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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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「プロポーズへの決意」第288回接近遭遇

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

現実的なOL・五十嵐桃子と、
まん丸メガネの森田遊太郎(異星人レン)。

表向きはイトコ同士でルームシェア歴一年。
お互い惹かれあいながらも、
異星人との恋愛は難問だらけなようで。。。?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ねえ、女からプロポーズっていうの、アリだよね?」

ある日の昼休み。
会社近くの遊歩道のベンチで、
おにぎりを食べていた桃子はなにげなく同僚の清美に訊いた。
清美は目を輝かせ、サンドイッチを膝の上に置いた。

「え?ついにあの超美形彼氏と結婚するんだ?桃子」
「違う。例えばのハナシ」
誤魔化しきれないのはわかっていながら、ムスッと否定し、
桃子は一般的な話だとでも言うように訊いた。

「例えば女から切り出す場合、ストレートに言った方がいいのか、
遠回しに言った方がいいのか、どう思う?」
すると清美は、キャハハと笑い飛ばした。
「オトコなんて遠回しで通じるわけないじゃん。
そんなの桃子には向かないし、ハッキリ言ったら?
あたしと結婚して、新婚旅行で世界一周しましょって」
「新婚旅行、世界一周……」

桃子は目の前がチカチカした。
彼女がベタ過ぎることを言ったからではなく、
全く予想外のイメージをしてしまったからだ。

(あの遊太郎と新婚旅行いくなら、世界じゃなくて、
天の川銀河の方がリアルかも……)

そうなのだ。
イトコの振りをして同居する森田遊太郎を、
どういうわけだか好きになって1年。
両親も早く結婚しろとうるさく騒ぎたて、
彼女自身もその意志を固め始めたものの、
あの仕事バカでストイックな遊太郎が、
はいそうしましょうか、などとプロポーズを承諾するとは思えない。
桃子は、あからさまにため息を吐き出した。

「なになに?彼氏、結婚とかする気ないの?」
清美が真面目に質問する。
「桃子のことは好きなんだよね?」
「たぶん」
「たぶん?なにそれ。」
曖昧な桃子の返事に清美は眉をよせながらお茶を飲み、
次に知ったような顔で結論づけた。

「あれじゃない。まだ女ひとりに束縛されたくないんじゃない。
桃子より、かなり若いんでしょ、その彼氏」

相変わらずズケズケと言われて、桃子は清美を睨んだ。
しかし彼女は携帯をいじり、無邪気にメールをチェックしているだけだ。
客観的に見たら、男が結婚するつもりなどないのに、
女の方は捕まえようと焦っている風に見えるかもしれない。

でも、ずっと一緒に暮らしたい。
それは、ちゃんと伝えたいのだ。

桃子は決めた。
ストレートに言ってみよう。もともと色々と考えて行動するのは苦手だった。
直感を信じて遊太郎にプロポーズをしてみよう。

桃子はちいさく拳をあげた。
「よっしゃ!」
そんな彼女に、清美は一瞬引きながらも、ニヤニヤしていた。


〜第289回をお楽しみに♪〜

※お詫び:しばらくお休みしてしまい、すみませんでしたm(_ _)m
引き続きまたよろしくお願いします(^o^)/
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by yu-kawahara115 | 2010-12-23 16:44

「桃子、遊太郎に詰め寄る」第287回接近遭遇

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

現実的なOL・五十嵐桃子と、
まん丸メガネの森田遊太郎(異星人レン・ソリュート)。

表向きはイトコ同士でルームシェア歴一年。
お互い惹かれあいながらも、
異星人との恋愛は難問だらけなようで。。。?


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

遊太郎が桃子につれて行かれたのは、
社内に設置されているドリンクカウンターだった。
夕刻のせいか、社員は誰もいない。

「遊太郎、あたしが何を訊きたいのかわかってるよね」

腰に手を当てて桃子が睨み付ける。お決まりのポーズだ。
遊太郎は、彼女をあまり怒らせてはいけないと思ったのか、
はいと素直に答えた。

「探偵事務所に呼ばれた件ですよね。
あれは知り合いの探偵で……」
「知り合い?」
眉をつりあげる。
下手に誤魔化すなよと迫る。
その迫力に圧されて、遊太郎はたどたどしく説明した。

「桃子さん。覚えてますか。時任さんですよ」
「時任?」
しばらく考えて、ああと桃子が気づく。
「確か、あたしが落としたモノを拾って、会社に届けてくれた人だっけ。
なに、あの人。探偵始めてたんだ?」
「はい。偶然にも時任さんの事務所に、
高山係長から、僕の身辺調査の依頼が入ったようで、
時任さんは気がついて僕に連絡を下さったんです」
「へ、そうなの?」

先日遊太郎にかかって来た電話は、時任探偵事務所からで、
先日、今回の件の対策を話し合って来たのだと説明した。

「ふうん。で?あんたのニセの情報を流したってわけか。
でもさあ、あのしつこい高山が納得すると思う?」
桃子はまだ疑うように遊太郎を見やる。
本当に大丈夫なの?と慎重に問い詰めた。

