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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2009年 02月 ( 8 )   > この月の画像一覧

第149回接近遭遇「致命的なプレゼント」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

その深夜。
遊太郎からレンへ戻った彼は上司ロータスにテレパシーを送った。
それが速やかに受信されたあと、
呼び出されたホテルの最上階スイートルームに赴いた。


豪華なシャンデリアの下で、サーフィスの微笑が歓迎する。
「ようこそ。レン」
輝く金髪とグリーンの瞳、純白のスーツを着こなした彼は、
まるで何処かの国の美しい王子のようだ。
「ソファにかけたまえ。明日ボクはソリュート星へ帰る。
今夜は、お互いゆっくり昔話でもしよう」
「残念だが長居するつもりはない」

レンは冷たく一蹴した。
スレンダーな身体を白のシャツと黒の上下で包み、
華やかなサーフィスとは全く対照的だ。

「そういうクールなところが好きだよ。レン」
「ふざけるな。
僕は、ここに隠れている人間に用があって来た」
「隠れて…?」

一瞬、サーフィスが人形のように無表情になるのを、
彼は見逃さなかった。
そういえば、いつも甘い花の香りをさせているが、
今夜は薬のような匂いを漂わせている。

「何を言い出すのかと思えば。
ボクは、このホテルに1人で滞在しているんだよ?」
ソファから立ち上がるさまは、
ぎこちなく妙に違和感があった。
何気ない動きが機械じみているのだ。
「サーフィス。まさか…君は」
洗脳されているのだろうか。
影に隠れて、こちらを伺っている人物に…?

「仕方がない。勝手に捜させてもらう」
彼は奥の部屋へと通じる廊下へ向かった。
その背を停止させるように、サーフィスが声高に話しかける。

「君にプレゼントがあるんだ」
「?」
レンは立ち止まり、少し眉を潜めて振り返ると、
彼はポケットから小さくて丸い金属ケースを取り出した。
その蓋を開けようとする直前、
本能的に危険を察知したレンは叫んだ。
「駄目だ。サーフィス。開けるな!」
しかし彼は平気で開けて、中から黒っぽい何かを取り出した。
それは、焼け焦げて先端が尖った濃緑色の破片…


「懐かしいだろう?レン。
数年前、ボクたちのソリュート星に接近した隕石の破片だよ」
「!」
レンの青灰色の瞳が大きく見開かれた。
破片から急激な速さで放たれた有害なエネルギー。
それに感応してしまったからだ。
その圧倒的に邪悪なエネルギーは、
部屋中に黒いガスのような毒気を撒き散らした。


「うっ……!」

レンは不意に頭を抱えて低く呻いた。
暗黒エネルギーをまともに浴びたせいで、
狂いそうな痛みに襲われたからだ。
その様子を見たサーフィスは楽しそうに言った。

「凄い効き目だね、この石。普通人のボクにはわからないけど。
特殊能力者の君には感じるんだ。失われた命の断末魔が」
「サーフィス、目を覚ませ…!」
レンは片方の手でこめかみを抑え、彼に訴えた。
「それを、ケースに入れるんだ。早く…!」

しかしサーフィスの耳には届かない。
「ほら、時間が戻ってゆく。あの時に。
君は当時、ソリュート陛下に言われたんだっけね。
自分の母親と姉を死に追いやった化け物だと」
「……!」


( お前のような者は私の息子ではない。
人でなしの力を持って生まれた化け物だ!)

あの時の、自分をひどく嫌悪する父親の顔が浮かんだ。
そして重なるように再現される隕石事故の映像。
破壊と爆発。
巻き添えになった最愛の母親と姉の命。
一生かかっても消えることはない罪悪感。


「………」

レンは浅い息を繰り返しながら壁に寄りかかった。
心臓が圧迫されたように波打ち、
もう立っていることさえ難しい。
まさかサーフィスが負のエネルギーを封印した、
あの隕石を手にしていたとは予想外だった。


「さあ。ハッピーエンドへ」

そう言って、サーフィスはテーブルのワインをグラスに注いだ。
隕石の先端を少し折ってその中へ落とし込む。
そして、少しだけ口に含ませ、
そのまま悠々とレンに近づいた。
目の前には、壁を背にして息も絶え絶えの友がいた。
うなだれた真っ青な顔に乱れた髪がかかり、
瞼を閉じて苦痛に耐えている。

