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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2008年 11月 ( 10 )   > この月の画像一覧

第124回接近遭遇「仲直りと、次なる指令」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

( ああ、またやっちゃった。あたしってバカ… !)


翌朝、桃子は旅館で朝食を食べながら、
自分の嫉妬深さに呆れて落ち込んでいた。
遊太郎が知らずに混浴に入ってしまって、
知らない女たちと居たというだけで、
昨夜はヤケ酒を飲みまくり、
挙げ句の果てに酔いつぶれて寝てしまうとは。

( せっかく遊太郎と2人で旅行に来た意味がないじゃん )

二日酔いの頭痛に顔をしかめながら、
梅干しを口の中に入れて、
チラッと向かいに座っている遊太郎を見ると、
彼はおっとりとお茶を飲んでいた。
結局、昨夜は何にも期待したような、
ロマンチックなことは起きなかったのだ。


旅館の朝食は、
他の宿泊客たちと同じ食堂だったので、
例の温泉ギャルたちが遊太郎を見つけて、
朝からけたたましく近寄って来た。

「メガネくん、おはよ!」
「夕べはタイヘンだったよねぇ。
ちゃんと寝られたぁ?」
「幽霊がコワくてお姉さんと一緒に寝てもらったとか」

何なんだ、この女たちは。
桃子はあからさまに嫌な顔をして彼女たちを睨んだ。

「遊太郎。昨日の夜、なんかあったの?
そういえば、悲鳴が聞こえるとか言って
部屋から出て行ってたよね?」

つっけんどんに聞いてみる。
なんだか話題にひとり取り残されている気がして気分が悪い。
遊太郎はいいえとトボケた。

「幽霊騒ぎがあったみたいですけど。
よくわかりません」
「幽霊? バカバカしい。そんなもの居るわけないじゃん」

桃子は、まさか自分が寝ている顔を、
その幽霊(狐だったのだが)
にしげしげと見られて、
連れて行かれようとしていたとは思わない。


そのあと、旅館を出た2人は温泉街へ繰り出した。
土産物屋に飛び込んで桃子が見つけたのは、
陶磁器のマグカップだった。
ほっこりと温かみのあるピンクと黄色のペアだ。

「これいい。ね、買おうよ、遊太郎」
「ああ、いいですね」
遊太郎も気に入ったらしい。
「でしょ?」

一気に機嫌が直った桃子に遊太郎はちょっとホッとした。
脳裏に昨夜の狐が言った捨てセリフが蘇る。

(惚れてるんなら、俺みてぇに後悔しねぇように、
しっかり捕まえて放すんじゃねぇぜ )

捕まえておくとは言っても、
自分は仕事で一定期間滞在しているだけであり、
いつかは彼女と離れなければならないのだが・・・・・・

少し考えこんでいると、
ガイドマップを見ていた桃子が元気に言った。
「この高台に行ってみようよ。温泉街が一望できるんだって」
「はい」
楽しげな彼女に彼は微笑んだ。


爽やかな青空のもと、
秋風が吹く見晴らしの良い高台は、
木で出来たベンチと望遠鏡ぐらいしかないが、
恋人同士が自分たちの世界に浸って過ごしていた。
見渡す限り、散りばめられた紅葉が美しい。
2人は柵に寄りかかり、新鮮な澄んだ空気を味わった。

しばらく無言のときが流れ、
桃子は隣の遊太郎にさりげなく手を伸ばし、
彼のそれに触れた。
遊太郎も気がついて桃子の手をそっと握りしめた。


その時。
遊太郎の携帯電話がふるえて、
桃子がちょっとむくれたように睨んだ。
「あ。ごめんなさい。桃子さん」
「…ん」


彼女から少し離れて携帯電話に出ると、
相手は部長の神崎からだった。
「不粋な電話ですまないね、森田君」
「いいえ」
「潜入捜査の要請だ。今夜ステーションに来てくれたまえ」
「わかりました」

潜入捜査。
それはまた忙しくなるということを意味する。
遊太郎はおっとりとしてはいるが、
実際は銀河連盟調査員だからだ。


しかし、これでまた桃子の機嫌が悪くなりそうで、
遊太郎は、はあっと溜め息をついた。


~第125回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-11-29 19:48

第123回接近遭遇「ユーレイ・三吉の正体は?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「この娘、俺に譲ってくれねぇかい?遊太郎さん」

そう言って、幽霊の三吉は寝ている桃子にすうっと近づいた。
「ちょっと待ってください。三吉さん。
桃子さんをどうするつもりですか?」
遊太郎が慌てて三吉の背後に回った。
すると、彼は桃子の枕元にかがみ込み、愛おしそうに言った。

「お松の生まれ変わりなら、俺と暮らせば昔の約束を思い出すはずさ。
だから、お願いだ。遊太郎さん。この娘を俺に預けてくんな」
「それは、出来ません」
遊太郎は首を振った。

「どうしてだい?」
「桃子さんは、あなたの恋人のお松さんではないからです」
「こんなに良く似ているのにかえ?」
「あなたがお松さんだと思いたい気持ちは分かります。
でも、彼女は違う人間なんです」

しばらく間があった。
徐々に三吉の様子が変わってゆく。
「お前さんにゃ、わからねぇよ。
俺ぁ百数十年も、お松に逢いたくて似た女を探していたんだ。
ようやく見つけたものを、邪魔するのかえ?」
こちらを振り向いた三吉の顔つきが恨みがましく一変していた。
よく見ると桃子に触れていた手が獣のそれに変貌している。

