第116回接近遭遇「引きこもりエイリアン?」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 最近ようやく恋人モードに♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「死にたくなければ、このビルから早く逃げろ」 レンは、そう言ってサングラスの向こうから強い視線を流した。 桃子を引っ張り込んで居座っているのは、 おそらく不法侵入したエイリアンであり、 何も知らない高山と祥子を早く遠ざけた方がいいからだ。 「な、何ワケのわからねえことを言ってやがる? オレに命令すんなっ!」 高山はまだ虚勢を張っていた。 そうだ。この男の雰囲気に呑まれて忘れていたが、 オレの目的は、こいつを呼び出して、 オレの方が男として上だということを示す事だったんだ。 ということは、ヤツより先に彼女を助け出した方が勝つ。 「いいか?若造。よっく聞け。 五十嵐は、このオレが助け出す。 お前みたいなカッコつけの激しいヤツより、 オレの方が腕力は上だ。 学生時代、ボクシングでならしたからな。 ケンカだって、その辺のヤツより場数が違うんだよ。 そこんところを思い知らせてやる」 調子が出て来た。 男のプライドにかけて引き下がるワケにはいかない。 「五十嵐を引っ張り込んだヤツは、 たぶんこの辺りを根城にしたホームレスだぜ。 捕まえて警察に突き出せば万事解決さ」 それに彼女を助け出せば、自分の株も上がるというものだ。 すっかり都合の良いストーリーを作り上げ、 高山は勢い良くドアに体当たりをし始めた。 「やめろ」 レンは水のように冷静に制するが、聞くタイプではない。 ついに別の部屋からパイプ椅子を持ち出して、 大きく振り上げ、ドアに投げつけようとした。 その時。 閉ざされていたドアがわずかに開き、 緑色のロープのようなものがヒュルヒュルと飛び出した。 「うわっ…!」 「高山係長…!」 祥子の金切り声が響く。 それは太い植物のツルのような触手だった。 高山の身体に何重にも巻きつき、 強い力で部屋の中へ引っ張り込もうとしている。 そこでレンはやむなくサイキックガンを取り出した。 異様な形の銃を見た高山がギョッとして叫ぶ。 「お、お前。なんで銃なんか持ってやがる? おいっ、馬鹿。撃つなっ!」 彼はパニックに陥り一層暴れ、もがいた。 「動くな」 レンは、手慣れたようにサイキックガンの照準を合わせ、 迷う事もなく放射した。 白い閃光が伸びて、触手たちが鮮やかに切断されてゆく。 床に尻から落ちた高山の元へ祥子が駆け寄った。 「高山係長、やっぱり、ここから早く逃げた方が…」 「う、うるせえっ」 切断された触手たちは、しばらく床の上でのたくっていたが、 今度はゾロゾロとドアの向こうへ後退を始めた。 そのタイミングをレンが見逃すはずがなく、 再び閉まろうとしたドアを撃ち、 周囲の壁と共に、あっさり破壊した。 剥き出しにった真っ暗な内部には、 なんと植物の群生が天井までびっしりと覆い尽していた。 その真ん中に何かがまばゆく光っている。 「あ、あれ、五十嵐さん…?」 「なんだと?」 祥子が指差した先には、巨大な繭があり、 その中に桃子が丸くなって包まれていた。 まるでゆりかごに身を任せたように、恍惚とした表情で眠っている。 「………」 何事か考えていたレンは、サイキックガンを今度は繭の方へ向けた。 それを見た高山が驚いたように叫ぶ。 「撃つ気か!馬鹿! あン中に五十嵐がいるのが見えねえのかよ?」 こいつ、やっぱりヤバい。危ないヤツだ。 銃を不正所持しているし絶対カタギじゃない。 そんな高山の声に、植物の群生も威嚇するようにゾロゾロと蠢き、 その触手で繭を覆い隠そうとしている。 しかしレンは平然と真っ直ぐ繭を狙いながら、 よく通る声で呼び掛けた。 「そろそろ出て来たらどうだ? でなければ、君の大事なものが消えるぞ」 すると、繭の向こうに隠れていた人物が、 ゆっくり、その姿を現した。 高山と祥子は予想外な展開に言葉を失う。 近づいて来たのは、 まだ幼い普通の少年だったのである。 ~第117回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2008-11-04 22:43
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