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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2009年 05月 ( 7 )   > この月の画像一覧

第173回接近遭遇「宇宙の片隅の居酒屋で」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

その夕刻。
レンは高層ビルの屋上に立っていた。
オレンジ色に染まる眼下の街を見下ろし、
地球に降りたらしい自分の父親、ソリュート王を探す為に、
スキャニングを開始していたのだ。
もちろん、彼らの波動は速やかに補足出来た。
案じた通り、ソリュート王は桃子と逢っている。
それも、この足下のビルの意外な場所で…

「これは、また。世にも不思議な取り合わせだ」

不意に、レンの背後から誰かの声がした。
神崎である。
神崎は彼の上司、ロータスの地球人としての仮の姿であり、
桃子の会社の人事部長でもある。

「さすがは桃子君。
君の父親を相手に、一杯呑んでいるとは」
「……」
どう答えていいか分からず、レンはただビジョンを視ていた。
戸惑っている彼へ、神崎は冗談を言う。

「どうするかね。
いまからあそこへ割って入って、
彼らの宴会を邪魔するつもりかね?
私なら、桃子君に任せてみるが」
「もし、それで何かあったら…」
「いや。人が多く出入りするような場所で、
ソリュート陛下が地球人女性を、どうこうはしないはずだ」

それにしても本当に不思議過ぎる光景だった。
桃子は少しも臆さずに、ソリュート王と対等に接しているのだ。
あのプライドが高く厳格な、自分の父親と…



レンや神崎に透視されているとは知らず、
桃子は居酒屋の囲炉裏のある席で、ソリュート王と酒を呑んでいた。
「強いんですね。お酒」
彼女の顔はピンク色に染まっているが、王は相変わらず無表情だ。
既に大ジョッキを何杯も空けているのに、全く顔色が変わらない。

「私を酔わせて懐柔しようと企んでいるのなら、無駄だぞ」
「別に。そんなこと考えてません」

内心ドキッとしながらも、彼女はすました顔で、
コイツ、やっぱり手強いと改めて警戒した。
執事ラグローシュは、呑まずにただ控えて、
成り行きを見守っているだけだ。

…さあ、どうしよう。
酒の力で自分のペースに乗せるのは諦めて、
ここは正攻法で行くしかない。

「おじさんの息子さん、
ここでは遊太郎って名前なんですけど。
すごく料理が上手いですよね。
おじさんは長いこと、彼を勘当してるから、
手料理なんか食べたことないでしょう?」
桃子は日常的な話題から切り込んでみたが、
王は彼女を見透かすかのように言った。
「娘。お前は、女のくせに料理を男にさせていたようだな」
「え?」
「私が知らんとでも思っていたか」
馬鹿にしたような言い方に、ちょっとムッとする。
「あやつも、こんな娘とよく1年も暮らしていられたものだ」

何よ。この、おっさん!

逆切れしそうになるが、
執事ラグローシュが目でサインを送っているので、
膝の上で握りこぶしをぎゅっと作るだけに終わった。
気分を切り替えるためにビールを追加オーダーする。

「おじさんて、ものすごく正直なんですね」
「正直だと?」
「言葉を飾らないって意味です。だから、遊太郎とぶつかる。
ホントは、こんな風に自分の息子と、お酒を呑みたいんじゃないですか」
「三文芝居のようなセリフを吐くな。小娘」

ソリュート王もビールを追加した。
ラグローシュはますます怖くなる。
2人とも、つまみをあまり口にせず、
1時間以上も呑みっぱなしだからだ。

「でも、もっと遊太郎と話をするべきじゃないかな。
親子なんだもん。お互い、向き合ってさらけ出す方がいいと思う」
「このソリュート王に説教をたれるのか、部外者のお前が?」
「部外者じゃないわ。あたしは遊太郎の…」
「レンは、お前を忘れていると聞いたぞ。
もはや完全なる部外者ではないか」
「!」

空間に火花が散りそうだった。
ラグローシュがハラハラするが、王はここぞとばかり追撃する。

「聞くが。何故、お前はそんなに必死になれる?
他人の、しかも外惑星から来た男のために」
「それは、あたしは遊太郎のことが…」
言いかけた彼女へ、王はたたみかける。
「ほう。記憶喪失の男を愛せるのか?
思い出す保証もない男をこの先も?」
「……」

