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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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<   2008年 09月 ( 10 )   > この月の画像一覧

第103回接近遭遇「桃子の決断」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

遊太郎は、一晩中マンションに帰って来なかった。
まんじりともできなかった桃子は、朝方少しだけ眠り、
不思議な夢を見た。

ベッドのそばに誰かが立っているのだ。
最初は遊太郎が帰って来たのかと勘違いをして、
寝ぼけた声で抗議をしてみた。

「なによ、遅いじゃない。遊太郎。
スープを作ってくれるんじゃなかったの?
寝ないで待ってたんだよ、あたし」

返事がない。
もう一度観察してみると、
その人は遊太郎の素顔であるレンに似てはいるが、
どうも何かが違う。

(そっくりだけど。
遊太郎は、こんな長い髪をしていないし。
じゃあ、誰…?)

確かに顔立ちがレンに酷似していて、瞳の色が同じ青灰色だ。
ただ違うのは、黙っていたら少し冷たく見える彼とは違って、
優しく柔らかい雰囲気を持っていることだった。

夢うつつに疑問を持っていると、
その人物は美しいが哀しそうな表情で、桃子に語りかけた。

「桃子さん。弟を助けてください。
あの子は、こちらへまだ来てはいけないのです。
だから、お願いです。
レンをあなたの力で呼び戻してください」


桃子ははっとして飛び起きた。
全身に激しい緊張が走り抜ける。
フラフラした足取りで遊太郎の部屋へ行ってみたが、
やはり帰って来た形跡はなかった。

今の夢は何だったのだろう。
数年前に亡くなったらしい遊太郎の姉。
その彼女が何故自分の夢に出て来たのか。


まさか、遊太郎に何かあったんじゃ…?

そこへ、いきなり携帯電話が鳴り響き、
桃子は心臓が止まりそうになった。


…誰?こんな朝早くから。
ディスプレイには神崎部長の名前が映し出しされている。
遊太郎が帰らない今、
それは良いニュースであるはずがなかった。



1時間後。
桃子は黒いBMWの後部座席に乗り込んでいた。
隣に座っている神崎部長が丁寧に桃子に詫びた。

「朝早く、桃子君を呼び出して申し訳ないと思っています」
「神崎部長。前置きはいいです。
どうせ悪いニュースなんでしょう?」

目上に向かって失礼は承知の上で、桃子は早口で尋ねた。
そんなピリピリした彼女を咎めもせずに、
神崎は穏やかに説明を始めた。

「では、比較的良いニュースから。
我々はガナック・ギアを確保しました。
彼の方から銀河連盟へ出頭して来たのです」
「え…、本当ですか?」

一瞬だけ桃子の表情が和らいだ。
異常なほど遊太郎を恨むガナック・ギア。
その男がようやく捕まえられたのだ。

しかし、カンが鋭い桃子は再び身を固くした。
「…でも、遊太郎に何かあったんでしょ?
隠さないで教えてください!神崎部長」

痛いほどの視線を受け止めながらも、
神崎は落ち着いて答えた。
「森田遊太郎君、つまりレンは医療機関で治療中です」


…やっぱり。
桃子は大きく息を吸い込んだ。
「ケガを、したんですか…?」
「アクシデントがあったようです。
脇腹を負傷していて、出血がひどく危険な状態でした。
ガナックが連絡をしてくれたのです」
「え……」

喉が急激に渇くのを感じていた。
「でも、大丈夫なんですよね?遊太郎。」
声が上擦って震える。
すると神崎は淡々と状況を説明した。

「少し難しい話になるのですが…。
レンの頭の中には、ガナック・ギアによって、
幻覚を誘発し彼の能力を抑制する微細なチップが、
右目から挿入されていた。
このチップを除去する事に成功したのですが、
脳に与えた影響が図り知れず、
意識はまだ回復していません」
「………」


目の前が暗くなるようだった。
あまりのことに桃子の目からポロポロと涙が溢れ出した。
しばらく彼女はうつむいて、
膝の上に置いた手の甲に涙を落とし続けていた。


何故、遊太郎ばっかり危険な目に遭わなきゃいけないの?
ガナックなんか、ガナックなんか絶対に許さない。


「桃子君。大丈夫ですか?」
神崎が優しく語りかけた。
「…大丈夫じゃありません」
「……」

さすがに戸惑いの表情を見せた神崎に、
桃子は泣いて見栄も外聞もない顔を向けた。

「あたし、もう待ってるのはイヤです」
「…と、いうと?」
「遊太郎が居る場所へ連れて行ってください」


~第104回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-09-27 18:09

第102回接近遭遇「生と死と再生と」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

先日レンが出会った典然和尚の言葉が、
レンの胸の内側から響いて来た。


(心眼を開くには、
こころを空っぽにすることだ)

