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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2008年 12月 ( 9 )   > この月の画像一覧

第133回接近遭遇「桃子×母×カミラ?」」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「桃子、今日こそ正直に白状しなさいよ?」

週末の夜。
桃子のマンションに乱入したのは、母親の弘子だった。
遊太郎は今夜も遅いらしく、
桃子はビールを大量に買い込んで帰宅したところを、
超マイペースな弘子に急襲されたのだ。

「白状って、何をよ?」
仕方なく缶ビールを弘子にも渡しながら、
リビングのソファに腰を下ろし、ひとくち飲んだ。
ああ、この一杯がたまらないという表情で。

「やめた」
とたんに弘子が呆れたように冷たい視線を娘に注ぐ。
「やめたぁ?なんで」
「あんた見てたらバカらしくなったからよ。
ホント、こんなオヤジみたいな娘、
彼女にするオトコなんていないワ」
「はあ?」

オヤジみたいだと言われて、
桃子は頬を真っ赤に膨らませた。
気にしてることをズケズケと。

「帰ってよ。あたし、めちゃくちゃ働いて、
やっと週末を迎えたとこなんだから」
「まっ!親に向かって帰れだなんて、なんて言いぐさ?
そんな口が利けるのも、あたしが自分のお腹を痛めて、
あんたを産んであげたお陰なんだからね」
「ああ、それはどうもありがとうございましたっ!」
母娘の熾烈な口ゲンカが始まった。
しかし、そこへ割って入ったのは、
ワンオクターブも高い声だった。


「ケンカ、いけませ~ん」

2人はギョッとして振り向いた。
リビングに、いつの間にか外国人風の女の子が立っていたのだ。
人形のように可愛らしい顔には見覚えがあった。

「誰っ?」
降ってわいたような女の子の出現に弘子が仰天するが、
桃子はあっと目を丸くした。
「カ、カミラさん?」
カミラは遊太郎の星の幼なじみで、
以前も遊びに訪れたことがあるのだ。

「ごめんなさい。モモコさん。
ドア、開いてたから。カミラ、入ってきちゃった」
彼女は相変わらず天然100パーセントのままである。



「なあんだ。遊太郎ちゃんのガールフレンド?」

騒ぎが落ち着いたところで、
弘子は桃子から紹介されて、
単純にもすぐに納得したようだった。
「そ。遊太郎がアメリカにいたころのね」
まさか異星人の女の子だとは言えない。
「そうだったの。可愛いわぁ。スタイルも良いし。
誰かさんとは大違い」
ひとこと余計だ。

当のカミラも、そのへんのところは桃子に話を合わせる。
「カミラね、レン…じゃない…ユウタロウのトモダチ。
久しぶりに日本に来たので、モモコさんに会いにきたの」
以前よりは日本語がうまくなっていて、
桃子は取りあえずホッとしたが、ボロが出る前に、
弘子には早く消えて貰おうと思った。

「ね、ねえ。お母さん。
あたし、カミラさんと女同士でいっぱい話をしたいんだ。
だからさ、もう帰ってくれないかな?」
「アラ、なんで?あたしだって女よ。
お喋りに、あたしも混ぜなさいよ」
どうやら宴会気分になってきたようである。
桃子はげんなりした。
…ああ、神様。勘弁してよ。


幸い遊太郎は帰る気配もない。
弘子はすっかりカミラと打ち解けて、
スナックをつまみながら楽しんでいる。
「そう、カミラちゃんは遊太郎ちゃんが大好きなのねえ」
「ハイ。カミラ、ユウタロウのこと、すき。
でも、ユウタロウはモモコさんがすき」
「えっ?そうなの」

これには桃子が大いに慌てた。
「ち、違うよ。お母さん。遊太郎は博愛主義で誰でも好きみたいだし」
「そ~お?」
弘子が疑いの眼差しで見、カミラが無邪気にも付け加えた。

「ユウタロウはね、モモコさんが、とってもすきで大事なの。
だから、カミラ、応援してるの。
2人が結婚したらいいなあって」


あああっ!なんてこと言うんだ。このコ。
桃子は頭を抱えた。
何故なら表向きは、桃子と遊太郎はイトコであり、
互いに好きになってしまったことは、
親の弘子に言えないからだ。

「…やっぱり。アヤシイと思ってた」
ここに来て弘子の声が低くなる。
そして、キッチンの片隅に仲良く並んだペアのマグカップを指差した。
それは温泉旅行に2人で行ったときに買ったものだ。

「桃子。あれは、なに?」
「へっ?」

いよいよ追い詰められ、桃子は滝のように冷や汗をかいた。


~第134回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-12-30 20:47

第132回接近遭遇「枯れ果てた惑星人」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「私はナーダ。そのマハルを雇った者だ」