「極上のワインをどうぞ」

サーフィスは微笑し、レンの細い顎を優雅に指ですくい上げ、
己の唇を強引に重ねた。


♪第150回をお楽しみに♪



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by yu-kawahara115 | 2009-02-26 20:53

第148回接近遭遇「はかない約束」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ねえ。帰って来てよ。遊太郎」

社員寮の遊太郎の部屋で、桃子が呼びかけるように言った。
遊太郎はホットミルクを桃子の両手に持たせて、
ふんわりとした笑みを返した。

「黙って部屋を出て、本当にすみませんでした。
でも、必ず桃子さんのところに帰りますから」
「帰るって、いつよ?」
「ちょっとゴタゴタがあって…。それを片付けたら」
「ゴタゴタって、あのメールのこと?」

全社員に送られた怪文書の事を口にする。
遊太郎の正体が宇宙人だと書かれた悪質なものだ。
彼はゆっくり頷いて肯定をした。
「驚かせてすみません」
「そうだよ。なんで遊太郎の正体がバレたんだと思ってビックリしたんだから。
まあ、あんたが宇宙人なんて信じる社員はいないと思うけど」
「すみません」
何度も謝る彼に桃子は、いいよと苦笑した。

「じゃあアレ、やっぱり悪いエイリアンがやってるんだ?」
「イタズラですよ。大したことはありません」
その回答に桃子は心底納得はしていないようで、
チラッと遊太郎を上目遣いで見た。
ちゃんと話してよという風に。

「もう少し、待ってください」
遊太郎が真摯な目で頼んだ。
「整理がついたら、僕はちゃんと戻ります」
「本当に?」
「本当に」

桃子はしぶしぶ承諾した。
きっと遊太郎には彼なりの考えがあるのだろう。
これ以上追求しても、彼に負担をかけるだけかもしれない。

「分かった。じゃ、約束」
遊太郎の小指と自分の小指とを絡ませる。
「前に教えたっけ?日本のおまじないで指切り」
「はい」
「絶対帰って来て、前みたいに一緒に暮らすこと。約束だよ」
2人は仲良く指切りをした。
それがとてもはかない約束だとは、桃子はまだ知らない。


「もう遅いから送っていきます」
ふと時計を見て遊太郎が上着を着た。
「ん」
桃子は心の内で、今夜は泊まっていけとかなんとか、
言ってくれたらなあと思った。
しかし真面目な遊太郎には無理な注文だろう。
残念そうに立ち上がった桃子を、遊太郎がふわっと抱きしめた。
「遊太郎?」
驚く彼女へ、彼がポツリと言った。

「桃子さんは、僕にとって大切な宝物です」
「え?」

驚く桃子の身体を放し、
遊太郎はにっこりして行きましょうかと笑った。
そのとたん、彼女はマンションの前に立つ自分を発見した。
同時に遊太郎の姿は幻のように消え、
北風だけが身体の周りに吹いていた。
「遊太郎…」
一瞬だけ抱きしめられた感触を思い出すかのように、
両腕で自分の身体を抱き、
桃子は振り切るように自分の部屋へと帰って行った。


桃子がマンションの中へ入っていくのを、
建物の影から見届けた遊太郎は、周囲をスキャニングした。
しばらく前に浮遊していた小型偵察機の気配もなく、
安堵して社員寮へ戻ろうとした時、上着の内ポケットの携帯電話がふるえた。

非通知。
かまわず電話に出る。
「やあ。レン?」
聞き覚えのある男性の声。
遊太郎はわざと黙っていた。
「サーフィスだよ。君の親友の」
「……」

もちろんサーフィスに電話番号など教えてはいないが、すぐに察しがついた。
彼の背後に見え隠れする人物の仕業だ。
会社のコンピュータに不正アクセスをした時に調べたのだろう。

「まだ怒ってるの?この間はボクが悪かった。
君に殴られて当たり前だよね」
相変わらず一方的に喋る。
「もう君を故郷の星に連れ戻すのは諦めたんだ。
だから明日、地球を離れることにした。
でも、その前に会って謝っておきたいし、渡したいプレゼントもあるから」
滞在しているホテルに来て欲しいと言う。

また何か企んでいる気配はしたが、あえて遊太郎は承諾をした。
「分かった」
サーフィスの裏に潜む人物を突き止めなければならない。
その人物こそ遊太郎を偵察機で監視し、
会社に怪文書メールを送信した人物のはずだ。