こころを空っぽにする?
それは自我を手放せということなのか。

夜明けまで時間があまり残されてはいない。
両親が目覚めてドアロックを外せばアウトだ。
そうは言っても、
焦ったところで事態は好転しないだろう。

典然和尚の言葉を信じて、全身の力を抜いてみた。
そして自分の中から意識を一旦切り離し、
カプセル爆弾そのものへと同化させたのである。

その作業と並行して、
能力抑制チップによる激痛が頭の中を走り抜ける。
本当にこのままでは脳神経が焼き切れてしまうかもしれない。
しかし、いまはそれでも良いとさえ思った。

同化したカプセル爆弾と共に、
暗い鍵穴から光の見える外へ向かって、
己自身をゆっくりと解放させた。


「!」

…何が起こったのだろう。
意識を集中しているレンの傍らで、
ガナック・ギアは不思議な光景を目撃していた。
1ミリにも満たない小さな物体が、
まるで意志を持ったかのように、
ドアの鍵穴からスッと出てきたのだ。

小さな物体。
つまりカプセル爆弾は外に数センチほど飛び出し、
そのまま大人しく滞空していた。
それをレンが優しく掌で受け止める。


「…朝までには、なんとか、間に合いましたね」

レンはホッとしたようにそう言って、
カプセル爆弾をガナックに渡した。

「凄い。こんな事が出来るなんて…」

ガナックは驚きを隠せない表情で、
慎重に専用ケースの中にカプセル爆弾を入れた。
もう二度と使うことはないだろう。


「レン王子。申し訳ありませんでした…」
ガナックの眼鏡の奥の瞳が潤んでいた。

「私はあなたのいまの両親を殺し、
あなたを、もっともっと苦しめるつもりでした。しかし…」
自分のやろうとした事に畏れを抱き肩が震えていた。

「私の個人的な恨みの為に、
何も知らない多くの地球人の命をも、
一瞬で奪うところだった。
なんという恐ろしい事を、私は…!」

「ガナック…あなただけのせいじゃない」

レンが少しかすれた声で、
いたわるようにガナックに言った。

「…僕があなたを、そこまで追い詰めた…。
謝るのは僕の方です…」
「いいえ、そんな…!」

ガナックはうなだれながら首を振るが、レンは続けた。
息が段々と浅く、途切れがちになっていた。

「…それに。この、爆弾を取り除くことに、
あなたは…協力をしてくれた」
「………」
「だから…、もうそんなに…。
自分を…責めないでください…」
「レン王子…」

たまらなくなり、ガナックは、
床に擦り付けるように深く頭を垂れた。

一体、今まで自分は何をして来たのだろう。
恋人ソフィが死んで数年間、
苦しかったのは自分だけではなかった事を、
何故もっと早くに思い知ろうとしなかったのか。


ようやく顔をあげた時、
ガナックは、レンがドアに身をあずけたまま、
眠るように瞼を閉じているのに気づいた。
見れば、彼の白いワイシャツの右半分から下が、
おびただしい量の鮮血に染まっている。

先刻、銃で自殺をしようとしたガナックを、
体当たりでレンが止めた時、脇腹に負ってしまった傷から滲み出していたのだ。


「レン王子。しっかりしてください!」

ガナックは血相を変えて彼の肩を揺さぶった。
しかし、揺れる髪の下で白く端正な横顔は静かだった。
まるで力を全て出し切って、
安堵したような表情さえ感じられた。

その顔がガナックの愛した美しいソフィと重なり、
彼の瞳から、熱い涙が滴り落ちた。


「あなたに何かあったら…。
ソフィの魂になんて言い訳をすればいいんですか?
あなたが逝っても彼女は喜びません。
あなたは彼女のかけがえのない大切な弟です。
私にとっても大切な……!
レン王子、戻って来てください!」


…逝ってはだめだ。
あなたには待っている人がいるでしょう?
だから、こんなに早く逝ってはいけない…!


ガナックは心の底からレンに呼びかけた。
そして、このフロア全体に張っていたシールドを解いた。



~第103回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-09-23 17:50

第101回接近遭遇「カプセル爆弾を解除せよ!」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

レンは脇腹を負傷しながらも、
爆弾を仕掛けたというガナックギア・と共に、
両親である洋子と春樹が宿泊する部屋の前へ瞬間移動した。

「ドアの鍵穴の中に、カプセル爆弾を挿入したのですが…」
ガナックはドアを見つめながら力なく首を振った。
「申し訳ありません。レン王子。
実は、私は解除できる方法を知らないのです…」

しかしレンはガナックを責める事はしなかった。
「爆弾の解除は僕がなんとかやってみます。
あなたに頼みたいのは、このフロアに誰も近づかないよう、
シールドを張ってもらいたいんです」
「ああ、それなら、もうやっています。
しかし部屋の中にいる、あなたのご両親が起きて来て、
ドアロックを内側から外したとき…」

言いかけて自分の成そうとした事に、
改めて恐ろしさを感じ、ガナックは身を震わせた。

そんな彼にレンは冷静に指示を出した。
「大丈夫。今から、あなたしか出来ない事をしてもらいます」
「私にしか出来ない…?」


程なくして、ガナックは部屋の内部へ瞬間移動していた。
真夜中であり洋子と春樹はベッドの中で眠っている。
レンに言われた通り、
特殊能力を発揮して、2人の頭の中へ催眠暗示をかけた。
そしてドアの外側にいる彼にテレパシーで報告する。


