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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
ICELANDia
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<   2008年 02月 ( 12 )   > この月の画像一覧

第12回接近遭遇「深夜の脱出デート」

~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~

社員旅行の宴会で強い酒を飲んで、本当の姿に戻ってしまった遊太郎。
布団部屋に隠れていた彼を見つけた桃子は・・・?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

桃子は一瞬、息を呑んだ。

こちらに寝返りを打った遊太郎はどう見ても別人だった。

彫刻じみた白い顔に、プラチナの髪が乱れかかり、
そのすき間からのぞく青灰色の瞳が桃子の方へゆるり、と流れた。

怖いというより異次元に触れたような感覚がある。

そんな彼女の想いを察したのだろうか。
彼は桃子から視線をはずして、身体をゆっくり壁際へ戻した。
そしてまた少し辛そうにして瞼を閉じる。

・・・ちょっとびっくりしただけよ、と桃子はあわてて平静を装った。

・・・・・でも、待てよ?

現実的に考えてみたら、遊太郎が宇宙人かどうかは別として、
いま真夜中に自分は男と二人きりでいるわけだ。

たぶんあまり遅いと斉藤課長が探しに来るはずで、
見つかったらどう説明したらいいのかわからない。

「遊太郎、外に出るわよ」
彼女は考えていることを口に出した。
「斉藤課長や清美たちに怪しまれるし、早くなんとかしなきゃ。
でもその前に、その格好じゃ目立つから待ってて!」
早口にささやき、桃子は忍び足で布団部屋を抜け出した。

幸いうまいタイミングで、大浴場に向かう斉藤課長と出会った桃子は、
「森田君、やっぱりのぼせたみたいで別の部屋で休ませてます」
とウソをついた。
「大丈夫か?あれだけ飲んで風呂なんかに入るからだ。」
責任者らしく様子を見に行こうとした課長を抑え、
「いいんです。あたしがついてるし。
それより浴衣じゃ寒いんで着替えた方が・・・。
課長、こっそり森田君のカバンを持って来てくれますか?」
すると斉藤課長が疑わずにうなづいた。
「わかった。高山なんかに気付かれたら、またイジメられるだろうしな」

それから部屋へ引き返し、遊太郎のカバンを持って来てくれた。
「高山はちょうど部屋に居なくて、あとの連中は大イビキだ」

そうして桃子は気配を伺いながらも布団部屋に舞い戻った。
「ほら、さっさと着替えなさいよ」
世話を焼かせるんだからと文句を言いつつ、カバンから服を取り出す。

運が味方をしてくれたのか。
しばらくして二人は布団部屋を抜け出すことに成功した。
夜中の館内は静かで、誰にも姿を見られることもなく、外へ出ることができた。


「なんだ、変装できるようにちゃんと持って来てたんじゃない」
温泉街の通りへ出た頃、ようやくホッとした声で桃子が言う。

彼女のかたわらには長身の若い青年がいた。
黒っぽいパーカーとジーンズ。頭は深くキャップを被っている。

明るいプラチナの後ろ髪は、この夜の内ならなんとかごまかせるだろう。
それに黒いサングラスをかけているため、外国人旅行者に見えなくもない。

「ありがとう、桃子さん」
やっと遊太郎が口を開いた。
「別に。あんたの為にやったんじゃないからさ。見つかったら面倒じゃん」
彼女は口をとがらせて憎まれ口をたたく。

本当は違う意味でひそかに彼女の胸は波打っていた。
こうして普通に並んでみると、遊太郎はずいぶん背が高い。
サングラスのせいで男っぽくも見える。

・・・ちょっとテレくさいな。
と思ったその時、外気に触れたせいか桃子はくしゃみをした。
浴衣に羽織りだけで動きまわったからかもしれない。

その冷え切った桃子の手をすっと遊太郎が捕らえた。

「・・・・・!」
驚いて彼を見上げると、彼は穏やかに微笑している。
「すぐ温かくなりますよ、桃子さん」
「あ・・・・」
なんという不思議さ。
遊太郎に握られた手から、ふわっとしたエネルギーが桃子の身体に流れ込んで来たのだ。

顔がほんのり染まっているのは、そのせいばかりではなさそうだが・・・

この時、二人を遠目に目撃した男がいた。

・・・五十嵐桃子じゃないか?なんだってこんな夜中に。
彼女のそばにいるあの若い男は何者だ?
手なんかつなぎやがって馴れ馴れしい。
外国人みたいだが、いったい五十嵐の何なんだ・・・!

酔いざましに温泉街をうろついていた高山である。

彼はそっと携帯電話を取り出す。
レンズの捉らえた先には、桃子と遊太郎がいた・・・・・

~写真を隠し撮りされた二人はどうする?
第13回をお楽しみに♪(^O^)/~
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by yu-kawahara115 | 2008-02-28 23:26

第11回接近遭遇「ほんとうの遊太郎」

~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~

アルコールを摂取すると本来の姿に戻ってしまう遊太郎。
今回は社員旅行の宴会で大ピンチ!!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「さあ、男ってところを見せろよな、メガネ!」
高山は強い日本酒が入った一升瓶を遊太郎に突き付けた。

・・・アルコールを摂取すれば地球人化のコントロール機能がマヒし、本来の姿に戻ってしまう。
しかし・・・・・

遊太郎はまんまるメガネの下で、目の前にある一升瓶をじっと見つめた。
「わかりました。僕は卓球に負けたんですから、飲みます」

全員が驚いて宴会場が静まり返った。
高山はへえ、と馬鹿にする。
「このあいだは途中で逃げたよな?今夜はそうはいかないぜ」

彼はうなづいて、すうっと深呼吸をひとつしてから一升瓶の酒を飲み始めた。
まるでミネラルウォーターを飲んでいるかのように。

・・・遊太郎!?
桃子は眉を寄せた。皆の前で別人に変貌してしまったらどうするのだ。

しかし既に遊太郎は半分以上も飲んでいて、もう遅かった。
高山は驚きと奇異の目を彼に向ける。
・・・何なんだ?コイツ?