ホテルで電話を切ったあとサーフィスは、
急に無表情になった。
椅子にただ座ってグリーンの瞳を虚空を投げている。
まるでマネキンのような彼の様子を、
ランドエル博士は満足そうに眺めた。

「良く出来ましたね。サーフィス様」


~第149回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-02-21 16:09

第147回接近遭遇「桃子、社員寮に乗り込む?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

サーフィスは疑惑の目でランドエル博士を見た。
レンが遊太郎として在籍する会社へ、
宇宙人疑惑を仄めかすメールを送信したというのだ。

「何をそんなに驚いているのですか?サーフィス様。
レン王子が地球から離れざるを得なくなるように、
作戦の一つを実行してみたのです。
まだ初歩的段階ですが」
「何を言っているんだ?
彼を連れ戻すよう依頼を受けたのはボクだ。
君は単なる供でしかないじゃないか。
勝手なことをしないでくれたまえ」
サーフィスの声が怒りで裏返る。
するとランドエルはソファから、すうっと立ち上がった。
「分かってらっしゃらないようですね」

無機質な笑みを張り付かせ、
今まで見せずにいた狡猾で冷酷な顔をさらした。
「あなたでは、きっとレン王子を動かせない。
そうお考えになったソリュート陛下は、
秘密裏に私にレン王子を奪還する命を下されたのですよ」
「!」

サーフィスの顔がこわばったが、構わず続ける。
「あなたは確かにレン王子のご友人ですが、
情に流されやすく詰めが甘いお坊ちゃまだ」
「な…!」

気色ばむ彼を無視して、ランドエルは上着の内ポケットから、
まるで香水のような小さな金属製の容器を取り出した。
「あなたのようにレン王子の意志など考えていては、
事がなかなか進まない」
「バカな。レンの気持ちを無視するのか?」
「関係ありません。
少なくとも私は、彼の身体さえ手に入ればいいんです」

恐ろしい事をさらりと言ってのけ、
容器を目の前にかざす。
「私は、彼のような特殊能力を持つ人間の細胞に、
大変興味を持ったのですよ」
この時、初めてサーフィスは気づいた。
ランドエルの真の目的を。
「もちろん、用が済めば陛下にはレン王子をお返し致します。
陛下は私に一任したのですから、それぐらい許されるでしょう」

サーフィスの鼻先に容器を突きつけ、ランドエルは命令した。
「さあ、私の指示通り動いて、
レン王子を捕獲する為に協力をしてください。サーフィス様」
「止めてくれ…!」
容器から放たれた濃厚な気体は、
生き物の魔手のように、
サーフィスの頭脳を洗脳するべく広がり始めた。



その夜。
桃子は地図を片手に駅前から少し外れた住宅街を歩いていた。
遊太郎が引越したという社員寮を探すためだ。
会社で彼を待っていたが、直帰するらしいからだ。
突然部屋を出た本当の理由も聞かなければならず、
全社員の端末に送られた怪文書メールについても気になった。


…でも強引に会いに来て、うっとおしいとか思われるかな。
少しばかり気が咎めたが、すぐに首を振った。
嫌われたって構わない。
会いたいから来た。それだけだ。

こじんまりしたワンルームマンションの管理人室を訪ね、
森田遊太郎のイトコだといって社員証も見せた。
管理人はすんなり鍵を開けてくれて、
角部屋の一室に入り、まだ帰らない遊太郎を待つことにした。

3日前に引っ越したばかりのはずなのに、中は綺麗に片付いていた。
備え付けのシンプルなベッドに机やクローゼット。
観葉植物は前より数が減って片隅に立っている。
コートを脱いでベッド近くに腰を下ろし、
膝を寄せて溜め息をついた。
あんな怪文書事件があったあとだ。
ひょっとしたら、今夜は帰って来ないかもしれない。

そのうちウトウトしてきた桃子は、
ベッドに這い上がり、寝てしまった。


深夜。
部屋に戻ってきた遊太郎は、
ベッドの上に猫のように丸くなって寝ころんでいる桃子を見つけた。

「桃子さん」

そっと毛布をかけようとした時、
彼女の目がパチリと開いた。
「あっ!ゴメン。あたし…寝てた!」
弾けるように起き上がって顔を真っ赤にさせる。
「勝手に上がり込んで、ゴメンね。あたし、遊太郎が心配で…」
黙って出たことを怒ってやろうとしていたのに、
罪悪感が先にたって、つい謝ってしまう。

遊太郎はにっこりして、上着を脱ぎ、
「温かい飲物でも作りますね」
と、小さなスペースのキッチンに立った。
なんだかこうしてると、いつものマンションにいるみたい。
せつなくなった桃子はポツリとこぼした。


「帰ってきてよ。遊太郎…」


~第149回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-02-18 19:05

第146回接近遭遇「謎の怪文書メール」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

月曜日。
桃子が会社に着いた時、社内全体の不穏な雰囲気に気がついた。
変だな。何だろう?