「もちろん連絡先は本物です。
いつでも『本当の僕』と会えるように、
アドレスを高山係長に渡してありますから」
「はあ?会うって、ちょっと」

つい声が高くなり、誰かがドリンクを買いに来たので、
作り笑いで誤魔化しながら奥へ遊太郎を押しやる。

「高山と会うって?」
「呼び出されれば、素顔の僕になって、会うということです」
サラッと答える遊太郎に桃子が噛みついた。
「バカなこと言ってんじゃないわよ。
素顔さらして妙なことになったら知らないからね」
「大丈夫ですよ。普通に話をするだけになるはずです」
「お話しあいが出来る相手かっつーの。
あんた、ほんっとにお人好しだよね」

あの高山のことだ。
何か低レベルなワナを仕掛けてくるに決まっている。
それを承知で、ノコノコ呼び出されて会いに行く気なのだろうか。
それとも、ぼんやりした遊太郎だが、何か考えでもあるのか。
いや、のほほんとしたまん丸メガネを見る限り、
特に何も考えていないように思える。
すると遊太郎がにっこり笑った。

「そろそろ帰りましょうか。
今夜は桃子さんの好きなものを作りますよ」
「ったく」

いつまでも居残っているわけにもいかないので、
桃子は仕方なく遊太郎と一緒にフロアへ戻った。
本当はこんな話をしたかったわけじゃない。
本当に訊きたかったのは、遊太郎の気持ちだ。

(遊太郎は、あたしとずっと暮らしたいと思ってる?
あたしと一生いっしょにいていいって思う。?)

しかし、それを口にする事が桃子にはまだ出来なかった。


〜第288回をお楽しみに〜
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by yu-kawahara115 | 2010-11-07 14:27

第286回接近遭遇「見え透いた企み」

翌日の夕刻。
遊太郎は車の中で係長の高山の際限ないお喋りを聞かされていた。

「見ろよ。高い金を探偵に払った甲斐があるってもんだ。
ちゃんと銀髪野郎の素性がわかったんだからな」
話題は、探偵事務所に依頼した銀髪男の身辺調査の件だった。

「五十嵐の周りに影のようにまとわりついてる、
あの忌々しい銀髪野郎、フリーのルポライターだったんだぜ。
イギリス人で、旅先で五十嵐と出会ったらしい。
しかしよ、ルポライターって胡散臭い奴が多いから、
五十嵐もだまくらかされてるにちげえねえよな」

遊太郎は黙って聞きながら真面目に運転を続けていた。
取引先企業には全て足を運んだので、あとは帰社すれば良いのだが、
延々と高山のお喋りを聞く羽目になってしまったのだ。

「おい、森田。俺の話をちゃんと聞いてるのか?」
「聞いてますよ」
「少しは興味を持って相づちを打つとか、
質問をするとかしたらどうなんだよ?
ったく、なんの面白味もねえ。
独り言してる気分だぜ」
「すみません」
「お前のイトコの五十嵐が、うろんな奴と関わってんだ。
お前だって気になるだろうが」
「はい」

遊太郎は仕方なく同意した。
気になるも何も、高山が目の敵にしている銀髪男は、
遊太郎の本来の姿なのだ。
しかし高山が依頼した探偵が遊太郎の知人であり、
うまくカモフラージュした銀髪男の素性を、
高山が信じているらしいので、内心安堵はしていた。

「銀髪野郎のパソコンのメアドもゲットしたし、
これでいつでも、奴を呼び出せる」
高山は好戦的に拳を握った。
そのあたりで遊太郎はさりげなく質問する。

「高山係長はその男を呼び出して、どうするんですか?」
「ブチのめす。わかりきったこと聞くな」
「すみません」
「お前、さっきからすみませんしか日本語知らねーのか?
まあ、いいや。とにかくマトモにいくと、またやられちまう。
あいつ、カタギじゃねえみたいにクソ強ぇからな。
普通にケンカするんじゃ不利だ。
五十嵐の目の前で大恥をかかせる方法を考えないとな。
五十嵐の目を覚まさせて、俺の方に向かせるためにさ」

楽しげに笑い、探偵から渡されたらしい調査資料を眺めた。
もちろん遊太郎には何が書かれているか見なくともわかっている。
ダミーのプロフィールを考えたのは遊太郎自身だからだ。
高山がストレートに自分に連絡を取れるようにしておかなければ、
高山が懲りもせず別の探偵に調査を依頼しかねない。

「でもよ」
ふと、資料から顔を上げて高山が遊太郎を見た。
「お前、この銀髪野郎と、本当は影でつるんでたりしねえよな?」
鋭い勘ぐりに遊太郎は慌てることなく、
のんびりとした調子で訊き返した。