桃子は、ぐっと目をつむって唇を噛み締めた。


~第174回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-05-31 17:48

第172回接近遭遇「世にも奇妙な乾杯」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

(どうしてこうなるの?誰か説明してよ)

と、桃子は歩きながら口の中でブツブツと文句を並べていた。

自慢じゃないけど、
あたしは庶民の家庭に生まれた思い切り庶民の娘で、
美人でも可愛くもない平凡な顔だし、
おおざっぱな性格の普通のOL。
宇宙人やUFOなんて、ぜんっぜん興味無しなリアリティ重視の人間だよ?
そんなあたしが、
異星人の男とルームシェアをする羽目になり、
なんというか、まあ、好きになっちゃって。
いま、地球に着いたばかりだという彼の強面の父親と、
並んで街の中を歩いているなんで。
普通、こんなの絶対ありえないじゃん。


「私と逢っているのが、不服のようだな」

前方を向いたまま、ソリュート王が桃子に言った。
この貫禄ある北欧系外国人に見える男は、
遊太郎、つまりレンの父親である。
お互い自動翻訳機を耳に付けさせられているので、
会話は嫌というほどスムーズだった。

「いえ。別に」
「嘘をつくな。怒った顔をしているではないか」
「生まれつき、こんな顔なんです」

この2人の会話をハラハラしながら聞いているのは、
後ろから付き従う執事ラグローシュだ。
先刻ソリュート王より、外を散歩したいと言われ、
ロールスロイスを降り、人がやけに多い土曜日の大通りを、
なんと3人で散策する事になったのだ。

「ねえ。おじさん」
桃子は、天下の王をそう呼んだ。
相手が王様だろうが大統領だろうが関係ないらしい。
「せっかくはるばる地球まで来たのに、
おじさんが勘当した息子さんに会わなくて良いんですか?」

土壇場になると肝が据わってしまうようで、
彼女は思い切って核心をついた質問をしてみた。
しかしソリュート王は相変わらず無表情のまま、
全く違う事を口にする。
「おそろしく雑然とした街だ。有害で原始的な乗り物が多すぎる」
どうやら、この王様は歯に衣を着せぬタイプのようだ。
「よくこのような汚い星に住んでいられるものだ。信じられん」

「遊太郎、…いえ。息子さんのことを言ってるんですか?
故郷へ帰らないから、
地球が、どんな星なのか見極めに来たってわけなんですね」
ますますストレートな桃子の物言いに、王は険しい顔をしながら、
「地球に来たのは、庶民の暮らしぶりを見たかったのだ」
と、はぐらかし、地味に控えている執事に命じた。
「ラグローシュ。喉が乾いた。休息場所を探せ」
「かしこまりました。陛下」

そこへ桃子が口を挟んだ。
「あたしが、適当なお店へ案内しましょうか。
庶民の味を体験できますよ?」
「桃子様…」
執事が青くなるが、お構いなしだ。
「ここは任せてください。ラグローシュさん」

そう言うと、付いて来いとばかりに、
ずんずんと大股で先頭を歩き出す。
ソリュート王はラグローシュだけに聞こえるよう母星語でつぶやいた。

「…全く、なんという無礼な娘だ」
「は、はあ」
「あのような下品な娘を、レンは好んでいるというのか」
やはり、息子の恋人を品定めに来たらしい。
ソリュート王は彼女の後ろ姿を厳しい視線で睨みつけた。


桃子が異星人たちを案内した店は、友人とよく行く馴染みの居酒屋である。
「桃子ちゃん。いらっしゃい」
明るく声をかけた店長は、桃子の連れを見て目を丸くした。
彼女は、わざとこう紹介する。
「彼氏のお父さんと、執事さんです」
「へ、へえ。そりゃサービスしなきゃねえ」

バイト店員に、囲炉裏のある奥の席へ連れて行かれ、
ソリュート王は苦虫をかみつぶしたような顔をしたが、
ラグローシュの拝むような表情をチラリと見て、
仕方なく狭い席に押し込めた。


