第99回接近遭遇「つながり」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 最近ようやく恋人モードに♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 復讐に燃えるガナック・ギアにより、 今度は遊太郎の母親がマインドコントロールされてしまった。 現在の遊太郎が別人であると、洋子に思わせたのだ。 その夜遅く、マンションへ父親の春樹が遊太郎を尋ねて来た。 「さっきはすまなかったね。遊太郎」 少し憔悴したようにリビングに座り込む。 遊太郎はテーブルを挟んで向かいに座り、 桃子は遠慮がちにキッチンに立った。 「それで、お母さんは大丈夫?」 遊太郎は春樹を労るように聞いた。 春樹はああ、と頷いて眉間を指で揉んだ。 「ちょっと落ち着いたので寝かせて来たが。 洋子は、混乱していて自分でもよく分からないそうだ。 いまの遊太郎はニセモノだと、頭の中で声がするらしい。 元々神経質なところがあるから、ノイローゼだと思うんだが…」 「お父さんは…」 と、遊太郎はゆっくりと質問した。 「お父さんは、どう思う? ひょっとしたら僕が遊太郎じゃないかもしれないって、 考えたことはある?」 桃子はギョッとした。 遊太郎が直球で聞いたからだ。 しかし、彼は真面目な顔で父親の春樹の意見を受け止めようとしている。 「…遊太郎」 しばらく真剣に息子の顔を見ていた春樹は、 慎重に言葉を選びながら答えた。 「お前は確かに、変わった。 カナダで一緒に暮らしていた頃とは違うところも多い。 だから久しぶりに会って、 私達も正直戸惑っていたのは本当だ」 やっぱり、と桃子は身が縮む思いだった。 親子だからこそ、 他人には分からない微妙な違和感を感じやすいだろう。 春樹はいったん立ち上がり、遊太郎の隣に座り直した。 「だからと言って誤解しないでくれ。遊太郎。 お前は私の息子に違いはない。 お母さんだってそう思ってる。 ただ、離れて暮らしているうちに、 心の中で隔たりを感じてしまっただけなんだと思うんだ」 遊太郎はしばらく黙っていたが、 意を決したように口を開いた。 「そうだね。お父さん達の気持ち、分かるよ。 確かに変わったかもしれないって自分でも思う。 日本に来て、たくさんのことがあったせいもあるけど。 でも、どう見えていようと僕は…」 真摯な瞳が真っ直ぐに春樹に向けられている。 「僕は、僕なんだよ。 それに、お父さんやお母さんを、 大切に思っていることだけは変わらない。 それだけは信じてほしいんだ」 「遊太郎…」 春樹の手が遊太郎のそれへ伸び、しっかりと握りあった。 遊太郎は本物の遊太郎のコピーでしかないかもしれない。 しかし、それが何だというのだろう。 桃子は、涙ぐんでしまった。 ( 遊太郎は、本当に遊太郎であろうとしてる。 雪山に遭難してしまった遊太郎の代わりに、 彼の人生を受け継いで両親を愛そうとしてるんだね) 夜も更けて、春樹がホテルに戻った頃。 遊太郎は、出かける支度をし始めた。 「やっぱり、ガナックに会いに行くんだ」 諦めたように声をかける桃子へ、遊太郎が頷いた。 「ガナック・ギアは、 ついに地球人を巻き込んでしまいました。 被害を与えています。 調査員として、僕は放置できません」 もう個人的な問題ではなくなったという事か。 「ねえ…」 「はい?」 「あたしもついて行っていい?」 「それは、駄目です」 断られるのを覚悟して言ってみただけだ。 ふいに、遊太郎の胸に柔らかいものがぶつかった。 「桃子さん…」 「ちゃんと帰って来て」 桃子はきゅうっと遊太郎の背中を抱きしめて、 意を決したように離れた。 強気なフリをして、遊太郎をしっかりと見つめる。 「絶対命令よ。ちゃんと帰って、 あたしに世界一美味しいスープを作ること!」 遊太郎は微笑した。 実際に桃子の顔は見えていなくても、感じることはできる。 彼女はきっと怒ったような泣きたいような顔をしているのだと。 「わかりました。 桃子さんのために、特製のスープを作ります」 にっこり笑って、 遊太郎の姿が空間からかき消えた。 桃子はその残像に向かって怒鳴った。 「遊太郎のバカっ」 もう自分に出来ることは、 彼を信じて待つしかないんだ。 桃子はもう一度唇を強く結んで、 泣きたい気持ちを我慢した。 ~第100回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2008-09-15 23:33
|
<< 第100回接近遭遇「対決!レン... | 第98回接近遭遇「遊太郎の正体... >> |