「つるむ?」
「いや、だってよ。イトコだし、
俺よりかは五十嵐のプライベートは知ってそうじゃね?
なんたって弁当まで作ってたりするし」
「はあ」
「それくらい親しけりゃあ、五十嵐の男関係、なんとなくわかりそうなもんじゃねえか。
それにお前も、五十嵐に惚れてるみたいだしよ」
「そんなことないですよ」

あっさり否定するが、まるで信じてない高山は、
皮肉たっぷりに言った。
「どうせ、片思いだし、自分にゃかなわない。
けど、いつもイジメられてる俺を応援する気もねえ。
だとすりゃ、胡散臭い奴でも銀髪野郎の味方でいようとかさ。違うか?」
「違います。もうすぐ会社に着きますよ」

全く関心のないフリをして、
遊太郎は社有車をチューリップ生命本社の地下駐車場へ動かした。


社内にいる社員はまばらだった。
斎藤課長に帰社報告を済ませた遊太郎は、
待ち伏せしていたらしい桃子に腕を後ろからつかまれ、ヒヤッとした。
周りの目があるため、桃子の顔は事務的に笑みを作ってはいたが、
目は怖かった。

「お疲れ様、森田くん。
ちょっと事務処理で打ち合わせしたいことがあるんだけど」
「あ。は、はい」

首根っこを捕まえられた猫のように、
遊太郎は桃子のあとをついてフロアを出て、
自販機前のドリンクカウンターへ案内された。
彼女の話はわかっている。
スレ違いを理由に、今回の素性調査がどうなったのかを、
まだ桃子に話していなかったからだ。


〜第287回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-10-31 17:18

第285回接近遭遇「彼氏のキモチ」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

部長の神崎から、
桃子と遊太郎の結婚には特に反対の理由もなく、
逆に望ましいとさえ言われたが、
問題なのは遊太郎の意思なのだと桃子は諭された。

「その様子では、まだ森田くんには話してないようだね」
「……はい」

桃子は勢いを失って下を向いた。
言うタイミングがわからないし、実のところ勇気がないのだ。
ひょっとしたら、遊太郎は何も考えてなくて、
結婚したいと思っているのは自分1人なのではないか。
何故なら、遊太郎は前に言ったからだ。
誰ともそうなる気はない、と。

神崎はワインを一口飲んで、優しい表情で桃子を見た。
「桃子くん」
「はい」
「森田くん、いや、レンをそれほどまで好きになってくれて、
私は嬉しい。礼を言わなければ。本当にありがとう」

その言葉を聞いて桃子は真っ赤に顔を染めた。
慌てて両手をバタバタさせる。
「なんで、お礼なんて。そんな……神崎部長!」
「いや。今まで本当に色々な事件に巻き込まれながらも、
桃子くんは一途に彼を思いやり、信じてくれたのだから。
異星人という壁を超えて、愛を育んで来た桃子くんは素晴らしい」
「素晴らしくないですよ。
もっと女らしい地球人だったら良かったけど、
あたしなんか、自慢できるとこ1つもないし、
でも、出会って好きになっちゃったから、仕方ないというか。
遊太郎には、ずっとずっと、
そう、あたしがおばあちゃんになってもそばにいて欲しいんです」

穏やかな神崎が目の前だと、素直に本音が言える。
神崎はしばらく黙って、
何かの思念を読み取るように虚空を眺めたあと、口を開いた。

「森田遊太郎。つまりレンは、幸せとは程遠い場所に身を置いて、
長い間、孤独だった。
そんな彼の心をつなぎとめるには、
生半可な感情や意志では太刀打ちできない。
本気で、ぶつからなければ伝わらないのだよ。
それだけ、レンという男の中には喪失感が在るということだ」
「喪失感」

桃子は息を呑み込んだ。
それは遊太郎、いや、レンがいまだ過去を背負って苦しんでいるからだろうか。
それを完全に克服できる日が来るのか。
克服しなければ、彼は幸せにはなれないというのだろうか。

「桃子くんが本気ならば、レンを地上につなぎとめられるかもしれない。
私はそう信じているのだがね」
「あたしが?」
「そう。全身全霊をこめてぶつかれば。
あるいは、自己犠牲に傾きやすいあの男の心を、
暖かく人間らしいぬくもりで満たすことが出来る可能性はある。
桃子くん次第だな」

応援しよう、と神崎が大きな手をさしのべ、
桃子はおずおずと自分の手をそれに近づけた。
ぐっと強く握られ、彼女は暖かいメッセージを受け取った。
それは、まるでレンの父親のように深く大きな愛情を込めたものだった。

( レンを幸せにしてくれたまえ。
桃子くんなら、それが出来る。私は信じているよ )

桃子は涙が出そうになるのをこらえた。
神崎がこんなにも自分たちを気遣い、支えてくれている。
なんて有り難いことなんだろう。
自分に出来るかどうかわからないけれど、
やれるだけやってみよう。
遊太郎、レンと幸せになるのだ。