「生ビールを、みっつ下さい」
指を3本立てた桃子へ、店員たちが威勢良く応え、
すぐに冷えた大ジョッキが3人の前に並んだ。

桃子は腹をくくった。
レンから、この父親には絶対逢うなと注意されている。
しかし出くわしてしまった以上、なんとか乗り切るしかないのだ。
ここは、この王様を酔わせてしまって、
胸の内を聞き出してみようか。
そう企んだ彼女は、満面の笑みを作り、大ジョッキをつかんだ。

「世にも奇妙な飲み会に、乾杯!」


~第173回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-05-27 21:23

第171回接近遭遇「ソリュートの王様、地球へ」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

週末の土曜日。
桃子は気分転換に髪でも切ろうかとマンションを出た。
ここ数ヶ月、色々なことがありすぎて、
髪が肩下まで伸びてしまっている。

レンが桃子のマンションに現れた夜。
結局、彼女は朝まで眠りこけてしまい、
目が覚めた時には、彼は消えてしまっていた。
…とても安心して幸せな気持ちだったのに。
もっと、一緒に居たかったのに。
いつも肝心なところで寝てしまったり、
つまらないことで怒ったりしてしまう自分が情けない。
きっと彼も呆れて帰ってしまったんだと、溜め息をつくしかなかった。


考え事をしながら住宅街を抜けて駅へ向かう中、
見覚えのあるロールスロイスが停車しているのを見た。
「五十嵐桃子様」
そばに初老の紳士が立って穏やかに声をかけた。
あの執事ラグローシュである。
ラグローシュはレンの父親、ソリュート王の筆頭秘書であり、
ここで桃子を待っていたということは、
ソリュート王に逢わせる為に迎えに来たという事になる。
近日中とは聞いていたが、まさか、今日がその日なのだろうか。
桃子は動揺しながら口を開いた。

「ラグローシュさん。
あの、ひょっとして、今日だったんですか?」
恐る恐る訊いてみると、執事は微笑した。
「はい。いつも突然で申し訳ありません。
連絡先をお聞きしておくべきでした。
桃子様のご都合はいかがですか?」

ご都合と言われても、レンから絶対に会いに行くなと釘を刺されている。
あいだに立つラグローシュには悪いが、正直に断るしかない。
「あの、正直に言いますね?
実は、遊太郎に話したら、迎えに来ても行かないようにって、
強く止められたんです」
すると執事は悲しそうな顔をした。
「さようでございましたか。どういたしましょう。
ソリュート陛下は、つい数時間前に地球へ到着致したところで…」
「え?月のステーションじゃなくて?
じゃ、遊太郎には会ってないんですか」
「ステーションには配下の者が諸手続のため滞在中ですが、
陛下は直接こちらに参りましたので、レン様とは再会されておりません」

じゃあ、余計マズいじゃないか、と桃子は思った。
仲が悪いという父親と息子の再会のチャンスなのに、
先に自分が、彼の父親と逢うというのは、おかしい気がする。

「ラグローシュさんには悪いんですが、
彼のお父さんに桃子はドタキャンしました、と言ってもらえませんか?」
「ドタキャン、…でございますか?」
はて、と初老の執事は首をかしげる。
意味が通じなかったようで、ゆっくり言い直した。
「ええっと。約束を守らない地球人の悪いムスメだったって、
そうお伝えください。
でも、それじゃ遊太郎の足を引っ張るかな?まあ、いいか」
誤魔化すように頭をかいて苦笑いをする。


その時である。
ロールスロイスの向こうの扉から、
誰かが静かに降りて来たのだ。
「陛下!」
慌てるラグローシュに、もっと仰天したのは他ならぬ桃子だった。
その人物は長身で逞しく、深く帽子を被り、
膝下まであるグレーの長いコートを着ていた。
一見、身分がかなり高そうな北欧系外国人に見える。
彫り深い顔に黒い眼鏡をかけているため、
全く感情が読み取れないが、
この人がレンの父親なのだろうか。
桃子は、ただ息を呑んだ。


