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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2008年 10月 ( 11 )   > この月の画像一覧

第114回接近遭遇「桃子、閉じ込められる!」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

週末の夕刻。
残業で疲れきった桃子は郊外を歩いていた。
係長の高山に用事を依頼されたのだ。
それは、顧客の勤務先に書類を届けること。

高山が接待で抜けられないと言い、
目的地がちょうど桃子の帰る方向にあるからと、
かなり強引に押し付けられたのだ。

「そんなの営業担当の仕事じゃん」

ブツブツ言いながら、桃子は寂れたテナントビルに辿り着いた。



「五十嵐が来たぞ。
けど、これって犯罪じゃねえ?」
ビルから死角になる場所に一台の車が駐車していた。
そこに隠れて、ぼやいたのは高山本人である。

「違いますよ。高山係長。ちょっとしたゲーム。
五十嵐さんが、もしピンチに遭ったとしたら、
きっと彼に電話すると思いませんか?」
明快に答えたのは、
助手席に身を潜める藤井祥子だった。

「そりゃ、確かに銀髪野郎のツラは拝みたいし、
どういう男が見極めたい。
しかし五十嵐がパニクって警察を呼んだらどうする?」

「ううん。あの気の強い五十嵐さんだもの。
もし彼に電話しなくても、
変だと気づいた時点で警察よりも先に高山係長に連絡して、
まず文句を言うはずですよ。
その時は高山係長が、場所を間違えたとか言って、
五十嵐さんを助けに走ればいいんですって」
「おいおい…」

高山は祥子が空恐ろしくなった。
女のことなら、よく知っているつもりだが、
これほど計算高い女子大生は初めてだ。

しかも、いい歳をした大人が、
こんなゲームに乗るのもどうかと思うが、
銀髪の男をどうしても捕まえたい高山は、
あっさり誘惑に負けたのだった。


やがて何も知らない桃子は、
殺風景なテナントビルに吸い込まれ、
エレベーターに乗って6階を押した。
そのすぐあと、
祥子が車から降りて足を忍ばせてビルに入り、
非常階段を駆け上がった。

6階のエレベーターから降りた桃子は、
教えられた会社名の入ったプレートのドアをノックしてみた。
もし返答がない場合、
1階に戻ってポストに書類だけ入れて帰ればいい。


しかしその時、ドアが音もなく開いた。
いきなり誰かの腕がぬうっと伸び、
桃子は声すら出せず中へ引っ張り込まれた。
あとをつけて来た祥子は驚いて口を押さえる。

「?」

祥子のシナリオでは、
空屋のテナントに桃子を後ろから押し込んで、
ドアを開けられないように細工し、
少しの間だけ閉じ込めるつもりだったのだ。
もちろん、びっくりした桃子が、
あの銀髪の男に電話をし、祥子達の前に彼が現れる。
…そのはずだった。

「そ、そんな馬鹿な…人が居たなんて」

祥子はドア近くに忍び寄って聞き耳を立ててみたが、
中から何も聞こえない。
事前に空屋だと確かめたはずなのに。
桃子を引っ張り込んだのは、いったい誰なのか。

祥子は急いで1階へ降りた。
そしてすぐに車で待機中の高山へ電話を架けた。



( 桃子さん…?)

その頃。
取引先から帰社したばかりの遊太郎は、
桃子の波動がふっと途切れたのを感じていた。

夜も遅く、非常灯だけ残して電気系統をトーンダウンする中、
遊太郎は眉をひそめて窓際へ近づいた。
ネオンが見える夜景を見渡して、
桃子の波動を感知するためにスキャニングを始める。

奇妙過ぎた。
まるで何かに邪魔をされているかのように、
桃子の居場所がハッキリしない。

(桃子さん、返事をしてください)

手がかりを求めて
心の網を広げてみると、
馴染みのある声が補足出来た。
それは焦りとパニックに襲われた会話である。

「どういうことだ、藤井?
五十嵐が誰に引っ張り込まれたって?
あのテナントは空屋のはずだろ?」

なんと高山の声だ。
それに答えたのは藤井祥子。

「でも、わたし見たんです。
誰かが五十嵐さんを捕まえて中へ入れちゃったのを。
どうしよう。警察を呼んだ方がいいんじゃ…」

高山と藤井祥子。
この2人は桃子に一体何をしたというのだろうか。

遊太郎は彼らの会話から、問題の建物を補足した。
郊外にあるテナントビルだ。

( この得体の知れないエネルギーは…? )

まさか、このエネルギーの中に、
桃子が閉じ込められたというのか。


~第115回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-10-29 22:45

第113回接近遭遇「対策会議?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★

遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「遊太郎。いったいどうするつもり?」

マンションのリビングで、髪を束ねて腕組みをした桃子が、
ソファに座ってビールを飲みながら遊太郎を睨みつけていた。
今夜の桃子は機嫌が最悪だった。

「どうせ歓迎会で断りきれずに飲まされて、
元に戻りそうになったんだろうけど」

缶ビールは既に5本目であり、遊太郎は少しギョッとした。
止めなくていいのだろうか。
しかし、今の彼女には逆らえない。

「全く、藤井って子なんか放っておけば良かったのに。
わざわざ助けに行ったりなんかするから、
こんな事になったんでしょ」

もちろん桃子は心の内では分かっていた。
遊太郎は、困っている人間を見捨てたり出来ない事を。
しかし正体を隠さなくてはならない立場で、
リスクを侵してまで人助けしなくても、と桃子は思うのだ。