女子高生ミキだった者は、しわがれた声で名乗り、
灰色の顔へと変貌していった。
頭髪は抜け落ち手足はひび割れ、
男女の区別さえ定かではない。
「…何故私が地球人ではないと分かった?アリサ」
枯れた惑星人は切り込んだような目を向けた。
するとアリサは当たり前のように答える。

「そんなもの、元々波動が違うし。
それに、あんたの腕の注射の跡。
妙にニセモノっぽかったよ」
「それで、すんなり誘いに乗って捕まったと?」
「まあね。そっちの、マハルという悪徳商人が、
どんな注射を打ってんのか、自分で確かめる必要があるしね」


…なるほど。
と、晴彦はマハルを逃げないように捕まえながら、
内心舌を巻く思いだった。
これまでのアリサの突飛な行動に、
正直いってヒヤヒヤしていたからだ。

「ふん。生意気な小娘だ」
ナーダが腹立たしく喋り始めた。
「若さの有り余ったお前には、我々の気持ちなどわかるまい。
砂漠と化して枯れた惑星に住む苦難などはな」
「そりゃ、わかんないって」
アリサが逆なですることを言い、晴彦はギョッとした。
しかし彼女はやめる気はないらしい。

「あのさ。自分の星の面倒くらい自分で責任持ちな」
「な、なんだと?」
「環境のせいにして、よその星の住人の生体エネルギーを、
汚いやり方で売買するんじゃないよ」
「バカがっ!きれい事だけでは生きていけないのが分からんのか」

一瞬ナーダの灰色の身体が黄色に感光して、
突然何もない空間から砂嵐が巻き起こった。
晴彦が砂塵から目を庇うために、
思わずマハルから手を放す。
すると、これ幸いにと逃れようとしたマハルは、
手から黒いケースを滑らせ、中身を橋の上にバラまいてしまった。
それは、女子高生の生体エネルギーが詰まったシリンダーである。
慌てたナーダは、夢中になってそれらを拾い集め始めた。



ピシ!

その時、見えない力が働いてシリンダーに亀裂が入った。
金と引き換えに集めた大量の生体エネルギーたちが、
冷えた夜空へ一斉に霧散してゆく。
「…なんてことだ!割れるはずがないものを。
そんなことが出来るとは何者…?」
ナーダとマハルは、エネルギーの残像を見送りながら、
自分たちの背後に立つ誰かに気づいて愕然とした。


そこに居たのはアリサではなかった。
橋の上に長身のシルエットが浮かび上がる。
その夜目にも輝くプラチナの髪の下で、
青灰色の瞳が自分たちを静かに見下ろしていた。

「お、お前…!」

潜入捜査をしていたロックシンガー、アリサから、
本来の姿に戻った銀河連盟調査員のレンは、
枯れた惑星人とエイリアン商人に微笑を贈った。



「ようこそ、地球へ。
あなた方を不法侵入者、および不法商法の罪で確保します」

いつの間にか、
銀河連盟パトロール隊員が陸橋全体をズラリと包囲し、
ナーダとマハルは観念するしかなかった。




「お見事。さすがだね」

全てが撤収されたあと、夜の静けさを取り戻した橋の上で、
晴彦が心底感心したようにレンを見つめた。
あの逆立つ赤い髪のアリサが、
この青年の《変身マトリックス》の一つであるとは、
いまだに彼には信じがたかったが。
「で、ライブハウスはどうなるのかな?江原オーナーは?」

晴彦が質問すると、レンは淡々と説明した。
「異星人相手に不法商法をしていたことで、
何らかの処分を受けると思います」
「そうか。じゃあ、もう彼女たちは、
いかがわしいライブハウスに入り浸ることもなく、
これで父兄も安心するということだ」
「はい。後遺症は残らないので腕にある注射跡も消えるはずです」


しばらくして、晴彦がポツリとつぶやいた。
「結局、僕は何の役にも立てなかった気がするよ。
探偵、向いてないのかもな」
「そんなことはありません」

レンは真っ直ぐに晴彦の瞳を見つめ、
温かい波動を込めて言った。
「時任さんが一緒だったから、僕は安心して自在に動けた。
感謝しています」
「なら、良かった」

苦笑混じりに晴彦が手を伸ばし、
レンはしなやかに握手を交わした。


~第133回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-12-27 18:01

第131回接近遭遇「ボスの正体は?」

あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「いかがですか?お嬢さん。
地球のマリファナなんかより、ずっとハイになれるでしょ」

エイリアン商人である白衣の男は、
得意げに注射針をアリサの腕に刺し込んでいた。
速やかに黄色い液体が吸い込まれ、
代わりに無色透明な気体のようなものが吸い取られてゆく。
隣で縛られている晴彦にはどうすることも出来ずに、
この光景を見続けるしかなかった。

男は抜き取った生体エネルギーを別の黒いケースに入れた。
その中には女子高生たちのものらしい、
大量の生体エネルギーのストックが並べられていた。

アリサは猫のような目をトロンとさせて、
気だるそうにつぶやいた。
「マジ、煙草よりはキクかも…」
「でしょ?」
男は満足そうにケースをしまい込み、チラッと腕時計を見た。