「頑張って、森田クン!」
「凄いじゃないか、見直したぜ、森田!」
息をつめて見ていた皆が、わっとなって応援し始めた。
「あいつ、飲めたのか?いつの間に」
斉藤課長も箸を止めて見入っている。

遊太郎はあっという間に飲み干し、高山と桃子を除く全員が喝采を贈る。

・・・・変身しない?
桃子は驚いていた。あれだけ飲んで、変わらないどころか平気な顔でいられるなんて・・・

彼女の思惑をよそに、宴会は盛り上がり深夜まで及んだ。
その後、女性たちは部屋に戻ったが、桃子は男性が引き続き酒を飲んでいる部屋の前をうろついた。

「森田なら風呂に行くと言ってたぞ」
運よく斉藤課長が出て来て教えてくれた。
「のぼせたらいかんと思ってな、様子を見に行くところだ」
「あ、それならあたしが行ってきます」
と彼女が言い、男風呂だぞ?と斉藤課長がおどけたが大丈夫です、と笑って返した。

しかし本当に男風呂に入るわけにはいかない。
桃子は入口辺りで携帯電話をチェックするフリをしながら待とうとした。

この時なぜか風呂よりも奧の小さな部屋が気になった。
直感だろうか?足が勝手に動く。

夜更けで仲居も客も通らない。
こっそり部屋の引戸を開けてみる。どうやら布団部屋のようだ。

薄暗いが、高い位置にある格子窓から月光が差し込んでいる。
積み重ねられた布団の奧にスペースがあり、誰かが横になっているのを見つけた。

「遊太郎・・・?」


月の光が作りだす空間に、遊太郎は背中を向こうにして寝ていた。

いや、正確にはつい先ほどまで遊太郎だった者、である。

彼は壁際に向いて横になり、やや辛そうに目を閉じていた。

桃子には淡い銀色の髪に見覚えがあった。
「・・・やっぱり、戻っちゃったんだ?」
外に聞こえないように、ささやいた。
「全くあんなに無理して飲むからよ。大丈夫?」

遊太郎はそんな彼女の声に壁を向いたまま、うっすらと目を開いた。
彼の横顔と長い睫毛だけがわずかな月の光に浮かび上がる。

「・・・よくここがわかりましたね」
「うん、なんとなく、あんたが呼んでた気がしたからさ」

彼はまだ向こうを向いて桃子と顔を会わそうとしない。

「さっきは本当にヒヤヒヤしたけどよかった。すぐに戻らなかったし」
きっと何か工夫をしていたのだろうと察しがついた。
だが、おそらく限界が来て身を隠したに違いない。

「でもさ、ここへ潜りこんだって仲居さんが来たらまずいし、早く出た方がいいかもよ」

すると彼が間を置いて答えた。
「・・・今回はキツくて・・・まだ、時間がかかるんです」

森田遊太郎になるのに時間がかかるという意味か。
アルコール濃度が高すぎたのかもしれない。

ふと、桃子は不審に思った。

「ねえ、なんでこっちを向かないの?」
「・・・」

また間があって彼は少し困ったように言った。
「・・・桃子さんは怖くないんですか」
「え・・・?」

・・・あたしが?彼は何を言ってるんだろう。
「あんたの顔なら、前に一度見てるから平気だけど?」
「・・・・・」

すると、ゆっくり寝返りを打つように遊太郎だった者が桃子の方へ身体を動かした。

淡いプラチナのような髪がさらりと動き、
顔にかかる髪のすき間から青灰色の瞳がゆらめいた。

~引き続き第12回をお楽しみに♪(^O^)/~
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by yu-kawahara115 | 2008-02-26 22:47

第10回接近遭遇「社員旅行は危険がいっぱい」

~もしあなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~

異星人・森田遊太郎に、
一ヶ月だけ試験的ルームシェアを許した五十嵐桃子。しかし社員旅行という難関が待ち受けていた!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「僕、温泉って初めてなんで勉強になります」
桃子の心配をよそに、遊太郎はお気楽に社員旅行の準備をしていた。

「あんたバカっ!?旅行イコール宴会よ。お酒を飲まされるのよ?」
明日からいよいよ社員旅行であり、桃子は機嫌が底無しに悪い。

「大丈夫ですよ。桃子さん。あれから毎日少しずつお酒を飲んで慣らしてるし」
遊太郎の天然ボケな返事に彼女はイライラを募らせる。

「へえ~、そうなんだ?でもウチの男達は一升瓶の飲み競べをするのよ?
あんたそれでも変身しないって言い切れる?」
「へ、変身って」

正確には、いま地球人に変身しているわけだが、桃子の言わんとしていることは彼にはわかっていた。

「そ、そんなに飲むんですか?」
「毎年、男だけでオールナイトよ。
あたしは女子ばっかりの部屋だし、何かあっても自分一人でなんとかしてよね」
「・・・は、はい」

あたしはあんたの子守りじゃないんだからね、とつい言いそうになった。
あの神崎部長がバックについているから同居を許したものの、
またひと騒動ありそうな予感がした。

翌朝の土曜日、チューリップ生命営業一課メンバーは貸し切りバスに乗り込んだ。

斉藤課長たちは既にバス内で缶ビールを飲み始めている。
近場だから、昼食時に温泉街を散策する以外は旅館へ直行なのだ。

~チューリップ生命営業一課ご一行様~
古びた温泉旅館の正面玄関に書かれたボードを、遊太郎は珍しげに見ていた。

「おい、森田。ひと風呂浴びたら卓球大会だぞ?」
遊太郎の営業指導をしている高山が意地悪そうにニタリとした。
「タッキュウ?」
「温泉卓球に決まってんだろ?そんなことも知らないのかよ」
もんでやるから覚悟しとけよ、と高山たち先輩社員が小柄な遊太郎を脅した。