「あの高山が、ホントの遊太郎の写った写メなんかまだ残してて、
まさか藤井って子に見せるなんて。
彼女、記憶力良さそうだし、どうするのよ?
絶対、かぎまわるわよ」

今日ずっと桃子は藤井祥子に見られていたのだ。
これから色々詮索されそうな気がする。

「あ、でも。藤井さんの研修期間は2週間だから。
そのうち忘れてしまうかも…」
遊太郎が、のん気なことを言ったので桃子は爆発した。

「甘い!ホントにあんたって超お人好しだよね。
だいたい女ってものを知らなさすぎ!」
「す、すみません」

遊太郎がますます小さくなってゆく。
ふとその時、桃子は名案を思いついた。

「あんまり良くない方法だろうけどさ、
あの子からあんたの記憶を消すってこと、できる?」
「できなくはないと思いますが…」
「思いますがって、何よ?」
「条件があって、誰もいないところで、
藤井さんと2人きりになれば…」
「ふ、2人きり?」

桃子の目が据わっていた。
もうビールの空缶は6本を越えている。

「い、いいわよ。別に。
あたしにわかんないように2人きりになれば?
ミイラ取りがミイラになって、
あの小悪魔にもてあそばれないようにしなさいよっ!」

思いっきり悪態をついた桃子は、寝ると言って立ち上がった。
とたんに地面が揺れて仰向けにぶっ倒れそうになり、
遊太郎が急いで支える。

「桃子さん、大丈夫ですか?」
遊太郎はタコのように真っ赤に染まっている桃子に肩を貸して、
彼女の部屋に連れて行き、ベッドに寝かせた。

「こぉら、ゆうたろ~。おんなのへやに入ってくんな、ぶぁか」
「はいはい」
「どうせ、あたしは、あのこより、かわいくないですよ、だ」
「そんなことありませんよ。桃子さんは可愛いです」

真面目に答えてみたが、聞いてはいなくて、
桃子はとうとう寝息を立てて寝てしまった。
遊太郎は手慣れたように布団をかける。

「迷惑ばかりかけて、ごめんなさい、桃子さん」

そうつぶやいて、遊太郎は桃子の寝顔を見つめていた。


~第114回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-10-26 13:33

第112回接近遭遇「正義の味方は桃子の彼氏?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「昨日の夜、ワルッぽい人達に襲われて怖かったんですよぉ」

翌朝の社内。
藤井祥子は昨夜、チンピラ達に襲われた事を皆に話していた。

「で?一緒にいた森田は逃げ出したってわけか。
やっぱり、お前って気弱なのび太だよなあ」
係長の高山が馬鹿にして皆がどっと笑った。
笑われた遊太郎は、祥子にぺこりと頭を下げる。

「藤井さん、昨夜は本当にすみません。
僕、警察を呼びに行こうと思って…」
するとまた高山が意地悪そうに補足する。
「違うだろ?怖くて逃げただけだろ。
女の子1人も守れねえでよ。男の風上にもおけねえヤツだ」

「高山係長、森田さんを責めないでください」
祥子が猫のような目で睨んだ。
どうやら、遊太郎が逃げた事はマイナスポイントにはならないらしい。

「あんな怖そうな人が3人もいたら、誰だって逃げますよ。
それより超カッコイイ人に助けてもらったから、もうイイんです」

朝から際限ない藤井祥子のお喋りを聞かされて、
桃子は仕事をしながらげんなりしていた。
この研修生は何をしに会社に来てるんだろう。
遊太郎も遊太郎だ。
昨夜帰りが遅かったと思ったら、祥子と一緒だったのか。


桃子の憤りをよそに、祥子は夢見るように続けた。
「その男の人、凄く強いんですよ。
あっという間にやっつけてくれて」
「おいおい。スーパーマンじゃあるまいし。
そんなに都合よく正義の味方なんて現れるか、普通?」

高山が気にいらないように話の腰を折るが、
彼女の次の言葉に、驚くことになった。

「本当に現れたんですよ。
えっと、銀色の髪をしててサングラスをかけていたけど、
ハーフっぽい超美形だったんです」
「…ぎ、銀色だあ?」

ひときわ大きな声に桃子が一瞬ギクリとした。

(銀色の髪って、まさか…?)