( レン王子。うまくいきました。
2人とも、朝まで熟睡するはずです )
( ありがとう。これで時間を稼ぐ事ができます )


礼を言われてガナックはふっと苦笑した。
彼にはかなわない…、そう思ったのだ。

彼は洋子が寝ているベッドにそっと近づいた。
洋子の頭の中にある疑い、
つまり遊太郎がニセモノだという刷り込みを消し去ったのだ。
それが、せめてもの償いになればいい…


部屋から移動したガナックははっとした。
レンがドアを背にして、うずくまっていたからだ。

「…大丈夫ですか?レン王子!」

その声に、レンはゆっくり顔をあげてガナックを仰ぎ見た。
透き通るように真っ白な顔だ。
ワイシャツを染めている鮮血が止まらない。

「…ちょっと脚に来て、立っていられなくなっただけです。
でも大丈夫。爆弾の周りは透視できました」

「私が、あなたに能力抑制チップを植え込んだせいで、
サイキック能力が、自由に発揮できないのですね…」
ガナックには脳内に植え込んだチップを、
取り出せる能力はなかった。

「気にしないで。僕は悪運だけは強いから」
そう言ってレンは、ドアの鍵穴に仕掛けられたカプセル爆弾を、
動かせないか慎重に観察していた。

「…っ!」

しかし能力抑制チップが邪魔をしているのか、
頭の中を激痛が走り抜ける。
それでも彼は根気強く続けた。

たまらず、ガナックはレンを止めようと膝を折った。
そして頭を下げる。
「そんなことを続けたら、脳神経が焼き切れます!
お願いです。止めてください」
「静かに。もう少しで…動き出す」
レンは全く止める気はなさそうだ。

ひとつ間違えば、
このホテルは一瞬で消失するだろう。



( 心眼を開け )

その時。
レンは、山寺で出会った典然和尚の言葉を思い出していた。


~第102回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-09-20 21:46

第100回接近遭遇「対決!レン×ガナック・ギア」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ようこそ。レン王子」


ガナック・ギアは、
滞在中のホテルの部屋の豪華なソファでレンを迎えた。
レンはそのガナックから少し距離を置いて立ち、
真意を探るように問いかけた。

「ガナック。あなたが望んでいることを教えてください」
「決まっているでしょう。
あなたに大切な恋人を殺された恨みを晴らす事ですよ」
「それなら、僕を殺せば済むはずです」

するとガナックは脚を組み替えて、おかしそうに笑った。
「ご冗談を。あなたをあっさり殺してしまったら、
愛するソフィの元へ逝かせてしまうことになる。
そんな楽なことはさせません」


言い終わると、ガナックが立ち上がり、
懐から細長い銃を取り出した。
やや曲線を帯びた金属製の小型光線銃である。

「古典的なやり方ですが、
あなたの目の前で私が自殺をすれば、
復讐の仕上げとしては効果的だと思いませんか?」

「ガナック!」

レンは驚いて、すぐにサイキックパワーを右手から放射した。
しかし、どういうわけか全く手応えがなく空回る。

「無駄ですよ。レン王子。
あなたにはサイキック能力が制限されているはずだ。
私があなたの右目を失明させた時に、
能力抑制チップを飛ばしていたんです」
「……!」

能力抑制チップ。
あの時レンの右目を貫通した赤い光は、
彼から視力を奪い、姉の幻覚を見せるだけのものではなかったのだ。

ガナックは余裕を見せて、
自分のこめかみに銃を押し当てた。

「レン王子。いいですか?
あなたは自分の母親や姉だけではなく、
私までも死に追いやることになる。
精々、一生苦しんでください」
「やめてください、ガナック!」
「すぐに終わりますよ」
「!」


瞬時のことだった。
電光のような速さで、レンの身体がガナックに体当たりをした。
銃から無音の光線が乱射し、部屋のカーテンを斜めに裂いて、
二人は折り重なるように床へ倒れた。


「馬鹿なことを…」

レンに押さえつけられたガナックは、
肩や腕を打撲し、光線銃を手から放した。

転がった銃を回収しようとしたレンは、
自分のワイシャツの脇腹の辺りが、
真っ赤に染まっているのに気がついた。
ガナックがはっと眉を潜めたが、レンはかまわなかった。

「さっきの銃で、かすっただけですよ。…それよりも」

彼はガナックの身体をぐいと起こして、
強い光を宿した瞳で真っ直ぐに見つめた。

「あなたが信じてくれなくてもかまわない。
でも僕は姉を慕っていた。
あなたに負けないくらい好きでした。
彼女が幸福になることを、ずっと願っていたんです。
なのに、あの事故が起こって…」


