人気ブログランキング | 話題のタグを見る
excitemusic

ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
ICELANDia
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


第121回接近遭遇「温泉地の小粋なユーレイ?」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

温泉旅館の本館から、女たちの悲鳴が聞こえた。
その声をキャッチした遊太郎は、
浴衣のまま様子を見に行くことにした。


別館から少し離れた本館ロビーでは、
露天風呂で会った温泉ギャルたちが騒いでいた。
彼女たちを前に番頭と仲居の2人がオロオロしている。

「どうしたんですか?」
仲居に声をかけた遊太郎へ、女たちが取り囲んで喋り出した。
「あっ、さっきのメガネの高校生!」
「ねえ聞いてよ。ユーレイが出たの」
「着物着たヘンなヤツが廊下をウロウロしてさあ、
目の前でパッと消えたんだよ」

慌てて番頭が頭を下げた。
「お客様。お休みのところ申し訳ありません。
何でもございませんので、お部屋にお戻りください」

しかし他の宿泊客達もわらわらとロビーに集まり、
番頭たちはいよいよ誤魔化すことができなくなった。
「何だ?説明しろよ」
「幽霊が出るって噂あったけど、ホントなんですか?」
口々に聞く客たち相手に番頭は観念して話し始めた。

「はあ…あのう、実は、まだこの旅館が立つ前から、
この土地に居着いている者のようで、
特に悪いことをするわけではないのですが、
お祓いをしても出て行って頂けないようで…はい」

女たちがここぞとばかり抗議する。
「悪いことしてないって、
夜に現れたら安心して泊まれないじゃん」
「も、申し訳ございませんっ!」
平謝りになる番頭と、文句をつける客たちをよそに、
遊太郎はそっと辺りをスキャニングしてみた。
エイリアンなら慣れているが、相手が幽霊となると…。
その時。


(こっち、こっち)

ふいに頭の中から男の声が聞こえてきた。
遊太郎は用心深く、その声がする方向に歩き出し、
導かれるままに外に出た。
秋風が心地よい夜。
旅館の裏には雑木林が延々と続き、
さらに歩いていくと、
忘れ去られたように小さな稲荷の祠を見つけた。

「?」

遊太郎は少し驚いた。
その祠の前に誰かが立っていたのだ。
白地に藍色の縞模様の着流しに山吹色の羽織りを着た、
30歳前後の男である。
彼は遊太郎を見て、切れ長の目を細めた。

「いい月夜だねえ」

風変わりだが、見覚えがある恰好だと遊太郎は思った。
桃子が見ているテレビドラマに、
そんな姿をしている人物が登場するからだ。
それは確か、江戸時代の町人だったような…

遊太郎は普通に挨拶をした。
「僕は森田遊太郎といいます。あなたは?」
「俺かい?通り名は遊び人の三吉さ」

彼は祠にぱんぱんと柏手を打った。
幽霊とは思えない質感があり、もちろん足もある。

「三吉さん、あなたはそこの温泉旅館に住み着いた幽霊なんですか?」
思い切って質問すると、着物の袖に手を入れ、
三吉は気だるそうに歩き出した。

「立ち話もなんだ、ちょいと付き合ってくんな。遊太郎さん」
月明かりの中を、ひょいひょいと歩く三吉。
まだ少し警戒しながらもついて行くと、
雑木林の奥に小さな池と木のベンチがあった。
ベンチには古い造りの釣り道具が置かれていて、
三吉はひょいと座り、糸を池に投げて釣りを始めた。

「秋の夜長。ゆっくり話でもしようじゃないか」
「はあ…」
仕方なく遊太郎は彼の隣に腰をおろす。

「もう百数十年になるかねえ。
昔、ここにゃ出会茶屋があって、女と待ち合わせていたものさ」
「そうなんですか」

出会茶屋だと言われても、
正直なところ遊太郎にはさっぱり分からない。
この三吉という男は、
江戸時代に生まれてから今まで成仏もせずに、
旅館に夜な夜な現れたりしているのだろうか。
そんなことを考えていると、三吉がじっと遊太郎を見た。


「お前さんは、こっちのおひとじゃあ、ないねぇ?」
「え……」

遊太郎は驚いて、彼の顔を見た。

何気なく遊太郎の正体を見破った、
この不可思議な幽霊は何者なのか。


~第122回をお楽しみに♪~
by yu-kawahara115 | 2008-11-19 22:19
<< 第122回接近遭遇「宇宙人と幽霊」 第120回接近遭遇「遊太郎×温... >>