「神崎部長、ありがとうございます。
あたし、なんか勇気が出た気がします」

桃子は強く手を握り返し、
茶目っ気たっぷりに笑顔を向けた。



〜第286回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-10-24 20:34

第284回接近遭遇「上司に向かってカミングアウト」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「神崎部長。あたし、どうしたらいいんでしょうか?」

高級レストランの大広間。
桃子はテーブルの向こうにいる神崎に、切羽詰まった表情で訊いた。
もう頼れるのは神崎しかいないと思ったのだ。

「桃子くんは心配性のようだ」
穏やかな笑みで神崎はワインを一口飲んだ。
いついかなる時もダンディで、受け入れる懐の深さを持つ上司である。
「そりゃ心配します。遊太郎はいつもぼやっとしてて、
自分の正体がバレそうになるかもしれないのに、
探偵に呼び出されてノコノコ行っちゃって、
あたしには電話もメールもして来ないんですよ?」

空腹が満たされてパワーが戻って来たらしい桃子は、
ドンとテーブルを叩いて、慌ててすみませんと謝った。
そんな彼女を微笑ましく観察しながら、神崎が答える。

「銀河連盟調査員は常日頃から、
あらゆるリスクに対応できるよう訓練されている。
従って、探偵やマスコミなどが調査しても、
まず真相にたどり着けないようになっているのだ。
何も心配することはないから、安心しなさい」
「そうですか?・・・・・・なら、いいんだけど」

上司である神崎がそう言うのなら、いたずらに焦る必要はないのだろう。
考えてみれば、彼らは地球人ではない。
細かい情報操作は朝飯前なのかもしれない。
豊富に並ぶデザートも終わり、桃子はひと呼吸置いてから、
神崎に真面目な表情を向けた。


「あの、ずっと前から相談したかった事があるんです」
「改まって何かな?」
「さっきの話とは別件で。……プライベートな事なんですけど」
「どうした。桃子くん。
そうかたくならずに遠慮なく話してみなさい」

柔らかく促されて、桃子は息を呑み込んでから、
思い切って溜めていた思いを口にした。

「・・・・・・あたし、遊太郎と結婚したいんです」

早口でそう言ってからキュッと目を瞑り、下を向く。
とんでもない事を、打ち明けてしまった。
でも止められなかった。
ずっと自分だけの胸に隠して、誰か頼れる人に相談をしたかったからである。
しかしすぐに後悔する。
普通に考えると、反対されないはずがないからだ。
恐る恐る顔をあげると、神崎がにこやかに桃子を見つめていた。

「よく言ってくれたね。桃子くん」
「え?」
「いつ決心してくれるのかと私は待っていたのだよ」
「は、はい?」

意味がわからなくて、桃子は目をぱちぱちさせた。
重大なカミングアウトをしたというのに、
神崎はくつろいだ様子で、新しいワインを持って来させ、
桃子にグラスを持たせた。

「神崎部長?あの、反対しないんですか」
「何故かね。結婚ほど素晴らしいイベントはない。
おめでとう、桃子くん。乾杯しよう」
「はあ」

のせられて乾杯をしてしまった桃子は、
神崎が満足そうに話すのを夢見心地で聞くことになった。

「実は最初から、こうなればいいと考えていたのだ。
というのは、調査員は通常1人で住居を構える事の方が多い。
しかし、あえて同居のモデルケースとして、
君たちを選んだのは、いつか異星間の交流を経て結婚をしてほしいと、
私が望んだからだ」

桃子は目を大きく見開いた。
反対どころか、神崎は2人がいつか結婚するように、
望んで同居をさせていたと言うのだ。

「銀河連盟調査団の規則には、
派遣先の現地人、つまり地球人との結婚を禁止する条項はない」
彼女の疑問を払拭するように神崎は説明した。
「私も昔、地球人女性と結婚した経験もある。
むしろ結婚こそ、地球人を知る上で貴重な経験になると、
我々は考えているのだよ」

しかし、と神崎はそこで桃子にやや真剣な眼差しを向けた。

「森田くんも結婚を望めば、の話なのだがね。
彼にはもう話したのかな?桃子くん」
「それは……」

桃子は答えに詰まった。


〜第285回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-10-17 17:00

第283回接近遭遇「桃子、神崎部長に相談する」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

桃子はイライラして残業も手につかないでいた。
遊太郎は外回りで帰って来ないし、
文句を言いたい係長の高山も接待の名目で、
ちゃっかりと遊びに出かけたようだ。

「どいつもこいつも、ムカつく!」

桃子は勢いつけて書類箱をデスクにドンと置き、
まだ居残った他部署の社員たちを震え上がらせた。
桃子が怒っている理由は、ひとつ。
高山が遊太郎、正しくは遊太郎の本来の姿である銀髪男の素性調査を、
探偵に依頼したという件だ。
遊太郎も遊太郎で、さほど慌てる様子もなく、
その探偵事務所からかかってきた電話に呼び出され、
仕事の帰りに立ち寄ると言って、
のんきに会社から出て行ったきり電話やメールの一本もない。