「女の子なんだし、
銀河連盟で不法侵入の摘発なんてつまらない仕事を忘れて、
自由にトリップをお楽しみなさい」

そして、いそいそと片付け始める。
「さてさて。どうせ私はマークされているし、
代わりの調査員が派遣されるのも嫌ですしね。
まあ、けっこう商売にはなりましたから、
いまが潮時かもしれません」

2人がもはや逃げられるはずがないと考え、
エイリアン商人は余裕たっぷりに地下倉庫から立ち去った。


「君。大丈夫か?」
さっきから気が気でない晴彦が声をかけた。
アリサが危険な注射を甘んじて受けたからだ。
…と、その時である。


「誰に向かって言ってんの?」

彼女の威勢の良いセリフと同時に、
晴彦の身体を封じていた縄が、空間を切るように火花を散らして分解した。

「な…っ!」
てっきりトリップしているのだと思っていた晴彦は、
立ち上がって自分を見下ろすアリサを、
驚愕の顔で受け止めた。

「あんな子供だましで、
あたしを飼い慣らそうなんて1億年早い」
「……」
すっかり挑戦的な彼女に戻っている。
頼もしいやら恐ろしいやら複雑だった。
「行くよ」
「行くって、どこへ?」
「ミキに会いに」
ミキとは、ライブハウスの秘密を話してくれた女子高生である。

「そりゃ、彼女の身は心配だが、
さっきの男を捕まえなくていいのか?
自分のボスと落ち合って逃げるつもりだぞ?」
しかしアリサはそれには答えもせず、高飛車に命令した。

「来ないなら置いていくけど?」
晴彦はやれやれと苦笑しながら立ち上がる。
口の上でも彼女相手では全く勝ち目はなさそうだ。



それから約30分後。
ひと気が全くない深夜の陸橋。
欄干に肘をついて疲れた顔をしたミキの姿があった。

「何やってんの」
突然ハスキーな女の声がして、彼女はビクッと震えた。
橋の向こうから、真っ赤に逆立つ髪をした女が近づいて来たからだ。

「アリサ…!」
ミキの表情は一瞬硬くこわばったが、すぐに笑いを作った。

「な、何でここに?」
「あたしの嗅覚は猫並みでね。なんとなく」
「そ、そうなんだ。でもアリサ、無事だったんだね」
「どうして?」
「だって。あたし、あのことチクったから。
あれからライブハウスのひとに、
何かされたんじゃないかと思って」

橋の真ん中で2人きりになった時、
アリサは悠然と煙草を取り出した。
「注射されたよ」
「やっぱり?」
ミキが一瞬嬉々としたのをアリサは見逃さなかった。
「ふうん。あんたのベタなシナリオ通りってわけ?」
「え…」

見渡す限りの暗い海。
アリサの口から吐かれる白い煙だけが、妙に目立つ。
「こんな時間に一体誰を待ってるの」
「……」
ミキは答えに詰まって動揺する。

「と、友達まってて」
「へえ。あんたの友達って、あのモヤシみたいな悪徳商人?」
「!」

その時、ミキの視界に入ったのは白衣の男だった。
晴彦が背後で手を縛り上げているせいか、
ひどくぎこちない格好で歩いて来る。
「ミキを探していたら、
ちょうどそこで見つけて捕まえたんだけど?」
「……」

するとミキの唇から、
およそ少女とは思えぬ枯れた声がもれた。

「マハル、しくじったの?」


~第133回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-12-24 21:48

第130回接近遭遇「エイリアン商人の愚痴」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ライブハウスの地下倉庫。
江原オーナーと謎の白衣の男によって、
アリサと晴彦は手足を椅子に固定され、縛られていた。
もちろん彼女が言うには、捕らえられたことは予定通りらしいのだが…


江原オーナーが白衣の男に向かって、
「まあ、男の方はあとで港にでも沈めるとして…」
と、恐ろしいことをさらっと言った。
「アリサは殺すには惜しいのでね。
まだまだ利用価値はあるし。あんたに任せようと思うが?」
すると男はアリサの方を意味ありげに見てニヤリとした。
「なるほど。確かに彼女は健康的で美味しそうな匂いがしますね」


晴彦は総毛立った。
この白衣の男こそ、
地球へ不法侵入して来た者らしい。
「じゃあ、アリサ。楽しい夢を見させてもらいなさい」
江原は下品な笑いを張り付かせ、太った腹をさすりながら、
側近たちを引き連れて倉庫から出て行った。


晴彦は焦った。
縛られた縄は想像以上にしっかりと自分たちを固定している。
どうやって逃げればいいのか。
隣のアリサへ想念を飛ばそうとしたが、
見えない壁を感じてうまくいかなかった。
まるで彼女がテレパシーの会話をわざと遮断しているかのように。


