第97回接近遭遇「ガナック・ギアの新たな罠?」 |
~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~ ★森田遊太郎(23)★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は童顔メガネのおっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ異星人レンである。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているが、 最初ようやく恋人モードに♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 月の裏側にある銀河連盟ステーションで、 上司ロータスは、レンの帰還報告を受けていた。 「レン、君は少し放浪癖があるようだな?」 「すみません。ご心配をおかけしました」 2日間無断で職務放棄をしてしまったレンを、 ロータスは責めるというよりは経緯を聞き出すように、 デスクからじっと凝視していた。 「それで。ガナック・ギアにやられたのは、やはり目なのか?」 「…はい」 「まさか失明などしていないだろうな?」 この質問にレンは眉をやや曇らせた。 「…何?本当に見えていないのか?」 ロータスの表情が険しく変わる。 「…いえ。左目は大丈夫です」 何が大丈夫なのか、とロータスは呆れたように首を振った。 全くこの部下は、何故これほど己自身の危機には無頓着なのだろう。 「ちょっと待ちたまえ。レン。 失明した上に幻覚症状まであるのだろう?」 「そうです」 「このままでは脳神経がやられる。 集中治療カプセルに入りなさい。 事によっては緊急手術だ。 ガナックに何かをインプラントされている可能性がある」 インプラント。 つまり肉眼では見えない有害なチップを、 脳の中に植え込まれたかもしれないというのだ。 「いえ、そうとは思えません。 それに僕はこれから、ガナック・ギアと会うつもりです」 「ガナックと?無茶なことを」 しかし、レンは止めても聞かない人間だと、 ロータスは心の内で分かってはいた。 「ガナック・ギアは、銀河連盟パトロールに監視させている。 滞在中のホテルから動いてはいないようだ。 すぐに捕まえる事はできるが?」 「いえ、僕は話したいだけです」 「話?」 ロータスは、レンに何かを感じたように、 全く違う質問をした。 「…そういえば、まだ聞いていなかったが、 この2日どこへ行っていた?」 聞かれて、彼は考えながら答えた。 「気がついたら、かなり山深い寺にいて… ある和尚に会いました。 そこで、とても大事なことを教えられたんです」 「和尚?」 一瞬、ロータスの表情が純粋な驚きに変わった。 「もしかしたら、それは典然和尚か?」 今度はレンが驚いた。 何故知っているのだろう。 「はい。キャプテン・ロータス。 どうして、典然和尚のことを…?」 するとロータスは、ただ苦笑いをするだけで、 そうかと言ったきり、その疑問には答える気はなさそうだった。 レンは、典然和尚が別れ際にもらした話を思い出した。 ひょっとして、和尚が昔会ったことのある、 空からの来訪者というのは… 「とにかく。油断だけはするな。 相手は違法侵入したエイリアンではないが、 人の精神を幻覚で操れるタチの悪い男だからな」 「承知しました」 レンはそう答えてステーションを後にした。 その頃。 ガナック・ギアはホテルのロビーで、 ある夫妻を眺めていた。 それは遊太郎の両親であった。 彼らは何も知らずにコーヒーを飲み、話していた。 「遊太郎。仕事がそんなに忙しいのかしら? もうすぐカナダに帰らなきゃいけないのに。 もっと一緒にいたかったわ」 洋子が愚痴を言い、春樹がなだめた。 「照れくさいのかもしれない。息子というものはそんなものだ」 そんな二人に、 ガナックは突き刺すような視線を投げた。 ~第98回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2008-09-11 21:58
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