「あっ!桃子、タイヘンだよ」
制服に着替えて部署へ出勤すると、清美が声高に走り寄って来た。
営業一課の全員が桃子を一斉に不審そうに見る。
「おはよ。清美。なに?朝っぱらから」
「いいから、早くメールボックス見て!」
「メールボックス?」

そんなことよりも、出勤しているはずの遊太郎を捕まえたかった。
黙ってマンションを出た彼に、理由を聞かなければならないのに。
桃子は清美に急かされるまま、自分のデスクのパソコンを立ち上げた。
そしてメール受信箱を開けた時…


「!」

一瞬で身体中が凍り、頭をガツンと殴られた感覚がした。
発信者不明の受信メールの内容は…


『 森田遊太郎は宇宙人だ。
地球人に変身した宇宙人だ。
君達は騙されている。
気をつけろ 』


何、これ…?

桃子は反射的に遊太郎を目で探した。
すると清美は、この怪文書の件で遊太郎が斎藤課長に呼び出され、
別室にいると教えてくれた。
「社員全員の端末に送られてるみたいだよ。
森田クンが宇宙人だなんて、嫌がらせにしてもベタ過ぎるよね」
清美が呆れたように言うが、桃子は返事も出来ずに黙り込んだ。

酷すぎる。
一体誰がこんな悪質なことをするのか。
遊太郎は確かに地球人ではない。
銀河連盟から派遣調査員であり、本当の素顔は全く別人である。
しかしそれは、桃子と神崎部長だけが知っている秘密のはずだ。

程なくして、
斎藤課長と遊太郎がフロア内へ戻って来た。
ざわめきと好奇の目に晒されている遊太郎の為に、
斎藤課長が一課全員に言い渡した。

「静かにしろ。最近、ハッカーだかなんだか知らんが、
他社の情報を読み取ったり妙なメールを流す不届きな輩が多い。
多分、今回の森田を中傷するメールも、誰かのイタズラだと思う。
発信元は今調査中だから、お前達は気を取られず業務に戻れ」

課長の一喝のあと、まだ落ち着きがないまま、
部署内の全員がバラバラと各自の仕事に戻っていった。
月曜日の気だるい朝に突発的に発生した怪文書事件。
皆が興味津々に遊太郎を見るのは仕方がないかもしれない。

桃子は遊太郎に話をするきっかけを逃して、
書類を手にしながら横目で彼を追うと、
係長の高山と供に外回りに出るところだった。



「森田ぁ。お前、どっかの誰かに恨みでも買ってんのか?」
地下駐車場に向かうエレベーターの中で、
高山が遊太郎をからかった。
「さあ」
噂の本人は、意外にものんびりした口調で首を傾げた。
トボケたまん丸メガネの童顔を見る限り、
そうショックを受けたようには見えない。
相変わらずニブいヤツだと高山は思った。

「しかしよ。嫌がらせするにしたって、
もっと説得力あるメールにしろって話だよな。
宇宙人だぜ?アニメじゃあるまいし」
「はあ」
「だいたい、地球人に変身してるってもなあ」
高山がいきなり遊太郎の頬をぎゅっと引っ張る。
「どう見たって、のび太はのび太じゃね?」
「痛いです。高山係長」
「ハハハ。悪ぃ、悪ぃ。
ま、オレだったら、もっとスキャンダラスなメールを歓迎するけどな」
高山は遊太郎をオモチャにして、彼の顔や髪を引っ張って遊んだ。


一斉に送られた怪文書。
会社のホストコンピューターに侵入した者がいるとしたら…
と、遊太郎は心の中で考えを巡らせていた。
ふっとサーフィスの顔が浮かんだが、彼ではありえない。
まだ憶測だが、サーフィスの影に隠れ、
気配だけ感じ取った人物かもしれない。
どちらにしても、この挑発に乗ってはならないと思った。



