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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2009年 04月 ( 9 )   > この月の画像一覧

第166回接近遭遇「レンの決断」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「遊太郎のお父さんに地球へ来て貰って、
親子でとことん話し合えば、仲直りが出来るんじゃないですか?」

桃子はグッドアイディアだとばかりに親指を立てた。
何といっても家族なのだから、
最終的には絶対に分かり合えるはずだと思ったのだ。
ところが…

「へ?どしたの?あたし、ヘンなこと、言った?」
急に静まり返った空気に、彼女は一気にテンションが下がってしまった。
執事ラグローシュも、もちろんレンも何も答えない。
ひょっとしたら、爆弾発言をしてしまったのだろうか。

桃子が罰が悪そうに、少しうつむき加減で反応を待っていると、
ラグローシュが柔らかく微笑んだ。
「失礼いたしました。
お嬢様のお考えが、あまりに想定外だったもので。
ちょっと驚いただけでございます」
…そ、想定外って。
やっぱり、あたし、とんでもないことを、へらっと口にしたんだ。
さらにズンとへこみかけた彼女に、執事は慌てて付け加える。

「素晴らしいお考えだと思いますよ。私も考えつきせんでした。
ですが、陛下が地球に来て下さるかどうか分かりませんが」
「…ですよね。すみません。
そんな超偉い人が、簡単に地球なんかに来てくれませんよね」
誤魔化し笑いをしてみる。
冷静に考えたら、外国人ならともかく、
相手は途方もなく遠い星域を統治する、いわゆるとびきりのVIPなのだ。

その時、無表情で聞いていたレンが、もっと意外なことを言った。
「俺が、ソリュート星へ行こう」
「ゆ、遊太郎…?」
桃子がギョッとして彼を見る。
いま、なんて?
行くって星に帰るってこと?
ラグローシュも、緊張した面持ちに変わる。
「遊太郎。何言ってんのよ?
事故があって、それのせいで星を捨てたって言ってたじゃない。
それに、こないだも記憶を無くさせるような、
汚い手を使われたりしてんだよ?
それなのに、帰還命令に従う気なの?」
つい早口でまくし立ててしまった桃子へ、
彼はルビーに染まった瞳を彼女へ向けた。

「勘違いするな。帰るとは言っていない。行くだけだ」
「おんなじだよ。もしかして地球で暮らした記憶も無いことだし、
もう未練ないから、帰ってもいいとか、思ってないよね?」
2人のやり取りに、ラグローシュはハラハラして見守っているが、
なおも桃子は続ける。
「お父さんから帰還命令が来ても、逆らって、
ずっと断ってたって聞いていたのに。
忘れたら、もう地球なんて調査員の仕事なんてどうでもいいの?」
「……」

レンは反論しなかった。
ただ桃子の言いたいようにさせている。
さすがにハッとした桃子は、我に返って謝った。
「…ごめん。言い過ぎた、あたし。
いまの記憶が無いのは遊太郎のせいじゃないのに」
「気にするな」
彼は落ち着いた声で言った。
「俺は、ソリュート星に行っても、とどまる気はない。
用が済んだら、すぐに戻る」
「本当?」
「ああ」

そして彼は執事ラグローシュへ告げた。
「ラグローシュ。そういうことだ。
いますぐには無理かもしれないが…。
あの人に、そう伝えておいて欲しい」
「…かしこまりました」
執事は深々と頭を下げた。


夜が更け、レンと桃子は招かれていた屋敷から帰る事にした。
桃子は、遠慮がちに笑った。
「じゃあ、ここでね。今日は楽しかったよ」
と別れを切り出すと、彼が送ろうと言った。
「いいよ。ここから近いから」
「駄目だ」
言うが早いか、レンは桃子の腕を取って自分の方へと引き寄せた。
「!」
あっという間に、2人は見覚えのある住宅街へ瞬間移動していた。
時間が遅いだけに、もう歩いている人間もない。

「確か、ここだったな」
マンションが目の前に建っていた。
桃子は、胸の高鳴りを隠すように彼から離れた。
「覚えてたの?…場所」
「スキャンしただけだ」
「ああ、なんだ。・・・・・・・そうよね」

彼が去ろうと歩き出した時、桃子は勇気を出して名前を呼んだ。
「遊太郎」

振り向いたレンへ、桃子は走り寄って飛びついた。
そして、驚く彼の顔に両手を伸ばし、キスをした。

~第167回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-04-29 23:55

第165回接近遭遇「執事ラグローシュの悩み」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「いい加減、本題に入れ。ラグローシュ」

今まで黙っていたレンが、執事のラグローシュに言った。
桃子が慌ててフォローする。
「あとでいいじゃない。遊太郎。
ラグローシュさん、せっかく、こんなご馳走を用意してくれてるんだし」
本音は、おあづけを喰らうのが嫌なだけだったのだが、
ラグローシュが穏やかに微笑んだ。
「ありがとうございます。ご遠慮なくお召し上がり下さいませ」