思わず遊太郎の方をチラッと見たが、
彼は架かって来た電話を受けて、席を立ったところだった。

そこへ同僚の清美が、耳打ちする。
「銀髪でハーフっぽいイケメンっていえばさあ。
その人案外、桃子の彼氏だったりして」
「な、何言ってんのっ!」
桃子はギョッとして清美を睨んだ。
しかし高山も同じことを考えて急に黙り込んだ。

カンの鋭い祥子が気づいて探りを入れる。
「高山係長、ひょっとして知ってる人なんですか?」
「え、ああ。知ってるというか」
「詳しく教えてください。
わたし、もう一度会って彼にお礼を言いたいんです」

祥子の目がキラキラして、お願いのポーズをするので、
高山は自分の携帯電話のデータフォルダを見せた。
今年の春、社員旅行中に隠し撮りした例の写真である。

そこには、桃子と一緒に銀髪の若い男が写っていた。
祥子はそれを見て目を大きく見開いた。

「似てます…。すごく。昨夜助けてくれた人に」
「なに?本当かよ」

眉を吊り上げた高山へ祥子は小さな声で尋ねた。
「この人、…五十嵐さんの彼なんですか?」

五十嵐桃子が付き合っているのは、イトコだという遊太郎だと思ったのだが。

高山はさあね、と首を振った。
「社員旅行の夜に五十嵐がコッソリ会ってた奴だぜ?
トモダチじゃあねえだろう。
にしても気に食わねえ。
正義の味方気取りで、いい格好しやがって」

高山は敵愾心を剥き出しに吠えた。
ルックスも腕にも自信がある彼は、いまだに桃子を落とせずにいる。
これではメンツが立たない。
この男をいつか引きずり出して、
自分の方が男の器量が数段上だと思い知らせてやりたい。

そんな高山のライバル心など綺麗に無視して、
祥子は桃子の方を横目で見た。

(あんなカッコイイ人が五十嵐さんの彼氏?
ウソよ。そんなの、ありえない)

五十嵐桃子は見るからに気が強そうな女で、
自分の方がずっと可愛いし、それに若い。
確か、森田遊太郎も彼女が好きなようだが、
何故あんな女がモテるのか祥子には納得できなかった。



その夜。
マンションへ帰った遊太郎を待っていたのは、
仁王立ちをした桃子だった。

「遊太郎。ちょっと、こっちに来て座って」
「は、はい」

今夜の桃子はかなりご機嫌斜めのようである。


~第113回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-10-24 22:33

第111回接近遭遇「女難の宇宙人」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

歓迎会を抜け出した遊太郎は、
あとをついて来た藤井祥子と夜の街を歩いていた。
本当は一刻も早く彼女から離れた方がいいのだが。

何故ならアルコールを無理に飲んだせいで、
遊太郎の変装が解けて素顔に戻ってしまうからである。

「森田さん、どこかで休みませんか?
酔って気分が悪くなっちゃったんです」
祥子は遊太郎にわざとらしく寄りかかった。
「大丈夫ですか?藤井さん」
「だめ。フラフラします」
祥子は甘えた声と上目づかいで、遊太郎にしがみつく。

そんな時、
2人の周りを暇を持て余したチンピラ達が取り囲んだ。
見るからに血気盛んな男達だった。

「メガネのボクちゃん、可愛いコ連れてるじゃねえ?」
「お嬢ちゃん、そんなガキよりオレらと遊ぼ?」
彼らの1人が祥子の肩をつかんだので、彼女は悲鳴を上げた。
「も、森田さん、助けてっ!」
「藤井さん!」

ネオンが揺らめく賑やかな街の中で、
下手に騒ぎを起こせば目立ってしまう。
これは厄介なことになってしまった。

「へっ!腰抜けのモヤシ野郎が」
「こんなの道端に捨てちまって、
おもしれえとこ行こうぜ。カノジョ?」

遊太郎が動かないので、彼らは睨みを利かせながら、
易々と祥子を連れ去ってしまった。
残された彼は仕方なく踵を返してビルの谷間へ走った。
まるで女を奪われ怖くなって、逃げ出した男のように。


「っとに、頼りねえメガネのガキだったよなあ」
「ビビッて女を見捨てやがったもんな」

彼らは勝ち誇ったように笑い、
意気揚々と暗く怪しげな裏通りを闊歩する。
その中で祥子は青い顔で身を固くしていた。
したたかに見えても、まだ大学生。
3人の男相手では、隙をついて逃げ出す勇気すらない。


そこへ。
気配もなく背後から近づく者がいた。
銀色の髪をした長身の若い男である。


その攻撃は、あまりにも突然だった。
チンピラの1人が奇妙な呻き声をあげて、
山のようなゴミ溜めに頭を突っ込んだのだ。
そしてバッタのように脚を痙攣させたまま、やがて動かなくなった。

「な、なんだ?」

その男がやったのだと分かるまで、しばらく時間がかかった。

「てンめえっ!」

仲間をやられて目をギラギラさせた1人が、
男に向かって猛然とダッシュした。
しかし彼の鋭い手刀を腹に浴びて、悶絶して路上に転がった。
最後の1人も、顔面に強い蹴りを喰らって数メートル吹っ飛んでしまう。

祥子は思わず、その場にしゃがみこんだ。
するとチンピラを簡単に片付けた男が彼女の方を振り返った。


薄暗い裏通りに、見たこともない淡い銀色の髪が浮かび上がる。
表情が冷たいのはサングラスのせいかもしれない。
その男は、座り込んでいる彼女へ歩み寄り、
少しかがんで、整った白い顔を近づけた。


「走れ」

男は耳元で短く囁き、さっと彼女の腕をつかんだ。
パトカーのサイレンが街中に鳴り響き始めた。
誰かが通報したに違いない。
祥子は必死に走りながら恐怖を忘れ、
すぐ隣を走る男の横顔を見つめていた。

(この人、超カッコイイ…!)

