人気ブログランキング | 話題のタグを見る
excitemusic

ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
ICELANDia
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


第99回接近遭遇「つながり」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~
★森田遊太郎(23)★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、
最近ようやく恋人モードに♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

復讐に燃えるガナック・ギアにより、
今度は遊太郎の母親がマインドコントロールされてしまった。
現在の遊太郎が別人であると、洋子に思わせたのだ。


その夜遅く、マンションへ父親の春樹が遊太郎を尋ねて来た。

「さっきはすまなかったね。遊太郎」
少し憔悴したようにリビングに座り込む。
遊太郎はテーブルを挟んで向かいに座り、
桃子は遠慮がちにキッチンに立った。

「それで、お母さんは大丈夫?」
遊太郎は春樹を労るように聞いた。
春樹はああ、と頷いて眉間を指で揉んだ。

「ちょっと落ち着いたので寝かせて来たが。
洋子は、混乱していて自分でもよく分からないそうだ。
いまの遊太郎はニセモノだと、頭の中で声がするらしい。
元々神経質なところがあるから、ノイローゼだと思うんだが…」


「お父さんは…」
と、遊太郎はゆっくりと質問した。
「お父さんは、どう思う?
ひょっとしたら僕が遊太郎じゃないかもしれないって、
考えたことはある?」

桃子はギョッとした。
遊太郎が直球で聞いたからだ。
しかし、彼は真面目な顔で父親の春樹の意見を受け止めようとしている。

「…遊太郎」
しばらく真剣に息子の顔を見ていた春樹は、
慎重に言葉を選びながら答えた。

「お前は確かに、変わった。
カナダで一緒に暮らしていた頃とは違うところも多い。
だから久しぶりに会って、
私達も正直戸惑っていたのは本当だ」

やっぱり、と桃子は身が縮む思いだった。
親子だからこそ、
他人には分からない微妙な違和感を感じやすいだろう。


春樹はいったん立ち上がり、遊太郎の隣に座り直した。
「だからと言って誤解しないでくれ。遊太郎。
お前は私の息子に違いはない。
お母さんだってそう思ってる。
ただ、離れて暮らしているうちに、
心の中で隔たりを感じてしまっただけなんだと思うんだ」

遊太郎はしばらく黙っていたが、
意を決したように口を開いた。

「そうだね。お父さん達の気持ち、分かるよ。
確かに変わったかもしれないって自分でも思う。
日本に来て、たくさんのことがあったせいもあるけど。
でも、どう見えていようと僕は…」

真摯な瞳が真っ直ぐに春樹に向けられている。

「僕は、僕なんだよ。
それに、お父さんやお母さんを、
大切に思っていることだけは変わらない。
それだけは信じてほしいんだ」
「遊太郎…」

春樹の手が遊太郎のそれへ伸び、しっかりと握りあった。


遊太郎は本物の遊太郎のコピーでしかないかもしれない。
しかし、それが何だというのだろう。
桃子は、涙ぐんでしまった。

( 遊太郎は、本当に遊太郎であろうとしてる。
雪山に遭難してしまった遊太郎の代わりに、
彼の人生を受け継いで両親を愛そうとしてるんだね)


夜も更けて、春樹がホテルに戻った頃。
遊太郎は、出かける支度をし始めた。

「やっぱり、ガナックに会いに行くんだ」

諦めたように声をかける桃子へ、遊太郎が頷いた。

「ガナック・ギアは、
ついに地球人を巻き込んでしまいました。
被害を与えています。
調査員として、僕は放置できません」

もう個人的な問題ではなくなったという事か。

「ねえ…」
「はい?」
「あたしもついて行っていい?」
「それは、駄目です」

断られるのを覚悟して言ってみただけだ。
ふいに、遊太郎の胸に柔らかいものがぶつかった。

「桃子さん…」
「ちゃんと帰って来て」

桃子はきゅうっと遊太郎の背中を抱きしめて、
意を決したように離れた。
強気なフリをして、遊太郎をしっかりと見つめる。

「絶対命令よ。ちゃんと帰って、
あたしに世界一美味しいスープを作ること!」

遊太郎は微笑した。
実際に桃子の顔は見えていなくても、感じることはできる。
彼女はきっと怒ったような泣きたいような顔をしているのだと。

「わかりました。
桃子さんのために、特製のスープを作ります」

にっこり笑って、
遊太郎の姿が空間からかき消えた。
桃子はその残像に向かって怒鳴った。

「遊太郎のバカっ」

もう自分に出来ることは、
彼を信じて待つしかないんだ。
桃子はもう一度唇を強く結んで、
泣きたい気持ちを我慢した。


~第100回をお楽しみに♪~
by yu-kawahara115 | 2008-09-15 23:33
<< 第100回接近遭遇「対決!レン... 第98回接近遭遇「遊太郎の正体... >>