「まあ、もともと、あいつはマメにメールとかしないヤツだけど。
あたしがこんなに心配してんのに、
のほほんとしちゃって、どういう神経なのよ?」

ぶつぶつ文句をたれながら乱暴に仕事用具を片付け、
大股で更衣室に向かおうとした矢先、エレベーターから誰かが降りて来た。
ダンディにスーツを着こなした人物は、桃子を見て穏やかな笑顔を向けた。

「おや、こんな遅くまで残業をしていたのかね。桃子くん」
「神崎部長!」

桃子は天の助けだとばかり大きな声を出し、
慌てて他に誰もいないか辺りを見回した。
すると、神崎は静かに笑い、
せっかちに喋ろうとする彼女をまあまあと優しく制した。

「久しぶりに夕食でもどうかね?
どうせ、森田くんは連絡無しで出歩いたままだろうし、
桃子くんも少し落ち着いた方がいい」
「……はあ」

桃子は顔を赤くした。
おそらく神崎は、桃子がイライラしている原因を見通しているのだろう。
地下駐車場で待っているので着替えて来なさいと微笑んだ。

それからほどなく、部長の神崎と桃子を乗せた黒いBMWは、
夜の街をスムーズに走り抜け、郊外にあるレストランに向かった。
そこはまるでドイツの古城のような荘厳な建物で、
桃子は高い天井やシャンデリアを呆気に取られながら眺め、
神崎の背中を頼りにおぼつかない足取りで、ついて歩いた。
神崎が貸切にしてしまった大広間に通された桃子は、
運ばれてくる様々なコース料理を驚きとともに、
その一級品の味わいを堪能することになった。

「お腹はいっぱいになったかね?桃子くん」
数本灯るロウソクの向こうで、
紅茶を飲みながら、神崎が柔らかく訊いた。
桃子はデザートを口にし、とびきりの笑顔を返した。
さっきまであんなにイライラしていたのに現金なものだ。

「はい。ありがとうございます。
とってもとってもおいしかった。ご馳走さまでした」
「満足してもらえて良かった」
「それにしても、部長はやっぱりグルメなんですね。
こんなに高そうなレストラン、あたし初めてです」
「地球の食べ物は、一応は全て味わってみることにしているのだよ」

そう語った神崎も、遊太郎と同じく異星人である。
チューリップ生命本社人事部長の肩書きは表向き。
実際は、銀河連盟調査団日本支部のキャプテンという顔を持つ。
しかしいまは、50代のダンディな男として、
桃子の良き理解者だ。

「桃子くんのイライラはわかっている。
どうも、地球人は我々とは違う意味で、
相手の弱みを探し出そうと考えるようだ」
神崎が桃子の抱えた問題を先に口にしたので、
桃子は安心したように喋り始めた。
「はい。高山係長がまさか探偵事務所なんかに、
遊太郎の事を調べさせていたなんて知らなくて。
遊太郎も探偵からの電話に平気で呼び出されて行っちゃうし。
あたし、気が気じゃなくて」

こうなったら、遊太郎の直々の上司に聞いてもらうしかない。
桃子は紅茶を一口飲んで、神経な眼差しで神崎に向き直った。

「あたし、どうしたらいいんでしょうか?
教えて下さい。神崎部長」


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by yu-kawahara115 | 2010-10-10 15:41

第282回接近遭遇「幸せとは?」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

遊太郎が手渡したニセのプロフィールに目を通した時任晴彦は、
なるほどと顎に手を当ててニヤリとした。

「銀髪の男はイギリス人系外国人、レン・ソリュート。
職業はルポライターで、不定期に来日している。
旅行好きな五十嵐桃子さんとはソーシャルネット上で知り合った友人同士、か」
読み上げて、メールアドレスを眺め、時任は質問した。

「このアドレスは高山に教えて大丈夫なのかな?遊太郎くん」
「はい。世界中を飛び回るルポライターという設定なら、
電話よりeメールでやり取りをする方が説得力あるでしょう」
「で、高山が会いたいとメールを飛ばしたら、
君はレンくんの姿に戻って会う、と?」
「そうです」

わかったと時任は立ち上がり、インスタントコーヒーを淹れかえた。
しばらく黙ったのち、遊太郎の向かいのソファに座り、
柔らかく口を開いた。

「ところで、遊太郎くん」
「はい?」
「君と桃子さんとのことだけど」
「……」

遊太郎は不意に固い表情になった。
訊かれるだろう事を予測して、少し伏し目がちになる。
「立ち入ったことだとは思うけど、気になるんだ。
君はこれからも桃子さんと暮らすのかな」
「派遣期間が終わるまでです」
「桃子さんがずっと君と暮らしたいと言ったら?
つまり、地球人と結婚することになったらという意味だけどね」
「……それは、ありません」