ようやく人通りが多い場所にたどり着いた時、
彼女はハッとした。

(え…、いない?)

自分の腕をつかんでいた男の姿が霧のように消えていたのだ。
祥子はしばらく辺りを見回したが、見つかるわけもなく、
やがて駅に向かってふらふらと歩き出した。


その様子を先ほどの男がビルの影から見守っていた。
サングラスを外して、
額にかかる前髪を長い指でかきあげる。

もう彼女は大丈夫だろう。
危なかったが、なんとか一難は去ったようだ。


しかし、レンはまだ知らずにいた。
祥子を助けてしまったことで、
歓迎したくないトラブルを呼んでしまったことに。


~第112回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-10-21 22:37

第110回接近遭遇「変身が解ける?ピンチの歓迎会」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

チューリップ生命本社法人営業一課の面々は、
広いカラオケボックスで盛り上がっていた。
今夜は研修生、藤井祥子の歓迎会なのだ。

「森田さんて、五十嵐さんと付き合ってるんですか?
なんか仲が良さそうだし」
藤井祥子が、遊太郎の隣の席を陣取って無邪気に質問した。

「いいえ。五十嵐さんは僕のイトコなんです」
遊太郎は戸惑いながら答えた。
その五十嵐桃子は、遊太郎たちと対角線上の遠い席で、
知らん顔してビールを飲んでいる。

藤井祥子はフフと笑って思わせぶりに言った。
「イトコでも結婚できるでしょ。
ひょっとしたらって思ったんですけど」
「本当に、違いますよ」

遊太郎は慌てて誤魔化したが、あいにくこういったウソが下手だ。
しかし祥子は騙されたフリをする。

「そうなんですか。良かった!
あ、すみません。わたし、酔っているのかも」
と、遊太郎にしなだれかかり、彼は大丈夫ですか?と気づかった。

その時。
桃子がチラッとこちらを見た。
そのあとツンとした顔でバッグを持つなり席を立ったので、
遊太郎はギョッとした。

やっぱり彼女は、藤井祥子との仲を誤解しているようだ。
遊太郎もあとを追おうとしたが、
祥子が彼の腕を引っ張った。

「森田さんて、お酒は飲まないんですか?
さっきからウーロン茶ばっかり」
「え……?」
「飲みましょうよ。気分が盛り上がらないでしょ?」

祥子は勝手にウィスキーの水割りを作って、
遊太郎にはいっと渡した。

「…いや、僕はあんまり飲めないんで」
そう断って渡された水割りのグラスをテーブルの上に置いたが、
彼女は再び強引に両手で彼に持たせた。

「せっかく作ってあげたのに」
すると、周りが気づいて飲め飲めとはやし立てた。
「森田ァ。こんな可愛い女の子が作ってくれたのに薄情なヤツだ。
飲まないんなら、オレがもらうぞ?」

誰かがグラスを奪い取ろうとするのを、
祥子がだめですと小悪魔のような目つきで睨む。

「これは、わたしが森田さんに作ってあげた水割りですから」

「だってよ。珍しくモテてんなあ。森田!
全くこんな童顔どこが良いんだか。
さあ森田、グイッと飲んでやれ」
ますます周囲が盛り上がる。


……困った。
遊太郎はアルコールを飲むと、
異星人である元の姿に戻ってしまうのだ。
高校生のように、おっとりした童顔は仮のもの。
しかし誰にも知られてはならない。
桃子以外には…


「一口だけでいいですから、どうぞ。森田さん」
「いや、本当に僕は…」
「大丈夫。酔ってしまったら、わたしが介抱してあげますよ」

仕方ない。
これ以上強く拒むと場の雰囲気が悪くなるだろう。
地球のアルコールには前よりは慣れて来た。
すぐに外に出てしまえば間に合うかもしれない。

遊太郎は並々とつがれた水割りを飲んだ。
とたんに注目していた社員たちが歓声を上げる。

「森田さん、すごい!」
喜ぶ祥子をよそに、遊太郎は今度こそ席を立った。

「?」
驚く彼女に遊太郎はすみませんと謝って、
ドアに向かって足早に歩いて行った。

「帰るんですか?じゃあ、わたしも」
祥子も立ち上がったので、皆が何を勘違いしたか2人に向かって口笛を吹く。



なんとかカラオケボックスを出た遊太郎は、
追いかけて来た祥子に腕をつかまれた。
意外に脚が速いようだ。

「一緒にどこか静かなところへ行きませんか?」
「えっ?」

強く振り払うわけにもいかない。
しかし予想外に強いアルコールを飲んだ以上、
元の姿に戻るのにもうあまり時間がなかった。


~第111回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-10-17 23:29

第109回接近遭遇「桃子にライバル登場?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

( やっぱり、遊太郎にゴメンって言おう )

会社でデータ入力しながら、
桃子は遊太郎にキレてしまったことを反省していた。
せっかく遊太郎が旅行に行ってもいいと言ってくれたのに、
部長に言われたから有給を取るのかと、
些細な事でヘソを曲げてしまったのだ。
なんて可愛くない女なんだろう。