薄ら暗い地下倉庫で、居るのは3人だけになった。
とたんに白衣の男が饒舌になる。
「…しかし予想外でした」
「なにが?」
彼女が野性的な瞳で睨みつける。
真っ赤に逆立つ髪に、猫のように生意気な顔。
真夏でもないのに肩やヘソや長い脚をさらした恰好をして、
まるでセクシーな小悪魔のようだ。

そんな彼女へ投げた男のセリフは、もっと予想外なことだった。
「銀河連盟から、そろそろ目につけられる頃だと思ってたが、
私もナメられたものですねえ。
まさか、潜入捜査されるにしても、
あなたみたいな若い女性が派遣調査員とは」


いま、なんと言った?
晴彦はわが耳を疑った。
このアリサが、銀河連盟の調査員だと感づいていたのだろうか。
しかし当の彼女は興味なさそうに男に質問した。

「銀河ナントカ?なにそれ。バンドか何かの名前?」
そのトボケた態度に、彼は平然と説明する。
「銀河連盟です。
我々のような商人の自由取引を取締り、
平気で介入をしてくる迷惑な特殊機関ですよ。
ただ私は金儲けをしたい地球人に貢献している商人なだけなのに」

「麻薬で貢献かい?悪徳商人が」
怒りを抑えきれなくなった晴彦は思わず口を開いた。
白衣の男が眉をしかめて眼鏡をかけ直す。

「人聞きが悪い。麻薬に似せてはいるが全く違います。
少しだけ若い女性の生体エネルギーを頂き、
見返りに江原オーナーには金を渡しているだけです。
本人たちもストレスフリーになって喜んでるじゃないですか」
「自己正当化もはなはだしいな」
「外野は黙っていなさい」

エイリアン商人は不満げにブツブツと愚痴をたれる。
「どうせなら、もっとプロの調査員を派遣してくれればいいものを。
こんな小娘1人寄越して来るとは」
ようするに、犯罪者にもプライドがあると言いたいらしい。

しばらくして彼は白衣の胸元から、
小さな細長い銀色の箱を取り出した。
注射針である。
「江原オーナーはあなたの正体など知らないし、
かなりお気に召しているようです。
仕方ないので、あなたの生体エネルギーを少し頂いて、
良い気分にさせてあげますよ。
地球のマリファナなんかよりは、よほどハイになれますからね」

晴彦はギョッとした。
銀河連盟調査員と知りながら、
この男はやっぱりアリサの生体エネルギーを摂取する気のようだ。

「やめろ。そんなもの、どうするつもりだ?」
怒鳴った晴彦へ男がうるさそうに答える。
「君は本当にうるさいですねえ。
健康的で良いエネルギーをたくさんストックしたいんですよ。
私の雇い主がお喜びになるからです」
「雇い主?」


晴彦のことなど無視して、
エイリアン商人の注射針が、
アリサのしなやかな腕に突き刺ささろうとしていた。


~第131回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-12-21 16:44

第129回接近遭遇「捕まった2人」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

喫茶店で女子高生ミキと別れたアリサは、
数百メートルも歩いたところで時任晴彦に呼び止められた。

「ちょっと、待ってくれ」
彼女の脚が早いので追いつくのが大変だったらしい。
探偵のくせに息を切らしている。
「なに?」
サングラスをかけたアリサは迷惑そうに振り向いた。

「君、さっきのは本気か?」
「さっきのって」
「だから、麻薬まがいの注射を試してみたいと言っていただろう?」
「悪い?」
「…いや。良いとか悪いとかの問題じゃなくて。
そんな物騒な方法以外に何かないかな?」
「ないと思うけど」
彼女はあっさり切り返し、
再び歩き出したので、
彼は面食らったように頭をかきながら追いかけた。


どうも調子が狂う。
彼女の中身は、晴彦の知るレンのはずだ。
しかしアリサとして《変身》している間は、
言動の支配権が彼女にあるせいで、
会話が全くかみ合わないのだ。

「わかった。わかったよ。
君のやり方をとやかく言うもりはない。
だけどあのライブハウスには、
もう女子高生たちを近寄らせない方がいいと思わないか?」
すると彼女は馬鹿にしたように鼻で笑った。
「じゃあ、なに?
ハウスの前で、来る客全部を通せないようにするわけ?」
「いや、それは…」

応酬できずに口ごもっていると、急にアリサが立ち止まった。
その真っ赤に逆立つ頭にぶつかりそうになる晴彦へ、
くるっと向き直った彼女はサングラスを外し、
ほら、と視線を背後へ向けた。

