第22回接近遭遇「宇宙人たちのクリニック」 |
~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~ ●森田遊太郎(23)・・・童顔のメガネ男子で新米営業マン。かなり天然系。 実は、銀河連盟より派遣された地球調査員。 ※アルコールを飲むと元の姿に戻ってしまう。 ●五十嵐桃子(26)・・・遊太郎の正体を知る、勝ち気で現実的なOL。彼氏いない暦3年。 宇宙人やスピリチュアル系には全く興味がないらしい。 この二人、表向きイトコ同士でルームシェアをしているのだが・・・? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「目を閉じて」 淡いクリーム色に輝く丸天井の診察室。 長椅子に座っている人物に天野律子はささやいていた。 ここは、異邦人たちのクリニック。 豊かな緑に囲まれた場所にあるドーム型の建物の中である。 美人女医、天野律子はここの医者ではあるが、 実は地球に駐在している異星から来たサイキックヒーラーでもあった。 午前中は普通の外来患者の診察に、午後は地球を訪れている者たちのヒーリングに充てている。 天野律子の比類なく見事なプロポーションは、白衣に包まれ、 艶やかな黒髪に飾られた美貌はまるで女神のようだ。 いまも、しなやかな腕を伸ばし、長椅子の人物に触れようとしていた。 目を閉じて長椅子にもたれているのは、プラチナの髪の青年である。 地球人名・森田遊太郎。 実は地球へ派遣されている調査員であり、コードネームはレンと呼ばれている。 今日はクリニックへ半強制的に呼ばれたため、地球人はなく本来の姿に戻っていた。 「・・・相当ダメージが大きいわね。レン?」 天野律子はそう言って、白い手を彼のシャープな頬に宛てた。 そのまま、すうっと額へ動き、掌をかざす。 彼女の指先が淡い紫色に点滅し、その光がふわっと彼の眉間に吸収された。 その一瞬、瞼を閉じている彼の長い睫毛がふるえ、天野律子は手をゆっくり離した。 「もういいわ、レン」 彼女のサインに、彼はゆるりと閉じていた瞼を開けた。 やや上がり気味の涼しげな青灰色の瞳が、目覚めたばかりの湖を思わせる。 「ありがとうございました、ドクター律子」 彼が形の良い唇で、ゆっくり礼を言うと、 彼女は教師のように、やんわりとたしなめた。 「他の調査員は定期的にヒーリングを受けに来ているのに、 サボっているのは、あなただけよ?レン」 本当のことなので、レンは素直に聞くしかない。 生徒を指導するように、彼女は諭した。 「もちろん慣れたら地球もなんとか住めるのだけれど。 マイナス電波や汚染がひどいから体調管理には気をつけないと。 ・・・カフェイン抜きのコーヒーでも飲む?」 二人は診察室から観葉植物に取り囲まれたサロンに移った。 「で?あなたと同居している彼女・・・五十嵐桃子さんは何故だか怒ってるというわけね?」 美しい指先をあごにあてて、カウンセリングをしているかのように質問する。 レンは考えながらうなづいた。 「あなたを紹介しなかったので、怒っているんでしょうか?」 すると、天野律子は鈴のように笑った。 神妙な女医のマスクが溶けて、人間的な雰囲気に変わる。 「まあレン。地球人を調査する仕事をしているのに、 あなたって全然、女心がわかってないのね? 桃子さんは、私があなたと親しそうに接していたからヤキモチを焼いているのよ」 「・・・・?」 彼はさらに困惑した表情になった。 女心という言葉の意味がわからないらしい。 天野律子はそんなレンをほほえましく感じながら、 そうね、と言ってわかりやすく言葉を重ねた。 「桃子さんは、あなたに好意を持ち始めているのよ。 つまり、一緒に暮らしているうちに森田遊太郎を異性として見るようになって来たのね」 「好意・・・」 彼はやや戸惑ったように視線をコーヒーに落とした。 いつも桃子に迷惑をかけたり、怒らせているばかりいるのだ。 例え嫌われていても、好意を持たれているとは考えにくい。 「地球の男もニブいけど、あなたもかなり鈍感なところがあるみたいね」 さらっとつぶやくように言って、天野律子はコーヒーを優雅に飲んだ。 ~第23回をお楽しみに♪(^O^)/~ |
by yu-kawahara115
| 2008-03-16 13:58
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