( ちゃんと謝って、
一緒に旅行に行こうって誘わなきゃ )

そう決心した時だった。
会議室から打合せが終わった営業マン達が出て来て、
その中の見慣れない女性の姿に桃子は目が釘付けになった。

紺のパンツスーツに髪を綺麗にまとめた、
就職活動中のような女の子だ。

同僚の清美が、驚いた桃子の顔を覗き込む。
「桃子、知らなかったっけ?朝礼で話してたじゃん。
藤井さんっていう営業実習に来た研修生だよ。
今夜カラオケで歓迎会あるらしいよ?」

その藤井という研修生は、
ぴったりと遊太郎にくっつき楽しそうに話をしていた。
彼女の顔立ちは化粧が控えめで初々しく可愛い。
熱心に遊太郎に質問をして、
彼も愛想良く答えているのが桃子には面白くなかった。


「あの2人、実習期間中ペアを組むんだよ」
高山係長が面倒くさそうに言った。

「新人が新人を教えた方が森田の勉強にもなるんだと。
斉藤課長が決めたんだ。
あんな可愛いコ、オレに任せてくれりゃいいのにさ」
明らかに不服そうだ。


ペア?
ということは、遊太郎と藤井という研修生は、
しばらく行動を共にするというのか。
桃子の胸に、ふつふつと怒りが湧いて来た。

( なによ、遊太郎。あたしといるときより嬉しそうに。
そんなに顔をくっつけて話さなくてもいいじゃん!)

それなら自分にも考えがある。
と、勢い込んで桃子は振り返って清美に話しかけた。

「清美、この秋は韓国エステに決まりだよ。行くでしょ?」
「へっ?彼氏と旅行じゃなかったの、桃子」
ビックリする清美に、思い切り笑顔を作って言いきった。

「いいの。エステして、めちゃくちゃイイ女になるんだから」
「も、桃子?」



その日の正午。
藤井祥子は遊太郎に綺麗な白い歯を見せて言った。

「森田さん。もし良かったら、お昼ご一緒してもいいですか?」

清楚に見せてなかなか積極的である。
遊太郎は遠慮がちに断った。
「あ、でも。僕、ちょっと用があるんで」
「そう。約束あるんだ…」

ふっと彼女は沈んだ表情を作った。
すると遊太郎は、困ったようになだめた。
「す、すみません。じゃあ明日はランチをいっしょにしましょう」
「本当ですか?嬉しい!約束ですよ、森田さん」

ぱっと花が咲いたように笑顔になった藤井祥子は、
手をヒラヒラさせて遊太郎を見送ったあと、
素知らぬ顔で、そうっと彼を尾行し始めた。


無頓着な遊太郎は、給湯室にいる桃子を見つけ出し、
小さな声で話しかけた。

「桃子さん。このあいだの旅行のことですけど…」

お茶を入れていた桃子は、遊太郎の言葉に覆いかぶせるように言った。
「あたし、清美と韓国エステ行くって言わなかったっけ?」
「桃子さん。怒らせてしまったことは謝ります。
だから…あの」
「もう、うるさいっ!あんたは研修生の相手してれば?」


その会話を耳にした藤井祥子は2人の関係を分析していた。
女の方が幾つか年上のようだが、
もしかして森田遊太郎の彼女…?


「ふうん。なあんだ、あんな女。
ぜんぜん勝ってるじゃない」

藤井祥子は鼻先で笑った。


~第110回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-10-15 20:42

第108回接近遭遇「佐々木さんの恋愛指南」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「同居している地球人女性を怒らせたって?」

遊太郎の話に佐々木が眉を片方吊り上げた。
場所はサラリーマンが群れるセルフサービスの珈琲店。
遊太郎は久しぶりに、取引先の会社員である佐々木とコーヒーを飲んでいた。

実は、佐々木も遊太郎と同業者であり、
管轄が違うが、銀河連盟から派遣された調査員である。

「はい。彼女を怒らせてしまいました。
どうも言い方が悪かったらしくて」

遊太郎は、有給を取る事になった報告を桃子にしたのだが、
逆にご機嫌を損ねてしまったのだ。

「で、どういう風に彼女に言ったの?」
「はい。たまには同居人である彼女にサービスをしなさいと
上司に言われたから。そう話しただけなんですが…
マズかったですか?」
「そりゃ。君、マズいよ」

佐々木は鼻先で笑って、失礼とメタルフレームの眼鏡をかけ直した。

「地球人女性は言葉一つ一つにこだわるからね。
君が上司の命令で、しかもサービスするなんて言ったから、
自分の意志じゃないのかと、彼女は腹を立てたんだろう」

「そういうつもりではなかったんですが…」
遊太郎は困ったように頭をかいたが、
佐々木は淡々と分析を続けた。

「彼女も本当は君の気持ちが分かってるんだろうけど、
あんまりバカ正直に君が話すから、
デリカシーに欠けると思ったんじゃないか?
君も、まだまだ地球人の生態調査が足りないね」

