レンも、私を憎んでいるはずだからだ」

これを聞いたロータスは、深い溜め息を吐き出した。
「昔のいきさつは聞いています。
きっと彼は、どんなに言葉を尽くしても、
いまの自分の気持ちが、あなたへ通じないと思ったのでしょう。
だから、身を持って証明するしかないと覚悟していた」
「身を持って…?」
「レンは、そういう人間なのです」


ソリュート王は彫り深い眉間を曇らせ、額に手をあてがった。
お父さん、と、レンは呼んだ。
今まで、やり場のない怒りや悲しみ、
恨みをぶつけて来た相手が、
血を分けた息子であることを、今更のように認識した瞬間だった。
医療スタッフがレンを搬送する光景を見ながら、王は低く、ポツリと尋ねた。

「…息子は、どうなる?」

それには答えず、ロータスは踵を返した。
去り際、事務的に言い放つ。
「しばらく、あなたを別室で軟禁させて頂く。
よろしいですね?」
「……」

ただ1人残されたVIPルームで、
ソリュート王は、茫然と立ち尽くしていた。

(遊太郎も、ずっと苦しんでいる)

そう言っていた地球人の娘、五十嵐桃子の真っ直ぐな瞳が、
今再び、心に響いた。


~第178回へ続く~
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by yu-kawahara115 | 2009-06-20 15:50

第176回接近遭遇「父に試されるレン」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

月の裏側に浮遊する銀河連盟ステーション。
そのVIPルーム。
ソリュート王が金色の長椅子に座り、息子であるレンとの再会に臨んでいた。

「お前の恋人は、生意気な娘だな」

数年振りに直接逢ったというのに、
王の口について出たのが、五十嵐桃子への感想だった。
「あんな礼儀知らずで破天荒な地球人が好きなのか。
だから、我がソリュート星への帰還命令に応じなかったと?」
「そうです」
はっきりと肯定したレンは、父親と数メートルの距離を置いて立った。

「でも、それだけではありません。
僕は銀河連盟調査員として、地球で仕事を続けたいんです」
「なるほど。よく分かった」
ソリュート王は高い鼻梁に皺を寄せた。
深く頭を下げる息子へ、王は、さりげなく声をかける。

「久しぶりに逢うのだ。もっと、近くへ来い。レン」
「はい」
彼は長椅子の前まで近づき、
鏡のように磨かれた床に片膝をついた。
「顔をよく見せよ」
黙って顔を上げる。
その時、何かが首に伸びて来た。


「!」

次の瞬間、彼は床の上に押さえつけられていた。
父親の手が、自分の首を締めているのだ。
鉄のように冷たく堅い指。
王はレンの身体の上にのしかかりながら、冷然と見下ろした。

「お前は、侵入者に対しては優秀な調査員らしいが、
相手が私だということで油断をしたのか?」
「……」
彼は黙っていた。
油断をした訳ではない。
わざと、父親の攻撃を真正面から受け止めたのだ。

「どうした、レン。
数年前、母と姉を殺した時のように、
あの恐ろしい力を使ってみせよ。
私も殺せば、すぐに自由になれるぞ」

毒のある言葉を浴びせ、押さえつけた息子の青灰色の瞳を覗き込む。
「おお、その目。
子供の時から人の心を見透かしたような目をしていたな。
私はずっと、疎ましかったのだ」
執拗に責め立てる父親に向かって、彼はゆっくり言葉を紡いだ。

「僕がやってしまったことは、一生、許される事ではありません。
それは、覚悟しています」
過失とはいえ、母親や姉を死なせたのだ。
星を飛び出しても、
いつかは向き合わなければならない事は分かっていた。
「どうか、あなたの望む通りにしてください。
もう、僕は過去から逃げないと決めたんです」
「ほう。これはまた、殊勝なことを」
まるで信じていないように鼻先で笑う。

「では、お前のその意志が本気か、私を騙す下手な芝居なのか。
これから、じっくりと試してやろう」

そう言うと、王は彼の首から手を離した。
そして懐からペンダントのような物を取り出し、
目の前にかざして見せる。
それが何かを悟って、レンは目を見開いた。

「それは…!」

心臓が早鐘のように速くなる。
それは、かつてソリュート星に墜落しようとして、
自分が爆破させた忌まわしい隕石の破片だったのだ。
悲運にも、母親や姉を巻き込んで死なせた、因縁の石である。