引き裂かれた願い。
それは結婚を誓っていた姉の恋人ガナックを、
姉の幸せを思う弟のレンを、同じ地獄に突き落としたのだ。

「できるなら、あの頃に戻りたい。
あなたと姉が幸せになっている姿を見たかった。
でも全てを壊したのは僕だ。
あなたをこんな風に追い詰めたのも…」
ガナックは、もう精魂を尽き果てたようにうなだれている。

「ガナック。一生許してくれなくてもいい。でも…。
あなたには絶対死んで欲しくないんです」


初めて伝わる胸の内。
レンがガナックのこころの真ん中に入った瞬間だった。
しかし、それを感じたガナックは首を頼りなく振る。

「…もう、遅いんです」

そして信じられない事をもらした。
「ホテルに爆弾を仕掛けてしまいました」
「え……?」

何を言っているのか、すぐには理解できなかった。
レンは彼の肩を強くつかんだ。

「爆弾?ホテルの一体どこに?」
「…あなたのご両親が宿泊している部屋のドアに、です」
「ドア…?」
「内側から開けると、いつでも爆発するようになっているんです」
「……なぜ」


その時。
世界が一瞬歪んだように見えた。
レンの脇腹から、にじみ出した鮮血が流れ過ぎていたのだ。


~第101回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-09-19 00:05

第99回接近遭遇「つながり」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

復讐に燃えるガナック・ギアにより、
今度は遊太郎の母親がマインドコントロールされてしまった。
現在の遊太郎が別人であると、洋子に思わせたのだ。


その夜遅く、マンションへ父親の春樹が遊太郎を尋ねて来た。

「さっきはすまなかったね。遊太郎」
少し憔悴したようにリビングに座り込む。
遊太郎はテーブルを挟んで向かいに座り、
桃子は遠慮がちにキッチンに立った。

「それで、お母さんは大丈夫?」
遊太郎は春樹を労るように聞いた。
春樹はああ、と頷いて眉間を指で揉んだ。

「ちょっと落ち着いたので寝かせて来たが。
洋子は、混乱していて自分でもよく分からないそうだ。
いまの遊太郎はニセモノだと、頭の中で声がするらしい。
元々神経質なところがあるから、ノイローゼだと思うんだが…」


「お父さんは…」
と、遊太郎はゆっくりと質問した。
「お父さんは、どう思う?
ひょっとしたら僕が遊太郎じゃないかもしれないって、
考えたことはある?」

桃子はギョッとした。
遊太郎が直球で聞いたからだ。
しかし、彼は真面目な顔で父親の春樹の意見を受け止めようとしている。

「…遊太郎」
しばらく真剣に息子の顔を見ていた春樹は、
慎重に言葉を選びながら答えた。

「お前は確かに、変わった。
カナダで一緒に暮らしていた頃とは違うところも多い。
だから久しぶりに会って、
私達も正直戸惑っていたのは本当だ」

やっぱり、と桃子は身が縮む思いだった。
親子だからこそ、
他人には分からない微妙な違和感を感じやすいだろう。


春樹はいったん立ち上がり、遊太郎の隣に座り直した。
「だからと言って誤解しないでくれ。遊太郎。
お前は私の息子に違いはない。
お母さんだってそう思ってる。
ただ、離れて暮らしているうちに、
心の中で隔たりを感じてしまっただけなんだと思うんだ」

遊太郎はしばらく黙っていたが、
意を決したように口を開いた。

「そうだね。お父さん達の気持ち、分かるよ。
確かに変わったかもしれないって自分でも思う。
日本に来て、たくさんのことがあったせいもあるけど。
でも、どう見えていようと僕は…」

真摯な瞳が真っ直ぐに春樹に向けられている。

「僕は、僕なんだよ。
それに、お父さんやお母さんを、
大切に思っていることだけは変わらない。
それだけは信じてほしいんだ」
「遊太郎…」

春樹の手が遊太郎のそれへ伸び、しっかりと握りあった。


遊太郎は本物の遊太郎のコピーでしかないかもしれない。
しかし、それが何だというのだろう。
桃子は、涙ぐんでしまった。

( 遊太郎は、本当に遊太郎であろうとしてる。
雪山に遭難してしまった遊太郎の代わりに、
彼の人生を受け継いで両親を愛そうとしてるんだね)