佐々木のキャリアは遊太郎の比ではない。
「僕は地球に長く滞在してるから、
地球人の恋愛ってものが、厄介なものだと良く知ってるけど」
「ひょっとして佐々木さんも、好きな方がいるんですか?」

ちょっと期待を込めて質問したが、
彼は手を振った。

「なるべく特定の人間と親しくしないようにしている。
ビジネスライクが一番だよ。
深入りし過ぎると、ほら。君のように異性に振り回されるじゃないか」
「はあ…」

遊太郎は振り回されている気はしないが、
確かに桃子はよく怒る。
喜怒哀楽がハッキリしているというべきか。
どちらかというとおっとりしている遊太郎には、
コロコロ表情が変わる彼女が新鮮に感じられる時もあるのだが。



しばらくして佐々木が思いついたように聞いた。
「もし仲直りできたとしても、
2人だけで旅行というと、当然一緒の部屋で一晩過ごすつもりだよね?」
「…そう、ですね」

しばらく沈黙が流れた。
ニブい遊太郎でも、佐々木の言わんとしたことが分かった。

遊太郎が固まっていると、佐々木がポロッとこぼした。
「君は遠慮がちな性格でもさ、彼女の方は期待してると思うけど?」
「期待…」
「まあ、そういうのも調査員としてのキャリアのうちだろうし、
構える必要は全くないと僕は思うね」

佐々木は万事割り切った考え方で地球に滞在しているようだ。
遊太郎は性格的にも彼のようにはなれないと思った。

何故なら、調査員としての対象ではなく、
遊太郎は桃子を心の底から大切に思っていたからだ。

「ともかくご機嫌を治すには、陳腐なやり方だけど花でも贈るとか。
逆に他の女と親しく話してるフリをして、
彼女にヤキモチを妬かせ、君の希少価値を上げるかだな。
最も、そういう駆け引きなんて君にはムリだろうね」

佐々木はコーヒーを飲み干して時計をチェックした。
几帳面にビジネス手帳にメモをしている。
その時、遊太郎の携帯電話が震えた。
すみませんと断って遊太郎が電話に出たとたん雷が落ちた。

「バカ!森田。いつまで油売ってんだ?
打合せに遅れんな!」

高山係長の怒声だった。


~第109回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-10-12 14:58

第107回接近遭遇「休暇命令」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「休暇、ですか?」

ある日。
チューリップ生命本社部長室に呼ばれた遊太郎は、
部長の神崎に突然休暇を言い渡された。

「そうだ。すっかり身体も回復したのだから、
たまには有給を取って遊びに行きなさい。
だいたい君は働きすぎだ」

「でも。この間は個人的な事で怪我をして、
ご迷惑をかけましたし、充分休みましたから…」

遊太郎が断ろうとすると、神崎が違うと首を振った。
外にいる秘書に聞こえないよう、少し声を落とす。

「全く君はカタブツ過ぎるな?
君のために休暇を取れと言ってるわけではない」
「は?」
「桃子君のために休みを取りなさいと言ってるんだ」

遊太郎はまだ意味が分からずキョトンとしている。
相変わらず少しニブいようだ。

「今まで散々心配をかけてるのだから、
ルームシェアをしている同居人には、
サービスをする義務があると思わんかね。森田遊太郎君?」



その同居人、五十嵐桃子は、
昼休みに旅行パンフレットを見比べていた。
秋の行楽シーズンだし、遊太郎とどこかに行きたかったのだ。
でも、どうせ仕事が忙しいからって言うだろうなあ。

「温泉旅行?ふうん、あのイケメン彼氏と行くんだ?」

案の定、同僚の清美がパンフを覗き込んで来た。
「いいなあ。あたしなんかフリーなのに。
合コンで知り合ったヤツがロクな男じゃなくてさ。
桃子の彼氏の友達とか紹介してくれないかな?」
「うーん。それはやめといた方がいいよ」

しかし何を勘違いしたか清美が納得した顔をした。
「そっか。外国人が彼氏って案外タイヘンかもしれないもんねえ」
「はあ?」
「だって、連れ歩くのは目立つし気分いいけど、
習慣とか文化とか違うから、けっこ~苦労すると思うんだ」
「なるほどね」
「なによ、他人事みたいに。
桃子だって付き合ってたら色々あるんでしょ?」

清美は、桃子の彼が外国人風の男だとまだ思い込んでいた。
何故なら、社員旅行中に高山係長に盗撮された、
レンの姿に戻った遊太郎の写真を見たからだ。

桃子は考えた。
遊太郎は外国人ではないが、確かにズレはあるかもしれない。

時々、言葉の意味が間違ってとられていたり、
肉や魚は食べないからレストランでは苦労する。
仕事で必要な時以外、テレビも映画も見ないし、
芸能人や有名人にも関心がないらしく話題にのぼらない。


「でも付き合ってるってことは、彼氏と相性いいってことだよね?」
勝手に妄想する清美が桃子の肘をつついた。

相性というより、考えたら、
自分は遊太郎の個人的な事をほとんど知らないのだ。
血液型は?誕生日は?
そもそも遊太郎の趣味って何だろう?


