第24回接近遭遇「もう一つのミッション」 |
~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~ ●森田遊太郎(23)・・・童顔のメガネ男子で新米営業マン。かなり天然系。 実は、銀河連盟より派遣された地球調査員。 ※アルコールを飲むと元の姿に戻ってしまう。 ●五十嵐桃子(26)・・・遊太郎の正体を知る、勝ち気で現実的なOL。彼氏いない暦3年。 宇宙人やスピリチュアル系には全く興味がないらしい。 この二人、表向きイトコ同士でルームシェアをしているのだが・・・? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「・・・遊太郎?」 酔いつぶれてリビングのテーブルで寝てしまっていた桃子は、 夜中にふと目を覚ました。 空の缶ビールが片付けられ、自分の背中にも毛布がかけられている。 帰って来た遊太郎が色々やってくれたのだろう。 ・・・あたしの「飲んべえ」ぶりにあきれちゃったかもね。 ますます美人女医との差が広がった気がしたが、 深く考える気力もなく、シャワーだけ浴びて自分の部屋に戻った。 彼女はこの時、遊太郎が部屋には居なくて、 クローゼットが外部世界につながる転送装置だとは夢にも思っていなかった。 その遊太郎、つまりレンは何の変哲もないクローゼットから、 月の裏側に隠れて存在するステーションへ移動していた。 その中枢にコントロールセンターがあり、 そこで待っていたのは、上司であるキャプテン・ロータスだった。 ロータスは、地球では神崎人事部長としての顔を持っているが、 本来の姿は褐色の肌にグレーの瞳を持つ、逞しい偉丈夫である。 ロータスは、ステーションが見える透明で流線形の壁見ながら話をした。 そこからは、あらゆる星々、あらゆる次元へ行き交う人々の流れを一望できる。 「どうした?疲れているのか、レン」 父親のように聞くロータスにレンは無表情に大丈夫です、とだけ答えた。 おっとりとして愛想が良い遊太郎とレンとは、姿形はもちろん雰囲気さえ別人になる。 それはレンがコピーした地球人・遊太郎の身体を「着る」ことで、 遊太郎が元来持っている気質が、彼に多少の影響を与えるからだ。 実際の彼はかなり無口で、感情をあまり出さない。 「・・・さて、レン。歓迎したくないニュースだ」 多種多様な旅行者やステーションスタッフが動く光景を見下ろしながら、 ロータスは少し重々しく本題を切り出した。 「銀河連盟のルール違反を犯す連中がいるのは周知の事実。 我々の調査を邪魔するどころか、 地球人に危害を加える困った者達がまた最近になって、出没し始めたらしい」 「日本にもですか?」 「そうだ。日本各地に被害報告が徐々に出ている。 我々のエリアにも、いつ何が起こってもおかしくはない」 それを聞いて、クールなレンの表情が少し陰った。 地球調査団の仕事は、地球人の生活様式や意識観察を通して、 その進化過程を見守ることだけではなかった。 地球人に危害を加える外部からの侵入者に対し、 地球人には気取られないように速やかに対処すること。 それが隠れた任務でもあった。 レンは、優れた特殊能力を持つ調査団メンバーの一人だが、 地球人の姿でいるあいだ、制約が多い為にあまり自由には動けない。 それを見越して、ロータスは警戒するようを諭しているのだ。 「侵入者は、ピンからキリまである。 子供のようにイタズラを楽しんでいる者、人体に危害を及ぼす者まで。 ステーションのボディチェックをうまく通り抜けて侵入するらしい」 ロータスは透明な壁からレンの方へ視線を移した。 「侵入者のデータファイルを後ほど転送しておく。 君の高い身体能力、サイキック能力は信頼しているが、 なにぶん地球は勝手が違う。心したまえ、レン」 「了解しました。キャプテン・ロータス」 レンはロータスの意を受けとめてセンターを後にした。 マンションのクローゼットから部屋の中へ戻ってきた彼は、 既に地球人・遊太郎に変わっていた。 桃子が部屋で眠っていることを知り、なんとなく安堵を覚える。 ルームシェアの試験期間の一カ月が近づいていたが、 やはり彼女から離れるわけにはいかないと遊太郎は思った。 ~第25回をお楽しみに♪(^O^)/~ |
by yu-kawahara115
| 2008-03-20 13:47
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