「三吉さん…?」
驚く遊太郎に、三吉は獣になっている手の甲をぺろっと舐めた。
「そうさ。俺はひとの幽霊じゃあない。狐だよ」
「…狐?」
「ひとの娘に惚れちまった狐さ」

遊太郎は雑木林にあった稲荷の祠を思い出した。
そういえば狐は人に化ける妖術を持つらしい。

「お松は、狐の俺でもいいと言ってくれた。
駆け落ちの約束をして、あの池で待っていたんだ。
…けど、とうとう現れなかった。
流行り病で死んだと聞いて、どんなに悔やんだかしれねぇ。
ひとはいつか生まれ変わる。
それなら、今度こそ添い遂げてぇと、ずっとずっと待っていたのさ」


その時である。

「んもう。ゆうたろ~の、ぶぁか!」

突然、大きな寝言が桃子の口から吐き出された。
狐になりかけた三吉が、ギョッとなって布団からささっと退いた。

「ゆうたろ~、何やってんの。もっとビール持ってきなさいよっ!」

赤い顔をして寝ながら命令する桃子に、
遊太郎はああ、またかという顔をして、
寝乱れた桃子の布団を直したが、
彼女が無意識に腕を乱暴に振り上げたので、
彼のメガネがぶっ飛んだ。

「お、おい。遊太郎さんよ」
後ろで尻餅をつきながら、三吉が怯えたように聞く。
「この娘、いつもこうなのかい?」
「え?ああ、まあそうですね」

当たり前のように答えた遊太郎は、
飛ばされたメガネを拾い、やれやれとかけ直した。
しばらく呆れたように眺めていた三吉が、怒ったように叫んだ。

「違う。こんな乱暴な娘は、お松じゃねぇ」
「はあ?」
「似ていると思ったが、声も様子も違う。
お松はもっと、こう、品てぇもんがあった」

これを桃子が聞いたら拳固が飛んできそうだ、
と遊太郎は苦笑いを禁じ得なかった。
それでも彼女の突然の寝言で三吉は夢から覚めたようで、
ヘナヘナとしょげ返る。


「…遊太郎さん、御免よ。今度もどうやら人違ぇだったようだ。
とんだお騒がせをしちまったなあ」
着物の裾をぱんと叩いて立ち上がる彼は、
もうすっかり、陽気な遊び人に戻っている。

「けどよ。余計なお世話かもしれねぇが、
お前さんもてぇへんだなぁ」
「何がですか?」
「何がって。その女、相当じゃじゃ馬じゃねぇか。
この先、苦労するぜぇ」

すると遊太郎はふっと柔らかな笑顔を見せた。
「慣れてますから」
「ふふ。そいつぁ良い覚悟だ」
くくっと笑い、狐の三吉は部屋から消えかけた。
「惚れてるんなら、俺みてぇに後悔しねぇように、
しっかり捕まえて放すんじゃねぇぜ」
あばよ、と言って狐の三吉は完全に姿を消した。


珍客がいなくなり、急に静かになった部屋。
遊太郎は、桃子の投げ出された腕を布団の中へ入れようとした。
その時なにげなく、彼女の胸元が目に入った。
浴衣が少しはだけて妙に艶めかしい。

「………」

遊太郎は、布団を直したあと慌てて部屋の襖を閉めた。


(据え膳喰わぬは男の恥って言葉、知ってるかい?)

どこからか、
三吉の笑い声が聞こえて来るようだった。


~第124回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-11-26 19:48

第122回接近遭遇「宇宙人と幽霊」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「お前さんは、こっちのおひとじゃあ、ないねぇ」

遊太郎に向かって三吉がさらりと言った。
三吉は、温泉旅館に現れるという江戸時代の扮装をした幽霊だ。
その幽霊が、遊太郎の正体を看破したような言い方をしたのである。

「どういう意味でしょうか?」
さりげなく遊太郎が聞くと、
彼は切れ長の目を細めてへらへらと笑った。
「おっと。すまねぇ。
わけありで隠していなさるんなら、許しておくれ」

池に垂れた釣り糸が少し揺れたが、
三吉が引き揚げてみると獲物ではなく誰かが捨てた空缶だった。

「おめぇさんの見てくれは、可愛らしいわらべのようだが、
中身は全く別のおひとだね。
何かと戦っていなさる、お侍みてぇな」
「サムライ…?」
「そうさ。今どきの侍は刀を使わねぇかもかもしれねぇが、
お前さんの中に、剣気ってのを感じちまうのさ」
「……」

遊太郎は肯定も否定もしなかった。
感覚が鋭い幽霊の三吉は、
高校生のような遊太郎の外見が仮の姿であることを、
うっすらと感じているのだろう。

しばらくのあいだ、夜釣りを楽しんだあと、
思いついたように聞いてきた。
「ここにゃあ、お連れさんと来ているのかい?」
「あ、はい」

そういえば桃子を部屋に置いてきたままだ。
今頃酔いつぶれているかもしれない。
そろそろ戻らなくては。

「ん?どうしたんだえ」
「あ、いや、その。ちょっと怒らせてしまって」
「喧嘩でもなすったか」
「いえ。そうじゃないんですが、
実は僕、混浴と知らずに露天風呂に入ったので、
誤解されたようなんです」
「そいつぁ、いけねぇな」
三吉はプッと吹き出した。