その頃。
月の裏側の銀河連盟ステーションのコントロールセンターで、
レンはソリュート王の来訪を聞いていた。
「父が、地球に降りた…?」
鋭い視線を投げるレンにロータスが制する。
「レン。我々も驚いているのだ。
君の父親だけが、もう地上に出向かれたらしい」
それを聞いて彼は執事ラグローシュを思い出していた。
地球に慣れているラグローシュと共に、
ソリュート王はステーションではなく、
真っ直ぐ地球へ降りたのだ。
踵を返してコントロールセンターから退室しようとするレンへ、
ロータスが声をかけた。

「落ち着いて行動しなさい。
本当に心を開いて話し合う気持ちでいるなら」
しかしレンは抑えた声音で言った。
「父が、彼女と逢っているかもしれないんだ」
「桃子君が?どういうことだ」

驚く上司に彼は答えず、冷たい背中を向けてセンターを出て行った。


~第172回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-05-23 15:48

第170回接近遭遇「2度恋をするとき」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

その夜。
桃子のマンションにレンが訪れていた。
彼が記憶喪失になる少し前に、もうこの部屋を出ていたので、
こうして一緒に居るのは1ヶ月振りになる。
もちろん、いまの彼には初めて訪れる場所なのだろうが、
彼女にとっては、感慨深いものがあった。

「そのへんに座って。お茶入れるから」
努めてさりげなくリビングへ案内する。
ソファの前のテーブルに、温泉旅行で買ったお揃いのマグカップを2つ置いた。
レンが、それに一瞬視線を落としたので、
彼女は、しまったと思いながら急いで誤魔化した。

「あ。あのね。
これだって、わざと思い出させようと企んでるんじゃないから。
どこにでもあるカップっていうか…さ」
早口で弁解するが、彼は、それにはふれず要件を口にした。

「…実は。父が、地球へ来る事になってしまったんだ」
「そう、みたいだね」
驚かない彼女に怪訝そうに訊く。
「知っていたのか?」
「うん。さっきラグローシュさんと会って、聞いたばかりだよ。
それにさ、もっとビックリしたのは…」
「他にも何か?」
「あたしに会いたいらしいんだよね。遊太郎のお父さん」
「!」


レンは大きく目を見開いた。
その事については知らなかったのだろう。
ソファから立ち上がり、彼女の肩をつかんだ。

「行くな」
「でも…」
「絶対、父に会いに行くな」
「ラグローシュさんが迎えに来ても?」
「そうだ。君には何の関係もない。俺の問題だ。
だから、何があっても絶対に従うな。約束しろ」

強い力…。
見つめる青灰色の瞳が真剣で、桃子はただ頷くしかなかった。
「うん。…分かった」
頷いた彼女の肩から手を離して、彼は溜めていた息を吐いた。

「でもさ。遊太郎のお父さんは、
なんで、あたしと会おうなんて思ったのかな?」
「分からない」
そう答えたが、レンには見当がついている。
父であるソリュート王は、帰還命令に応じなかった原因が、
桃子にあると思っているのだ。

「それで。もうステーションに着いちゃったの?」
「まだだ」
「でも、もうすぐ来て会うんだよね。何年か振りで。
大丈夫なの?」
「何が」
「何がって。人が心配してるのに、なにそれ」

とたんに桃子が口を尖らせて、ぷいと横を向く。
レンは、その怒った彼女の顔を良く知っている気がした。
頬をまるく膨らませ、憎めない表情を何度も見たような…

業を煮やした彼女は立ち上がり、おおげさに伸びをした。
「そういえば、あたし、夕飯まだなんだよね」
そして口の中で全くもう、とブツブツ言いながら、
キッチンに立った。

その時、レンは既視感と共に不思議なものを感じていた。
…何故だろう。
彼女と、この部屋にいるだけで安心している自分がいるのだ。
まるで違和感を覚えない。
記憶になくても、ここに一緒に住んでいた感覚は、
身体のどこかに残っているのだろうか。

一方で、
桃子は、ありあわせの野菜でサラダを作っていた。
料理が上手い彼に見せたくないが、リンゴをデコボコに剥いてリビングに戻る。
「口に合うかわかんないけど、食べよ」
と、話しかけ、ちょっと声を落とした。