曇りがちになる遊太郎の顔を、
時任はやっぱりという風に覗き込み、
やがて、失礼と断って煙草を取り出した。

「ごめん。俺も地球人女性と一度は結婚した経験があるから、
君と桃子さんを見ていたら、なんなくほっておけなくて、
つい心配してしまうんだ。
答えにくい質問だったね」
「いえ、いいんです」

今回、係長の高山が遊太郎とは知らずに、
銀髪男の素性調査を探偵に依頼した件で、
ますます桃子の事は慎重に考えなければならないと、
遊太郎は思っていた。

「桃子さんは普通の地球人と結婚をした方が幸せになれます」
「そうかな」
「そうです。僕は調査員で、常に危うい立場にいます。
いつ桃子さんを危険な事に巻き込むかわからない。
平和な生活を保証することが難しいんです。
だから……」

遊太郎はあとに続く言葉を呑み込んだ。
胸の奥が、刺すように痛み出したからだ。
思わず眉を寄せ、右手で抑える。
時任が怪訝な顔になり、慌てて煙草を灰皿の中にねじ込んだ。

「遊太郎くん?」
「大丈夫です。時々、痛くなるだけで」
「ケガでもしているのか?」
「ちょっと。色々あって……」

まさかエネルギー体に穴を開けているとは言えず、
遊太郎はしばらく黙り込んで痛みが通り過ぎるのを待った。
時任が水を運んで来てくれたので、礼を口にして少し飲む。

「相変わらず、君は無茶をしてるんだ」
あえて何も問いただしたりせずに、時任が苦笑いを作る。
遊太郎という男が、普段のんびりしたサラリーマンに扮していながら、
裏では侵入エイリアンを摘発する仕事をしている事を、
時任もよく知っている。

「もっと自分を大切にした方がいい。
遊太郎くんだって、幸せになる権利はあるんだよ」
「……」
「桃子さんもそうだ。
幸せってのはさ、なるとか作るもんじゃなくて、
感じるだけでいいんじゃないのかな」

時任が語る染み入るような言葉を、
遊太郎は目を閉じて聞いていた。
幸せとは何だろう。
桃子にとって、一番幸せを感じられることとは。
胸に虚無の穴を抱えながら、遊太郎は繰り返し模索していた。


〜第283回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-10-03 13:45

第281回接近遭遇「銀髪男の素性は?」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

時任晴彦の探偵事務所を訪問した遊太郎は、
自分の素性を調査しようとしている係長の高山について、
どう対処するべきか考えていた。

高山が依頼した探偵が奇遇にも、
同じ異星人である探偵、時任晴彦であった為、
対策を講じやすくはなっているのだが........

時任はインスタントコーヒーを飲みながら、
少し悪戯っぽい視線を遊太郎に流した。
酸いも甘いも味わった中年男が、
青臭い小僧を見る真似をしてみたかったらしい。

「で、事の原因は三角関係かな?遊太郎くん」
「三角関係?」

時任ほど地球生活に慣れていない遊太郎はキョトンとした。
地球人に紛れて暮らしているものの、
基本的なマニュアルには無い言葉にぶち当たると、
なにげない日常会話でも、つまづく事がしょっちゅうだ。
首をひねる遊太郎に、時任は笑い出した。

「ごめん、ごめん。
ちょっとからかいたくなっただけだよ。
君ってさ、エイリアン狩りはプロだけど、
こと恋愛関連には恐ろしく疎いから」
「はあ......」

その通りなので、遊太郎は怒りもせずに困ったように頭を掻いた。
三角関係の意味がなんとなく理解できたのだ。
「時任さんに依頼して来た高山係長は、桃子さんに関心を持っているんです」
「なるほど。それで、ひょんな事で素顔を晒してしまった君を、
盗撮した高山が嫉妬をしているというワケか」

時任は高山から渡されたらしい写真を見つめた。
暗くてハッキリしていないが、温泉街らしい場所で、
桃子が長身の青年と手をつないでいるところが映り込んでいた。
青年は黒い帽子を被り黒いサングラスをかけてはいるが、
白い襟足から少し覗いた銀色の髪や整った顔立ちは、
遊太郎の素顔に間違いない。
高山はまた、この銀髪の男に殴られてもいる。
今年の夏、海岸で桃子に迫り、襲おうとしたからだ。

「本来の姿の君に思い切り殴られて高山の恨みは募り、
この写真を頼りに調査を依頼してきたというわけか。
地球人にはありがちな恋の逆恨みだね」

時任は苦笑いし、で、どうするのとまん丸メガネの地味な男に訊いた。
いくら調査しても、この童顔な男と、
写真の銀髪青年が同一人物とはまず判らないし、
銀髪青年が何者かは永遠に謎だろう。
もちろん調査する側が地球人の探偵や警察ならば。

