第104回接近遭遇「桃子、銀河連盟ステーションへ」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 最近ようやく恋人モードに♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ (ウソみたい…。本当に、本当に現実なの?) 遊太郎に会いたいと言ったら、 まさかこんな遠すぎる所へ案内されるとは、 桃子の想像をはるかに越えていた。 そう、ここは月の裏側に隠れて浮遊する、 銀河連盟ステーションなのだ。 最も、宇宙船に乗ってやって来たわけではない。 桃子の会社の非常用エレベーターを利用したのだ。 神崎部長に説明されてもさっぱり分からなかったが、 彼らは簡単に人間を転送できるテクノロジーを持っているらしい。 着いた早々に、雑菌除去シャワーを浴びるよう指示され、 銀色のぴったりしたスーツに着替えさせられた。 そして、あとで医療機関へ連れて行くから、 ゲストルームで待つようにと神崎に言われたきり、 たった1人にされてしまったのである。 誰もいない広すぎる楕円形の部屋。 緊張をほぐす為に伸びをしてみた。 そして、自分の無理な願いを聞き入れ、 ここまで案内してくれた神崎の事を思った。 初めて知ったが、見慣れた神崎も仮の姿とは驚きだった。 普段はダンディな日本人紳士なのに、 本当は知的な褐色の瞳、ブラウンの髪をしていた。 体格はがっしりしていて、やはり外国人のように見える。 それでも、醸し出す穏やかな波動は変わらなかった。 「失礼、桃子君。 私の本当の名前はロータス。 驚かせて申し訳ないが、私も地球人をコピーしているのです」 あらゆる事が、あまりにもスケールが違いすぎるので、 ひょっとしたら、この巨大なステーション全体が、 よく出来たSF映画のセットなのかもしれないとさえ、 桃子は思ってしまった。 (でも、何だっていい。早く遊太郎に会わせて欲しい。 あのままマンションにいたら、心配で気が変になりそうだった。 だから、こんな所にまで来たんだもの。 …でも、遊太郎。本当に大丈夫なの?) 酷い怪我をして重体だという遊太郎。 ひと目でもいい、会いたかった。 しかし神崎であるロータスの迎えはまだ来ない。 その頃。 ステーションの中にある医療機関、つまり集中医療センターで、 ロータスはドクター達に再度質問をしていた。 「レンの容体は?変わらないのかね」 すると、彼ら医師団がモニター画像を指しながら説明した。 「腹部の傷は経過良好です。 ただ、磁気性のあるチップを脳に長時間インプラントされていたので、 脳神経へのダメージが大きい」 「だから意識が回復しない?」 「ええ。それに失血による衰弱も激しいので」 「右目はどうだ?」 「角膜の損傷は処置が終わりました。しかし見えるかどうかは…」 「これも意識が戻らないと分からないという訳か…」 ロータスは針のようなチップが浮いているシリンダーを手にした。 こんな物を頭の中に入れられ、数日間もよく動き回れたものだ。 全く我慢強いにもほどがある。 集中医療センターには、銀白色のカプセルが並んでいて、 その中のひとつにレンは身を横たえていた。 両目は長方形の白いアイガードに覆われ、 耳から直接周波数を送信する小型ヘッドホンが装着されている。 「キャプテン・ロータス。 ゲストルームに地球人女性を待たせていると聞きましたが、 レンに会わせる為なのではなかったのですか?」 スタッフにそう聞かれ、ロータスは険しい表情をした。 「彼女が強く望んだので連れて来てしまったのだが、 こんな彼の姿を見ればショックが大きいだろう…。 そう思うと、会わせる事に迷うのだよ」 そこへ誰かが近づく足音がした。 「女はあなたが思うほど弱い生き物じゃないわ。ロータス?」 華やかな声に振り向くと、場違いに豪華な美女が微笑んでいた。 天才ヒーラーである女医の天野律子である。 「ドクター律子。来ていたのか」 ロータスが溜めていた息を吐き出すと、 彼女はカプセルの中のレンを見つめながら、 艶っぽくこう言った。 「あの桃子さんなら大丈夫。それに最近は、 お姫様が王子を目覚めさせるものよ?」 ~第105回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2008-10-01 00:07
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