「確か、お前はランドエルにも同じように、この石を見せられ、
記憶障害になったようだが。
もう過去から逃げないと言ったことが嘘でなければ、
いま一度、この石と私の前で懺悔をしてみよ」
「……」

目の前にかざされた隕石は、特殊能力者であるレンにとって、
計り知れない悪影響を及ぼすものだ。
普通人の父親には見えるはずもない暗黒波動が、
触手を広げ、迫って来る。

レンは、かすれた声で、ひとこと言った。

「お父…さ・・・ん」

その言葉に、
ソリュート王の冷たい瞳が少し動いた。
その拍子に左手につかんでいた隕石が、
レンの胸元に滑り落ち、
嫌なマイナスエネルギーが拡散を開始した。


~第177回に続く~
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by yu-kawahara115 | 2009-06-14 00:17

第175回接近遭遇「甦る優しいキス」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ありがとう。桃子さん」

背後から聞こえたのは、優しく懐かしい響き。
それは、桃子がずっと、ずっと彼に呼んで欲しかった自分の名前である。
「遊太郎。…思い出したの?」
桃子は、後ろからふんわりと抱き締められたまま、
顔を少しだけ動かして彼を仰ぎ見た。
そこに、涼しげな青灰色の瞳が揺れている。
周りを配慮してか、髪は黒く変えていたが、
桃子を見つめるその表情は、彼女がよく知るレンのものだった。

次の瞬間、
桃子はマンションの近くの公園に瞬間移動していた。
レンが上手に力を使ったようで、少し驚いたが、
それよりも、彼の記憶が戻った事の方に気をとられていた。

「ホントに?ホントに記憶が戻ったの」
確認するようにきく彼女に、彼は静かに頷いた。
「はい。まだ少し曖昧な部分はあるのですが。
桃子さんの事は思い出せました。
本当に、心配をかけてしまって、すみません」

本当だ。確かに違う、と桃子は感じた。
このひと月、彼が纏っていた荒々しい波動が消えている。
でも、何がきっかけで戻ったのだろう。
すると、その疑問に応えるかのように、彼は話した。
「少しずつ、思い出しかけてはいたんですが。
さっき、桃子さんが僕の父と逢ってたとき、
あなたに周波数を合わせてみたんです。
そうしたら、自然に…」

そう、自然に、とても緩やかに精神のバリアもほどかれてゆき、
徐々に、彼女との記憶が繋ぎ合わされたのだ。

「良かった…!」

桃子は、今度は彼の背中へ両腕を回して、
思い切りキュッと抱きしめた。
…ああ、この温かさ。
そういえば、さっきソリュート王に睨まれて身がすくんだとき、
どこからともなく温かいパワーが伝わって来て、勇気が湧いた。
あの時、彼がそばにいてくれていたんだ…

とたんに桃子は肝心な事を思い出してハッとした。
「ごめん。あたし、遊太郎のお父さんを怒らせちゃったみたい」
「それは大丈夫です」
彼は優しい微笑を返した。
「ステーションへ行く、と言っていたでしょう?
父は、僕と会って話をしてもいいと思い始めてる」
「え?そうなの」
「桃子さんのお陰です」

褒められると、現金にも嬉しくなる。
ソリュート王に逢う羽目に陥った時、正直いって怖かった。
居酒屋で酒を勧めながら対応した時も、かなり緊張していたのだ。
でも、いまは記憶を取り戻したレンに会って、
それは一気に消し飛んでしまっていた。

「あたしのことを思い出したんなら、一緒に帰ろうよ。遊太郎」
あたしたちの部屋へ、そう誘った桃子に、彼はいいえ、と柔らかく断った。
「…え、なんで?」
「すみません。父とのことが一段落したら、
その時は、ちゃんと桃子さんの所へ戻りますから、
もう少し待って下さい」
「あ、そっか。そうだよね」

桃子は、ちょっぴり残念そうに照れ笑いをしてみせた。
彼が真面目な人間だと知っていたからだ。

「ちゃんと話せる?お父さん、手強そうだよ」
「はい」
「もし、地球に居ることを分かってもらえなかったら、
どうするの?」
「ケンカになっても話し合った方がいいって、
桃子さんは言っていましたよね」
「そりゃ、そうだけど。心配だもん」

ちょっと口を尖らせる桃子の肩を抱いて、
レンは優しいキスをした。
これまでよりも、もっと温かいキス。

「大丈夫です」
彼は、安心させるように言った。
「例え理解されなくても、僕はソリュート星へは帰りません。
この地球が、僕のもうひとつの故郷だからです」
「遊太郎…」