「よし。旅行中にもうちょっと接近するか」

つい決意表明をしてしまい、清美が眉をしかめるのを、
桃子は慌てて誤魔化し笑いをした。



「旅行?いいですね」

マンションで旅行パンフを見せた桃子は、
遊太郎がニッコリするのを見て驚いた。
てっきり、仕事を理由に断られると覚悟していたからだ。

「え?遊太郎。ホントにいいの?
旅行だし、2人で一晩泊まっちゃうんだよ?」
当たり前な事を説明しているなと自分でも呆れたが、
それくらい良い意味で動揺していた。

「神崎部長から有給を取るように言われたんです。
桃子さんにたまにはサービスしなさいって」
「はあ?」

遊太郎が、別に言わなくてもいい事をバカ正直に話したので、
桃子の気分は一気に喜びから急降下した。

「ふうん、そう。なあんだ。
部長の命令だから、それに従うっていうワケ?
別に、あんたなんかにサービス求めてませんけど?」

ツンとそっぽを向いてビールをがぶ飲みする彼女に、
遊太郎は訳が分からず謝った。

「すみません、桃子さん。
僕、何か怒らせるような事を言いましたか?」
「あら、別に?
あたしさ、清美とエステ旅行するから、気にしないでいいよ。
ついでに、イイ男を捕まえてこよっかな?」

完璧にヘソを曲げた桃子はビールを飲み干して、
さっさとシャワーを浴びに行ってしまった。

「桃子さん?」

何故、彼女が急に怒り出したのか遊太郎には理解不能だった。
地球人の女心は、ころころ変わる秋の空のようだ。


~第108回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-10-08 00:01

第106回接近遭遇「空港でサプライズ」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

あれから数日。
桃子は現実の生活に戻っていた。
遊太郎は急な出張に出向いた事になっていて、
会社では誰も怪しむ者もなかったので、神崎部長がうまく手を回したのだろう。

困ったのは、遊太郎の両親への対応である。
まさか遊太郎が怪我をしています、などとは言えない。
大騒ぎになるだろうし、入院先を聞かれても困る。
そのため遊太郎の事を色々聞こうとする洋子に、
桃子はひと芝居を打つハメになった。

「すみません。叔母さん。
遊太郎、急な出張で2、3日帰って来ないんです。
叔母さん達がカナダに帰る日に間に合うかどうか」

すると洋子は電話の向こうで、がっかりしたようにため息をもらした。

「そう。やっぱり遊太郎、忙しいのねえ。
残念だけど仕方ないわよね。いまは仕事の方が大事だし。
気を遣わせてごめんなさいね。桃子ちゃん」
「ううん。遊太郎の代わりに、
あさっての夜はお見送りに行きますね」

この時、桃子は洋子が普通の状態に戻っていることに気がついた。
ガナック・ギアにマインドコントロールをされて、
遊太郎をニセモノだと疑っていたのに。

最も桃子は、
ガナックが既に洋子の催眠暗示を解いていることを知らなかったので、
それは当然の驚きなのだが…


その2日後。
ついに洋子と春樹がカナダへ帰る日が来た。
会社を早めに終えた桃子は急いで空港ロビーに駆けつけた。
既に搭乗手続きを終えた2人が、誰かと親しく話している

「!」

一緒に居る人物を見て、桃子はもう少しで叫ぶところだった。
そんな桃子に洋子が気づいて手を振った。

「桃子ちゃん。わざわざありがとう。
遊太郎ったらね、見送りたかったから、
出張を早めに切り上げて来てくれたのよ」

とても嬉しそうな洋子がつかんでいる袖は、
遊太郎のものだった。

「桃子さん」

その遊太郎が振り返る。
「僕の方が空港に来るのが早かったですね」

まるで何事もなかったかのように、
まんまるメガネをかけた童顔でにっこりしている。

( 遊太郎!なんで?傷は大丈夫なの?)

ついこの間まで重体だったくせに、平気な顔をして笑っている。
夢なのかと頬をつねりたくなったほどだ。

桃子の驚きをよそに、
搭乗までのわずかな時間を、
彼らは温かい雰囲気で過ごしていた。
父親の春樹が遊太郎の肩をポンと叩く。

「仕事は大変だろうが頑張れ。
きっとお前にとって良い経験になるからな」
「うん、お父さんも身体に気をつけて」

すると洋子が遊太郎の顔にすっと手をやって、
愛おしそうに言った。

「久しぶりに会って、変わったのかしらと思ったけど。
ちょっと大人になったのかもねえ。
遊太郎も身体に気をつけて、桃子ちゃんに迷惑かけないように、
ちゃんとやるのよ?」
「分かってるよ。ありがとう、お母さん」

搭乗アナウンスが別れの時を告げた。
また会いに帰って来るからと、洋子と春樹は笑って手を振った。

夜空を2人の乗った飛行機が飛び立ち、
遊太郎と桃子は空港の屋上で見送った。

「行っちゃったね」

そう言って桃子は視線を遊太郎に移した。
「何よ。帰るなら帰るって先に教えてくれても良いじゃん。
叔母さん達に誤魔化すの、大変だったんだよ?」
思わず口を尖らせる。
半分は会えた嬉しさをテレ隠すためだ。