そろそろ戻りますという遊太郎と一緒に、
彼も釣り竿を置いてベンチから立ち上がる。

「どれ、どんな女か、見たくなっちまった。
連れてってくれるかえ」
「え。三吉さん、ついて来るんですか?」
「あたぼうよ。遊太郎さんのコレなんだろう?」
彼は小指を立てて、にやにやした。


本館ロビーでは、幽霊を目撃したという温泉ギャルたちや、
他の宿泊客たちはもう散っていた。
しかし、また誰かに見られてはいけないと思った遊太郎は、
姿だけ三吉に消してくれるよう頼んだ。

(そうかい。そんなに騒がれていたのかい)
形はなく気配だけ存在している三吉は、
他人事のように、くくっと笑う。


別館の宿泊している部屋に戻ってみると、
案の定、桃子が酔いつぶれていたようで、
担当の仲居が隣の部屋に彼女を寝かせてくれていた。

「ほほう、気が強そうな娘だ。
おや?ちょいと、お松に似ているねぇ」
三吉の声がした。
もう誰もやって来ないとみて、部屋の中に姿を現したのだ。

「お松?」
遊太郎が聞き返すと、三吉は少し寂しそうに笑った。
「ああ、百数十年ものあいだ待ちぼうけをくらってる俺の想いびとさ」
桃子をじっと見る目は、
懐かしいような何とも言えないいろをしていた。

「じゃあ、三吉さんが成仏しなかった理由は…」
遊太郎がそう言うと、彼は苦笑いして部屋に胡座をかいて座った。
「惚れた弱味かねぇ。駆け落ちを約束して来なかったおなごを、
未練たらしく百数十年も待ってるわけさ。
お笑いだろ。遊太郎さん」

遊太郎はいいえと首を振った。
なんとなく気持ちが分かるからだ。
「でも、お松さんは…」
もう亡くなっているはずで彼の元には帰って来ないのでは、
と言いかけて、すみませんと謝った。
すると三吉がいやいやと首を振る。

「俺ぁ、生まれ変わりってのを信じてるのさ。
いつか、お松は生まれ変わって、俺と出会うはずだってねぇ」
「生まれ変わり…?」

その時、三吉はまたチラッと寝ている桃子の方へ視線を流した。
お松という女性に似ているという桃子。

「この娘、お松の生まれ変わりかもしれねぇ。
俺に譲ってくれるかい?遊太郎さん」
「!」

遊太郎ははっとする。
陽気だった三吉が、
打って変わった真剣な表情で桃子を見つめていたからである。


~第123回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-11-22 21:24

第121回接近遭遇「温泉地の小粋なユーレイ?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

温泉旅館の本館から、女たちの悲鳴が聞こえた。
その声をキャッチした遊太郎は、
浴衣のまま様子を見に行くことにした。


別館から少し離れた本館ロビーでは、
露天風呂で会った温泉ギャルたちが騒いでいた。
彼女たちを前に番頭と仲居の2人がオロオロしている。

「どうしたんですか?」
仲居に声をかけた遊太郎へ、女たちが取り囲んで喋り出した。
「あっ、さっきのメガネの高校生!」
「ねえ聞いてよ。ユーレイが出たの」
「着物着たヘンなヤツが廊下をウロウロしてさあ、
目の前でパッと消えたんだよ」

慌てて番頭が頭を下げた。
「お客様。お休みのところ申し訳ありません。
何でもございませんので、お部屋にお戻りください」

しかし他の宿泊客達もわらわらとロビーに集まり、
番頭たちはいよいよ誤魔化すことができなくなった。
「何だ?説明しろよ」
「幽霊が出るって噂あったけど、ホントなんですか?」
口々に聞く客たち相手に番頭は観念して話し始めた。

「はあ…あのう、実は、まだこの旅館が立つ前から、
この土地に居着いている者のようで、
特に悪いことをするわけではないのですが、
お祓いをしても出て行って頂けないようで…はい」

女たちがここぞとばかり抗議する。
「悪いことしてないって、
夜に現れたら安心して泊まれないじゃん」
「も、申し訳ございませんっ!」
平謝りになる番頭と、文句をつける客たちをよそに、
遊太郎はそっと辺りをスキャニングしてみた。
エイリアンなら慣れているが、相手が幽霊となると…。
その時。


(こっち、こっち)

ふいに頭の中から男の声が聞こえてきた。
遊太郎は用心深く、その声がする方向に歩き出し、
導かれるままに外に出た。
秋風が心地よい夜。
旅館の裏には雑木林が延々と続き、
さらに歩いていくと、
忘れ去られたように小さな稲荷の祠を見つけた。

「?」

遊太郎は少し驚いた。
その祠の前に誰かが立っていたのだ。
白地に藍色の縞模様の着流しに山吹色の羽織りを着た、
30歳前後の男である。
彼は遊太郎を見て、切れ長の目を細めた。

「いい月夜だねえ」

風変わりだが、見覚えがある恰好だと遊太郎は思った。
桃子が見ているテレビドラマに、
そんな姿をしている人物が登場するからだ。
それは確か、江戸時代の町人だったような…