卓球大会はシングルの勝ち抜き戦で、優勝者は敗者に何でも命令ができる権利が与えられる。

「森田君、見るからに弱そうじゃない?」
同僚の清美が浴衣姿に着替えて観戦する。
同じく浴衣になった桃子は無意識に腕組みをして、男子の卓球大会を見守っていた。

・・・普通こういう場合、宇宙人とかだったら、超能力を発揮して劇的に優勝するのがお約束だけど。
と、桃子はあらぬ妄想を抱いたが、頼りない遊太郎のフォームにガッカリした。

「下手くそめ!見てろ、俺様のハイパーテクニック!」
スポーツ万能な高山が、女子の人気を集めようと初心者の遊太郎にハイスピードで打ち込みまくった。

遊太郎は当然追い付けずに高山の弾丸をよけるだけに終わった。
結局、高山の一人勝ちである。

「あ~あ、やっぱり。森田君かわいそうに、高山係長にまたイジられちゃうね、桃子?」
「別に、知ったことじゃないわよ」
さっさと宴会場へ行く桃子を、清美は怒ってるの?と言いながら追いかけた。

つまらねえなあ、と男性陣もそれぞれに散ったあと、
遊太郎は卓球台に残った小さな球体をちらりと見つめた。

生き物のように卓球の球がゆらりと宙に浮いた。
次の瞬間、遊太郎のラケットが目にも留まらぬ速さで空間を切り裂いた。
相手のコートにカンと軽い音だけがして、球は遊太郎の手の中に吸い込まれる。

凄まじい速さ。ものの1秒もかかってはいない。
「なるほど、面白い」
彼は納得したように微笑んだ。

カラオケ付きの大宴会場には刺身の舟盛りや寿司などの豪華料理が並んでいた。「今年度はより一層の新規顧客開拓をやり抜くぞ。乾杯!」

既に出来上がっている斉藤課長が赤い顔で乾杯の音頭を取った。
女性5名、男性6名の自由なカラオケ&宴会のスタートである。

「卓球大会優勝者は敗者に命令が出来るんだぞ?森田」
高山がここぞとばかり、膳をはさんで遊太郎の正面に座った。
初めて浴衣を着た、まんまるメガネの遊太郎はいつもより子供っぽい。

誰かが、のび太みたいだなあとからかい、高山係長はジャイアンですね?と笑っていた。

「す、少しだけなら頂けます」
ちょこんと座布団に座った遊太郎はコップを差し出した。

その様子を桃子は不安げに見つめる。
案の定、高山はニカッと笑って一升瓶を顔面に突き付けた。
「バ~カ!これごと飲むんだよ!」
「・・・・・!」

~さあ、アルコールで元の姿に戻る遊太郎はどうするのか?
第11回をお楽しみに♪(^O^)/~
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by yu-kawahara115 | 2008-02-24 20:15

第9回接近遭遇「異星人のホームステイ 決定?」

~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~

ファミレスで人事部長の神崎に、
宇宙人・遊太郎をホームステイさせて欲しいと頼まれた桃子。
・・・さて、どうする?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「外国人と同じように異星人のホームスティとして考えて頂きたいのです」

神崎部長は桃子をポジティブ思考全開で説得し、次いでひらめいたようにつけ加えた。

「では、こうしたらどうでしょう?試験的にホームスティをするのは?」
「試験的に?」
「はい。ひと月のあいだ、様子を見て彼を置いていいか決めるのです
なるべくあなたの生活に干渉しないよう、あなたがルールを全て決めてください。
そうして彼は生保の営業マンをしながら、これまでどうり、
地球人の生活様式や文化、思考形態などを勉強し、私にリポートする。
どうです?素晴らしいアイディアだ♪」

勝手に盛り上がる神崎に、ずっと大人しくしていた遊太郎が口をはさむ。
「部長、勝手に決めないでください。桃子さんの気持ちも尊重した方が・・・」
「おお、そうだね、森田君。いかがですか?五十嵐桃子さん」

・・・いかがも何も、開き直るしなかいではないか。
彼女はもう逆らう気力がなくなってしまっていた。

銀河連盟だか異星人のホームスティだか知らないが、
ようするにやっぱり真っ赤な他人なわけで、同居を続行しろということだ。


夕食のお礼を言い、桃子は遊太郎と共にマンションへ帰った
そして大きな溜め息をついたあと、キリッと遊太郎を厳しく見て言い放った。

「まず、あたしの部屋にカギをかけるから、入ってこないように。
調査だか何だか知らないけど、他人に迷惑がかからない程度にやるのよ?
あと、こまかい同居のルールを決めて紙に書いて貼っておくから、
絶対に守るように。ひとつでも敗ったら追い出すからね!」
それだけを一息でまくし立てる。

「じゃあ・・・桃子さん。僕は居てもいいんですか?」
遊太郎のまんまるメガネの下で子犬のような瞳がキラキラしている。

「ひと月の試験同居よ!たぶん守れないと思うから、早目に新しい部屋を探しておくことね」
そう言い捨て、桃子はビールをつかんで自分の部屋にさっさと入ってしまった。

そのドアをしばらく見つめながら、遊太郎は静かにつぶやいた。
「ありがとう、桃子さん」

翌朝、桃子が出勤してみると部署のメンバーに好奇の視線を投げられた。
「?」
何なんだ?と思っていたら、ベテランの根岸主任がカツカツとヒールを響かせて近づいて来た。

「五十嵐さんと森田君、イトコなんですってね?」
「え・・・・・!」
桃子はギクリとした。・・・バ、バレてる?
するとフロアの隅から同僚の清美が手を合わしていた。

「ゴメン!桃子。みんなに二人の関係を色々聞かれてさ」
給湯室で清美は必死に謝った。
「喋っちゃったんだ・・・?」
「ホントにゴメン!でも、歓迎会で二人が仲良く出ていったら、誰だって気になるし・・・
でも一緒に住んでることは言ってないから!安心して」

もちろんバレるのも時間の問題だとは覚悟していたが・・・
「いいよ、もう別に。それよりもっと厄介な問題ができたし」
と、言いかけてはっと口をつぐむ。
・・・いけない、いけない。
真偽はともかく、人事部長までからんでる異星人問題はトップシークレットだ。

「なになに?遊太郎くんと何かあったの?桃子」
謝っていた気配もどこかへ飛んで、清美が楽しげに聞き出そうとするが、
仕事がらみの話だから、とごまかした。

「あ、そうだ。ねえ桃子、来週の社員旅行に何着ていくか決めた?」
「社員・・・旅行?」
突然、頭上から岩が降って来たような衝撃を覚えた。

色々あってすっかり忘れていたが、
営業一課は毎年、近場の温泉へ恒例の一泊旅行で行くことになっていたのだ。

「ま、まさか遊太郎・・・アイツも行くの?」
「そりゃあ、斉藤課長が行かせるんじゃない?
いいじゃん。泊まる部屋は男女別々だし」

・・・・・それが、大問題なのだ!