「高山には、この男の素性について、
何もわからなかったと俺が報告しておくよ」
それには遊太郎は首を振った。
「いえ。それでは、また高山係長は別の探偵に調べさせたりするでしょう」
「そっか。面倒なヤツに目を付けられたもんだね。
高山って男は、君の弱味を見つけて恋路を邪魔しようとしてるんだな」

恋路と言われて、一瞬遊太郎は顔を曇らせたのを、
敏感な時任は察知したが、何も言わなかった。
地球人との恋愛は難しい。
それは遊太郎より良く経験しているからだろう。

しばらくして、遊太郎が考えを口にした。
「時任さん。僕の、いや、この男の素性を作ってもらえますか?」
「ニセのプロフィール?おやすい御用だけど」
時任が心得たようにニヤリと笑い、遊太郎はメモを取り出した。

「どうせなら、リアリティを持たせた方が納得して、
充分に恨んでくれるかもしれません」
「それ、ヤバくないかな」
彼は遊太郎から渡されたメモを見て肩をすくませたが、
遊太郎はのんびりと答えた。

「大丈夫です。派遣調査員はこういう事態の為に、
ダミーのプロフィールを幾つか持ってるんですよ」
「ヤツは調子にのって、君に電話して呼び出すかもしれないよ?」
「その時は会うことにします」

え?と、時任は飲み干しかけたコーヒーを戻しそうになり、
童顔なサラリーマンをしげしげと眺めた。
何を考えているんだ?と思ったが、
遊太郎は事務的にプロフィールをスラスラと書いて手渡した。


「銀髪男の素性調査をした結果報告を、高山係長にお伝え下さい。
よろしくお願いします。時任さん」


〜第282回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-09-26 14:18

第280回接近遭遇「探偵・時任晴彦、再登場」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

遊太郎の携帯電話が震え、桃子との話が一時中断された。
自販機の向こうで、話をしている遊太郎の背中を睨みつけながら、
桃子はイライラし始めた。

なんて呑気なんだろう?
私情に走る係長の高山が、
探偵を使って遊太郎の素性を調べようと企んでいるのだ。
平気でいられるはずがないのに。
もちろん普段の遊太郎と、
高山が目の敵にする遊太郎は見かけは別人であり、
同一人物だと知れる可能性は少ない。
しかし高山が調査を依頼している銀髪の男と、
遊太郎とが何らかの関係を持っていると思われたら、
ますます遊太郎は高山に目を付けられてしまう。

しばらくして用件が終わったらしい遊太郎が、
桃子のそばに戻って来た。
相変わらずぽややんとして、まるで危機感がない。
桃子は拳を作って、そんな彼の頬をポンと殴る真似をした。

「あたしがどんだけ心配してるかわかってる?」
すると、遊太郎は彼女の拳をふんわりとつかみながら、
はい、と柔らかく頷いた。

「いま、探偵事務所から電話がありました」
「はあ?」

桃子はこれ以上はないというくらい目を大きくして、
彼のネクタイをひっつかんだ。
「ど、どういうこと?もしかして、もうあんたの素性が探偵にバレて……」
「違いますよ、桃子さん」
遊太郎は苦笑しながら桃子の肩に手を置き、
彼女はネクタイから自分の手を離した。
「だって、探偵から呼び出しが来たってことは、
高山の奴が依頼した件の事と関係あるはずよね?」
「さあ、どうなんでしょう」
「どうなんでしょうって。意味わかんない。ちゃんと説明してよ」
「帰ったら説明しますよ」

桃子の焦りをよそに、遊太郎は腕時計をチラッと見た。
今すぐ真相を知りたい桃子は口をパクパクさせたが、
遊太郎はにっこりとスルーして、営業部フロアへ向かって歩き出し、
彼女は奇妙な表情で、のんびりした後ろ姿を見送った。

「ナンなのよっ。遊太郎の馬鹿!」



その夕刻。
仕事を早めに終わらせた遊太郎は、ある雑居ビルの前を訪れていた。
最寄り駅から奥まった場所にあり、ひと気もまばらで、
流行っているとは言い難い探偵事務所は、
二階にひっそりと存在していた。

遊太郎が静かにドアをノックをすると、すぐに中年の男が現れた。
まだ若さを残した愛嬌と渋さを同時に持ち合わせた男である。

「やあ。いらっしゃい。森田遊太郎くん」
「お久しぶりです。時任さん」

昼間に遊太郎に電話をかけて来た探偵とはいうのは、
以前事件絡みで知り合った時任晴彦、その人だった。
時任晴彦は、どうぞと言って狭い事務所の中へ遊太郎を通し、
地味な来客用の椅子に座らせた。

「コーヒーでいいかな。インスタントだけど。
あ、遊太郎くんはコーヒーだめだっけ?」
「頂きます。飲めるようになりましたから」
「そう?良かった。1年以上暮らすと、地球人らしくなるか」