「すみません。
でも、すぐ戻らなきゃいけなくて」
遊太郎は困ったように頭をかいた。

「え?」
「実はこっそり抜け出して来たので、
バレたら怒られてしまうんです」

これには呆れて、桃子は怒鳴った。
「ダメじゃん!せっかく治りかけた傷口が開いちゃったらどうするのよ?
ホント、あんたって無謀なとこあるよね」

すると遊太郎はまた、すみませんと謝った。
「でも、両親がカナダへ帰ってしまう前に、
遊太郎として、どうしても会っておこうと思ったんです。
それに…」
「それに?」

誰もいない夜の屋上。
遊太郎が桃子のすぐ隣にやって来た。

魔法のように、瞬間レンの姿に戻る。

「桃子さんに、どうしても会いたかったから」
「バカ…」

2人のシルエットは、
少しのあいだだけ、ひとつになった。


~第107回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-10-05 23:04

第105回接近遭遇「愛のテレパシー」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

( …ねえ、遊太郎。あたし、来たよ )

桃子は待たされている部屋で、
このステーションのどこかに居るはずの遊太郎に心の中で話しかけた。

(聞こえてる?
もし聞こえていたら、目を覚まして。
お願い、遊太郎…)
椅子に座り、目を閉じてただ祈るように呼び続けた。
奇跡なんか待たなくていい。
奇跡は自分で起こせばいいんだ。
そう桃子は強く決心をしたのだ。

( 何でこんな所まで来たと思う?
遊太郎が目を開けたとき、
いちばん最初にあたしを見て欲しいからだよ)

だから、強引に連れて来てもらったのだ。

( どこへも行かないで。
ずっと、あたしのそばにいて。
遊太郎が好き。泣きたいくらい好きだよ)


その時。集中医療センターで動きがあった。
銀白色の医療カプセルのサインが点滅したのだ。
「キャプテン・ロータス!」
ドクターの声に、ロータスと天野律子が銀白色の医療カプセルに注目した。

アイガードをかけたまま、レンの唇から吐息がもれ、
髪がわずかに揺れた。

「桃子さんを早く呼んであげたら?」
天野律子がロータスを悪戯っぽく睨んだ。


すぐに呼ばれた桃子は、集中医療センターの内部に戸惑いながらも、
既に上部が開いている医療カプセルへ、恐る恐る近づいた。

「遊太郎…!」

桃子は、周りにいる見知らぬ異星人を気にもとめず、
レンの手を強く握った。
一瞬、冷たい手にドキリとする。
しかも彼の両目部分はアイガードに覆われていて、
肌や唇には血の気が全くない。
しかし、ここで怯んではいられなかった。

「遊太郎。あたしの声、聞こえた?」

祈る心の声は、きっと届いたはずだと思ったのだ。
それを肯定するかのように、
少しかすれた声がレンの口から聞こえた。

「桃子さん…?」

良かった、ちゃんと分かってる。
「そう、桃子だよ。
とんでもなく遠いところまで来ちゃった。
ねえ、どうしてくれるの?」
「それは、…桃子さんらしいですね」

レンは自分でアイガードを外した。
長い睫毛が揺れて、
海のように青さに、灰色が溶けこんだ瞳が桃子を見つめた。

「あたしの顔、見える?」
するとレンは少し笑って答えた。
「はい。…見えます」
「良かった!本当に見えるんだね」

幻覚じゃない、本物のあたしを見てくれてるんだ。
桃子は嬉しくて涙を押さえきれなかった。
そんな彼女の方へ、レンはゆっくりと手を伸ばして、
その涙を指で少し拭うようにした。

「泣かないでください…」
「だめだよ。とまらないもん」

桃子はレンの胸元につい顔をうずめてしまい、
彼が少し痛そうな顔をしたので慌てて我に返った。

「ごめん。怪我してるのに…。
ごめんね。遊太郎」

天野律子が桃子の肩に触れて、おどけたように笑う。
「桃子さん。熱い抱擁はレンが元気になったら、ね?」

桃子は恥ずかしさで耳まで顔を赤くした。
夢中で気がつかなかったが、周りにはたくさんのギャラリーがいたのだ。
気難しい顔をしているドクター達が怖かった。

桃子はレンにまたね、と小さな声でささやくと、
彼はかすかに頷いて、再び目を閉じた。


ロータスと天野律子に促され、
医療機関をあとにした桃子は早速尋ねた。
「あの…。遊太郎は、いつ帰れるようになるんですか?」

性急な質問に、ロータスが苦笑する。
「まだ意識を取り戻したばかりですからね。
寂しいですか。桃子君?」

桃子は顔を朱に染めた。
なんだか自分がワガママな女に思えて来た。
しかし、そんな彼女を楽しそうに天野律子が見て言った。

「本当に愛は強し?よね。桃子さん。
さあ、地球へ帰りましょう」

本当はまだここにいたくて、後ろ姿を引かれる気がしたが、
贅沢を言ってはいけないようだ。

「今日は無理を言って連れて来て頂いて、
ありがとうございました」
桃子はロータスに深く頭を下げた。

「遊太郎のこと、よろしくお願いします」


~第106回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-10-03 23:42