夜も更けて、春樹がホテルに戻った頃。
遊太郎は、出かける支度をし始めた。

「やっぱり、ガナックに会いに行くんだ」

諦めたように声をかける桃子へ、遊太郎が頷いた。

「ガナック・ギアは、
ついに地球人を巻き込んでしまいました。
被害を与えています。
調査員として、僕は放置できません」

もう個人的な問題ではなくなったという事か。

「ねえ…」
「はい?」
「あたしもついて行っていい?」
「それは、駄目です」

断られるのを覚悟して言ってみただけだ。
ふいに、遊太郎の胸に柔らかいものがぶつかった。

「桃子さん…」
「ちゃんと帰って来て」

桃子はきゅうっと遊太郎の背中を抱きしめて、
意を決したように離れた。
強気なフリをして、遊太郎をしっかりと見つめる。

「絶対命令よ。ちゃんと帰って、
あたしに世界一美味しいスープを作ること!」

遊太郎は微笑した。
実際に桃子の顔は見えていなくても、感じることはできる。
彼女はきっと怒ったような泣きたいような顔をしているのだと。

「わかりました。
桃子さんのために、特製のスープを作ります」

にっこり笑って、
遊太郎の姿が空間からかき消えた。
桃子はその残像に向かって怒鳴った。

「遊太郎のバカっ」

もう自分に出来ることは、
彼を信じて待つしかないんだ。
桃子はもう一度唇を強く結んで、
泣きたい気持ちを我慢した。


~第100回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-09-15 23:33

第98回接近遭遇「遊太郎の正体、バレる?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

その翌日。
遊太郎が桃子と一緒にホテルに着いたのは、
夜7時を回った頃だった。
遊太郎の両親と、レストランで食事をする事になったのだ。

少し体力が戻って来たレンは、遊太郎の姿にはなれたが、
依然として右の目は見えていなかった。
そんな彼に桃子がこっそりささやく。

「ねえ、遊太郎。ホントは、あのガナックってヤツに、
あたしに内緒で会うつもりだったんでしょ?」
「それは…」
遊太郎は答えに詰まった。
最近、本当に彼女のカンは鋭い。

「もう半年一緒にいるんだもん。
考えてることくらいピンと来るよ。
でも叔母さん達だってカナダに帰っちゃうんだから、
優先的に会った方がいいと思ったんだ」

それに、と桃子は心の中で付け足した。

( 遊太郎を陥れようとしてるガナックなんかと、
もう絶対会って欲しくない。
これ以上、遊太郎に何かされたら、あたし… )

その真意を察したのか、遊太郎が桃子の肩にそっと触れた。
ふと見上げると、メガネ越しに遊太郎の優しい瞳が、
大丈夫だよと言っているようだった。

安心した桃子は、遊太郎の腕に自分の腕をからませた。
2日間の失踪のあと、なんだか遊太郎は少し変わった気がする。
肝が据わったような、そんな感じがして頼もしい。


「あ、洋子叔母さん達だよ」

ホテルの広いロビーで、洋子と春樹が居た。
声をかけようとした桃子は、二人が何か揉めているのを知り、
遊太郎をチラッと見た。
しかし遊太郎は構わず二人に近づいてゆく。

「お父さん、お母さん、どうしたの?
何かあった?」

その声に、ビクッと身を震わせたのは洋子の方だった。
まるで知らない誰かを見るように遊太郎を捉え、
すぐに春樹の腕を引っ張った。

「今すぐ警察に通報して捜してもらうのよ。
私達の本当の遊太郎がどこにいるのか…」

「!」

遊太郎も桃子も、硬直したように動けなかった。
洋子の口走った言葉は、
足場を一瞬にして打ち砕く、刃物のような力があったのだ。


「お母さん?」
それでも、なんとか遊太郎が洋子に近寄ると、
彼女は憎々しいように振り払った。

「お母さん?あなたなんか知らないわ。
馴れ馴れしく呼ばないでちょうだい!」

「洋子、落ち着きなさい」
春樹が穏やかに洋子を制し、遊太郎に向き直る。

「すまないね、遊太郎。
お母さんは昨夜から少し変なんだ。
部屋でしばらく落ち着かせようと思うから、
レストランの予約はキャンセルできるかな?」
「それは大丈夫だよ。でも、お母さんは…」
「うん。まあ一時的なノイローゼかもしれない。
あとで連絡するから、心配しないで帰りなさい。
桃子ちゃんも、悪かったね」

春樹はそう言って、洋子を庇うように歩かせて立ち去った。
その時、洋子がもう一度遊太郎を不審げに盗み見て、
こうつぶやいた。

「遊太郎のニセモノ…!」


空気が凍りつく。
洋子は、いまの遊太郎が別人である事を、
何故か知ってしまったようだ。

「…遊太郎、まさかバレた?」
桃子がきゅっと遊太郎の袖を握りしめた。

「ガナックだ…」
ようやく遊太郎は、ある男の名前を口にした。
ガナック・ギアしか考えられなかった。
洋子の心理をコントロールすることなど、あの男なら造作もないだろう。



「おや。お二人揃って奇遇ですね?」

まるで図ったかのように、
ロビーの奥から目立たない男が歩いて来た。
細めの眼鏡をかけ、地味なビジネスマンを装い、
遊太郎達にゆっくり近づき会釈する。

「ガナック、母に何かをしたんですね?」
遊太郎は抑えた声音で尋ねた。
すると、ガナックは落ち着き払って襟を正した。

「人聞きが悪いですね。レン王子。
本当の事を教えてあげただけですよ。
あなたの息子はすり替わっていて、
いまの息子は別人だと、ね。
本物の森田遊太郎が既に雪山で遭難している、
とまでは明かしてませんが…」