「ほら、ね?遊太郎も食べよ」
「俺はいい」
「何言ってんの。勿体ない。それとも食欲ないわけ?」
桃子は彼のクールな顔を見やる。
もともと食が細い彼だが、いまは本当に食事をする気分ではないのだろう。
「あっそ。あたしはお腹ペコペコだし。頂きます。ラグローシュさん」
「どうぞ、沢山お召し上がり下さいませ。お嬢様」
大豪邸での懐石料理は絶品だった。
綺麗に完食した彼女を待って、
ラグローシュは、居住まいを正して口を開いた。

「ご推察の通り、私は筆頭執事として、
レン様のお父上様であらせられる、ソリュート陛下のご命令で参りました」
「遊太郎を星に連れ戻す為に?」
桃子がちょっと睨む。
「はい」
素直な執事の回答に溜め息をついた。
…やっぱりそうなんだ。

「そのことで意見してもいいですか?あたし」
この際言っておかなければと思って断りを入れる。
ラグローシュは穏やかに目を細めて、どうぞと促す。
「単なる同居人のあたしが、口を挟むのもどうかなと思うけど。
遊太郎の意志を無視して、散々汚い手を使って、
強引に連れ戻そうとしてるじゃないですか。
そんなの、すっごく、おかしいですよね?」
なんだか、あたし彼の母親みたい。
話しながら少し自己嫌悪に陥ったが、ためらってる場合じゃない。

「だって、その王様。一旦は彼と親子の縁を切ったんでしょ?
今さら強引に帰れだなんて勝手過ぎると思う。
遊太郎だって、凄く苦しんで来たのに。
…あ、別にラグローシュさんを責めて言ってるんじゃないし、
あなたは命令だからってムチャなことはしないと、あたしは信じてますけど」

すると、ラグローシュは気分を害したこともなく、
楽しそうに笑った。
いつものクセで、ストレートに言い過ぎたかなと思っていただけに、
桃子は少しホッとする。
「五十嵐桃子様。あなたは心が温かい方ですね。
レン様のことを、本当の家族のように案じておられる」
「だって、遊太郎とは同じ屋根の下で1年近く暮らしてたし。
いまは、…その記憶が彼には無いみたいだけど」
チラッとレンに視線を流すが、彼は何も言わなかった。
ルビーのような赤い瞳をやや伏し目にし、
端正な白い顔を見せているだけだ。

しばらく間をおいて、ラグローシュが静かに語り始めた。
「ソリュート陛下は本当は孤独な方なのです。
ご存知のように、あの不幸な事故で愛するご家族を一度に失い、
その時の激情で、たった1人の息子である、レン様さえ遠ざけてしまわれた…」

開け放たれた庭から、深々と夜の気配が感じられた。
ラグローシュの穏やかな声は、広い座敷に染み入るように響いた。
「おそらく陛下は、レン様へ、間違った愛し方しか出来ないのでしょう。
精神を病んでおられるからです。
私には、もうどうして差し上げれば良いのか分からず、
レン様、そして五十嵐桃子様にお会いしてみよう、と。
そう思い立ったのです」

話を聞いていると、桃子は少しいたたまれなくなった。
間に立っているラグローシュが気の毒になる。
「2人を仲直りする方法を探ってるんですね?ラグローシュさんは」
そう言ってみた桃子に、執事はふっと目を輝かせて頷いた。
「はい。きっと良い方法があると思うのです。
このままでは、エスカレートするばかりで、
私には、もう陛下をお止めすることが出来ません」

…仲直りったって。
こじれた親子関係の修復なんて、どうすれば良いんだろう?
自分だったらどうするのかなと桃子は想像した。
母親に遊太郎との仲がバレた一件で、まだ口ゲンカ中だが、
言いたい事が言えるのは家族の特権だと思った。
次の瞬間、彼女はとんでもないことを提案した。


「その王様、地球に呼べばいいじゃん」


~第166回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-04-26 13:11

第164回接近遭遇「異星人執事のおもてなし」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

(この人が執事?遊太郎の家の?)

桃子は混乱しながら、オープンカフェに現れた初老の紳士を見た。
執事ラグローシュは細い目をさらに細めて、
とても優しそうに微笑んだ。
「五十嵐桃子様。レン様が、いつも大変お世話になっております」
あまりにも丁寧に深々と頭を下げるので、
桃子は真っ赤になって両手をバタバタさせた。

「いや、そんな。こちらこそ、お世話になっちゃってるし。
っていうか。あの、席を外しましょうか?」
彼と話があるから来たのでは、と思ったのだが、
ラグローシュはいえいえと小さく首を振った。
「お嬢様とも、お話がしたいですし。
いかがでしょう?表通りに車を待たせておりますので、ご一緒に」
「は、はあ」