いつの間にか、レンが眠っている。
ソファの片側に斜めにもたれて、仮眠のようなポーズを取っていた。
さっき、寝不足だと漏らしていたのは本当のようだ。

彼女は彼の身体に薄いブランケットをかけながら、
つい、顔をじっと見つめてしまった。
相変わらず、肌が透き通って白い。
カミラもそうだが、異星人はみな、肌理が細かい。
自分が典型的な黄色人種なので、ちょっとムカつくのだが。

そうするうち桃子も眠くなって、
自分の頭を彼の隣にちょこんともたせかけた。
…ホント。コイツ、起きてると、俺サマだし、コワい顔をする時もあるけど、
寝顔は優しくて、前の彼と変わらない。
こうやって、ずっと寄り添っていたい…


~第171回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-05-14 00:11

第169回接近遭遇「彼氏の父親が会いに来る?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
本来の姿はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しい異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

レンが透視した、黒い三角形の宇宙船団。
それは、ソリュート星団のものだった。


もちろん地上の桃子は何も知らず、
普通の毎日を過ごしていた。
その夜、会社帰りの駅前ロータリーへ向かう中で、
初老の紳士に声をかけられた。

「五十嵐桃子様。お帰りのところを失礼致します」
紳士は、つい先日知り合ったばかりの、
レンの父親の筆頭執事ラグローシュである。
相変わらず燕尾服に身を包み、礼儀正しい。
「ラグローシュさん。この間は美味しいご馳走をありがとうございました。
それで、今日はどうしたんですか?」
すると、執事はなんとも困った顔をした。

「先日、レン様の意向を陛下にお伝えしたのですが、
あの方が、急に地球へ行くと申されまして…」
「ええっ?」
つい声を高くして、
周りの通行人が振り向かせてしまい、慌ててトーンを下げる。
「へ、陛下って…。ええっと、遊太郎のお父さんですよね?」
「はい。レン様のお父上であらせられるソリュート陛下です」

丁寧に説明されても、まるで現実感がない。
「遊太郎は、この事を知ってるんですか?」
「おそらくは。レン様のお耳にも届いているかと思います。
この惑星への旅行者は来訪前に、
銀河連盟ステーションで滞在許可を得なければなりませんから」
レンは自分から故郷の星へ行くと決心した。
それを聞いたのなら、大人しく待っていれば良いものを、
何故、みずから父親が出向いて来たのだろう。

「…それで、あのう。非常に申し上げにくいのですが」
ラグローシュは深く頭を垂れる。
「実は、陛下は、お嬢様に、ぜひお会いになりたいと」
「へっ。あ、あたし…?」
「はい。その為もあって地球へ、お越しなられるのかと」
「え」
…ちょっと、待ってよ。
あまりの申し出に、息が止まりそうになった。


…とんでもない事態になっちゃった。
あれから、桃子はラグローシュと別れ、
マンションまで帰りながら、ぐるぐる考えた。

…普通、好きな人の親に会うときって、
清楚な服とか着て、好感度100%の笑顔で、
初めましてと言って、自己紹介するんだよね。
でも、残念ながら相手は地球人じゃない。
しかも冷酷無慈悲な、ワンマンな王様らしい。
そんな怖いお父さんが会いたいって。あたし、どうすりゃいいのよ?

とりあえず、会う日や時間はまだ決まってないみたいだし、
ビールでも飲んで落ち着いて考えよう。
一応の結論を出したところで、自分の部屋まで着いた。

「!」

桃子はギョッとした。
薄暗い廊下の、部屋のドアの前で誰か座っている。
それは、良く知っている男だ。
彼は、右膝だけを引き寄せ、片腕を置いて、
その上に額を押し付けていた。
いつから待っていたんだろう。

「遊太郎…?」

ささやいた彼女の声に反応したのか、
遊太郎、つまりレンが、ふっと顔を上げた。
その端正な横顔を見て、暗がりでも分かった。
彼の瞳の色が元に戻っているのを。
青く深く、言葉に表せない不思議な青灰色。