桃子は頭痛がして来た。
まだ異星人の件は完全に信じたわけではない。
しかし遊太郎はやっぱりどこか得体の知れないところがある。

アルコールを飲まされただけで、あんなに別人に変貌するのだ。
まして社員旅行ともなれば・・・

「宴会・・・するのかしら」
ふっとつぶやいた桃子に何も知らない清美が悪気もなく言いのけた。
「男性陣なんか毎年徹夜で騒いでんじゃん。それがどうかしたの?桃子」

・・・じょ、じょ~だんじゃないっつ~の!!

~さて新たな災難が待ち受けている第10回をお楽しみに♪(^O^)/~
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by yu-kawahara115 | 2008-02-23 23:11

第8回接近遭難「VIP会談はファミレスで」

~もしあなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~

銀河連盟から調査の為に派遣された宇宙人だと、
五十嵐桃子についにカミングアウトした森田遊太郎。
そこへ突然彼の上司と会う話になり・・・

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

実際、五十嵐桃子は混乱していた。
・・・なんで自分がゴルフの打ちっぱなしなんかやってるんだろう?

森田遊太郎との話を電話で中断され、連れて行かれたのは近場のゴルフ練習場だったのである。

青々とした人工芝をバックにダンディな紳士が待っていた。
「あなたが五十嵐桃子さん?
遅くにお呼び立て致しまして申し訳ありません。
私は森田君の上司の、神崎です」

上等そうな背広をピシリと着こなし、白髪混じりの整えられた髪と落ち着いた物腰。
柔和な表情で桃子に名刺を渡す紳士をどこかで見たような気がした。

「じ・・・・人事部長?」桃子は名刺を見て驚き、絶句した。
なんと桃子と遊太郎の会社の人事部長その人だったのだ。

にこっと微笑んで上着を脱ぎ、神崎は桃子にさっそくゴルフを教え始めた。
「そうそう、ワキはしっかりしめて。肩の力は抜いてください。
はい、思い切り振って・・・ああ、スジがなかなかよろしい」
「は、はあ・・・・」

なんでまた遊太郎みたいな新入社員が人事部長と知り合いなのか?
・・・さっぱり訳がわからない。

「いやいや、ゴルフも野球もサッカーも、この星のスポーツは素晴らしい」
そしてみずからも見事なスイングを見せる。

「ひと汗をかいたところで、ちょっと付き合いませんか?」
すっかり神崎のペースに乗せられて、今度はファミレスに案内された。

奧のテーブルにつくと、神崎は春のキャンペーンメニューを次々と注文した。
さらに新作デザート全てを制覇しようとするのへ、

「あ、あの、神崎部長。なぜ・・・遊太郎と?」
思いきって桃子は切り出してみた。
イチゴのショートケーキやパフェやクレープを賞味していた甘党の神崎部長は、
「ああ、すみませんでした。すっかり楽しんでしまいました。
本当の自己紹介がまだでしたね?」
と言うと襟を正し、穏やかで真摯な瞳をすっと桃子に向けた。

「私は表向きチューリップ生命本社人事部に所属していますが、
銀河連盟地球調査団のキャプテンを務めるロータスと申します」
「え・・・・?」

桃子は目をパチクリさせて、神崎と遊太郎を見比べた。
遊太郎があわててフォローを入れる。
「桃子さん、突然ですみません。
神崎部長が僕のもう一つの仕事の・・・上司なんです」
「な、なんで?」
「ですから、その・・・部長も地球人ではないんですよ」

・・・これは、どう頭を整理すればいいのだろう?
またしても怪しげな催眠術にでもかかっているのか?

コーヒーをひとくち上品に飲んで、神崎は落ち着き払って話した。
「あなたが混乱するのも無理はありません。
我々は極秘にこの星へ調査に来ているのですから。
地球人のことを知るために」
「地球人のことを?」

「はい。例えば五十嵐桃子さんがアメリカ人のことを知りたいとします。
そしてネイティブイングリッシュを学びたいと思ったら、英会話学校へ行きますか?」
「いえ・・・たぶん留学すると思います」
「そうですよね。その国で数年暮らした方が理解が早い。
我々もそうなのですよ?」

ちなみに、この会談はシールドされているので誰にも聞こえていませんよ、
と神崎は言い添えて、
「お嬢さん、あなたを驚かせたのはお詫びします。ですが、
地球人のことを理解しようと奮闘している森田君をどうか応援してやってくれませんか?