「なんか尾けられたみたい」
アリサが面倒くさそうにつぶやき、
晴彦は舌打ちしたい気分になった。

「すまない。こんなドジ踏んで探偵失格だ。
すぐに僕が、やっつけるから」

「ていうか…」
彼女はピアスをいじりながら退屈そうにつぶやいた。
「シナリオ通りで、全然面白くないんだけど」
「はあ?」

シナリオ通り?
最初からその計画だったというのだろうか。
呆けた顔でいると、男たちが2人を取り囲んだ。
彼らは江原オーナーの側近たちであった。

「オーナーがお呼びだ。アリサ」
「あんたも同行してもらう」
結局なんの抵抗もせずに、
アリサと晴彦は捕まえられてしまった。



連れて行かれた場所は、
ライブハウス「ダーツ」の地下倉庫であり、
使わなくなった照明などの機材が,
ガラクタのように盛られていた。
手足を縛られ椅子に固定されたアリサたちの前に、
やって来たのは、江原オーナーと白衣の男である。

「どんな恰好をしても君はセクシーだねえ。アリサ?」
オーナーが縛られた彼女を楽しそうに眺めていた。

「意味わかんない」
そのアリサが口を開く。
「このストーカーとあたしがなんで一緒に縛られてるのさ?」
ストーカーと言われた晴彦は、正直勘弁してくれと思ったが、
ここは話を合わせるしかない。
まさか探偵とは言えないからだ。

「アリサ。ストーカーはひどいな。
僕はフリーライターとして、
彗星のごとく現れたロックシンガーの君に、
密着取材を申し込みたかっただけだよ」
「ベタ過ぎて笑えないんだけど?」

この2人のやり取りを聞いていた江原は、
妙な表情をして首を傾げたが、
太い葉巻を取り出してふかし始めた。

「まあいい。警察の回し者ではなさそうだ。
おおかた、ミキとかいう会員の話を聞いて、
好奇心で嗅ぎ回っていただけだろうが、
残念ながら秘密を知られると色々面倒でねえ」

江原は隣に立っている白衣の男に目配せをすると、
男も薄い唇を曲げて、
アリサと晴彦を意味ありげにじっと見つめていた。


~第130回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-12-17 23:51

第128回接近遭遇「女子高生にヒヤリング」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

激しくもソウルフルな歌声がライブハウスに響き渡る。
今夜もアリサのステージは客で溢れかえっていた。

歌いながら、
同時にアリサは観客やスタッフたちをスキャニングしていた。
地球に不法侵入して来たエイリアンの影を探る為だ。
しかし、地球人とは異なる波動は補足できるものの、
まだ特定できずにいた。


ライブがハネて、楽屋に戻ろうとした彼女を、
常連である少女、ミキが待ち構えていた。
「アリサ。お疲れさまぁ、今日もサイコーだったよ!」
駆け寄るミキの腕が八分袖のカットソーから見え、
紫色の跡が花びらのように散っているのがわかった。

「ヤクでもやってる?」
「えっ?」
一瞬驚いたミキは腕をさっと隠した。
アリサはかまわず細長い煙草に火をつけ、
特別なことでもないように言った。

「あたしも昔やってたからさ」
「あ…。そ、そうなんだ」

ちょっと安心したような顔のミキに、
「じゃあ」
と片目を瞑ってみせて、あっさり楽屋に戻ろうとするアリサへ、
彼女が引きとめた。
「は、話があるんだ。アリサ。
練習終わってからでいいから、あとで会えない?」

乗ってきた。
心の中でアリサ、いや銀河連盟の派遣調査員レンは、
時任晴彦へテレパシーを速やかに飛ばした。

( 時任さん。
30分後に指定する場所まで来れそうですか? )
( 大丈夫。すぐ行くよ )


それから約30分後。
ミキが待っている喫茶店に行くと、
彼女は緊張した面持ちで待っていた。
斜め真後ろのテーブルに座って雑誌を読んでいるのは、
先に来ていた時任晴彦である。
会話を聞き取る為の感度の良い盗聴器を用意していた。

「なに。話って」
コーヒーを注文し、煙草に火を点け、
アリサが気だるそうに聞いた。
さすがに真っ赤に逆立った髪はかなり目立つ。
関係者が尾行して気づかれるのではないのかと、
と晴彦は懸念していたが、
彼女は大胆にも平気な顔をしている。

「あ、あたし。どうしようか悩んでて」
ミキはうつむき加減で、ポツポツと口を開いた。
「学校や家とかで嫌なことあっても、
それをやってもらうと、なんか忘れられるから、
いいやって思って、ずっと黙ってたんだけど」
「忘れられるって」
「ハ、ハイになるから」
「ハイって、自分でクスリでも買ってるの?」
「そうじゃなくて。あ、あの…」

肝心なところを言いあぐねているようで、
アリサは煙草をもみ消すフリをした。

「あたし、お悩み相談室やってるわけじゃないんだけど?」
「あっ。ごめ、ごめんなさい」
今にも帰りそうなアリサに慌ててミキが早口になる。
「アリサは知らないかもしれないけど、
ライブハウスの会員に登録すると特典があって」
「特典?」