遊太郎は普通に挨拶をした。
「僕は森田遊太郎といいます。あなたは?」
「俺かい?通り名は遊び人の三吉さ」

彼は祠にぱんぱんと柏手を打った。
幽霊とは思えない質感があり、もちろん足もある。

「三吉さん、あなたはそこの温泉旅館に住み着いた幽霊なんですか?」
思い切って質問すると、着物の袖に手を入れ、
三吉は気だるそうに歩き出した。

「立ち話もなんだ、ちょいと付き合ってくんな。遊太郎さん」
月明かりの中を、ひょいひょいと歩く三吉。
まだ少し警戒しながらもついて行くと、
雑木林の奥に小さな池と木のベンチがあった。
ベンチには古い造りの釣り道具が置かれていて、
三吉はひょいと座り、糸を池に投げて釣りを始めた。

「秋の夜長。ゆっくり話でもしようじゃないか」
「はあ…」
仕方なく遊太郎は彼の隣に腰をおろす。

「もう百数十年になるかねえ。
昔、ここにゃ出会茶屋があって、女と待ち合わせていたものさ」
「そうなんですか」

出会茶屋だと言われても、
正直なところ遊太郎にはさっぱり分からない。
この三吉という男は、
江戸時代に生まれてから今まで成仏もせずに、
旅館に夜な夜な現れたりしているのだろうか。
そんなことを考えていると、三吉がじっと遊太郎を見た。


「お前さんは、こっちのおひとじゃあ、ないねぇ?」
「え……」

遊太郎は驚いて、彼の顔を見た。

何気なく遊太郎の正体を見破った、
この不可思議な幽霊は何者なのか。


~第122回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-11-19 22:19

第120回接近遭遇「遊太郎×温泉ギャル」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2人だけの温泉旅行。
桃子から先に風呂を勧められた遊太郎は、
本館の庭に作られた小径を通って、露天風呂に向かった。

まだ早い時間のせいで、
湯船につかっているのは老人だけであり、
遊太郎が入ると、近寄って話しかけてきた。

「坊ン、ひとりか。親はどうした?」
「あ、いえ。僕は…」
「ああ、修学旅行なんじゃな?」
老人はつるりと禿げ上がった頭を撫でて、
そうかそうかと納得した。

そこへ鈴のように高い声がして、
遊太郎はギョッとした。
いきなり派手な若い女たちが乱入して来たのだ。
すると老人が歯の抜けた口でケタケタと笑い出す。

「ああ、坊ンは知らんかったのか。
今の時間はな、混浴になっとるんじゃよ」
「こ、混浴っ?」
「いやはや、温泉ギャルとは、いいもんだのう」
シワだらけの顔をほころばせて喜ぶ。

温泉ギャルと呼ばれた女たちは、
遊太郎を見ると飛沫をあげて押し寄せて来た。
「やだ。このコ、なんかカワイくない?
おっきいメガネしてさ、コナンみたい」
「ねえねえ。キミ、どこの高校?」


…冗談じゃない。
遊太郎は女たちから背中を向けて、
湯船から逃げようとした。
胸元までタオルを巻いている彼女たちだが、
このシチュエーションは、彼にとって相当キツい。


「そういえばぁ、ここの旅館ってヤバイんでしょ?」
女たちの話題が早くも切り替わる。
「うん。出るみたいだよぉ」
「夜中にユーレイがウロウロしてるって」
「マジ?肝試しやろっか」

この隙に、
と遊太郎はこっそり露天風呂から上がった。
すっかり桜色に染めあがった体に、
浴衣の袖を通してると他の宿泊客の話が聞こえた。
「出る?」
「ああ。男の幽霊らしいぜ」
どうも不可思議な噂がある旅館らしい。

しかし、遊太郎が
本館のロビーを歩いていると、
あの温泉ギャル軍団に再び見つかってしまった。

「あっ!さっき逃げたメガネの高校生じゃん」
「見て見てぇ。このコの肌、すべすべピンク!」
「髪、サラサラだね。弟にしたいなあ」
「ねえキミ。ウチらの泊まってる部屋においでよ」
髪を引っ張られ、頬をさわられ、
いじられ放題で困っていると、
聞き覚えのある女の声がした。


「何やってんの」

桃子である。
髪を後ろでまとめ、浴衣を着てキリッと立つ姿は迫力がある。

「も、桃子さん」

内心、彼はしまったと思った。
当然のことながら、桃子は機嫌が悪い。
「なになに?誰、このオンナ」
温泉ギャルたちが桃子を露骨に値踏みする。
「もしかしてキミのお姉サン?」
「え~っ!全然似てないし」
「なんか怖そう。キミ、イジメられてんじゃないの」


なんて失礼な奴ら。
脳みそが全部マシュマロのような女の集団だ。
桃子はふつふつと怒りがこみ上げてきた。

「遊太郎。行くわよ」
「は、はい」

何あれ感じ悪いオンナぁ、などと騒ぐ女たちから、
遊太郎はなんとか逃れ、桃子について部屋に戻った。
テーブルには、既に華やかなご馳走が用意されていたが、
激怒している桃子は、仲居に熱燗をどんどん注文し始めた。