まだ地球の生活に慣れない彼のそばに、
あなたのようにしっかりした地球の女性がついているなら、
私も安心なのです」

「は、はあ・・・」
そんなことを頼まれても。
と、困っていると神崎がさらっと言い当てた。
「本当は森田君を追い出そう、と思っていたんですよね?」
「・・・はい」
つい正直に答えてしまい、ちらっと遊太郎を見る。
彼はやっぱりそうでしょうね、と肩を落とした。

神崎はにこやかに笑った。
「よろしい。正直で信頼に値するお嬢さんだ。
そこで、あなたに提案があります」
「提案?」
「あなたを見込んで今一度お願いしたい。
引き続き森田君をあなたのところに、ホームスティさせてくださいませんか?」
「ホ、ホームスティ?」


~神崎部長、そう来たか!(笑)第9回をお楽しみに♪(^O^)/~
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by yu-kawahara115 | 2008-02-22 19:59

第7回接近遭遇「ハケン宇宙人?」

~もしあなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~

五十嵐桃子の目の前で別人に変貌した森田遊太郎。
その記憶を消そうとして失敗した彼は、彼女に本当の正体を話すことに。
果たして遊太郎のもうひとつの顔とは?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「昨日の夜は本当にすみませんでした」

遊太郎は深く頭を下げた。
「あの時、僕は桃子さんの記憶を消せると思っていたんです。
でも、覚えていたんですよね・・・」

すると桃子は当たり前だと眉を上げた。
「あんたのヘタクソな催眠術に騙されるあたしじゃないの!
まあ、しばらく混乱してたけど・・・
だからちゃんと正直に説明しなさいよ」

記憶消去をヘタクソな催眠術と言われて思わず遊太郎は苦笑した。

「何がおかしいの?」
「い、いえ。桃子さんらしいなあって思って」
それを聞いてぷくっと頬をまるく膨らませたが、彼女は咳払いをして話を戻した。

「あれは、あたしに見られたら困るからでしょ?」
「そうです。まさかあんなにアルコールが作用するとは思わなくて」
「だけど、ビールなんかで銀色の髪になるなんて聞いたことないし。
・・・って言うか、超ありえないんだけど?」

彼女の迫力に押されながら、遊太郎は話し出す。
「わかりました。本当の事を話します。
僕は、桃子さんのイトコの森田遊太郎という人の名前と身体を借りています」

腕組みをしていた桃子が一瞬険しい表情に変わる。

「森田遊太郎はこの冬、カナダで登山をしていて、
残念なことに誰にも知られずに遭難したようなんです」
「そ、遭難?」
「はい。僕はちょうどその時、日本人のサンプルを探していました。
だから彼を見つけて・・・」
「サ、サンプル?」

桃子がいよいよ疑わしげな様子で遊太郎を見つめた。
「それで、申し訳ないと思いながら・・・
雪山に凍結されていた彼の身体のDNAをコピーし、僕は遊太郎になり変わりました」
「ちょ、ちょっと待ってよ。DNAをコピーって、そんな映画じゃあるまいし」
さすがに桃子は思考停止になりそうだった。


「そうですよね。でも僕たちの種族は可能なんです」
「種族・・・・?」

「騙すようなことをして本当にすみません。信じられないかもしれませんが、
・・・僕はこの星の人間ではありません」

「・・・・・」
桃子には遊太郎が一体何を言っているのか、すぐにはわからなかった。
日本語が突然理解できなくなったような気がしていた。

「宇宙には銀河連盟という巨大なネットワークがあります。
僕はそこから調査員として地球へ派遣されて来たんです」
「ぎ、銀河、ハケン???」

桃子の目が大きく見開き、次の瞬間思いきり笑い出した。
「あのさあ、どうせならもっとマシな作り話を考えてよ。
さっきから全然説得力ないんだけど」
「信じてくれなくてもいいです。
でも、僕はもう桃子さんには嘘をつきたくないから・・・」
「・・・・」

人に言葉だけで思いを伝えるのは難しい。
異国間でも至難の技なのに、異なる星同士ではなおさらだ。

もちろん桃子には、遊太郎がまるっきり嘘をついているようには思えなかった。
だからといってあまりに非現実的すぎて鵜呑みにできなかったのだ。

「わかった」
桃子は色々と頭の中で考えていたが、合理的に話をまとめあげた。
「百歩譲って、もしもあんたがホントによその星の人間としてだよ?
調査ってなに?探偵みたいにあたしを調べてるわけ?
誰に頼まれたか知らないけど、プラバシーの侵害だし、
それにイトコの名前を語るなんて犯罪よ?」

確かに桃子にしてみれば正当な言い分だ、と遊太郎は思い途方に暮れた。

言葉をなくした遊太郎に、携帯電話が鳴り響く。
すると桃子があきれたように言った。
「真剣な話しようって時に電源切っとかなかったの?」
「す、すみません」
「いいわよ、出れば?」
面倒くさそうに言い放ち、桃子は再びビールを取りに立ち上がる。

そのあいだに遊太郎はおずおずと携帯電話に出た。
瞬間、はっとする。
「え?・・・今からですか?」

誰と話してるの、と桃子がビールを飲みながら目で聞いた。
遊太郎は溜め息をつきながら彼女に告げる。

「・・・僕の上司が桃子さんに会いたいようです」
「は?上司って斉藤課長が今からなんで?」
つい会社の課長のことを思い出す桃子。

「い、いえ、違います。つまり、さっき話した・・・
僕を派遣した機関の、直属の上司です」
「はあ???」

~ついに三者面談なのか?第8回をお楽しみに♪(^O^)/~
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by yu-kawahara115 | 2008-02-20 22:35

第6回接近遭遇「謎の人事部長 登場!」

~もしあなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~

現実的OLの五十嵐桃子(26)V.Sアルコールに弱い宇宙人、森田遊太郎(23)。
そこへ新たに現れた人事部長の神崎(52)
※イメージは児玉清サンでいかがでしょうか?(笑)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

チューリップ生命本社最上階の役員会議室。
馬蹄形のデスクと地上を見下ろす高窓のあいだで、
人事部長の神崎と森田遊太郎は奇妙な対話を続けていた。

「森田君、君は昨晩アルコール摂取をしたせいで、
地球人化を保つコントロール機能が一時マヒしてしまった」
神崎部長は淡々と彼の失態を整理する。

「結果、本来の姿を彼女に見せてしまった。
それでマニュアルどうり記憶消去を行った。だがしかし・・・」
聞きながら、遊太郎は落ち込んでいた。

・・・なぜ、彼女には効かないのだろう?
確かに昨夜、五十嵐桃子に自分の姿を記憶から消して、マンションに戻したつもりだった。
しかし彼女はハッキリ覚えているどころか、普通に怒っているらしい。