まさか。
その時アリサは断りもなくミキの右腕をつかみ、
そしてカットソーの袖を上まであげた。
「これが特典?」

話を盗聴する時任晴彦も息をこらす。
ミキが関を切ったように話し出した。

「登録したら、時々やって貰えるんだ。
最初は怖かったけど、全然痛くなかったし、
気分がハイになれて、嫌なこと、忘れられるから…」
「どこで?」
「えっ?」
「ライブハウスのどこでやってるの」
「えっと、会員登録する部屋があって」
「あのダーツのスタッフ?」
「わかんない。優しい感じの男のひとで、
秘密の特典だから、会員にならないと出来ないって。
でも、よく考えたら、クスリってあんま良くないって思うし、
クセになっちゃうと抜けなくなるんだよね?」

だから、誰かに相談したかったのだと、
ミキは話し終えて肩を落とした。
スキャニングしてアリサの脳内にキャッチできたのは、
特徴がこれといってない1人の男だ。

( 時任さん。おそらくこの男がオーナーを丸め込んで、
金と引き換えに少女たちに注射をしている男です )
( もっと凶悪なのかと思ったけど、案外普通だなあ )
( 実際どんな相手か現場に踏み込まなければ、わかりません )

晴彦がギョッとした。
現場に踏み込むって…?


晴彦の驚きをよそに、
アリサは面白そうにつぶやいた。

「あたしも、一度それ、試してみるかな」
「えっ?」

アリサはミキに不敵な笑いを見せた。


~第129回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-12-13 19:53

第127回接近遭遇「遊太郎と晴彦」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「時任さん。昨夜は、すみませんでした」

森田遊太郎が、時任晴彦の探偵事務所を訪ねたのは、
翌日の昼下がりのことだった。
高校生のような童顔に大きめのメガネをかけて、
心底すまなさそうに頭をぺこりと下げたので、
晴彦も思わず苦笑いをした。

「大丈夫。気にしてないよ、森田君。
あ、インスタントしかないけどコーヒーでいいかな?」
1人きりの事務所らしく、他に気を遣う必要もない。
2人は片隅のソファに腰を下ろした。

「まさか、君がライブハウスに潜入していたなんて。
再会できたから嬉しかったけど、ちょっと、びっくりしたよ」
「本当に、手荒なことをして申し訳ありませんでした」
何度も謝る控えめな遊太郎からは、
昨夜の過激なロックシンガー・アリサの陰は微塵も感じられない。

遊太郎、つまりレンの特殊能力による《変身マトリックス》は、
変装とは違い、外見が細胞レベルで全くの別人に変わる。
性格や嗜好も本人とは異なり、
捜査する目的はあるものの、
その変身した人物としてオリジナルな行動をしてしまうのだ。


「時任さんは、何故あのライブハウスに?」
そう聞かれた晴彦は、女子高生の父兄に依頼されたことを簡単に説明した。
「一体、あの場所で何が起こってるんだ?
彼女たちの腕に麻薬のような注射跡があったのを見たぞ?」
「……」

遊太郎はしばらく考えていたが、ゆっくり口を開いた。
「…そう、ですね。時任さんには話してもいいかもしれません。
多分、裏で糸を引いているのはオーナーです」
「オーナー?」
「はい。江原オーナーが、地球に不法に侵入した者と結託して、
観客に何かをしているようです」

一瞬ギョッとする。
「不法侵入者?まさか女子高生相手に、
麻薬みたいなものを売っているとでも?」
「いや、それは、ちょっと違うと思いますが…」
「でも、何かをされているわけだろう?彼女たちは」

昨夜見た腕の紫色の跡は、尋常ではない。
晴彦はつい語気を強めた。
「森田君。そいつを早く捕まえなけりゃ、
とんでもないことになるぞ?」
「時任さん、焦る気持ちは分かりますが…」
「しかし、じっとしてられないんだ。
そうだ。何か手伝えることはないかな?
一応、これでも探偵だし彼女たちを救いたい」

熱心に自分見つめる晴彦に、
遊太郎はどうしたものかと考えていたが、
やがて観念したように、苦笑してみせた。

「わかりました。サポートをお願いします」
「ありがとう。前の事件で君にはいっぱい借りがある。
足手まといかもしれないけど、協力したいんだ」
「…時任さん」

2人は地球に滞在する異星人同志だからというだけではなく、
誰かを大切に思う気持ちを持つ者として、
温かい友情が通い合っているようだった。


晴彦がコーヒーのお代わりを淹れようとすると、
遊太郎はそろそろ、と立ち上がった。
「実は営業の合間に抜けて来たので、
あんまり長く油を売っていたら、
うちの係長に叱られるんです」