桃子はレンをチラッと見たが、面白くなさそうな顔をした。
「無理に一緒に来なくていい。話の内容は分かっている」
「え、どういう意味?」
「ラグローシュは、父の命令で来た」
「それって…」
まさか、まだ彼は星に帰るよう命令されてるわけ?
「だったら、あたしも絶対行かなきゃ」
「何故だ?君には関係ないだろう」
「関係あります。大アリだよ」
眉を釣り上げて桃子が抗議する。
何言ってんの。
あたし、もう後悔したくないんだからね。


迎えの車というのが、なんと年代を経たロールスロイスだった。
どういう趣味をしているのかと、呆れた顔をした彼女に、
異星人執事はニコニコと説明した。
「この車は、某大物俳優より譲り受けたもので、
少しばかり目立ちますが、ご辛抱くださいませ」
「はあ」
少しじゃなくて、相当目立ちまくりだけど、
と桃子は思いながらレンと共に乗り込んで、質問した。
「ラグなんとかさん。日本語も上手だし、地球に慣れてるみたいですね?」
「ラグローシュです。
日本は、以前より何度か来ておりまして。
レン様のご様子を見るという名目の裏で、
こっそり観光なども…。ここだけの秘密ですよ。お嬢様」
それは職務怠慢とか言うのでは、と突っ込みそうになったが、
のせられてはいけない。
油断させておいて、彼から引き離す企みかもしれない。

やがて、ロールスロイスは自動的に口を広げた大きな塀の中に呑み込まれ、
日本庭園のような広大な敷地の中を、ゆるゆると進んだ。
ようやく目の前に巨大な屋敷に到着した時、
桃子はジョークをレンに飛ばしてしまった。

「ねえ。遊太郎の家って、日本にあったんだっけ?
まさか、お父さんがこのお屋敷で待ってるとかじゃないよね?」
冗談が通じないレンは何も答えず、ラグローシュが説明した。
「こちらは別荘のようなものです。
他の星の観光客は、ホテルに宿泊されますが、
それでは味気ないので、これもある大富豪から買い取りました」
「か、買い取りましたって…!」
もはや絶句するしかない。
庭だけで何千坪もありそうだ。
地球に来訪した時の仮の宿にしては、スケールが違いすぎて、
根っからの庶民の桃子にはついていけなかった。

「おや、すっかり夜になってしまいました。
お食事の用意が整ってございますので、ごゆるりとおくつろぎ下さい」
屋敷内部も、木造で古い造りだが、細部まで磨き上げられて、
長い廊下は滑りそうなほどだ。
さらに通された何十畳もある客間には、
金箔を施した襖絵が時代劇で見る大名の城を思わせ、
一挙に殿様気分になれる。

ラグローシュが鈴を鳴らすと、
すぐに和服姿の女性達が料理を運んで来た。
一流料亭も舌を巻く、贅沢にも品の良い懐石料理が並ぶ。
始終、あっけに取られていた桃子の向かいには、
レンが無愛想に黙ったまま座っているが、
ラグローシュは2人よりやや下がって、背筋を正して正座している。
「どうぞ、お召し上がりください。お口に合えば宜しいのですが」

異星人に、懐石料理をふるまわれるというのも不思議な話だったが、
空腹を覚えた桃子は、素直に頂きます、と手を合わせてしまった。
一方、ずっと黙っていたレンは、セピア色の眼鏡を外し、
執事ラグローシュに向かって口を開いた。


「いい加減に本題に入れ。ラグローシュ」


~第165回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-04-22 22:21

第163回接近遭遇「ふれあう恋人たちのココロ」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「君は、一体俺の何だったんだ?」

桃子はレンにそう訊かれて、一瞬戸惑った。
…急に、そんなこと。
なんて言えばいいんだろう?
まさか記憶喪失の人間に向かって、
あなたと私は恋人同士でした、とは答えられない。

「急に、何よ。あんたの上司から教えられてるでしょ?
あたし達は表向きはイトコで、まあ、同居人っていうか」
すると、レンは桃子をじっと見つめた。
なんだか緊張した。
見透かされているようでドキドキする。

「俺は、答えにくい質問をしたのか…?だったら、悪かった」
彼が意外に気遣うような感じを見せる。
「だが、知らなければ、いつまでも思い出せない。だから訊いた」
「遊太郎…」

…ああ、そうなんだ。
なんとか思い出そうと努力をしているんだ。
確かに、過去に時間が戻っている彼には、本当の事を話すには抵抗がある。
でも、知ることで、少しでも一歩進むなら…
カフェラテを一口飲んでから、桃子は彼を真っ直ぐに見た。

「あたしにとって遊太郎は、単なる同居人じゃなかった。
そばに居てくれなきゃ困る人。
だから、最初、あたしのこと忘れてるって聞かされた時は、
もの凄く悲しかった…辛かったんだよ」

それを聞いたレンが、ふっと伏し目がちになった。
桃子は慌てて付け加える。
「あ、でもね。遊太郎を責めてるわけじゃないんだ。
ごめん。あたし、うまく言えなくて。
記憶が無くたってさ、遊太郎は遊太郎だもん。
こうやって会えるだけでも嬉しい…」
途中で、ちょっと涙が出そうになったが、我慢して笑う。