「たまに、五十嵐桃子君のような地球人はいるのだよ。
森田君は初めてこの惑星に派遣されたのだから、知らないのは無理もないのだが」
落ち着いた物腰で、神崎部長はあごに手を当てる。

「この場合、二つの選択肢が適応される。
もう一度、彼女の記憶を強く消す方法。あと一つは彼女にうまく言い訳をする方法」

「部長、僕は彼女にはこれ以上嘘をつきたくはありません」
きっぱりと言う遊太郎に、神崎部長は目を見開いた。

どこか楽しげに彼に質問する。
「これは、森田君。さては彼女が気に入ったのかね?
気の強い男勝りな女性だと報告を受けてはいるが」
「い、いえ。そういうわけでは。確かに僕はいつも怒らせてばかりいます。
でも桃子さんは、本当はとても親切な人なんです」

昨夜、周りの目を気にもせずに自分を外へ連れ出してくれた。
そして酔ったことを心配して、背中に温かい手を当ててくれた・・・

なるほど、と神崎は背中に両手を回し高窓から地上に広がるビル群を見つめた。

「では猶予をあげよう、森田君。
その地球人がどう行動するのか、しばらく観察しなさい。
君の正体を誰かに話す気配がするなら、今度は私が記憶消去をする。

しかし彼女が君を理解できる人間ならば、きちんと説明する必要がある」
「はい。やってみます!」
まんまるメガネの下で子犬のような瞳が嬉しそうにキラキラするのを、
神崎部長はほほえましく受け止めていた。

「・・・まあ、上へは私がうまく報告しておくとして。
森田君は通常どうり、地球の派遣調査員としての任務を遂行すること」
「了解しました。キャプテン・ロータス」
「この星では神崎部長と呼びたまえ。・・・森田君?」


「で?」
その日の夜、マンションに対峙する二人がいた。
五十嵐桃子は髪を頭のてっぺんで一つに縛り、凛々しい眉をきりりと吊り上げ、
リビングのソファでサムライのように腕組みをしている。

それに対して遊太郎は黄色のエプロンを首からさげ、
お玉を手に夕飯の味噌汁を作ろうとしていた。

「桃子さん・・・怒ってる?」
「怒ってないっ!」
「怒ってるじゃないですか」
「うるさいっ!怒ってないって言ってるでしょっ?」

桃子は冷蔵庫から冷えた缶ビールをつかみ、
再度ソファにどっかり腰を降ろして一気飲みをした。

その様子をタジタジと遊太郎は眺めている。
「お、美味しそうに飲むんですね?桃子さんて・・・」
「そういえば、あんたは超弱かったみたいね。アルコール」
イヤミっぽく言ったあと、桃子はテーブルにビールを勢い良くダン!と置いた。
思わずお玉の端っこを両手でにぎりしめる遊太郎。

「で?あんたは何?特異体質なわけ?
髪の毛も、目の色も、身長も、アルコールごときであんなに変わるの?
それよりも変な催眠術をかけてやり過ごそうとした、
あんたの姑息な態度がムカつくんだけど?」

今まででマックスな剣幕だった。
遊太郎は彼女が怒っている理由が、自分の本当の姿に嫌悪しているのではなく、
説明もせずにごまかそうとしたことにあるのだと悟った。

「本当にごめんなさい、桃子さん。
説明をしますから、誰にも言わないでくれませんか?」
思いきって事情を話すしかなさそうである。
桃子は腕組みをしたまま、真正面から遊太郎を見つめた。

「承知!さあ、きっちり説明しなさいよ。
あんたは何者?本当にあたしのイトコ?」

~アネゴ肌の桃子は、遊太郎の話に納得するのか?
第7回をどうぞお楽しみに!(^O^)/~
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by yu-kawahara115 | 2008-02-18 21:10

第5回接近遭遇「変 身」

~もしあなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~

●第1~4回までを駆け足でプレーバック♪↓↓↓

現実的OLの五十嵐桃子(26)は、イトコと名乗る森田遊太郎(23)と、
突然同居するハメになってしまった。
しかも彼は桃子と同じ職場に入社。
その歓迎会の席で、
無理やり酒を飲まされた遊太郎を外へ連れ出した桃子は、
彼の身体に異変が起きていることを知り・・・?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ゆ、遊太郎・・・・・?」

春の満月の下、夜風が遊太郎の髪をサラサラと揺らせていた。

「・・・アルコールを一定量飲むと」
遊太郎は川の向こうを向いたまま話し出した。
「身体のコントロールが効かなくなるんです」
いつものふわっとした声ではなく少し低いトーンだ。

「コ、コントロール? 何を言ってるの?」


遊太郎はメガネをはずし、ゆっくり立ち上がった。

・・・こんなに長身だったのだろうか?
それとも急激に走って来たので、自分も酔いが回ったのか?

「桃子さん、本当にごめんなさい。
連れ出してくれなければ、こんな姿をさらしてしまうところでした」

遊太郎は桃子の方へ身体を向けた。
月がスポットライトのように、彼の姿形を浮き上がらせる。

・・・これは、いったい誰なのだろう?
桃子の知らない人が静かに立っていた。

微風に揺れる淡い銀色の髪の下で、
見たことのないような青灰色の瞳が輝いていた。
彫刻のような顔立ちは白人よりもなお白い。

「・・・!」
思わず後ずさる桃子に、遊太郎と呼ばれていた者は、
その形良い唇を優しく開いてこう言った。

「桃子さん、ありがとうございました。
あなたの手はとても温かった」

瞬間、白い閃光が河辺周辺に広がった。
考える間もなく、桃子はいっさい何もわからなくなった。


「ケータイ、ずっと鳴らしてたのに。メールだって。
いったいどうしてたのよ、桃子?」

気がつくと桃子はいつものように会社の更衣室にいた。
ぼんやりしている彼女に同僚の清美が質問攻めにしている。
「あれから、どうしたの?二人で帰っちゃったの?」「あれからって?」
「だ、か、ら!んもう~~~!
桃子が森田クンを店から強引に連れ出したあと!」