「目が、戻ってるじゃない」
もしかして記憶も戻ったのかと喜んだが、
そうではなさそうだ。

「話があって来た」
彼はそう言って立ち上がりかけたが、目眩がするようで、
一瞬苦しそうに青白い眉を潜めた。
桃子は、ハッとして謝る。
「ごめん。あたしがあの時、無理に、…したからだよね」

そう、強引にキスをしてしまった。
不安にかられての衝動的な行動で、自分でもどうかしていたと思う。
「遊太郎にあたしの事を思い出させようとして、
わざと、…したんじゃないよ?
でも、それで辛いんなら、ごめんなさい」
すると彼は、ぶっきらぼうに答えた。
「少し寝不足なだけだ。勘違いするな。
それより、緊急な事が起きた」

何、この態度。
あたしはへこんでたんだからねと、少しムッとする。
やっぱり中身は、まだ俺サマで、戻ったのは瞳の色だけなんだ。

「あたしも話があるんだ。入って」


~第170回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-05-10 23:46

第168回接近遭遇「近づいて来る黒い影」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネの、おっとりした新人営業マンは仮の顔。
本来の姿は、プラチナの髪と青灰色の瞳の美しい異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「レンは、地上から戻っているのかね?」

月の裏側に浮遊する、銀河連盟ステーションで、
上司ロータスがスタッフ達に訊いた。
レンには、帰ったら報告をしろと命じていたのにも関わらず、
もう何十時間も経っている。

すると、スタッフの1人が答えた。
「そういえば、ずっと個人ケアブースに閉じこもってますが」
「何かあったのか?」
「分かりません。ただ、頭痛が酷いようで、誰も来ないで欲しいと」
これを聞いて、ロータスは呆れたように肩をそびやかせる。
「全く。我慢強い性格は、前と変わらんのだな」

仕方なく、部下の様子を見に行くために、デスクから立ち上がる。
その時、手元の訪問者リストが目に入り、怪訝な顔になった。
「これは…」
そのリストの宇宙船団代表の名前には、見覚えがあったのだ。



……近づいて来る。

個人ケアブースのベッドの中で、
レンは、脳裏に浮かび上がった映像を視ていた。
幾つもの黒い三角形が、こちらへ向かって来ている。
それは、昔から知り過ぎている機体だった。


身体が、ひどく重い。
泥沼に手足を取られたようなだるさだ。
もう数十時間以上、断続的な激痛と闘った為か、
自分が眠っているのか、そうでないのかすら分からない。
それでも、誰かが自分を呼んでいる。
目を、開けなければ…

混濁した意識が揺らめいて、
暗く深い水底から、
無理やり引きずり出されるような感覚があった。

「大丈夫か。レン?」
呼んでいた声は上司ロータスのもので、
報告すら来ない部下に説教をする為に来たようだ。
しかし、あまりにも生気を失った彼の顔を見て、
言いたいことを呑み下したようである。

「何故、鎮痛剤を飲まない?
メディカルセンターで処方されているだろう」

それは自分には効かないからだ、
と答える代わりに、無意識に手を額にやってしまう。
「ちょっと、手を退けてみなさい」
熱を計るためか、そう言ってロータスは彼から手を外させ、
白い顔に乱れかかる彼の幾筋かの前髪を、さらりと梳いた。
そして、確かめるように彼の両目を凝視して、
ひとこと漏らした。

「瞳の色が、戻っている…?」

例の隕石の有害波動を浴びた後遺症で、
ルビーのように赤く染まっていた彼の瞳が、
元の色に戻っていた。
それは海よりも青く深く…。
その中に少し灰色を溶け込ませた、不可思議な瞳の色だった。

「なるほど。残念ながら記憶は戻っていないようだが、
瞳の色だけでも戻ったのは、なかなか良い傾向だ。
さては、桃子君と何かあったのか?」
「……」
「まあ、言いたくないのなら、訊かないが…」

やがて、厳しい表情に戻ってロータスが言った。
「実は、あまり歓迎したくないニュースを、
君に伝えなければならない」
やや、ためらいがちに話そうとする上司に、
レンは、ようやく口を開いた。