レンは、しばらく黙ったまま、
テーブルに飾られている名もない白い花を見つめていた。
桃子は後悔し始めた。
あたしってなんて説明がヘタなんだろうと。
自己嫌悪に陥りそうだ。

しかし、ややあって口を開いた彼は、独り言のようにつぶやいた。
「やっと、分かった」
「え?」
「何故、どうしても君に会いたいと思ったのか」
「遊太郎…」
「そうか。君は、俺にとっても、大切な…」
「大切な…?」

その時、桃子の脳裏に、ある場面が浮かんだ。
それは遊太郎の社員寮を訪ねた時のことだ。
彼はふんわりと桃子を抱きしめてつぶやいたのだ。


(桃子さんは、僕にとって宝物です)


その言葉を昨日のことのように思い出し、
桃子の目から、さらりと涙がひと粒こぼれ落ちた。
「……」
驚いたレンが、無意識に彼女の顔に手を移し、その涙に触れた。
「ご、ごめん。ち、違うの。目にホコリが入って」
桃子はさっと彼の手から顔を外して、指で不器用に涙を拭った。
…危ない、危ない。
最近涙もろくなり過ぎだよ、と自分を戒める。
そして、素早くハンカチを取り出し、目が痛いと文句を言ってみるが、
レンは嘘を見抜いていて、わずかに視線を下に落とした。

気まずい雰囲気だ。
せっかくデートっぽい日を過ごしているのに。
桃子はわざと話題を変えた。
「ね。今度は遊太郎の服を見に行かない?」
次いで元気良くテーブルから立ち上がる。
「あたしにプレゼントさせてよ。
どうせ地上で自分の服なんか買った経験ないでしょ?」


そこへ。
桃子達のテーブルに、1人の初老の紳士が近づいて来た。
時代がかった燕尾服に、黒い帽子。
丸い眼鏡に白髪の上品な姿は、
映画から飛び出した執事そっくりだ。

「お話中、申し訳ありません。
お懐かしいお方を、お見受けしまして、
つい、ご無礼を承知でまかりこしました」
謙虚に深々と頭を下げる紳士に、
レンは眉を潜め、一転して冷たい表情に切り替わった。
「…お前は、ラグローシュ」
桃子は、ギョッとして彼を見る。
「し、知り合いなの?遊太郎」

すると、ラグローシュと呼ばれた紳士は、
帽子を取って、桃子に微笑みかけた。
「失礼致しました。お嬢様。私はラグローシュ。
このレン王子様が以前お住まいになっておられた城を取り仕切る、
筆頭執事でございます」


~第164回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-04-19 20:43

第162回接近遭遇「思いがけないデート」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「君に会いたかったから、来たんだ」

週末の昼下がり。
ナンパ男を桃子から遠ざけたあと、レンがそう言った。
思わず彼女は耳を疑った。
…会いたかったから?
もしかしたら、自分のことを思い出してくれたのか。
しかし、ほのかな期待は次のセリフによって、あえなく散った。

「上司に地上を視察しろと言われた。だから、案内してくれないか?」
「はあ?」
会いたい理由って、単にガイド役をさせるため?
彼女はつい文句を言いそうになったが、口には出さなかった。
彼なりに、空白の時間を埋める努力をしているのかもしれない。

「案内って。あたし、気の利いた場所とか知らないし」
「今日行く予定の所でいい」
「自分の服とか買いに行くだけだよ?」
「地上に慣れるためだ。仕方がない」

…仕方がないって、何よ?
本当、無愛想だし俺サマだし。
いつか元の彼に戻ったら、いっぱいワガママを言って、
リベンジしてやるんだから。
そう企んでいると、女たちのささやきが耳に入った。

「きっとモデルだよ。あの人」
「カッコ良すぎ!」
通り過ぎる女性が片っ端から振り向いていく。
おそらくレンが長身で顔が小さく等身が高い為に、
嫌でも人目を引くからだろう。
「行くわよ」
桃子はふくれっ面を作って彼を促した。
だいたい目立つ事があまり好きではないのだ。


「どう?このワンピ」
早速、よく行くショップに行き、
普通はあまり選ばない、ちょっと派手な服を試着してみせた。
過去に付き合った彼氏達の前でも、
こんなドラマのような真似はしたことがなかったが、
なんとなく、彼の反応が見たかったのだ。

案の定、レンはセピア色の眼鏡越しに、
クールな視線を送っているだけだ。
そんな彼の横顔へ、さっきからショップのスタッフ達が、
飽くことなく熱い眼差し送っているが、
本人は全く気にもしていないようだ。
やっぱりね、バカみたいと桃子は苦笑いを作った。