これを聞くなり、桃子が怒鳴りつけた。
「何よ、それ。卑怯じゃない!最低だわ」

「卑怯?別人になりすまして親子ゴッコをしている方が、
よほど罪深くはありませんか?」


ガナック・ギアは、薄い口の端を曲げた。


~第99回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-09-14 14:52

第97回接近遭遇「ガナック・ギアの新たな罠?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★

遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

月の裏側にある銀河連盟ステーションで、
上司ロータスは、レンの帰還報告を受けていた。

「レン、君は少し放浪癖があるようだな?」
「すみません。ご心配をおかけしました」

2日間無断で職務放棄をしてしまったレンを、
ロータスは責めるというよりは経緯を聞き出すように、
デスクからじっと凝視していた。

「それで。ガナック・ギアにやられたのは、やはり目なのか?」
「…はい」
「まさか失明などしていないだろうな?」

この質問にレンは眉をやや曇らせた。
「…何?本当に見えていないのか?」
ロータスの表情が険しく変わる。
「…いえ。左目は大丈夫です」

何が大丈夫なのか、とロータスは呆れたように首を振った。
全くこの部下は、何故これほど己自身の危機には無頓着なのだろう。

「ちょっと待ちたまえ。レン。
失明した上に幻覚症状まであるのだろう?」
「そうです」
「このままでは脳神経がやられる。
集中治療カプセルに入りなさい。
事によっては緊急手術だ。
ガナックに何かをインプラントされている可能性がある」


インプラント。
つまり肉眼では見えない有害なチップを、
脳の中に植え込まれたかもしれないというのだ。

「いえ、そうとは思えません。
それに僕はこれから、ガナック・ギアと会うつもりです」
「ガナックと?無茶なことを」

しかし、レンは止めても聞かない人間だと、
ロータスは心の内で分かってはいた。
「ガナック・ギアは、銀河連盟パトロールに監視させている。
滞在中のホテルから動いてはいないようだ。
すぐに捕まえる事はできるが?」
「いえ、僕は話したいだけです」
「話?」


ロータスは、レンに何かを感じたように、
全く違う質問をした。

「…そういえば、まだ聞いていなかったが、
この2日どこへ行っていた?」

聞かれて、彼は考えながら答えた。
「気がついたら、かなり山深い寺にいて…
ある和尚に会いました。
そこで、とても大事なことを教えられたんです」
「和尚?」

一瞬、ロータスの表情が純粋な驚きに変わった。
「もしかしたら、それは典然和尚か?」

今度はレンが驚いた。
何故知っているのだろう。
「はい。キャプテン・ロータス。
どうして、典然和尚のことを…?」

するとロータスは、ただ苦笑いをするだけで、
そうかと言ったきり、その疑問には答える気はなさそうだった。

レンは、典然和尚が別れ際にもらした話を思い出した。
ひょっとして、和尚が昔会ったことのある、
空からの来訪者というのは…


「とにかく。油断だけはするな。
相手は違法侵入したエイリアンではないが、
人の精神を幻覚で操れるタチの悪い男だからな」
「承知しました」
レンはそう答えてステーションを後にした。



その頃。
ガナック・ギアはホテルのロビーで、
ある夫妻を眺めていた。
それは遊太郎の両親であった。

彼らは何も知らずにコーヒーを飲み、話していた。
「遊太郎。仕事がそんなに忙しいのかしら?
もうすぐカナダに帰らなきゃいけないのに。
もっと一緒にいたかったわ」
洋子が愚痴を言い、春樹がなだめた。
「照れくさいのかもしれない。息子というものはそんなものだ」


そんな二人に、
ガナックは突き刺すような視線を投げた。


~第98回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-09-11 21:58

第96回接近遭遇「月夜のバルコニー」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

●森田遊太郎(23)
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

●五十嵐桃子(26)
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが。
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

その夜。
桃子はマンションのバルコニーに出て、ぼんやりと月を眺めていた。
眠れなかったのだ。

遊太郎が突然失踪して2日目。
会社の課長には、遊太郎は目の具合が悪いと誤魔化しておいたが、
もう帰って来ないかもしれない。

バルコニーから見る真夜中の住宅街は、
寝静まって静かだった。
そういえば2人で同居し始めて半年。
こんなに1人ぼっちが寂しく感じるとは、
本当に自分でも意外だった。
となりの部屋に遊太郎が住んでいて、
もう当たり前になっていたからだ。