「…そのニュースなら、もう、知っている」
「!」

しばらく間があった。
「視えたのか?レン」
その問いに答える代わりに、彼は冷えた視線を上司からスッと外した。



…近づいて来る。
音もなく、黒い影が。
過去と、向き合う瞬間が、近づいて来る…


~第169回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-05-08 00:14

第167回接近遭遇「明日を呼び覚ますキス!」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

既に日付が変わろうとする真夜中。
マンションまで送ったレンの後姿を、桃子は思わず追いかけた。
「遊太郎!」
反射的に振り返ったレンへ、彼女は両腕を伸ばし、
彼の首にふわりと回した。
そして自分のふっくらした唇を重ね合わせる。

「!」

その瞬間である。
彼女にキスをされたレンの脳裏に、
突然真っ白な光が生まれた。
特殊能力者である彼が無防備でいるとき、
触れた人間の思念を、バリアも介さず感応してしまうのだ。

凍てついた心の暗闇に、
2人が過ごした日々の映像、その時の生きた感情が、
怒涛のように流れ込んで来る。
それは止めようもない、嵐に似た強い流れだった。

桃子の想いを受け止め、なされるがままにされていたレンは、
しばらくして、ふうっと青白い眉間を曇らせた。
脳を横断するかのように稲妻じみた激痛が走ったのだ。
「……っ!」
彼が漏らした吐息に、桃子はハッと我に返った。

「ご、ごめん」

彼女は顔を赤く染める。
方膝をついた彼は、額を手で押さえ、息を乱していた。
おそらく、急激に雪崩れ込んで来た映像や思念が、
脳に立ちはだかる何らかの壁を、強く刺激したのだろう。
体力を消耗するがために、黒く変えていた髪が、
元のプラチナに戻っていくのを見て、桃子は不安でたまらなくなった。

「ゆ、遊太郎。ごめん。辛いの?あたしのせいだね」
「…違う」
「だって、あたしが、あの…、キスしたから」
「もう、行け」
「え?」
「早く、行ってくれ」
「そんな…。このままじゃ、行けないよ」
「俺にかまうな。…帰れ!」

片手でこめかみを押さえたまま、レンは立ち上がり、
桃子を鋭い目で睨んだ。
白い顔に、ルビーのように真紅の瞳で睨まれると、
さすがに怯んでしまう。
彼女がそっと離れた隙をついて、
レンは瞬間移動して空間からかき消えた。
「遊太郎…!」



後悔は先に立たない。
仕方なく部屋へ帰るなり、桃子はシャワーを浴びて、
ひとり自己嫌悪に陥った。
…本当に、何をやってるんだろう。あたし。

レンが先刻、自らソリュート星へ行くと聞いて、
二度会えなくなるかもしれないと、内心で動揺していたせいもあった。
だから別れ際、つい衝動に突き動かされての行動だったのだが、
これでは自分より年下の男の唇を奪う、欲求不満な女みたいだ。

何故なら、普通の恋人なら、ありふれた別れ際のキスだが、
相手は自分との記憶を一切失っていて、
地球に初めて訪れた異星人に戻ってしまっているのだから。
それなのに、あんなことをして、
彼をまた追い込んだかもしれない。

桃子はシャワーのあと、濡れた長い髪にすっぽりタオルを被せ、
リビングでぼうっと座り込んだ。
もう、一緒に暮らした日々は戻らないのだろうか。
色々あったが、楽しかった雑多な毎日が遠い昔のように思えて、
せつなくて涙がポロリとこぼれて消えた。


一方、銀河連盟ステーションの個人ケアブースに戻ったレンは、
記憶障害による激痛に見舞われていた。
どんな薬も効かない痛みだと知っている。
ベッドの端にうつ伏せて頭を抱え、
息を殺して耐えるしかないのだ。
心は思い出そうとしてもがいているが、脳の何かが、それをまだ許していない。
そういうところなのだろう。

桃子の戸惑った表情が辛い。
あれほど自分のことを心配させているのに、
何もしてやれない自分が、ただもどかしかった。


~第168回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-05-03 23:05