第131回接近遭遇「ボスの正体は?」 |
あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 最近ようやく恋人モードに♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「いかがですか?お嬢さん。 地球のマリファナなんかより、ずっとハイになれるでしょ」 エイリアン商人である白衣の男は、 得意げに注射針をアリサの腕に刺し込んでいた。 速やかに黄色い液体が吸い込まれ、 代わりに無色透明な気体のようなものが吸い取られてゆく。 隣で縛られている晴彦にはどうすることも出来ずに、 この光景を見続けるしかなかった。 男は抜き取った生体エネルギーを別の黒いケースに入れた。 その中には女子高生たちのものらしい、 大量の生体エネルギーのストックが並べられていた。 アリサは猫のような目をトロンとさせて、 気だるそうにつぶやいた。 「マジ、煙草よりはキクかも…」 「でしょ?」 男は満足そうにケースをしまい込み、チラッと腕時計を見た。 「女の子なんだし、 銀河連盟で不法侵入の摘発なんてつまらない仕事を忘れて、 自由にトリップをお楽しみなさい」 そして、いそいそと片付け始める。 「さてさて。どうせ私はマークされているし、 代わりの調査員が派遣されるのも嫌ですしね。 まあ、けっこう商売にはなりましたから、 いまが潮時かもしれません」 2人がもはや逃げられるはずがないと考え、 エイリアン商人は余裕たっぷりに地下倉庫から立ち去った。 「君。大丈夫か?」 さっきから気が気でない晴彦が声をかけた。 アリサが危険な注射を甘んじて受けたからだ。 …と、その時である。 「誰に向かって言ってんの?」 彼女の威勢の良いセリフと同時に、 晴彦の身体を封じていた縄が、空間を切るように火花を散らして分解した。 「な…っ!」 てっきりトリップしているのだと思っていた晴彦は、 立ち上がって自分を見下ろすアリサを、 驚愕の顔で受け止めた。 「あんな子供だましで、 あたしを飼い慣らそうなんて1億年早い」 「……」 すっかり挑戦的な彼女に戻っている。 頼もしいやら恐ろしいやら複雑だった。 「行くよ」 「行くって、どこへ?」 「ミキに会いに」 ミキとは、ライブハウスの秘密を話してくれた女子高生である。 「そりゃ、彼女の身は心配だが、 さっきの男を捕まえなくていいのか? 自分のボスと落ち合って逃げるつもりだぞ?」 しかしアリサはそれには答えもせず、高飛車に命令した。 「来ないなら置いていくけど?」 晴彦はやれやれと苦笑しながら立ち上がる。 口の上でも彼女相手では全く勝ち目はなさそうだ。 それから約30分後。 ひと気が全くない深夜の陸橋。 欄干に肘をついて疲れた顔をしたミキの姿があった。 「何やってんの」 突然ハスキーな女の声がして、彼女はビクッと震えた。 橋の向こうから、真っ赤に逆立つ髪をした女が近づいて来たからだ。 「アリサ…!」 ミキの表情は一瞬硬くこわばったが、すぐに笑いを作った。 「な、何でここに?」 「あたしの嗅覚は猫並みでね。なんとなく」 「そ、そうなんだ。でもアリサ、無事だったんだね」 「どうして?」 「だって。あたし、あのことチクったから。 あれからライブハウスのひとに、 何かされたんじゃないかと思って」 橋の真ん中で2人きりになった時、 アリサは悠然と煙草を取り出した。 「注射されたよ」 「やっぱり?」 ミキが一瞬嬉々としたのをアリサは見逃さなかった。 「ふうん。あんたのベタなシナリオ通りってわけ?」 「え…」 見渡す限りの暗い海。 アリサの口から吐かれる白い煙だけが、妙に目立つ。 「こんな時間に一体誰を待ってるの」 「……」 ミキは答えに詰まって動揺する。 「と、友達まってて」 「へえ。あんたの友達って、あのモヤシみたいな悪徳商人?」 「!」 その時、ミキの視界に入ったのは白衣の男だった。 晴彦が背後で手を縛り上げているせいか、 ひどくぎこちない格好で歩いて来る。 「ミキを探していたら、 ちょうどそこで見つけて捕まえたんだけど?」 「……」 するとミキの唇から、 およそ少女とは思えぬ枯れた声がもれた。 「マハル、しくじったの?」 ~第133回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2008-12-24 21:48
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