「いいよ。ごめん。わかんないよね、こういうの」
桃子は諦めたようにそう言って試着室へ歩き出した。
その時、ふっと彼が低い声でつぶやいた。

「そのままでいい」
「え?」
予想外な感想に驚いて振り返る。
相変わらず無表情の彼はこう言った。
「何も変える必要はない。そのままで充分だ」
「遊太郎」

…そのままでいいって。
無理して派手な服を着てみせたが、そのままの姿でいいのだと、
言葉通り褒めてくれているのだろうか。
あまりにも発言がシンプル過ぎて考えてしまうが、
桃子は顔を少し赤らめ、元の服に着替えることにした。


適当にショッピングしたあと、
2人はシアターホールの前を通りかかった。
桃子がつい誘ってしまう。
「あの、さ。映画でも見る?」
ちょうど上映時間に間に合いそうだが、
これでは、まるでデートではないか。
桃子は照れ隠しにフンと怒った顔を作り、
チケットを2枚買った。
ろくにタイトルも確認せず飛び込んだ映画は、
たまたまロマンチックなラブストーリー。
恋人達が苦難を乗り越え結ばれる、
お決まりのキスシーン場面で盛り上がる時、
桃子はチラリと隣の席に座っているレンを見た。
残念ながら、またしても彼は映画をただ観察しているだけであり、
全く何の感情も読み取れなかった。


映画のあと、たいていお茶を飲みたくなるもので、
桃子達はオープンカフェの、出来るだけ目立たない端のテーブルに陣取った。
それでも他の客達がチラチラとこちらを見ている。


「あ。そうだ。遊太郎。
あんたのエージェントが、代わりに会社に来てるよ」
ホットラテを飲みながら、遊太郎そっくりな男の話をした。
「ビックリした。そのまんま遊太郎をコピーしてるんだもん。
でも、あたしは見破っちゃったけどね」
少し得意げに笑うと、しばらく間があって、レンが口を開いた。

「君に聞きたいことがある」
「なに?」
思わずまばたきを数回してしまう。
何だろう。緊張する。
すると彼は少しためらいながら訊いた。

「君は、一体俺の何だったんだ?」


~第162回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-04-15 23:41

第161回接近遭遇「君に会いたくて」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
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この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「何だ。その魔物のような赤い瞳の色は。
やはり化け物なのだな。お前は」

衛星通信を通じて、ソリュート王は、実の父親とは思えぬ言葉を放った。
レンは無言で聞くしかなかった。
彼の赤く染まった瞳は、隕石の有害な波動を浴びた事が原因だ。
記憶障害さえ引き起こしてしまったその隕石を、
利用した黒幕が他ならぬこの父親だとしたら、
何をどう答えていいのか分からなかった。


上司ロータスは、2人の対峙を見守っていたが、
やがてキッパリと答えた。
「ソリュート陛下。
調査員としての記憶を無くしていても、
レンは我々の貴重なメンバーの1人です。
本人が帰る事を希望しないのであれば、その意志を尊重します」
それを聞いていたレンは、ふっと上司へ視線を流した。
何故そこまで自分を信頼しているのか、
という驚きと戸惑いの表情が浮かんで消えた。

「ロータスと申したな?
さっきから聞いていると、まるでレンの父親気取りではないか」
わずかにソリュート王の映像が歪む。
「あいにく私の意志は変わらない。
レン、化け物じみた力で母親と姉を殺したお前に、
故郷へ戻ることを許しているのだ。
この寛大な処置を有り難く受け入れ、帰還せよ」
玲瓏で鋭い一瞥をくれて、一方的にコンタクトは途切れた。
しばらく沈鬱な空気がブース内部に残る。

「なかなか、懲りないお父上だな」
ロータスが、その場の空気を和らげるように言い、
通信席から立ち上がって彼の肩を叩いた。
「また何か仕掛けて来るかはわからんが。決めるのは君だ」
「……」

レンの心の中に虚しい風が吹いていた、
…何故だろう。
いま無性に、会いたい人がいる。
平気で怒ったり泣いたり、
思いをストレートにぶつける、あの五十嵐桃子に会いたかった。
「気晴らしに地球へ降りてみるかね?」
彼の気持ちを察したかのように、ロータスが片目を瞑った。
「君に地上の視察を命じよう。レン」



その地球上では、再び週末がやって来ていた。
桃子はストレス解消に、久しぶりにショッピングに出た。

「ねえ、ねえ。キミ」
浮かれ集う華やかなストリートを1人で歩くと、
たいてい2人一組の男達にナンパされる。
多少ルックスに自信があり、ゲーム感覚で女を物色している男達だ。
「ボクらと、ちょっと話さない?」


…うっるさいなあ。
いつもなら軽蔑を込めて睨み、怒鳴って終わるところだが、
今日に限って、それすら億劫になっていた。
無視して通り過ぎようとした彼女の腕を、男の1人がつかんだ。
「別に彼氏と約束とか、ないんでしょ?」

悪かったわね。確かに約束なんかないし。
でも別に新しいオトコを作る心の余裕もなかった。
これはもう相手をひっぱたくしかないか、と考えた時、
腕をつかむ男の手が急にするりと離れた。

