第121回接近遭遇「温泉地の小粋なユーレイ?」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 超童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 最近ようやく恋人モードに♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 温泉旅館の本館から、女たちの悲鳴が聞こえた。 その声をキャッチした遊太郎は、 浴衣のまま様子を見に行くことにした。 別館から少し離れた本館ロビーでは、 露天風呂で会った温泉ギャルたちが騒いでいた。 彼女たちを前に番頭と仲居の2人がオロオロしている。 「どうしたんですか?」 仲居に声をかけた遊太郎へ、女たちが取り囲んで喋り出した。 「あっ、さっきのメガネの高校生!」 「ねえ聞いてよ。ユーレイが出たの」 「着物着たヘンなヤツが廊下をウロウロしてさあ、 目の前でパッと消えたんだよ」 慌てて番頭が頭を下げた。 「お客様。お休みのところ申し訳ありません。 何でもございませんので、お部屋にお戻りください」 しかし他の宿泊客達もわらわらとロビーに集まり、 番頭たちはいよいよ誤魔化すことができなくなった。 「何だ?説明しろよ」 「幽霊が出るって噂あったけど、ホントなんですか?」 口々に聞く客たち相手に番頭は観念して話し始めた。 「はあ…あのう、実は、まだこの旅館が立つ前から、 この土地に居着いている者のようで、 特に悪いことをするわけではないのですが、 お祓いをしても出て行って頂けないようで…はい」 女たちがここぞとばかり抗議する。 「悪いことしてないって、 夜に現れたら安心して泊まれないじゃん」 「も、申し訳ございませんっ!」 平謝りになる番頭と、文句をつける客たちをよそに、 遊太郎はそっと辺りをスキャニングしてみた。 エイリアンなら慣れているが、相手が幽霊となると…。 その時。 (こっち、こっち) ふいに頭の中から男の声が聞こえてきた。 遊太郎は用心深く、その声がする方向に歩き出し、 導かれるままに外に出た。 秋風が心地よい夜。 旅館の裏には雑木林が延々と続き、 さらに歩いていくと、 忘れ去られたように小さな稲荷の祠を見つけた。 「?」 遊太郎は少し驚いた。 その祠の前に誰かが立っていたのだ。 白地に藍色の縞模様の着流しに山吹色の羽織りを着た、 30歳前後の男である。 彼は遊太郎を見て、切れ長の目を細めた。 「いい月夜だねえ」 風変わりだが、見覚えがある恰好だと遊太郎は思った。 桃子が見ているテレビドラマに、 そんな姿をしている人物が登場するからだ。 それは確か、江戸時代の町人だったような… 遊太郎は普通に挨拶をした。 「僕は森田遊太郎といいます。あなたは?」 「俺かい?通り名は遊び人の三吉さ」 彼は祠にぱんぱんと柏手を打った。 幽霊とは思えない質感があり、もちろん足もある。 「三吉さん、あなたはそこの温泉旅館に住み着いた幽霊なんですか?」 思い切って質問すると、着物の袖に手を入れ、 三吉は気だるそうに歩き出した。 「立ち話もなんだ、ちょいと付き合ってくんな。遊太郎さん」 月明かりの中を、ひょいひょいと歩く三吉。 まだ少し警戒しながらもついて行くと、 雑木林の奥に小さな池と木のベンチがあった。 ベンチには古い造りの釣り道具が置かれていて、 三吉はひょいと座り、糸を池に投げて釣りを始めた。 「秋の夜長。ゆっくり話でもしようじゃないか」 「はあ…」 仕方なく遊太郎は彼の隣に腰をおろす。 「もう百数十年になるかねえ。 昔、ここにゃ出会茶屋があって、女と待ち合わせていたものさ」 「そうなんですか」 出会茶屋だと言われても、 正直なところ遊太郎にはさっぱり分からない。 この三吉という男は、 江戸時代に生まれてから今まで成仏もせずに、 旅館に夜な夜な現れたりしているのだろうか。 そんなことを考えていると、三吉がじっと遊太郎を見た。 「お前さんは、こっちのおひとじゃあ、ないねぇ?」 「え……」 遊太郎は驚いて、彼の顔を見た。 何気なく遊太郎の正体を見破った、 この不可思議な幽霊は何者なのか。 ~第122回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2008-11-19 22:19
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