それを聞いて晴彦はへぇっとおどけてみせた。
あまりにも日常的なセリフが出てきたからだ。

「しかし、昼間は営業マンで夜は潜入捜査じゃ、
あの桃子さんがムクレてるんじゃないか?
ずっと君に放っておかれて」
「はあ。まあ、そこなんですよね…」

さも困ったように頭をかく遊太郎を見て、
そのあたりが地球人らしくなったなあと思った。
対エイリアンには凄腕でも、
恋人に振り回されているからだ。

「この事件が終わったら、一杯やろう。
ゆっくり話もしたいしね」
晴彦の誘いに、そうですねと遊太郎は微笑んだ。
最も、アルコールをあまり飲むと元の姿に戻ってしまうのだが。


探偵事務所を出た遊太郎に、
さっそく桃子からメールが入る。

『最近あんたのヘルシーすぎる手料理を食べてませんけど(`ε´)』

どうも半分お怒りな様子だ。
そうはいっても今夜も遅くなるだろう。
遊太郎はため息をついて、表向きの仕事へと戻った。


~第128回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-12-10 21:02

第126回接近遭遇「変身マトリックス・アリサ」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「君は、まさか……!」
時任晴彦は息を呑んだ。

目の前で彼のネクタイを掴んでいるロックシンガーの女、アリサ。
彼女の正体が、銀河連盟調査員である森田遊太郎、
…つまりレンだということを悟ったのだ。


《変身マトリックス》
それは細胞レベルから全く別人に見せる特殊能力であり、
晴彦が最初レンに出会った時は、
世間知らずな美しい令嬢の姿だった。
調査員として、彼は状況に合わせた人格を纏っているようだ。

「アリサ。オーナーが呼んでるけど?」
関係者以外立入禁止のドアを開けて、
スタッフが声をかけた。
彼女は面白くなさそうに晴彦を解放してやり、
その野性的な瞳で彼を睨みつけた。

「早く消えな。ブタ野郎」
「ちょっ…、君!」

行ってしまう彼女を呼び止めようとしたが、
スタッフの男たちに両脇をつかまれ、
店の裏口から放り出された。
路地に尻餅をついて思わず顔をしかめてしまう。


ひょんなところで再会したレン。
しかし彼がこの「ダーツ」に潜入しているということは、
任務の内容がおそらくエイリアン絡みに違いない。
素人には危険だと考えて晴彦を遠ざけようとしたのだろうが、
探偵として仕事の依頼を受けた以上、
このままには出来なかった。
何より女子高生たちの身が心配だ。

(彼の任務の邪魔になるようことはしたくはない。だが…)

どちらにしても出直した方が良さそうだ。
晴彦は立ち上がって服の汚れを落とし、
溜め息をついてライヴハウスを後にした。



一方、オーナーに呼ばれたアリサは、
突き当たりの部屋へノックもせずに入った。
中で革張りソファに身を沈ませて葉巻を吸っているのは、
少し頭が後退した中年男である。
「アリサ。君が歌うようになって、
ライヴハウス・ダーツは大盛況だ。
女子高生のファンもかなり増えたしねえ」

「ギャラ、忘れないでよ」

オーナーの江原にも平気で無礼な口を利く彼女に、
側近たちが冷や汗を浮かべるが、
当の江原は全く気にもとめていないようだった。
数日前からステージに立っているアリサの、
野性的でセクシーな雰囲気をいたく気に入っていたのである。

「もちろん女子高生の動員数に比例して、
いくらでもギャラは上げてあげるよ」
「なんで女子高生なのさ」
「いい金ヅルになるからだよ」
「へえ。あんた、売春でもやってんの?」

さすがに側近の1人がアリサを叱った。
「君っ!オーナーになんてことを」
すると江原はまあまあと笑って、
でっぷり太った巨体を揺らせて立ち上がった。
アリサに近づき、舐めるように見事なプロポーションを眺める。

「売春よりもっとウマい商売だ。
君なら、いつか教えてやってもいいが」
「興味ない」

形の良い尻に触れようとする江原の手をパンと叩いて、
アリサは素っ気なく部屋を出て行こうとした。
「いいねえ。君の冷たさがソソられる。
よそのライヴハウスでは、もう歌わないでくれたまえ」
どうやら専属契約をしたがっているらしい。
しかし彼女は、関心がなさそうに答えた。

「あたし、気まぐれだから」

礼儀も踏まえず、出て行ってしまったアリサに、
側近が顔をしかめる
「せっかく専属契約を勧めてやろうというのに。
ロックなんかやってる若い連中は礼儀知らずで困る。
よくアリサを好きにさせていますね?オーナー」
「エサだからね」
「エサ?ああ、女子高生を吸い寄せるカリスマ性はありますが」
「良い女は使い道がいくらもある」
江原は葉巻から太い煙を吐いた。



その頃。
マンションのリビングで桃子はクッションを抱いて、
テーブルの上の小さな置時計を睨んでいた。

もう日付が変わるのに、まだ帰らない。
最近、遊太郎はおかしい。
接待でもなさそうなのに、
毎晩どうしてこんなに帰りが遅いのだろう。

桃子はキッチンに並べたペアのマグカップをチラッと見た。
この間の温泉旅行で遊太郎と買ったものだ。
ピンクを桃子、黄色は遊太郎が使っている。

( なにやってんのよ。遊太郎?)