「遊太郎。つぎなさいよ」
目が据わっている。

「あ、あの。桃子さん。あんまり飲み過ぎない方が…」
遊太郎が銚子を下げようとすると、
桃子はそれを奪い取って手酌でやり始める。

「あんた、露天風呂で何してたのよ。
バカな女たちを眺めて鼻の下を伸ばしてたんじゃないの」
「こ、混浴だって知らなかったんです」
「ウソばっかり」


その時。
宿のどこかからか女性たちの悲鳴が聞こえた気がした。

「いま、何か聞こえませんでしたか?」
「なに話をそらしてんのよ?」
「いや、そうじゃなくて。本当に聞こえたんです。
ちょっと見てきますね」
「ご勝手に」

桃子がこんな調子では、もはやお手上げ状態である。
遊太郎は遠慮がちに立ち上がり、
声がした方向へ行ってみることにした。


その頃、宿の本館ロビーでは、
ちょっとした騒ぎが起こっていた。


~第121回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-11-15 15:09

第119回接近遭遇「初めての2人旅行!」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。


★五十嵐桃子(26)★

遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

翌日の土曜日。
桃子はかなりな空腹感にガマンできなくなり、
ベッドから起き出した。
昨夜は何にも食べずに寝たからだろう。
どうやって帰ったのか、
記憶がところどころ曖昧な理由は見当がついていた。

パジャマの上にカーディガンを羽織ってリビングに行くと、
レモンイエローのエプロンをかけて、
いつものようにキッチンに立つ遊太郎がいた。

「あ、桃子さん。おはようございます」
「おはよ」
「もうすぐ朝食ができますから」
「ん」

逆転しているが、
家事はまるごと遊太郎が担当し、桃子は食べる専門だ。
歯を磨き顔を洗ってジャージに着替え、
だらだらと新聞を手にして椅子に座ると、
遊太郎がオレンジジュースをテーブルの上にさっと置いた。
相変わらずタイミングが良い。
良いお嫁さんになれるよとツッコミを入れたくなる。


桃子は新鮮なジュースをストローで飲みながら、
新聞を広げて独り言のように口にした。

「あ~あ。テナントビル、半焼かあ」
「えっ?」
遊太郎がビックリしてキッチンから振り返る。
しかし桃子は素知らぬ顔で新聞記事を読み続けた。

「出火元は不明。うまく処理できたんだね。
ま、これに懲りて高山も当分おとなしくしてるかもよ?」
「も、桃子さん、気づいてたんですか?」

昨夜テナントビルに閉じ込められていた彼女は、
ずっと眠っていたはずだ。
不思議そうな遊太郎を尻目に、
桃子は髪をゴムでまとめながら、へらっと笑う。

「まあね。身体は動かなかったけど、
遊太郎が助けに来てくれたことは分かってた。
ありがとう」

そうだったのか。
遊太郎が、ぺこりと頭を下げる。
「すみません。桃子さん。
また危ない目に遭わせてしまいました」
「あんたが謝ることないじゃん。
あたしがノコノコ行っちゃったから悪いんだもん。
でもさ、けっこう疲れたから気分転換したいな」

「じゃあ、あとで散歩でもしますか?」
真面目この上ない提案に、
桃子は人差し指を立てて左右に振った。
「ノンノン。最高の気分転換っていえば、温泉よ」
「温泉?いいですね」
のってきた遊太郎に桃子は内心ニヤリとした。

よし。作戦成功。


今回、いろいろと邪魔が入ってヤケになっていたが、
やっぱり遊太郎と旅行がしたい。
朝食を食べたあと、善は急げとばかり、
桃子は持っていたパンフレット片手に電話をかけ始めた。
ラッキーなことに、近場で手頃な温泉宿が空いていた。
どうやらキャンセルが出たらしい。



その日の夕刻。
桃子と遊太郎はバスを乗り継いで、
小綺麗な和風旅館に着いた。
チェックインして宿帳に名前を書く時、
桃子は高校生みたいな遊太郎を横目でチラッと見た。

(やっぱ、どう見たってあたしたち、姉と弟だよね…?
なんか悔しいけど。ま、いいか)


2人が案内されたのは、別館の角部屋だった。
小さな庭がついていて、
縁側から降りられる造りになっている。
「あのう、五十嵐さま。お部屋はご一緒で…?」
遠慮がちに仲居に聞かれたが、
桃子はさも当然のように力強く肯定した。
当たり前じゃん。


「露天風呂、お好きな時間帯に入れますので良かったらどうぞ」
仲居がそう言って引き上げた時、

「露天風呂があるんですか?」
と、庭から戻った遊太郎が聞いたので、
桃子は時計を見ながら頷いた。
「本館の方にあるみたい。まだ夕食まで時間あるし。
先に行ってきたら?」
「はい。そうします」

遊太郎は素直に答えて、部屋を出て行ってしまった。
残された桃子は、はあっと溜め息をつく。
こんな調子で、
2人だけのロマンチックな旅行は成功するのだろうか。
マンションに居る時とあんまり変わらない気がする。


この時点で、2人はまだ知らなかった。
今夜、この旅館でアクシデントが待っていることを。


~第120回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-11-12 00:12

第118回接近遭遇「小さな友人との友情」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

テナントビル6階が瞬く間に火炎に包まれた。
植物の群生が叫ぶように猛り狂い燃え盛る。

高山や祥子は、
もう自分達は死ぬんだと思って目を固く閉じた。
しかし煙にまかれて苦しくなるはずが、
熱ささえ感じないのは何故だろう。

「変だな、熱くねえ」
目を恐る恐る開いて、フロアを見渡した。


確かに建物も植物も真っ赤に燃えている。
しかし、まるで巨大なスクリーンに映る立体映像のようなのだ。
レンや少年、そして繭の中の桃子も無事生きていた。
まるで全員を守るような透明なシールドが、
張られているかのように。


(燃えちゃう…)
金色の目をした少年が、
自分の友達でもあった植物が、
ゆらゆらと燃えてゆくのを茫然と見ていた。
レンがそんな彼の髪を撫でる。

(いまシールドを張って火から守っているが、
あまり時間がない。
彼女を繭から解放してくれないか?)
(…うん)