「?」
桃子は、彼らが虚をつかれたように、
桃子の背後を見上げているのを不思議に思った。
その視線の先には、見覚えのある長身の青年がいた。

「遊太郎…!」

いつの間にか、遊太郎、つまりレンが、
桃子をガードするように後ろに立っていたのだ。
もちろん人目を考えたのか、プラチナの髪は黒髪に変えてはいるし、
セピア色のスリムなフレームの眼鏡をかけていたが。

「え。か、彼氏?」
まさか、とナンパ男達は動揺した。
自分なりに結構イケていると思い込んだプライドが、
恐ろしく格の違う男の登場で、あっけなく玉砕したからだ。
レンは特に何も言葉を発せず、立っているだけだが、
彼らは悔しげに苦虫を噛み潰したような表情で、
人混みの中を逃げ去ってしまった。

「あれは何だ?」
レンが怪訝そうに桃子に訊く。
「ナンパだよ」
「ナンパ?」

説明するのは面倒だったし、助けてくれて嬉しいが、
天の邪鬼な桃子は怒るフリをした。
「ビックリするじゃん。急に。
こんな昼間に現れたりして。みんな見てるし」
「調整したつもりだが」
「それで?あんた、髪を染めても超目立つんですけど?」
「そうなのか?」

自覚がないらしい。
最も、自分の容姿に無関心なところは、記憶がある前と変わらないのだが。

レンは低いトーンで言った。
「君に会いたかったから来たんだ」


~第162回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-04-12 18:53

第160回接近遭遇「父親×上司」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「あんた、誰?遊太郎じゃないよね」

会社の休憩室のカウンターで、
桃子は遊太郎そっくりな人物と対峙していた。
まるで高校生が大人のスーツを借りて着ているような童顔に、
黒い縁取りのまんまるメガネ、ふわっとした声、
何もかもが森田遊太郎そのものだが…。

「五十嵐さん。よく分かりましたね」
相手はにっこりと微笑を返した。
礼儀正しくスーツの前で手を合わせ、全く悪意の片鱗も感じない。

「驚かせて申し訳ありません。
私は森田遊太郎、つまりレン・ソリュートの代理として参りました」
「代理?」
桃子の声が大きく響き過ぎて、
思わず辺りに聞かれていないか見回してしまう。
彼はその心配はないと制した。

「警戒なさらなくても大丈夫です。
申し遅れましたが、私はエージェントチームのハトル。
派遣調査員にアクシデントが発生した場合、
応急的な代理を務める仕事をしています」
「エージェント…。じゃあ、遊太郎の」
「はい。彼はいま記憶喪失の為、まだ待機中です。
しかし長期に渡り地上勤務に穴を開けますと、
地球人に怪しまれかねないため、
代理として、こちらの会社へ出向したのです」
「はあ…」

なんだか話が突飛過ぎて疲れて来た。
ようするに、研修という名目だけで、
遊太郎が長く姿を見せないでいるのは不味いからだろう。
それにしても、そっくりだ。
じろじろ見ていると、遊太郎のエージェント、ハトルは、
かゆい所に手が届くように回答した。

「森田遊太郎の外見、クセ、今までの詳細なデータはコピーしています。
最も、あなたには見破られましたが」
「なんとなく、雰囲気が違うから…」
「さすがですね」
ハトルがわずかに苦笑した。

「でもそんなこと、神崎部長は何も教えてくれなかったけど?」
桃子がちょっと睨むと、ハトルは明快に答えた。
「エージェントチームは、調査団とは別の管理下で動いているからです。
では、通常業務に戻りますので」
深々と頭を下げ、ハトルは高山係長の待つ部署へ、
戻って行ってしまった。

窓の外の曇った空を見上げながら、桃子はため息をついた。
何だろう。この感じ…。面白くない。
彼らも遊びで地球に来ているわけではないのだから、
代理を立てるのは当然かもしれない。
これではまるで、遊太郎がもう戻って来ないと決めつけたような感じだ。
ますます気鬱になって来た。


その頃。
月の裏側に浮遊する銀河連盟ステーションで、
ある衛星通信が届いていた。
レンの父親であるソリュート王からのプライベートコンタクトである。
個人用ブースに座り、代わりに受信するのはロータスだった。

「ソリュート陛下。私はご子息の上司、ロータスです。
彼はいま、体調不良につき、お話は出来かねますので、
代わりに私が承ります」
すると衛星ホログラムの映像が揺らいだ。
「レンは記憶喪失と聞いているが」
「その通りです」
落ち着いたロータスに、ソリュート王は軽く見下したように笑った。

「銀河連盟調査員などという下らぬ仕事や、
地球人の女のことをすっかり忘れているようだな」
「お詳しいですね」
「我が諜報機関をなめてもらっては困る。
しかし、これでレンも思い煩うことなく、わがソリュート星へ帰還できよう」

ロータスは少し眉を潜めて訊いた。
「…まさか、貴殿はこうなることを画策して、
ランドエル博士を操作し、あの危険極まる隕石を持たせ、
レンにショックを与えさせたのでは?」
「だったらどうした?」