まさか、遊太郎がとんでもない場所で、
別人になり代わり潜入捜査をしているとは、
夢にも思わない桃子だった。


~第127回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-12-06 13:23

第125回接近遭遇「ライヴハウスでの再会」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ある深夜。
30代半ばの男がライヴハウスの前に立っていた。

時任晴彦。
落ち着きいた中に若さをまだ残したダンディーな男だ。
実は地球に永く滞在しているシーマ星人である。

探偵を生業にしている彼に仕事を依頼してきたのは、
高校生を子供に持つ親たちだった。
「娘がいかがわしいライヴハウスに出入りしているのに、
学校は全く動いてくれないし、このままじゃ不安なんです」

つまり、警察に届け出るほどではないが、
娘たちの様子がおかしいので調べて欲しいというのだ。


晴彦は「ダーツ」というライヴハウスにつながる地下の階段を降りた。
次のステージとの合間らしく、話を聞くにはちょうど良い。
まずチケットカウンターに近づき、
フリーライターだと偽って責任者に取材を申し込みたいと頼んでみる。
しかし店番の男は嫌そうな顔で答えた。

「別に。取材するほどじゃないと思うけど」
「そう?でも高校生が入り浸りになるらしいし、
何か特別な良さがあるんじゃないですか?」
「…それは」

そこへ聞き耳を立てていた少女たちが、いきなり晴彦を取り巻いた。

「おっさん、ケーサツ?」
「違うよ。フリーライターさ」
「フリーライター?それ、超ウザくね?」

大人っぽく化粧をしてはいるが、
彼女たちは明らかにまだ二十歳まで手が届いていない。
ふと晴彦は心配になった。

「こんな遅い時間にまだいるなんて、君らの親が心配してるんじゃないかな?」
すると少女の1人が急に激しい憎悪を見せて、
晴彦の上着の襟をつかんだ。

「おっさん。先公みたいに、エラそうに説教すんじゃねぇよ!」

晴彦はギョッとした。
少女の腕が紫色に変色しているのに気がついたからだ。
まさか、彼女たちは…?


「どうしたのさ」

ハスキーな若い女の声がした。
関係者以外立入禁止のドアを開けて、
モデルのように長身の女が現れたのだ。
真っ赤に染めたショートヘアは無造作に逆立ち、
肩やヘソを惜しげもなく見せた大胆な恰好をしている。

「アリサ」

少女たちが彼女の周りにわっと集まる。
「アリサ。このオヤジ、超ウザい」
「フリーライターって言ってたけどさ、あたしたちに説教するんだ」

「ふうん」

アリサは煙草をふかしながら晴彦に近づき、
チケットカウンターに寄りかかった。

「フリーライターだって?あんた」
ハスキーな声と野性的な瞳が晴彦に迫る。
「ああ。音楽関係の記事を書いてるんだ」
気後れしながらも、彼女をあらためて見ると、
そのしなやかな腕には少女たちのような紫色の跡はなく、
蜘蛛や鎖などのタトゥーが毒々しく飾られていた。

「あたし、ヴォーカリストなんだけど」
「へえ、そうなんだ。それは聴いてみたいな」
「嘘」
「嘘じゃないさ。面白いライヴ情報があれば、
いつでもここに連絡をしてほしい。
君のバンドの宣伝にもなるだろう?」

あらかじめ作っておいたライターとしての名刺をさし出す。
彼女はそれを受け取ったが、じっと見てビリビリと破いた。

「もう二度と来るんじゃないよ。ブタ野郎」
「な……!」
目の前で名刺を紙吹雪にされた晴彦の股間を、
セクシーな長い脚がいきなり蹴り上げた。
呻いて床に倒れた彼の頬をブーツ底が踏みつける。

「ボロボロにしちゃってよ。アリサ」
少女たちがはやし立てたが、彼女はジロッと睨みつけた。

「向こうへ消えてな。邪魔だよ」
機嫌悪そうに凄まれて、彼女たちはライヴハウスの中へ渋々逃げ込んだ。


2人きりになってから、アリサは晴彦から脚をどけたが、
今度はネクタイをぐいっとつかんで、
彼の上体を吊し上げた。

…なんて凶暴な女なのだろう。
息苦しさで再び呻いた彼へ、
彼女は少し声のトーンを落として囁いた。

「今日のところは、あたしに任せて帰りな」
「え……?」

アリサの瞳が一瞬だけ別の光を帯びる。
海のような青さに灰色が溶けたその色には見覚えがあった。
その瞳の持ち主は、ある事件で知り合った、
銀河連盟調査員の青年と同じものだ。

「君は、まさか……!」

衝撃的な再会である。


~第126回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-12-03 23:42