その頃。
リゾートホテルの豪華なスイートで、
テーブルの上の銀色のパソコンを前にして、
ランドエル博士はサーフィスに、
自分が送った怪文書について平然と説明をしていた。
「いささか原始的なやり方で、子供騙しではありますが、
レン王子の心理を乱す最初の段階としては充分でしょう」
「ちょっと待ちたまえ」
思わずサーフィスがランドエルに詰め寄った。

「ボクの親友に、君は一体何をしようとしてるんだ?」


~第147回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-02-14 17:47

第145回接近遭遇「動き出した影」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「親子で宇宙戦争でも始める気かね。レン?」

そうブラックユーモアたっぷりに言ったのは、
上司ロータスだった。

ここは月の裏側にある銀河連盟ステーション。
そのコントロールセンターで、ロータスは流線型デスクに手を組み、
自分の前に立つ長身痩躯の青年を見上げていた。
「まあ、君なら負けないだろうが」
茶目っ気を出して冗談を言うと、レンは真面目に否定した。
「そんなことにはなりません」
「それは安心した。私は平和主義だからね」


軽い調子の前置きのあと、上司の顔に戻って問い質した。
「失礼を承知で、君とお父上とのプライベートコンタクトを、
こっそり読ませて貰った」
プライベートコンタクトとは、
レンへ発信されていた衛星通信の記録である。
「それによると、お父上は母星への帰還を命じておられたようだが、
君はそれをかたくなに断ったそうだな」
「……」
無言で肯定するレンへ、さらに質問を続ける。
「それに、君は桃子君のマンションから独断で住居を移した。
これも、この件に関係するのかね?」
特に責めるような口調でもなく質問をする上司に、
彼はしばらく考えて重い口を開いた。

「勝手なことをして申し訳ありません。
でも、こうするしか僕には考えつかなくて…」
レンの端正な白い顔が、やや曇った。
「何があったか説明出来るかね」
ロータスが立ち上がり、腕を後ろに組んでレンに近づいた。
穏やかな茶褐色の瞳を向けて、
上司というよりは、まるで肉親のように彼に接する。

レンは少し考えたのち、観念して話し始めた。
「実は、マンションの周辺に偵察機が大量にバラまかれていました」
「偵察機?」
「47機ありました。あのタイプはソリュート星のものです」
「それはまた、ずいぶん大掛かりだな。
まさか1人で全部回収したのか?」
「ひと晩あれば充分です」

一瞬、ロータスは呆れたような顔をしたが、
肩をそびやかして苦笑してみせた。
「我々の断りなく地球人のプライベートを偵察するのは、
立派な違反行為だが…。他には?」
「昔の、僕の友人が父に依頼されて地球に来ています。
名はサーフィス・ロード。
彼は桃子さんの前にも現れました」
「桃子君の前に?」

サーフィスが桃子にも接触して来た時、つい殴ってしまったが、
あれで終わるとは思えない。
何故ならサーフィスの影に、
得体の知れない人物の気配を感じ取っていたからだ。
彼が滞在するホテルの奥に漂う波動を…


しばらく沈黙が降りて、コントロールセンターに電子音だけが響いた。
ロータスは落ち着いた声音で口を開く。

「桃子君のもとを離れて済む問題でもないと思うがね」
「分かっています」
「一度母星へ戻り、お父上と向き合って話し合うという選択もある。
最も、今の君には受け入れ難いだろうが」
「……」


一度ソリュート星へ帰る?
忌まわしい事件の中で捨てざるを得なかったあの故郷へ?
レンはふっと自嘲気味に淡い笑いを浮き上がらせ、
すぐに冷めた青灰色の瞳で虚空を見た。
そんなことをしたら、父親の憎しみと恨みが絡みついて、
二度と地球には戻れず、桃子にも会えないだろう。
そんな澱のような予感がした。

「それにしても、君が部屋を出て、
おそらく桃子君は怒っているだろうな。
ハッキリした理由を話さずに出て来たのだろう?」
「それは…」
レンは言葉に詰まった。
…言えなかったのだ。
言えば彼女を怯えさせ、心配をさせてしまうだろう。

沈静した表情のレンの肩を、ロータスが温かく大きな手でそっとつかんだ。
「とにかく何かあれば、すぐに報告をしなさい。
毎回言っているが、スタンドプレ-は厳禁だぞ。
それと、忘れないでほしい。
君は私の大事な部下であり、
銀河連盟調査団のメンバーだということを」
「承知しました」
心に染み入る言葉だった。




