第17回接近遭遇「同 業 者」 |
~あなたのとなりに宇宙人が暮らしていたら?~ ●森田遊太郎(23)・・・童顔のメガネ男子で新米営業マン。 かなり天然系。実は、銀河連盟より派遣された地球調査員。 ●五十嵐桃子(26)・・・同じ会社の事務職のOLで、遊太郎の正体を知る、勝ち気で現実的な女性。 二人は表向きイトコ同士でルームシェアをしているのだが・・・? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「おい、森田。打合せ前に昼メシいくぞ」 ある日、遊太郎は営業指導の高山係長に蕎麦屋へ連れていかれた。 彼は蕎麦をすすりながら、わざとらしく聞く。 「森田、おまえ五十嵐とイトコらしいな?」 「はい」 「こんなこと聞くのはナンだけど。彼女、つきあってる彼氏いるんだろ?」 プライベートな質問に、遊太郎はまんまるメガネでキョトンとしながら、 さあ?とのん気そうに答えた。 「トボケんなよ。知ってるはずだ。 社員旅行中に夜会ってたアノ外人じゃないのか?カッコつけた銀髪のさ」 「い、いえ。そんなことわかりません」 先日の社員旅行で、高山は夜の温泉街を歩いている桃子と、 サングラスをかけたプラチナの髪の男を目撃し、 二人を興味本位で隠し撮りしたあげく、社内で写真を回覧するということをやってのけている。 遊太郎は内心、少し戸惑っていた。 まさか、その男は自分ですとは口が裂けても言えない。 普段は地球人、森田遊太郎のフリをしているが、本当の正体は異星の人間なのだから・・・ アルコールを摂取したり、強いショックを受けるとコントロール機能がマヒし、 本来の姿に戻ってしまうのだ。 高山が目撃した男と自分が、同一人物には重ならなくても、 彼が執拗に探ろうとするなら、桃子にまた心配をさせることになってしまう。 高山の観察は慎重に続けた方が良さそうだ。 二人は蕎麦屋を出たあと、近くのホテルロビーで、ある企業の人間たちと会った。 高山の大学時代の友人が、生保の新規企業開拓の為に窓口を開いてくれるらしい。 相手も若い社員を連れていて、すぐ名刺交換が始まる。 「高山んとこの新人?ちょうど、ウチの佐々木と話が合いそうじゃないか」 相手はそう笑い、少しやり取りをしたあと、 高山と二人で、ちょっと込み入った話があるからと中座してしまった。 「オンナの話でしょ、どうせ」 佐々木と呼ばれた若い社員が肩をそびやかす。 彼は銀ぶちの細めのメガネをかけていて、髪を神経質そうにかきあげた。 「それにしても、こんなところで同業者に会うとはね。君はいつから地球に?」 ・・・同業者。 佐々木もまた遊太郎と同じく地球人ではなかったようである。 「今年の冬からです」 初対面であることだし、差し障りのないよう答えておく。 「ふうん、じゃあまだ慣れてないんだね? ボクはもう50年位いるけど、今だに地球人ってよくわからないよ」 コーヒーを飲みながら、佐々木は遊太郎にアドバイスを始めた。 「適当にやった方がいいよ。地球人は感情的で暴力的だ。個人意識優先だからね。 あんまり深く入り込みすぎると、冷静な判断や観察なんてできなくなる。 まあ、不慣れなルーキーの君にはまだわからないかもしれないけどね」 高山と自分の先輩が戻ってきたので、佐々木は何かあったらと連絡先を名刺にメモして渡した。 営業の仕事に戻りながら、遊太郎は佐々木の言ったことを考える。 ・・・適当にやる? 地球に派遣された調査団は多種多様に渡り、上司によってやり方は違うようだ。 遊太郎はルームシェアというやり方を取っているものの、そうでないケースの方が多いだろう。 遊太郎の脳裏に、桃子の怒った顔や照れた表情が浮かんだ。 もっと彼女のことも地球人のことも知りたいと思うのは、いけないことなのだろうか・・・? ~そろそろ営業リーマンSFドラマらしくなって来たかな?(笑) 第18回をお楽しみに♪(^O^)/~ |
by yu-kawahara115
| 2008-03-06 20:43
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