ドームのような繭には桃子が膝を抱えて、
胎児のように丸くなって眠っている。
少年が触れたとたん、それは溶けるように消え、
桃子が倒れそうになるのを、
レンが素早く支えて床に寝かせた。

( おにいさんは、おねえさんを助けに来たんだね )

少年は気づいた。
寂しさのあまり閉じ込めてしまった桃子だが、
彼女の身を心から案じている人間がいたことを。
レンは少年の肩に触れ、
真摯な気持ちを込めて想念を送った。

( 彼女は、とても大切な人なんだ。
君が、お母さんを愛するように、
誰にだって大事に思う人がいる )
( うん。うん。 本当に、ごめんなさい…)

頭を垂れる少年に大丈夫だと諭し、
レンは高山達の方へ向き直った。


フロアの隅の方で、
へたり込んでいる彼らに近づいたレンは、
いきなり高山の胸ぐらをつかんだ。

「な、なんだよっ」
撃たれるか、それとも殴られるかと思いながら、
高山は早口で弁解をした。

「そ、そうさ。オレ達が五十嵐を引き込んだ。
あんたを誘い出すゲームのつもりだったんだ。
だけどな、こんなバケモノがビルに居るなんざ、
本当に知らなかったんだよ。だから…」

「これは夢だ」
「へっ?」
レンは漆黒のサングラスを静かに外した。
高山の後ろに小さくなっていた祥子もはっと息を呑む。


プラチナの前髪の下に隠れていたのは、
海のような青に灰色が溶けた神秘の瞳。

「今夜の事は、全て夢だ」

彼の瞳から放たれた特殊な波形。
それは記憶を塗り替える力を持っていた。
本来ならば、
レンに関わる全ての記憶消去をするべきだが、
条件が揃わない上に時間的な余裕がなかった。

強力な暗示を受けて、
呆けたように眠りこけた高山と祥子。
そこへ動かなかったエレベーターのゲージが点滅し、
黒服の男達が現れた
銀河連盟パトロール隊員である。
高山達の避難や後処理をパトロール隊員達に任せ、
桃子を抱き上げたレンが少年に視線を流した。

(さあ、ここは危ない。行くぞ)

少年は燃えゆく植物を悲しそうに見ながら、つぶやいた。

(さようなら…)



ビル火災は、幸い近隣へ燃え移ることもなく半焼に終わった。
事件を引き起こす要因となった高山と祥子は、
パトロール隊員によって、
駅前に移動された車中に運ばれた。
彼らは、自分達が何をしようとしたかさえ分からず、
狐につままれた様子で帰る事となった。


「全く人騒がせな連中だったな」
黒いBMWで、
そうもらしたのは部長の神崎だった。
後部座席へ桃子をそっと運び入れたレンは神崎に言った。

「桃子さんをお願いします。
僕は、彼をステーションまで送らなければなりません」
「任せておきたまえ。しかし君も派手にやったな?
君を怒らせたら怖いということが分かったよ」
「何のことですか?」
レンにクールに返されて、
肩をそびやかす神崎を尻目に、
彼は車のドアを閉めた。
あとは少年を銀河連盟の保護センターまで送り届ければいい。


(また、会える?)
少年がレンを見上げたので、
彼はその小さな手を握りしめた。

(君が望めば、いつでも)


宇宙の片隅で巡り会った、
孤独な者同士が心を通わせた瞬間だった。


~第119回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-11-09 21:53

第117回接近遭遇「寂しい宇宙の迷い子」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★

地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

桃子を繭の中に閉じ込めて、
植物の群生を操っていたエイリアンの正体。
それは、まだ幼い普通の少年だった。

しかし、高山や祥子は戦慄を覚えて後ずさった。
何故なら、少年の両目は燃えるような金色に光っていたからだ。


(おねえさんを消さないで)

少年はテレパシーでレンに訴えた。
繭の中に捕らえた桃子を、何故か大切に思っているようだ。

(そんなことはしない)

レンはサイキックガンを下におろして少年に近づいた。
(君は1人で地球に来たのか?)
すると少年は、とたんにうなだれた。
(違う。お母さんと一緒だったけど、すぐに死んでしまった。
だから、植物の種とかくれていたんだ)
(植物の種?)
(うん。ぼくの星から持って来た)


背後の植物の群生がザワザワと揺れた。
地球に来て急成長したのかもしれないが、
少年の思いに感応しているところを見ると、
場合によっては危険な武器にもなるだろう。

(ひとりでさびしかった。でも、おねえさんがきた。
びっくりして逃げられちゃうと思って、
繭の中に閉じこめたんだ)

見知らぬ星に来て母親を亡くした少年は、
空屋のビルに植物と一緒に引きこもっていたらしい。
そんな時にひょんなことから、
桃子がこのテナントビルのドアをノックしたのだ。


(君の気持ちはわかる。
でも、彼女は解放してあげてほしい)
レンは諭すように思念を送る。
(どうして?)
(地球人だから。繭の中では生きられない)
(………)
少年はじっと目を下に向けたまま唇を噛んだ。


(…おにいさんは、ぼくをつかまえに来たの?)

違法侵入者を摘発することが、
銀河連盟調査員のレンの仕事である。

(いや。君は宇宙の迷い子だ。連盟が保護することになる)
(そこは、こわいところ?)
(こわくはない。君のような子供がたくさんいる。
きっと友達もできるよ)
(ほんと…?)