その時。
休日のチューリップ生命本社中に、
メールによる怪文書が配信されていた。


『 森田遊太郎は宇宙人だ。

地球人に変身をした宇宙人なのだ。

君達は騙されている。

気をつけろ   』


~第146回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-02-11 13:06

第144回接近遭遇「部屋から消えた遊太郎」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
ただいま恋愛モード激走中♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

土曜日の朝。
桃子は大きく伸びをして、パジャマの上にカーディガンを羽織り、
リビングへと歩いた。
土曜日はたいてい、遊太郎が新聞をテーブルに置いてくれていて、
搾りたてオレンジジュースを用意してくれるのだが。

「あれ、遊太郎?」

急な仕事が入って出かけたのだろうか。
ふと見るとテーブルにメモが残されていた。

『 桃子さん、おはようございます。
突然ですみません。
やっぱり社員寮に移ることにしました。

サンドイッチとサラダ、
オレンジジュースを作っておきましたから、
冷蔵庫に入れておきますね。


しばらくしたら、また戻ります。
心配しないでください。
今までありがとうございました。 遊太郎』

読むなり、桃子はメモを放り投げて、
遊太郎の部屋のドアを勢い良く開けた。
いつもそこに林立していた観葉植物や本、
パソコンやクローゼットが消えていた。

「!」

たった一晩で、何もかもが無かったことになっている。
「ちょっと、何なの、これ。あんまりじゃん!」
そう叫ぶなり、急いで自分の部屋に戻った。
遊太郎へ電話を架けてみる。
しかし電源が切れているのかつながらない。
仕方なくメールも飛ばしてみたが、なんとなく返信は来ない気がした。

「なんでよ。わかんないよ、こんなの」

お互いの離れがたい気持ちを、
分かり合ったのではなかったのか。
考えたいことがあるからと言っていたが、
何故、遊太郎は部屋まで出て行こうと思ったのか。

「そうだ。神崎部長が何か知ってるかも」
桃子はすぐに神崎のホットラインへ架けた。
しかし残念ながら、こちらも出ない。
結局、月曜日に会社に行って遊太郎を捕まえるしかなさそうだ。


唇を噛んでいると、玄関のベルが鳴った。
遊太郎かもしれないと淡い期待を抱きながら走り出る。

「おはよう。あら、まだ寝てるかと思ったのに早いじゃない。桃子」
母親の博子が、のんびりした調子で立っていた。
「土曜日だし、いまの時間なら、
遊太郎ちゃんもいるかなと思って来てみたのよ」
訪問の目的を述べる博子へ桃子はイライラして答えた。

「残念でした。遊太郎なら、ここにはいませんけど」
「何よ、朝っぱらからキゲン悪い。
遊太郎ちゃん、おでかけなの?」
「誰かさんのお陰で、出て行った」
「出て行った?」

驚く博子へ、桃子は鬱憤をぶつけるように思いきり怒鳴った。
「お母さんのせいだよ。
あたしたちのことを反対するから、
遊太郎が気を遣って部屋を出て行ったんじゃない!」
「え?」

博子は慌ててリビングに鞄を置き、遊太郎の部屋に入った。
後から付いてきた桃子が、その背中に向かって怒りを吐き出す。
「遊太郎はね、周りの人にすごく気を遣うヤツなの。
あたしたちが付き合ってるのを、
お母さんが良く思ってないって聞いて、
迷惑かけちゃいけないからって部屋を出ることを考えてて。
あたしは止めてたんだけど、
今朝起きてみたら、突然居なくなってた。
どうしてくれるのよ?」

あまりな剣幕に、たじろいだ博子は、
それでも母親の貫禄を思い出したように咳払いをしてみせた。
「あんたの言いたいことは分かった。
それで、どこへ行ったの?遊太郎ちゃん」
「社員寮。うちの会社の」
「社員寮?急なのに、よくあいてたわね」

博子の間の抜けた言い方に、キレそうになる。
「そんな問題じゃないでしょ。
あいつのケータイつながらないし。
来週、会社で会ったら連れ戻して来る」
「連れ戻すって、桃子。冷静になんなさいよ」
「はあ?」
「あんた、フラれたかもしれないわよ?」
「フラれた?誰に」
「遊太郎ちゃんによ。あんたに愛想をつかして出て行ったとか、
お母さんだけのせいじゃなくて、それもあるかもよ」