きっと清美からは、かなり寝ぼけて見えたに違いない。
桃子は悪いとは思ったが、かなり適当に応えた。
「別に。アイツに吐かれたら面倒だし連れ帰って寝かせただけよ」
高山にもムカついたしね、とも付け加えて更衣室を出た。

営業一課に顔を出した桃子は、昨夜歓迎会を抜けたことを斉藤課長に謝った。
「いやいや、ありゃ森田に飲ませすぎたからなあ。
五十嵐さんが機転をきかせてくれて助かったよ」
斉藤課長はすまなさそうに苦笑した。
上司であるからには、桃子と遊太郎がイトコ同士だと知っているはずだからだ。

もちろん周りの同僚達は好奇心いっぱいに彼女を見ていたが、
今はそれどころではなかった。

森田遊太郎を捕まえなければならない。
朝も別々に出勤しているので、昨夜から顔を合わせていないのだ。

チラリとスケジュールボードを確認したが、
今日は指導の高山とは別行動らしく、遊太郎はしばらく席をはずしていた。


その頃、森田遊太郎はチューリップ生命本社ビルの最上階、
役員会議室の重厚なドアをノックしていた。

「森田です。失礼します」まんまる黒ぶちメガネで小柄な、普段どうりの遊太郎である。

朝から人事部長に呼ばれて緊張した面持ちだった。
「ああ、森田君。済まないね。
私がチューリップ生命本社人事部の神崎だ」
50歳過ぎの落ち着いた男が向かえ入れた。
白髪混じりの頭髪が品良く整えられ、穏やかな雰囲気をまとっている。

「君は私に呼び出された理由を、もう察していると思うが?」
淡々と聞かれ、遊太郎はさっと身を硬くする。

「申し訳ありません!
まさかあんなに早くアルコールが回るなんて・・」
「まあ、ああいうものは慣れ、の問題だからね。
それより事後処理は大丈夫なのかね?」
「それが・・・・」
口ごもった彼に神崎部長は深い溜め息をついた。

「どうやら、君の同居人には記憶消去法が効かなかったようだねえ」


~この新キャラクター、神崎部長は何者か?
SFらしくなってきた第6回をお楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-02-17 13:35

第4回接近遭遇「キケンな歓迎会」

~もしあなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~

森田遊太郎の正体、ついにバレる・・・?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

チューリップ生命の営業2日目。
森田遊太郎は同行指導する高山に振り回されていた。
「営業スマイルてのはな、
受付の女のコにまず伝わらなきゃ意味はないんだよ」 と、高山は得意先の会社で大袈裟にレクチャーし始めた。
顔見知りの受付嬢と雑談し、
新米の遊太郎に真似してみろと強制する。

その上午後には用があるからと遊太郎を放置してしまった。
「今夜のおまえの歓迎会には行ってやるから、
斉藤課長にはうまく言いっといてくれ」
高山はニヤッと笑って小指を立てた。
「連れを待たせてるからさ。じゃあな!」
そして足どり軽く街の中へ消えてしまったのだ。

オフィス街にひとり放っておかれた遊太郎は、
観察するようにビルの森を見渡した。
誰もが自分のペースで急ぐように歩いていた。

雑踏の中に小さな老婆の姿があった。
ふいに誰かに押されてよろめく。
「・・・!」
それを数十メートル離れている遊太郎が察知し、
チラリと老婆の方向へ視線を流した。
無形無音のエネルギーが走る。

・・・ただそれだけで、
倒れかけた老婆の身体がふわっと元に戻る。
そうして何事もなかったかのように、
小さな背中は雑踏の向こうに消えてゆき、
遊太郎はホッと安堵の息を漏らした。

高山に放置されたので、一人で帰社した遊太郎は、
斉藤課長に高山の事を詰問された。
「高山係長は用事があると言ってました」
「どんな用事だ?何か他に言ってたか?」
斉藤課長は探るように遊太郎を睨むので、
彼は迷った末に小指をそっと立てる仕種をした。

もちろん、遊太郎に悪気があるはずもない。
しかし斉藤課長は舌打ちした。
「またオンナか!あいつは全くしょうがないヤツだな!」
「???」
小指を立てたことが何故そうなるのか、遊太郎には不思議だった。

「チクリやがって!あのメガネ野郎!」
歓迎会前に斉藤課長に携帯電話で呼び出され、
かなり説教をくらった高山は激怒していた。
その勢いのまま、同僚達と歓迎会を開く居酒屋へ向かう。
「おいおい、高山。相手は新人だぜ。あんまり熱くなるなよ」
と、彼らは笑うが高山の気分はおさまらなかった。
「ふん、歓迎会でたっぷり礼をしてやるさ」

その波乱ぶくみの新入社員歓迎会の夜。
営業一課の社員達が居酒屋に集まった。
五十嵐桃子は遊太郎と離れた席になり、
彼は高山達に囲まれるように座らされた。

「僕・・・あまりお酒は飲めないんです」
遊太郎は注がれたビールという液体が苦手だった。
「新人のくせに甘えたこと言ってんじゃねえって」
高山が遊太郎に酒を無理やり飲ませようと脅す。

「オレは自分の仕事を二の次にして、おまえの指導に時間をかけてるんだ。
オレの酒ぐらい飲むのが礼儀だろう?」
「・・・・・・」
遊太郎は助けを求めるように桃子を見たが、
彼女は清美と話をしていてなぜか遠く感じられた。

「ほらイッキ飲みだ!森田!」
他の男達も面白がって囃し立てる。

この時になって桃子はようやく遊太郎の方を見て、
彼が辛そうにビールを飲まされている姿に目撃した。

「一気に飲めっつってんだろ!」
高山がけしかけるが、
遊太郎はもうそれ以上飲むことができずにうつむいた。
桃子は黙ってはいられなくなって立ちあがる。
「も、桃子?」
清美が驚くのを尻目に、彼女は彼に近寄った。