もう一度、2人は抱き合った。
いま、同じ時間に、お互いが存在している事が、
代え難い幸せに思えた。


~第176回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-06-07 18:54

第174回接近遭遇「立ち向かう勇気」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

居酒屋の片隅で、
桃子は、ソリュート王の悪意のある言葉に唇を噛んでいた。
ビルの屋上で、一部始終をスキャニングで視ていたレンは、
すぐにも駆けつけたい衝動にかられたが、
神崎がそれをやんわりと止めた。

「桃子君は、これしきの事で負ける女性ではないぞ」
「しかし…」
「君のお父上は桃子君を絶望させて、
君達を引き離そうとしているのかもしれんが、
彼女の想いの方が強い」
「……」

とはいっても、このままに1人で立ち向かわせるわけにはいかない。
レンは、桃子の波動に合わせた。
精神を同化させてみようと考えたのだ。
こうすることで、肉体的には離れていても、
意識は一緒にいて、彼女の心を支えることが出来るかもしれない。


見えないコードが伸びたように、
ずっと緊張していた桃子の身体が、ふんわり温かくなっていった。

「?」

…何だろう。この感じ、なんだかよく知っている気がする。
内側からパワーが湧いて出て来るようだ。
桃子は落ち着きを取り戻し、王に向かって正直に言った。

「遊太郎が、あたしの事を思い出せなくたって関係ない。
遊太郎は遊太郎だし、
過去よりも、いまの時間が大切だから」

すると、王が馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに鼻先で笑った。
「過去よりいまが大切だと?青臭い、ふざけたことを」
「おじさんは過去の出来事しか見えてないから、
いま、この時間の大切さが分からないだけだと思うんです」
「なんだと?」
ソリュート王は、彫り深く険しい眉をさらに潜ませた。
「過去を重んじて、何が悪かろう。
私の何を知っていて、そのような不遜な口を効くのか」

王は数年前の過去を引きずっていた。
悲運にも、最愛の妻と娘が死んだ、あの忌まわしい事故。
当時、レンのサイキックの制御が効かなかった事が原因であり、
ソリュート王は、その事で未だ彼を責め続けている。
それを知る桃子は、あえて言った。

「昔の、事故の事は聞いてます。
おじさんが辛かったように、遊太郎もずっと苦しんでる」
「……」

一瞬。
ソリュート王は、桃子と重なるように誰かの気配を感じた。
彼女を通し、己の息子がこちらを静かに見つめている気がしたのだ。
王は立ち上がり、執事ラグローシュを驚かせた。

「陛下?」
「車を回せ。ラグローシュ」

賑わう他の客たちが、不思議そうに見る中を
王と執事は店から出て行った。
桃子も慌てて追いかける。
繁華街を抜ける2人に追いつき、必死に王の腕を捕まえた。

「逃げるんですか」
「逃げる?無礼な。私が何から逃げていると言うのか」
手を振り払われ、鋭く睨みつけられたが、怖くなかった。
「遊太郎から逃げてるんです。でも本当はすごく気になっていた。
だから、彼のことを探るために、
あたしに逢おうと思ったんじゃないんですか?」
「黙れ」
「黙りません。意地張らないで、彼といっぱい話して下さい。
ケンカになってもいいじゃない。
ちゃんと、ありのままの遊太郎を見てあげて下さい」
「……」

真っ直ぐな桃子の瞳が直視出来なかった。
…なんたることだ。
王は、半ば呆れていた。
銀河の外れにある惑星の、騒がしい街で、
息子が好いたらしい未開人の娘に、言いたい事を言わせてしまうとは。
全く調子が狂う…
「地球見物は飽きた。ステーションに戻る」
そう命じ、ソリュート王は迎えのロールスロイスへ乗り込んだ。
ラグローシュも深々と頭を下げて、桃子の視界から消えてゆく。


雑踏の中に残された桃子は、
一気に緊張感が抜けて腰が砕けそうになった。
そんな時、ふわっと誰かが後ろから支えた。

「遊太郎…?」

答えがない。
でも振り向かなくてもわかる。
このぬくもりは、彼以外考えられない。
やがて、優しい声が彼女の心に響いた。

「ありがとう。桃子さん」

その言葉を聞いて、彼女は震えた。
…いま、何て?
桃子さん。そう名前を呼んでくれた。
まさか彼は、記憶を……?


~第175回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-06-03 22:15