一瞬、博子を殴りそうになったが止めた。
確かに、本当のところは、博子のせいで遊太郎が出たのではない。
別に理由があったのだと、内心では分かっていたからだ。
ただ理由を聞かされていない腹立たしさから、
気持ちのやり場がなくて、
博子に八つ当たりをしただけだ。


とにかく、週明けには遊太郎を捕まえよう。
そう桃子は心に決めた。

~第145回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-02-08 16:13

第143回接近遭遇「水面下にうごめく陰謀」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
ただいま恋愛モード激走中♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ねえ、遊太郎。何を隠しているの?
ひとりで解決しようとしないで、ちゃんとあたしに話してよ」

桃子の真剣な黒い瞳が真っ直ぐにレンへ向けられていた。
いつも彼女は、自分の気持ちを正直にぶつけて来る。
しばらく間を置いて、レンはふっと力を抜いて微笑した。

「桃子さんにはかないませんね」
「雄太郎…」
彼女の顔が、期待してパッと明るくなる。
しかし彼は彼女の肩に手を置いて、こう答えた。

「もう少しだけ、時間をください」
「え?」
「僕の中で、迷いがあるから…」
「迷い?」
「あ…、いえ。考えたいことがあるだけです。
整理がついたら、桃子さんにはちゃんと話します」
「本当?」
「はい」

ならいい、と桃子はしぶしぶ承諾した。
「でもさ、突然消えたりしないでよ」
わざとむくれて文句を言う。
「それでなくたって、ケータイがつながらない月なんかに、
遊太郎はすぐ行っちゃったりするじゃん。
あたしの手の届くところにいてよ?」
「はい、桃子さん」
「約束だよ」

まだ何か言おうとする桃子の唇をレンはそっと奪った。
お互いに本当は離れたくないのは分かっている。
出来るなら、いつまでも一緒にいたい。

この時レンが何を隠していたのか、
何と闘って苦しんでいたのかを、
無理にでも聞いておけば良かったと、
あとになって桃子は激しく後悔することになる。



その頃。
滞在中のリゾートホテルに戻ったサーフィスは、
スイートルームのソファに腰掛けながら、
殴られた頬を冷やしていた。

「レン王子にちょっかいをかけたりするからですよ。サーフィス様」
そうたしなめたのは、豪奢なバルコニーに立つランドエル博士である。
「あなたのことですから、
あまり考えないで、彼に余計なことを言ったのでしょう」

するとサーフィスは、
手鏡に映る自分の顔を覗き込みながらボヤいた。
「全く、天使のように美しいボクの顔が台無しだ。
何も思いきり殴らなくたって」
「大袈裟ですね。ちょっとハレているだけではありませんか」
「物凄く痛かったということだよ。
レンは親友より地球人の恋人の方が大事らしい。
あんな気品のカケラもない女がいいなんて、
痛みとショックで再起不能だ」

話を聞いていたランドエルは,薄い唇をニヤリと曲げた。
「だから、私にお任せくださいと申し上げているんです。
正攻法では、レン王子は恋人から離れませんよ」
「いや。ランドエル博士。誰が何をしてもダメだと思うよ」

サーフィスは、溜め息をつく。
あんなレンは初めて見たと思った。
実のところ、内心では驚きと少しばかりの感動すら覚えている。
何故なら日頃から女達に囲まれているサーフィスは、
たった1人の女の為に、あんな風に本気で怒った経験がないからだ。

「ソリュート陛下に依頼されたけれど、
ボクにはレンを星に連れ帰ることは出来そうにないな」
「そうなのですか?」
「ああ。ひょっとしたらレンは地球の方があっているのかもしれない。
彼女と暮らして幸せなら、それでもいいと思えてきたのさ」
「……」



…それでは困る。
とランドエル博士の目は射抜くように光っていた。
そう簡単に諦めてもらっては困るのだ。
ソリュート王の命令に背くからではない。
己の野望の為にレンが欲しいからに他ならない。
それほど研究材料として手に入れたい貴重な身体なのだ。

あまり深く物事を考えない性格で、
育ちの良すぎるサーフィス。
彼を利用してレンをどうやって我が手中に納めるか、
ランドエルは目を細めて考えを巡らせていた。


「あなたにはまだ働いてもらいたいのですよ。サーフィス様」

バルコニーで銀色の月を眺めながら、
部屋の中にいるサーフィスに聞こえないように、
ランドエルは意味ありげに低くつぶやいた。


~第144回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-02-04 23:05

第142回接近遭遇「彼女に言えない秘密」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
ただいま恋愛モード激走中♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