「気分悪いんでしょ?」
「・・・も、桃子さん?」
「いいから、立って!」 桃子は高山が何かを言おうとするのをキツイ目で睨みつける。
次の瞬間、遊太郎の腕を引っ張り居酒屋を走り出た。

・・・我ながら大胆な行動だと頭の隅でわかっていたが、
身体が勝手に動くのだから仕方がない。
きっとあとから後悔する。
2人の関係を社内の人間に噂されるかもしれない。

「大丈夫?吐きたいなら、もう少し我慢して!」
2人はまだ冷たい春先の空気に包まれ、繁華街を抜けて河川敷へ逃れた。
春の夜空にかかる満月が二人を青白く染めあげる。
桃子は河べりに膝をついた遊太郎の背中を思わずさすった。
「無理して飲むからよ!ちゃんと断ればよかったのに」
しばらくすると、遊太郎の背中に当てていた彼女の手が止まった。

・・・月の青白い光のせいなのだろうか?
遊太郎のうつむいた髪の色が妙に明るく見える。
「ゆ、遊太郎・・・・?」

~ 衝撃の第5回をお楽しみに!(^O^)/~
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by yu-kawahara115 | 2008-02-15 23:42

第3回接近遭遇!「初めての食卓」

~もしあなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~

五十嵐桃子の職場に入社して来たナゾのメガネ男子・森田遊太郎!
ただいまより第3回目のオンエア♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「今日からオレがおまえを営業指導する高山だ。よろしくな」

チューリップ生命の新入社員となった森田遊太郎に、
先輩の営業マン、高山が自信たっぷりに言った。
「おい森田、いいか?
うちが得意先企業を回るルートセールスだからって、
営業をナメんなよ?」
高山は浅黒い精悍な顔とたくましい身体を誇るように、
小柄なメガネ新人を見下ろしている。
「はい!高山さん。よろしくお願いします」
遊太郎は素直に頭を下げた。
だが高山は眉を片方だけ釣りあげる。
「高山さんだ~?オレは係長だぜ!
早く社会人の常識ってもんを覚えろよな、メ・ガ・ネ!」
「は、はい!すみません。・・・た、高山係長」
あわてて遊太郎は言い直した。

「森田遊太郎クンかあ。
あれが夕べ桃子の部屋に引っ越してきたイトコとはね。
なんか高校生がムリしてスーツ着てるみたいじゃん?」
昼休みに社内食堂でランチを取りながら、
桃子は同僚の清美から容赦ないコメントを聞いていた。
「もうその話やめてよ。
これからのことを考えると頭痛がするんだから」
桃子は口に運びかけたカレーのスプーンを置いた。
同居だけではなく職場も同じとはありえない冗談だ。
「清美、アイツがあたしのイトコだってことと、
いま一緒に住んでることは秘密だからね」
「だ~いじょ~ぶ!おくち堅いから。
でも時間の問題じゃないかなあ?周りに知れちゃうの」
「ううん!絶対に新しい部屋を探させて出ていかせるわ!」
・・・そうだ、期間限定つき同居にすればいい。
桃子はそう自分を納得させた。

その夜、残業で疲れきって帰宅した桃子に、
エプロン姿のメガネ男子が迎えた。
「お帰りなさい、桃子さん」
なんでも研修期間中だから桃子より早く終わって、
二人分の夕飯を作ったというのだ。

・・・あんたはあたしのヨメか?
桃子は思わずそう突っ込みたかった。
「いいって。自分だけ先に食べてりゃ。
逆にあたしが気を使っちゃうじゃない」
「あの、でも。桃子さんは毎日ジャンクフードみたいだし、
身体に良くないと思いますよ?」
・・・ジャンクフード?
どうやらコンビニ弁当のことを言っているらしい。
「ジャンクで悪かったわね!あたしは大好きなのよ!」
桃子はカップラーメンを取り出して開き直った。

すると、遊太郎がなぜか悲しそうに桃子を見つめた。

まるで子犬みたいな目だ。

勝ち気だが、犬や猫には弱い桃子だった。
仕方なく初めて二人でテーブルにつく。

食卓にはあまり見掛けないグリーン系のものが乗っていた。
「森田くん・・これ?」
不思議なものを見るように桃子が聞いた。
「遊太郎でいいです。
子供の時にそう呼んでたじゃないですか」
「覚えてないって、そんなの。
じゃあ遊太郎。これ、ナニ?」
スプーンでつついてみる。ねっとりしていた。
「アボカドですよ」
「こっちのつぶつぶは?」
「それはグリーンピースとタマゴのサラダです」
「じゃ、このサンドイッチの具は?」
「納豆です。試作品ですけど、美味しいですよ!」
「・・・・・・・」(v_v)

部屋に持ち込まれた観葉植物群といい、豆だらけの料理といい、
遊太郎は健康マニアなのだろうか?
こんな変わったイトコとは早くおさらばしたいものだ。

「それはそうと、あんたの営業指導、高山係長なんだよね?」
桃子は水でなんとかアボガドを飲み下しながら言った。
あの自信たっぷりの営業マンのことを言ってるのである。
「気をつけた方がいいかもね。アイツ、女癖悪い上に要領良すぎるし」
「???」
まんまるメガネの向こうで子犬の黒い瞳がきょとんと見開いていた。
「ああ、ごめん。わかんないか?
まあテキトーに頑張ってね。大変だけど」
「はい、ありがとうございます」
何が嬉しいのか、ぱっと彼の童顔がピンクになった。

本当に子供(ガキ)だ、とあらためて思いながら、
桃子は事務的にさらりと教える。
「明日の夜、あんたの歓迎会だけど。
新人は飲まされるから覚悟しといてね」
「え・・・?」

この時、遊太郎は初めて顔を曇らせた。
しかし桃子はその意味するところなど、全く気づかなかった。
翌日の夜までは・・・

~さて次回は遊太郎の視点で展開!お楽しみに♪~
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by yu-kawahara115 | 2008-02-13 22:28