一方。
遠巻きにして異様な光景を眺めていた高山と祥子は、
レンと少年が何を話しているのか分からず混乱していた。

なんなんだ。あの子供は?
と高山に至っては怯えつつも苛立つ。
それに、あの銀髪野郎は驚きもしないじゃないか。

「藤井。逃げるぞ」
彼がそう囁くと、祥子は少し眉をひそめた。
「五十嵐さんは?助けるんじゃなかったんですか」
「知るかよ。もうたくさんだ。気が変になっちまう。
警察を呼んで、ここから出る」

自分達が招いた結果なのだが、結局は自己防衛本能が勝った。

「あんな気味の悪いガキや、
バケモノみたいな植物なんか相手にできるか?
あの銀髪野郎はヘンな銃を持ってやがるし。
ありゃあ、ぜってぇカタギじゃねえ」
「ひょっとしたら刑事かもしれないですよ?
あの身のこなし、警察関係者みたいに思うんですけど」

祥子がうっとりとして話すので高山は舌打ちした。
女という生き物は、こんな事態でも平気で甘い妄想に浸れるのか。

「馬鹿。あんな髪の刑事がいるか。
とにかく普通の警察を呼ぶんだ。
うん?圏外か。外に出るしかねえな」

高山は少年に気づかれぬようエレベーターへ忍び足で近づいた。
祥子も好奇心を残しながら彼の背中について行く。
しかしエレベーターホールの前まで来て高山は焦った。
おかしい。1階のボタンを押しても動かない。
再び携帯電話をかけようと試みた時、
その右手に植物の触手が巻きついた。

「わっ!」

後ろを振り返った2人は震えあがった。
少年が金色の目を光らせて、こちらを凝視していたからだ。
無表情であり髪は逆立っている。

(けいさつって何?やっぱり、ぼくをつかまえに来たんだ)

いけない、とレンは危険を感じた。
少年の怒りは植物に感応する。

「くそっ!」

触手に右手を捕まれ、恐怖に引きつった高山は、
もう片方の手でライターに点火し、
触手を伸ばしているおおもとの植物に向かって投げた。


カッと、嫌な光が生まれ、すぐに真っ赤な炎が踊り狂った。


~第118回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-11-07 22:28

第116回接近遭遇「引きこもりエイリアン?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
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「死にたくなければ、このビルから早く逃げろ」


レンは、そう言ってサングラスの向こうから強い視線を流した。
桃子を引っ張り込んで居座っているのは、
おそらく不法侵入したエイリアンであり、
何も知らない高山と祥子を早く遠ざけた方がいいからだ。

「な、何ワケのわからねえことを言ってやがる?
オレに命令すんなっ!」

高山はまだ虚勢を張っていた。
そうだ。この男の雰囲気に呑まれて忘れていたが、
オレの目的は、こいつを呼び出して、
オレの方が男として上だということを示す事だったんだ。
ということは、ヤツより先に彼女を助け出した方が勝つ。


「いいか?若造。よっく聞け。
五十嵐は、このオレが助け出す。
お前みたいなカッコつけの激しいヤツより、
オレの方が腕力は上だ。
学生時代、ボクシングでならしたからな。
ケンカだって、その辺のヤツより場数が違うんだよ。
そこんところを思い知らせてやる」

調子が出て来た。
男のプライドにかけて引き下がるワケにはいかない。

「五十嵐を引っ張り込んだヤツは、
たぶんこの辺りを根城にしたホームレスだぜ。
捕まえて警察に突き出せば万事解決さ」

それに彼女を助け出せば、自分の株も上がるというものだ。
すっかり都合の良いストーリーを作り上げ、
高山は勢い良くドアに体当たりをし始めた。


「やめろ」

レンは水のように冷静に制するが、聞くタイプではない。
ついに別の部屋からパイプ椅子を持ち出して、
大きく振り上げ、ドアに投げつけようとした。


その時。
閉ざされていたドアがわずかに開き、
緑色のロープのようなものがヒュルヒュルと飛び出した。

「うわっ…!」
「高山係長…!」

祥子の金切り声が響く。
それは太い植物のツルのような触手だった。
高山の身体に何重にも巻きつき、
強い力で部屋の中へ引っ張り込もうとしている。

そこでレンはやむなくサイキックガンを取り出した。
異様な形の銃を見た高山がギョッとして叫ぶ。

「お、お前。なんで銃なんか持ってやがる?
おいっ、馬鹿。撃つなっ!」
彼はパニックに陥り一層暴れ、もがいた。


「動くな」

レンは、手慣れたようにサイキックガンの照準を合わせ、
迷う事もなく放射した。
白い閃光が伸びて、触手たちが鮮やかに切断されてゆく。

床に尻から落ちた高山の元へ祥子が駆け寄った。
「高山係長、やっぱり、ここから早く逃げた方が…」
「う、うるせえっ」

切断された触手たちは、しばらく床の上でのたくっていたが、
今度はゾロゾロとドアの向こうへ後退を始めた。
そのタイミングをレンが見逃すはずがなく、
再び閉まろうとしたドアを撃ち、
周囲の壁と共に、あっさり破壊した。