「なんという事を…!
ひとつ間違えば、貴殿のご子息は、廃人に成りかねなかったのですよ?」
「廃人でも何でも良いのだ。
王位継承権を持つゆえに、帰還させるまでのこと。
形だけで政治的には面目は保てる。それだけだ」
「……」
「記憶が失せているなら、銀河連盟調査団でも、
もうレンは必要ないはずだ。
速やかに、返してもらおう」


さすがに厳しい顔つきに変わったロータスだが、
そこへ軽い電子音と共に、レンが入室し対話が途切れた。
彼の姿を捉えたソリュート王の表情が嫌悪に歪む。

「何だ。その魔物のような赤い瞳は。
やはり、化け物だな。お前は」


~第161回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-04-08 23:36

第159回接近遭遇「もう1人の森田遊太郎?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

翌朝。
ベッドから飛び起きた桃子は、すぐに新聞に目を通した。
ところが街中を荒らしたタイタン星人の事件は、
大きな記事にはなっていなかった。
ただ、酔っ払い外国人集団の騒動として、
わずかなスペースを割いて書かれていただけだ。
例によって銀河連盟調査団が、うまく隠蔽したのだろう。


会社に出勤してすぐ、更衣室で清美を捕まえたが、
「そうそう。昨日は変なガイジンの酔っ払いに追いかけられて、
めちゃくちゃ災難だったよねえ。桃子」
と平然と笑うだけで終わった。
ともあれ彼女がケガもなく無事だったことを知り、内心ホッとする。
そのあと、いつものように仕事をしながら、
桃子は昨夜、マンションまで神崎部長に送られた時の事を、
なにげなく反芻していた。


「遊太郎が助けに来てくれるなんて、思ってなかったから、
すごく驚きました」
車中で、そう感想を言ってみると、
神崎が、隣でああと頷いた。
「桃子君との記憶は無くとも、本能で危険を感じたようです」
「本能で?」
「潜在的には、あなたのことを忘れていないという事でしょう」
そうなのだろうか。
だったら、少し嬉しい。
そういえば彼も何かを感じたからと言っていたっけ。

「それにしては、俺サマですよ。アイツ」
テレ隠しに、わざとムクレてみせる。
「あたしは普通の女だっていうのに、
強い力で引っ張って、めちゃくちゃ走らされるし。
ひと言の断りなく、急にお姫様抱っこして、
何メートルも飛んだり、無愛想に命令するし、
なんか全然、別人みたい。
それとも遊太郎って、元々、あんな性格だったのかなあ?」
しばらく桃子の話を聞いていた神崎は、
窓から過ぎてゆく真夜中の街並を見ながら話した。

「レンが銀河連盟調査員になった当初は、
まさに、ああいう突き放した感じでした」
「そうなんですか?」
「はい。故郷を飛び出して宇宙の星域を放浪して来た彼は、
夢や希望どころではなく、一匹狼にならざるを得なかったと思います。
でも、調査員として地球に派遣され、
桃子君に出会い、ずいぶん変わったのではないでしょうか」

「あたしに、会って?」
「ええ。ですから記憶がない今は、多少性格が違って見えてしまうのは、
仕方がないのかもしれません。悪気はないのです」
謝る神崎に、桃子は慌てた。
「すみません。そういう意味で言ったんじゃないんです。
もう1年近く暮らしていたのに、
遊太郎のこと、あんまり分かってなかったんだなあって。
だから、逆に新鮮な気分なんです」


昨夜のそうしたやり取りを思い出していると、
係長の高山達が帰って誰かを伴って来た。
その隣に立っている人物を見て、桃子は一瞬、目を疑ってしまった。

「遊太郎…?」

まんまるメガネに高校生のような童顔は、まさしく森田遊太郎である。
横から清美が怪訝そうな顔をした。
「どうしたのよ、桃子。
森田クン、研修終わって今日から出勤じゃん」
「え?そ、そうだっけ?」
「もうっ。昨日飲みすぎたんじゃない。ボーっとしてるしさ」

…ちょっと、待ってよ。
神崎部長からは、そんな事は何も聞いていない。
桃子は勢い良く席を立ち、遊太郎のいる方へ歩き出した。
昨夜会ったレンは、まだ記憶を取り戻してはいなかった。
だから当然、森田遊太郎として会社には復帰出来ないはずだ。
それなのに、目の前にいるということは、
もしかして…?