もう部屋に戻って寝なきゃ。
パジャマの上に羽織ったカーディガンを引き寄せた時、
バルコニーにふわっと渦を巻いたような風が吹き抜けた。


何もない空間から現れた見覚えのある青年は、
プラチナの髪に青灰色の瞳をしたレンだった。

「遊太郎…!」

桃子は叫んで飛びつこうとしたが、
ハッとして思い留まった。
何故なら彼にはまだ幻覚作用が働いていて、
自分が別人に見えているかもしれないからだ。

「……ふうん。帰ったんだ」

素っ気なく言って背中を向け、桃子は月を眺めるフリをする。
するとレンが近づいて桃子の背後に立ち、
ふんわりと後ろから彼女を抱きしめた

「すみません、桃子さん。
…僕は、あなたに酷いことをした」
低いトーンで、心から後悔している声だった。

「何言ってんの。あやまんないでよ…」

桃子は泣きそうになるのを我慢した。
「あたしこそ何にも知らなくて…
いまは、あたしの顔なんか見ない方がいいんじゃない?」

…遊太郎には、
あたしが死んだお姉さんに見えてるんでしょ…?
そう口にしようとし時。

「桃子さん、こっちを向いてください」
レンが桃子を自分の方へゆっくり向かせた。
そして彼女の顔を優しく両手で挟み込んだ。


「桃子さんの顔…」

レンは目を閉じて桃子の顔に触れた。
彼の長い指が、彼女の二重の瞼や勝ち気な眉、
ツンとした鼻、いつも文句を言い出す唇をなぞってゆく。

「遊太郎…」
桃子は声を詰まらせた。
彼は彼女の顔一つ一つを、まるで確かめるように触れている。

「これで大丈夫。何が見えていても
僕の中で、桃子さんを感じていることができる」
「感じて…?」

その時、涙の一粒が桃子の目から落ちて、
レンの指に伝って流れた。
彼は少し驚いて目を開けた。

「桃子さん…?」
「ごめん。なんか、遊太郎がめちゃくちゃ可哀相になっただけ」
「僕は可哀相ではありません。
あなたがいるから…」

真っ直ぐに桃子を捉える瞳があった。
おそらくはまだ、死なせてしまった姉の幻影しか映らない、
海のような青と灰色が溶け込んだ不可思議な瞳。

レンは桃子の額に、優しいキスをして、
彼女からゆっくり身体を離した。

「2日間も無断で職務放棄をしたので、
今から上司に叱られに行ってきます。
でも、ちゃんとまた戻りますから。
おやすみなさい。桃子さん」
「遊太郎…!」

またどこからともなく風が吹いて、
レンの姿が空間に消えた。
桃子は、もうっと唇を尖らせたが、すぐに笑顔になった。


帰って来てくれた。
何があったのかは知らないけど、
彼は自分のもとに帰って来たのだ。
もうそれだけで嬉しくて、何もいらなかった。


~第97回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-09-08 22:42

第95回接近遭遇「こころの真ん中を開け!」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

●森田遊太郎(23)
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

●五十嵐桃子(26)
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「さて、今度は儂から問おう。
お前さんは、この庭をどう見る?」

今度は、
典然和尚から質問されたので、レンは荒れ放題の寺の庭を眺めた。
彼の知っている日本の庭は、
手入れが行き届いた芸術的なものが多いのだが。

「自然のまま、ですね」
率直な感想を言うしかなかった。
典然はそうだろうと豪快に笑う。

「この寺の庭はな、年中荒れ放題にしてあるのだ。
しかし、こうすることで逆にいのちを感じんか?」
「いのち、ですか?」
「うむ。野生のままの姿で逆らうこともなく、
好きなように、いのちを燃やしておるだろう。
人の心も同じだ。ありのままが一番良いぞ」