レンに頬を殴られ、
サーフィスはソファに頭から突っ込んだ。
カミラが短く叫び、桃子も絶句して、
ただ驚いて2人を見守るしかなかった。
レンは、サーフィスの桃子への暴言に対して彼を殴ったのだ。

切れた唇を抑えたサーフィスは低く呻いていたが、
すぐに胸倉をレンにつかまれた。

「レ、レン。ボクの顔の骨が砕けたらどうするんだ?」
するとレンは素っ気なく答えた。
「大丈夫だ。手加減はした」
「…これで手加減したって?ボクの美しい顔に手をあげるなんて」
その抗議には答えず、レンは彼を突き放し、
その青灰色の瞳でひたと見据える。

「次は容赦をしない」
「!」
静かな怒りに、さすがの彼も黙り込んだ。

カミラはごめんなさいと小さな声で呟いて、
ふらふらなサーフィスを伴って玄関の方へと歩いた。
その時、桃子をチラッと見て悲しそうに微笑だけ返したので、
彼女も目でごめんねと伝えた。



彼らが居なくなったリビングは急に静かになった。
あまりなことに、桃子の憤りがきれいに消えている。
「…遊太郎の友達なのに、ごめん。
あたし、さっき酷いこと言っちゃってさ」
初対面の人間に、思いっきりタンカを切ってしまったからだ。
謝る彼女の方へレンは歩み寄り、頭を下げた。

「僕こそ、すみませんでした。
サーフィスは悪い奴ではないんですが。
あなたに嫌な思いをさせてしまいました」
「いいよ。どうせ、あたしはすぐ頭に来ちゃうし。
まあ、確かに上品なお嬢様とは違うもん。
アイツの言ったこと、ちょっと当たってたからムカついただけだよ」
桃子は少年のように頭をかいて苦笑いをしてみせた。

「それより、殴っちゃって大丈夫?
あの人、遊太郎にはるばる会いに来たんでしょ」
ふと心配になってきいてみると、
レンは小さくため息をついて、いいえと答えた。
「あれくらいやらないと、彼にはわからない。
何不自由なく育って来た男ですから」

何不自由ないのは、レンも同じかそれ以上だろうが、
明らかにサーフィスとは違う。
それは彼の性格ばかりではなく、
背負っている厳しい過去や経験のせいなのかもしれない。


「でも。…ありがと」

あたしのために、と
そう言おうとして、桃子の目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
気が緩んだからだろうか。
「あ、あれ?なんでかな。ごめん…ごめんね。遊太郎」
「桃子さん…」
レンは驚いて桃子の肩にふれ、自分の方へそっと引き寄せた。
「…遊太郎」
彼が桃子の涙ごと、優しくふんわりと抱いてくれている気がした。
だから、彼女は安心して泣くことにした。
ああ、この人の前なら強がることもない。
泣いたり笑ったりできる。
ずっと一緒にいたい。ずっと…



「桃子さん」
抱きしめたまま、レンが話しかけた。
「なに?」
抱かれながら、その心地よさに桃子が甘い声できくと、
彼は少しだけ間を置いて、こう言った。

「僕は、しばらく部屋を出ようと思います」
「えっ…?」
一気に気分が急降下して顔を上げる。
「な、何で?あたしたちのことが、お母さんにバレたから?」
「そうではありません」
「じゃあ何よ?」

またケンカ腰しになりかけて、桃子は彼から離れた。
そういえば、この間の雨の夜、
彼が急にベランダに飛び出して消えてしまったことを思い出した。
まるで何かに警戒しているような。

「ねえ、遊太郎。何か、あたしに隠してるでしょ」
桃子は確信を持って言った。
「……」
彼は一瞬言葉を忘れたかのように、そんな彼女を見つめる。
「ちゃんと話して。遊太郎はいつも1人で解決しようとするけど、
何も知らされずに、ただ待ってるのは、あたし、もう嫌だ」
「桃子さん…」


真っ直ぐに向けられた桃子の瞳。
レンの全てを共有したいという彼女の想いには応えたい。
しかし本当のことを知ったら、彼女はかなり心配をするだろう。
それに、いつまた何が起きるかわからない。
もう彼女を巻き込みたくはなかった。

何故なら、今度の敵はエイリアンではない。
故郷の星への帰還を要請しているレンの父親なのだから。


~第143回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2009-02-01 12:06