剥き出しにった真っ暗な内部には、
なんと植物の群生が天井までびっしりと覆い尽していた。
その真ん中に何かがまばゆく光っている。

「あ、あれ、五十嵐さん…?」
「なんだと?」

祥子が指差した先には、巨大な繭があり、
その中に桃子が丸くなって包まれていた。
まるでゆりかごに身を任せたように、恍惚とした表情で眠っている。


「………」

何事か考えていたレンは、サイキックガンを今度は繭の方へ向けた。
それを見た高山が驚いたように叫ぶ。

「撃つ気か!馬鹿!
あン中に五十嵐がいるのが見えねえのかよ?」
こいつ、やっぱりヤバい。危ないヤツだ。
銃を不正所持しているし絶対カタギじゃない。

そんな高山の声に、植物の群生も威嚇するようにゾロゾロと蠢き、
その触手で繭を覆い隠そうとしている。

しかしレンは平然と真っ直ぐ繭を狙いながら、
よく通る声で呼び掛けた。


「そろそろ出て来たらどうだ?
でなければ、君の大事なものが消えるぞ」


すると、繭の向こうに隠れていた人物が、
ゆっくり、その姿を現した。
高山と祥子は予想外な展開に言葉を失う。


近づいて来たのは、
まだ幼い普通の少年だったのである。


~第117回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-11-04 22:43

第115回接近遭遇「静かなるレンの怒り」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

桃子が空屋のテナントビルの一角に閉じ込められた。
高山と藤井祥子の企てたゲームによって。

遊太郎が状況を把握した時、
ひと気のない営業課に部長の神崎が入って来た。
同じく事態を察知したからだろう。
「全く好奇心旺盛な人間には困ったものだ。
しかも、あの2人には計算外の事が起こったようだな」

神崎の言葉に遊太郎が深く頷いた。
「はい。地球に不法侵入した者が、
あのビルに潜んでいたようです」

「うむ。空屋だったから住みついていたのかもしれん。
しかし、君を誘い出そうと罠を張った彼らの前に、
今から行って本来の姿をさらす気かね?」

すると遊太郎はしばらく黙っていたが、
やがて伏し目がちに答えた。
「招待されたからには、行かなければなりません。
でも、何よりも桃子さんを救出する事の方が大事です」

「そうだな。桃子君を無事保護し、
不法侵入者を確保する事が先決だ。
気をつけて行きなさい。森田君」

遊太郎は目礼をして、瞬間移動をするべく空間からかき消えた。
残された神崎は、苦笑する。
「あの2人は、どうやらレンを本気で怒らせてしまったらしい」



問題のテナントビル6階。
高山と藤井祥子が顔を突き合わせていた。
「五十嵐が引っ張り込まれた部屋から何の物音もしねえのが、
返って不気味だぜ」
高山は気分を落ち着かせるために,
胸ポケットから煙草を取り出した。
五十嵐桃子にもしもの事があったら、責任問題だ。

「高山係長、どうしたらいいんでしょうか?」
祥子が助けを求めるように聞いたが、
彼は眉をつりあげる。

「今さら何言ってんだよ?
お前がムチャクチャな計画をやろうとしたから、
妙な事になっちまったんだろうが!」
「そんな。高山係長だって乗ってきたクセに!
わたし1人のせいにしないでください」

2人が言い争っていると、
エレベーターのゲージがふうっと赤く点滅し、
彼らは反射的に身構えた。

「!」


現れたのは、長身痩躯で全身黒ずくめの青年。
プラチナブロンドの髪と漆黒のサングラスには見覚えがある。

「…やっぱり、来た!」

待っていた銀髪の男だと分かると、
祥子が笑みを浮かべた。
いつ五十嵐桃子が彼に連絡を取ったのかは分からないが、
思惑通り、彼女のピンチに彼が現れたのだから。
一方、高山は男の雰囲気に気圧されまいと、
くわえ煙草のまま無遠慮に呼び掛けた。

「よう。あんた、五十嵐の彼氏なんだってな?」

しかしこの銀髪の男、
つまり遊太郎から本来の姿に戻ったレンは、
何の反応も示さなかった。
イラついた高山がなめるように睨む。

「人が話しかけてんのにシカトか?
オレはお前の彼女の上役だ。礼儀も知らねえのか、若造!」

そこへ祥子が慌ててフォローに入る。
「すみません。気にしないでくださいね。
覚えてます?わたしのこと。
つい先日あなたに助けてもらった者です。
お礼もまだだったし、絶対いつかまた会いたいと思ってて…」

それでも返答はない。
まるで彼らの存在など眼中にないように、
レンは桃子が閉じ込められている一角に向かって歩き出した。
そこにはグレーのドアとサイディング張りの壁があるだけだ。
レンは黒い革手袋を取り出し、両手にスッとはめた。


さっきから無視され、頭にきていた高山が
彼の背後へ大股で近づいてゆく。

「おい。何をする気か知らねえが、
お前なんかに五十嵐は助け出せねえぜ?
素人が良いカッコするより、
警察に任せた方がいいに決まってんだろ?」

しかし高山の言葉など聞こえていないように、
彼は右手を壁に当て、
内部の透視を開始した。

「聞いてんのか?てめえ」
とうとうキレた高山がレンの肩をつかんだ時。



「さわるな」

初めてレンの口から声がもれた。
とても静かだが、怒りを潜めた低い声。
高山は思わず手をはなし、祥子も後ろで縮みあがった。
そんな2人へ、レンはゆるりと振り返った。

漆黒のサングラスの下から、
あまりにもクール過ぎる視線を放つ。



「死にたくなければ、このビルから早く逃げろ」


~第116回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-11-01 22:22