パンプスの音を響かせて近づいて来た桃子に、
高山が何を勘違いしたか、白い歯をキラリとさせてニヤついた。
「オレにデートの申し込みかな?五十嵐クン」
違う。あんたなんかに用はない。
桃子は、高山を綺麗に無視して、
傍らに立っている遊太郎の前に立った。
その時、彼も桃子の方を見て言った。

「五十嵐さん。ちょうど良かった。お話があったんです」
にっこりとする、もうひとりの遊太郎。
2人して休憩室へ行きながら、容赦なく彼を上から下まで見た。
確かに顔や姿はそっくりだが、雰囲気がわずかに異なる。
それはきっと桃子でしか分からない違いだった。
自販機を置いた休憩室の見晴らしの良いカウンターで、
桃子はストレートに訊いた。

「あんた、誰?」


~第160回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-04-05 12:34

第158回接近遭遇「レン&桃子×タイタン星人」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

真夜中のグラウンド。
その中央まで跳躍し、着地したレンは抱えていた桃子を下ろした。
2人を囲むように、凶暴なタイタン星人が続々と集まって来る。
彼らによる被害の拡大を避ける為、
彼は人通りが多い駅周辺から脱出し、
わざとこの広い場所へ引きつけたのだ。

「遊太郎…!」
圧倒的な数の、黒光りする肌の男達を見て、
桃子はようやく相手が地球人ではないのだと悟った。

「ねえ。もしかして…、あいつら、エイリアン?」
それを聞いたレンは無愛想に低い声で肯定した。
「そうだ。何だと思っていた」
「ひっどい。そのバカにした言い方。
だって、わかんないじゃん!ガイジンの集団暴動だって普通は思うよ?」
頬を膨らませて怒り出す桃子へ、
「静かに」
と、彼はクール過ぎる表情で黙らせた。

薄ら笑いを浮かべたタイタン星人は、
黒い肌にぎょろりとした爬虫類のような目をして
奇声を放ち、じわじわと2人との距離を縮めてゆく。
その時レンは桃子の身体を自分の方へ向かせた。
彼女は何をするんだとばかり口を尖らせたが、
お構いなしに厳しい口調で命令する。

「目を閉じるんだ」
「ちょ、ちょっと。何考えてるのよ?」
「言われた通りしろ」

…なに、コイツ。性格、超俺サマじゃん!
記憶が戻ったら、絶対にお仕置きをしてやるんだから。
そう心に誓いながら、桃子は言われた通りに固く目を閉じた。
スッと彼が彼女を抱き寄せるように固定する。
桃子は怖さと同じくらいドキドキするのを感じた。

黒蟻のように数十人のタイタン星人が、
まさに2人に向かって襲いかかろうとした瞬間。
真っ白に閃く光が、グラウンド全体に広がった。
その光はレンの身体から強く放射していて、
目を閉じていても、鳥肌立つほど凄まじい。
それはさながら太陽のようだ。
光を浴びたタイタン星人達は、一様に両目を抑えた。
視界が効かなくなるのと同時に、
凶暴だった力が抜けて、悔しさに呻き声を上げる。


そこへ、タイミング良く銀河連盟パトロール隊員がグラウンドに現れた。
目がつぶれて動けなくなったタイタン星人を次々と捕獲してゆく。

「もう大丈夫だ。目を開けていい」

しばらくして、レンにそう言われた桃子は、
恐る恐る薄目を開けてみた。
既にあの物凄い光は消えて、
真っ暗闇なグラウンドがしんと静かに拓けているだけだ。
溜めていた息を吐き出した彼女は、レンからぎこちなく離れた。

「ありがと。助けてくれて」
「これが仕事だ」
そう無愛想に応えた彼は、サングラスを外した。
透明度の高いルビーのような瞳がそこに揺れていた。

桃子は片方の耳に手をやりながら訊いてみる。
「あの…。このピアスの発信機で、あたしのSOSがわかったの?」
銀色の小型発信機は、遊太郎から貰ったものだが、
記憶を無くしているレンには通じないと思っていたからだ。
しばらく間があって、彼は口を開いた。

「何かを、感じたんだ」
「え?」
何かをって、何なんだろう。
桃子は真っ直ぐに彼の夜目にも白い顔を見つめた。
もしかしたら、思い出しかけているのでは…?


そんな時、門のすぐ横に黒いBMWが停まった。
見覚えのある恰幅の良い男性が降りて微笑する。
それが神崎だと分かった桃子は、会釈を返した。
きっと心配をして迎えに来てくれたに違いない。
レンは桃子を促した。
「行け」
「遊太郎も…」
一緒に帰ろうよ、と言いかけたが、止めた。
「ごめん。ホントにありがと。おやすみ。遊太郎」
早口でそう言ってから、桃子は門へ向かって歩き出した。
途中で、チラッとレンの方を振り返り、少し手を振った。
門をくぐり、彼女が車に乗り込むと、すぐに見えなくなった。

誰もいなくなったグラウンドで、
レンは眉を曇らせ、こめかみを少し押さえた。
何かを思い出そうとする度に神経に触るのか、
頭の芯に稲妻のような痛みが走る。

五十嵐桃子。
怒ったり泣いたり、異星人である自分に、
平気でぶつかって来る地球人女性。
記憶を無くす前の自分にとって、彼女はどんな存在だったのだろう。
問いかけても、冷えた北風が、無言で吹き過ぎるだけだった。


~第159回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-04-02 23:29