第40回接近遭遇「桃子の涙」 |
~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~ ●森田遊太郎(23)・・・童顔のメガネ男子で天然系営業マン。 実は、銀河連盟より派遣された地球調査団メンバー。コードネームはレン。 ●五十嵐桃子(26)・・・遊太郎の正体を知る、勝ち気で現実的なOL。彼氏いない暦3年。 宇宙人やUFOには全く興味がないらしい。 この二人、表向きイトコ同士でルームシェアをしているのだが・・・? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「遊太郎・・・?」 会社をジャックし、桃子を監禁した凶悪なエイリアン、ゼルダが逮捕され、 全てが終わったかのように静かな応接室。 桃子は倒れたまま動かないレンに触れた。 その背中が無数に切り裂かれていた。 出血がなく、放電するように微細な光を放っている。 「まさか、遊太郎。あたしをかばって・・・?」 先刻、桃子に向けて降り注いだゼルダの毒刃の攻撃を、 レンは己の身を楯に、全て受けとめたのだ。 桃子は彼をそっと抱き起こした。 その青白い顔を見て、桃子は暗い予感に襲われた。 乱れかかる髪を指で払い、閉じられた彼の瞼や唇に触れてみる。 「遊太郎?・・・嘘よね」 しかし、レンはもう息をしていなかった。 「い、いやだ・・・こんなのいや!目を開けて、遊太郎」 桃子は彼を抱きしめて叫んだ。 「・・・あたしなんかの為に、死んじゃ駄目だよ。 誰か、遊太郎を助けて・・・・!!」 涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。 その時、人の気配に桃子は濡れた顔を上げた。 神崎部長と白衣の女が立っていた。ヒーラーの天野律子である。 「桃子君・・・」 そう呼ぶ神崎へ桃子は泣きながら訴えた。 「・・・遊太郎を助けてください」 神崎は彼女の側に腰を下ろし頭を垂れた。 「桃子君には、本当に申し訳ないことをしました」 「そんなことより、遊太郎を助けて!」 すがるように叫ぶ桃子。 「死なないよね?絶対大丈夫よね?ねえ・・・何とか言ってよ!」 「・・・」 神崎がふいに桃子の肩に手を置いた。 彼女は一瞬びくっとなったが、ゆるゆると眠りに落ちて頭を神崎の肩に落とした。 天野律子は、眠らされた桃子から優しくレンを引き離した。 淡い紫色に光る天野律子の指が、彼の眉間に当てられる。 しかし、何の反応もない。 「ドクター律子、レンは・・・」 神崎の問いには答えず、天野律子はレンの白い首筋に手を添えた。 手首を取り、そして心臓部分にエネルギーを注入をし始めたが、 やがて、ゆっくりと頭を振った。 「残念だわ・・・」 「・・・・」 神崎は険しい表情を天野律子に向けたが、彼女は淡々と言った。 「ロータス、事後処理が大変でしょうけど、五十嵐桃子さんをお願い。 レンをステーションへ移送するわ」 「・・・頼む」 次の瞬間、レンと共に天野律子が虚空へ消えた。 残された神崎は、眠る桃子をしばらく見つめていた。 エイリアンによる会社ジャック事件は、銀河連盟の決定に従い、 事件に関係した全社員の記憶消去をすることで、幕を降ろした。 ・・・・・・桃子以外は。 マンションのベッドで目を覚ました桃子は、 いつ、どうやって自分が帰ってきたのかとぼんやりしていたが、 はっとしてすぐに起き上がった。 「遊太郎?」 もしかしたら、平気な顔をして自分の部屋に帰ってるかもしれない。 傷なんて翌日には消えていたことがあったではないか。 ドアを勢い良く開けるが、がらんとした部屋には、 観葉植物が寂しく立っているだけだった。 「そんな・・・」 膝がガクガクと震えた。 自分の部屋に急いで戻って携帯をつかむ。 あれから神崎が何かをしたはずだ。しかし携帯もメールも通じなかった。 桃子はリビングのソファに沈み込んだ。 涙があふれ、再び止まらなくなった。 遊太郎には二度と会えないのだろうか? もう、あのはにかんだ顔や、 本当の姿に戻った時に見せる、不思議な眼差しも・・・ ~第41回をお楽しみに♪(^O^)/~ |
by yu-kawahara115
| 2008-04-29 18:45
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