典然和尚はニヤリとして徳利の冷酒を飲んだ。
庭からは虫の声だけが涼やかに聞こえて来る。


「ありのまま。…過去に罪を犯した人間でもですか」

心の奥底から出たレンの問いに、典然がゆっくり頷く。

「ありのままとは、己自身を空っぽにする事だ。
罪を犯した自分をまるごと受け入れてな」
「…受け入れる」

「そうだ。むやみに抵抗するから過去に囚われる。
受け入れることにより、やがて過去は昇華されよう」

まるでレンの心を見透かしたかのような典然和尚の語りに、
彼は閃くものを覚えた。


…過去にいまだ囚われているのは、
自分の制御不能な力によって、
母親や姉を死なせた事に抵抗し、
その現実をまだ認めていないからなのだろうか…


その時。
右目の奥に激痛が走り、レンは思わず片手で押さえた。
息を殺して耐えていると、典然和尚が呆れたように言った。

「まったく、見栄を張って無理するな。馬鹿者」
やはり口が悪い。

痛みが少しマシになったのを待って、
レンはずっと考えていたことを口にした。

「幻覚を克服するにはどうすればいいか。
…僕は、答えを探しているんです」
「幻覚だと?」

典然は怪訝な顔で、視線を庭から隣にいる青年に移した。
そして右目から乱暴にレンの手を外させ、
鋭い目つきで睨みつける。

「む?右目だけ見えておらんのか」
医者でもないのに分かるらしい。

「瞳孔の収縮が尋常ではないな。
わけは聞かんし興味もないが、
相当な邪念に取り込まれおったな?
呆れるほど面倒な奴だ」

さっきから言いたい放題の和尚は、
ふむと何事か考えて言葉をつなげた。

「幻も同じだぞ。抵抗せず受け入れて、心眼を開いてみろ。

良いか?こころの真ん中を開くのだぞ。
そうやって、何事も本質を観るようにすれば、
邪念による幻覚など、次第に力を無くすものよ」
「……こころの真ん中を開く」


不思議だった。
素直にずんと響くものがあった。
レンは、ふらりと立ち上がる。

…帰ろう。
自分には、誰よりも大切な人が待っているのだから。


「行くのか?」

典然和尚は徳利の酒を空にして、長身の異邦人を見上げた。

「はい。和尚のおかげで、何かをつかみかけた気がします」
「儂はただ、月見酒を飲んどっただけだがな」
赤い顔をしてすっとぼけ、
やがて思い出したように付け加えた。

「そういえば昔、光る鳥船に乗って、
お前さんみたいな奴が迷い込んだ事があった」
「それは…」

以前も、この山寺に異星人の来訪があったというのだろうか。
しかし、和尚はそれ以上は話す気がないようだった。


「おい。もう二度と来るなよ?」
「いえ、また来ます」
「うちは駆け込み寺ではないぞ。馬鹿者」

徳利を下げて立ち上がり、
淡々と向こうへ行く典然の背中に向かって、
レンは深く頭を下げた。


「ありがとうございました」


次の瞬間。
荒れた庭に一陣の風が吹き抜けた。
「……」
振り返った典然和尚のうしろには、もうあの青年の姿はなかった。

驚くでもなく、また鼻で笑い、
典然和尚は縁側から冴え渡る月を、目を細めて眺めていた。


~第96回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-09-05 23:32

第94回接近遭遇「レン×典然和尚」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

●森田遊太郎(23)
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

●五十嵐桃子(26)
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
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「儂は典然という。この荒れ寺の和尚だ。
お客人、気分は最悪だろうが儂も最悪だ」

山寺の離れの座敷。
ぶっきらぼうに説明している典然和尚の前には、
レンが寝かせられていた。

彼はゆるり、と切れ長の瞳を和尚の方へ流した。
深く青い海に、灰色を溶け込ませたような瞳である。
普通の人間なら少し驚くはずなのだが、
この和尚は気にも留めていない。

「今朝、儂が気持ち良く散歩しておったのに、
それを、お前さんが邪魔してくれた」


…何がどうなっているのだろうか。

和尚の言っている言葉はわかるが、
意識がまだ混濁しているレンは、苦しそうに瞼を閉じた。

度重なる幻覚症状と激痛で、脳神経を痛めつけられ、
まだ何も考えられなかったのだ。
再び彼は悪夢に引きずり込まれていった。



「お前の顔は、もう見たくない」

夢の中で、
実の父親にそう言われた過去の記憶が再生される。
15才にしてレンは、
生まれた星も王子の座も何もかも捨ててしまった。

事故とはいえ母親と姉を殺した十字架を背負って…

その数年後。
地球で姉の恋人だったというガナック・ギアと再会し、
復讐の刃を向けられ、桃子をも巻き込んでしまった。


大切に思う地球人の女性、桃子の顔が、
死んだ姉ソフィとなって無表情に訴えかける。

( 愛しい弟レン。何故私を殺したの?
ガナックと幸せになるはずだったのに。
お母様や私を殺しておいて、
あなたは、何故まだ生きているの?)

(……姉さん)



レンがもう一度目を覚ました時は、既に真夜中になっていた。

身体を横にして、両腕を顔の前でからめ、
しばらく部屋の天井や畳など、辺りを眺めた。

障子から漏れる月の光が優しい。
どうにか身を起こして障子を開け、縁側に出てみた。
荒れ放題の庭の向こうに山々のシルエットが見える。
蒼い夜空に月光が冴えた光を放射していた。



「くたばったのかと思ったが、
まだ生きとったのか?」

いつの間にか典然和尚が現れ、
いかつい顔でレンの隣にどかりと腰を下ろした。
作務衣を着てくつろいだ調子で徳利を振っている。

「月見酒をするつもりでな。つきあえ」
「いえ、僕は飲めなくて…」

すると典然和尚は細い目を少し開いた。
「ふん。良い声が出るではないか。
まあ、儂ほどではないがな」

そう言われてレンは頭を下げた。
「…助けて頂いて、ありがとうございました」
「何を勘違いしておる。
あんな所で寝ておられては迷惑だからだ」

憎まれ口をたたき、徳利の酒を一口旨そうに飲む。

「しかし若いのに飲めんとは、つまらん男だな」
「すみません」
「謝らんでいい。酒がまずくなる」

かなり口が悪い和尚だが、
それは他人に気を遣わせない為の優しさかもしれない。

「…何も聞かないんですね」
不思議に思ったレンはふっとそう言った。
「何をだ?」
不機嫌そうに聞き返される。

「…普通の人なら、こんな僕の姿を見て驚くと思います」

確かに淡い銀色の髪、変わった瞳の色を見たら、
誰でも畏怖を覚えるだろう。

「目が二つ、鼻が一つに口もある。
長ったらしい脚が気にくわんが。
べつだん、変わったところなどないぞ?」

くだらんことを聞くなと怒り出す。
和尚は他人の外見など関心がなさそうだった。


~第95回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-09-02 22:50