そんな冗談を言いながら、
時任晴彦はコーヒーを遊太郎の前に置き、
早速本題だと話し始めた。

「いやあ、ビックリしたね。
調査の依頼が高山って男から舞い込んで来たときは」
「まさか、時任さんの事務所に依頼していたとは思いませんでした」
「まあ、よその探偵じゃ、絶対君の素性はわからないさ」

係長の高山が雇った探偵が、
偶然にも遊太郎の知人の時任晴彦だったのだ。
遊太郎が異星人だとわかっている時任は、
高山から依頼されて、すぐに遊太郎へ連絡をしてくれたのである。

「で、どうする?なんなら、適当に調査結果出して終わりにするけど。
一応、クライアントだから丁重にね」
時任晴彦がニヤリとしてタバコをふかした。
彼も実はシーマ種族という、
遊太郎よりは地球に永く住み着いている異星人だ。

遊太郎は適当に作られたニセの調査結果を眺め、
どうすれば高山を納得させられるだろうと考えた。


〜第281回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-09-19 14:46

第279回接近遭遇「桃子、怒りが爆発する」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

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その日の夕方、桃子は怒り狂っていた。
社員もまばらになった営業一課のフロアで、
宮本清美がミルクコーヒーが入った紙コップを持って来て、
昼間聞いた話を桃子にバラしたからだ。

「高山係長、桃子の彼氏のこと調べてるって。
探偵事務所に依頼したんだって」
「な……」
開いた口がふさがらず、パクパクさせていると、
清美は、ありえないよねえと明らかに面白がりながら続けた。
「森田クン、優しいから桃子には黙っていてくださいって言ってたけど。
なんかさあ、高山係長って、なんでもやり過ぎるから心配じゃん」
「知らせてくれてありがと。清美」

ミルクコーヒーをごくんと飲み干し、紙コップを握りつぶした桃子に、
清美にギョッとされたが構わず立ち上がり、
高山に文句を言うために広い営業部内を歩き始めた。
「ちょ、ちょっと桃子?」
慌てて追いかけようとした清美は、桃子が怒りに燃えた怖い顔つきで、
かなり速いスピードで探し回るのに追いつけなくなった。


許せない。何なの、あの男!
絶対に高山を捕まえて糾弾し、止めさせなければ。
相手が雲の上の社長でも、許してはおけないと柳眉を逆立てる。
遊太郎の、というより本当の彼の事を探偵を雇って調べようとは、
プライバシー侵害を通り越して、人間として軽蔑してしまう。


社内各フロアを探し回りながら、
桃子は夏の終わりに、海で高山に迫られたことを思い出していた。
あのとき遊太郎はレンの姿で高山を殴った。
殴られて当然の事をしでかしておきながら、
高山は逆恨みをしているわけで、厄介この上なかった。

どこを探しても高山の姿はない。
スケジュールボードには、高山の外出先は書かれていないし、
どこかに隠れている事に違いないのだが。

「桃子さん?どうしたんですか」

諦めかけて給湯室の近くまで来たとき、
ふんわりした声がして、桃子は振り向いた。
自販機でミネラルウォーターを買ったばかりの遊太郎が立っている。
髪を振り乱した桃子を見咎め、少し怪訝そうな表情だ。

「遊太郎。高山係長、どこに行ったか知らない?」
つい怒ったように詰問すると、
彼はああ、とにっこりした。
「合コンで知り合った女性とランチを取ると言って出かけました。
行き先を適当に書いておいてくれと頼まれたのに、
僕、うっかり忘れてしまって」
「はあ?」

遊太郎ののんびりした説明に、桃子は思いきり脱力した。
探しても見つからないはずだ。
無駄に時間とエネルギーを使い果たした気がして、
桃子は給湯室になだれ込み、水を汲んで飲み干した。
遊太郎が心配そうにミネラルウォーターを差し出す。

「良かったら、これを飲んでください。まだ開けていませんから」
「……」

桃子は黙って遊太郎からミネラルウォーターを受け取り、
礼も言わずに飲み出した。
半分近く飲んだあと、ボトルを給湯室の棚にドンと置いて、
遊太郎の相変わらずぽややんとした顔を睨みつける。

「遊太郎は、悠長ねえ」
「はい?」
「高山があんたのこと、探偵使って調べてるっていうのに」

遊太郎は、まん丸メガネの奥の子犬のような目をちょっと見開き、
知ってたんですかと苦笑いした。

「大丈夫ですよ。桃子さんが心配しなくても」
「大丈夫じゃないわよ。
探偵っていうのはね、あんたのこと24時間つけ回して、
隠し撮りも聞き込みもしまくるんだよ?」

脱力していたが、怒りを再燃させる桃子に、
遊太郎は戸惑った。
やはり、桃子にまた要らぬ心配をかけさせているからだ。
そこへ、遊太郎の携帯が震えた。
ディスプレイには見知らぬ電話番号が光っていた。


〜第280回をお楽しみに♪〜
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by yu-kawahara115 | 2010-09-12 11:47