第284回接近遭遇「上司に向かってカミングアウト」 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。 おっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「神崎部長。あたし、どうしたらいいんでしょうか?」 高級レストランの大広間。 桃子はテーブルの向こうにいる神崎に、切羽詰まった表情で訊いた。 もう頼れるのは神崎しかいないと思ったのだ。 「桃子くんは心配性のようだ」 穏やかな笑みで神崎はワインを一口飲んだ。 いついかなる時もダンディで、受け入れる懐の深さを持つ上司である。 「そりゃ心配します。遊太郎はいつもぼやっとしてて、 自分の正体がバレそうになるかもしれないのに、 探偵に呼び出されてノコノコ行っちゃって、 あたしには電話もメールもして来ないんですよ?」 空腹が満たされてパワーが戻って来たらしい桃子は、 ドンとテーブルを叩いて、慌ててすみませんと謝った。 そんな彼女を微笑ましく観察しながら、神崎が答える。 「銀河連盟調査員は常日頃から、 あらゆるリスクに対応できるよう訓練されている。 従って、探偵やマスコミなどが調査しても、 まず真相にたどり着けないようになっているのだ。 何も心配することはないから、安心しなさい」 「そうですか?・・・・・・なら、いいんだけど」 上司である神崎がそう言うのなら、いたずらに焦る必要はないのだろう。 考えてみれば、彼らは地球人ではない。 細かい情報操作は朝飯前なのかもしれない。 豊富に並ぶデザートも終わり、桃子はひと呼吸置いてから、 神崎に真面目な表情を向けた。 「あの、ずっと前から相談したかった事があるんです」 「改まって何かな?」 「さっきの話とは別件で。……プライベートな事なんですけど」 「どうした。桃子くん。 そうかたくならずに遠慮なく話してみなさい」 柔らかく促されて、桃子は息を呑み込んでから、 思い切って溜めていた思いを口にした。 「・・・・・・あたし、遊太郎と結婚したいんです」 早口でそう言ってからキュッと目を瞑り、下を向く。 とんでもない事を、打ち明けてしまった。 でも止められなかった。 ずっと自分だけの胸に隠して、誰か頼れる人に相談をしたかったからである。 しかしすぐに後悔する。 普通に考えると、反対されないはずがないからだ。 恐る恐る顔をあげると、神崎がにこやかに桃子を見つめていた。 「よく言ってくれたね。桃子くん」 「え?」 「いつ決心してくれるのかと私は待っていたのだよ」 「は、はい?」 意味がわからなくて、桃子は目をぱちぱちさせた。 重大なカミングアウトをしたというのに、 神崎はくつろいだ様子で、新しいワインを持って来させ、 桃子にグラスを持たせた。 「神崎部長?あの、反対しないんですか」 「何故かね。結婚ほど素晴らしいイベントはない。 おめでとう、桃子くん。乾杯しよう」 「はあ」 のせられて乾杯をしてしまった桃子は、 神崎が満足そうに話すのを夢見心地で聞くことになった。 「実は最初から、こうなればいいと考えていたのだ。 というのは、調査員は通常1人で住居を構える事の方が多い。 しかし、あえて同居のモデルケースとして、 君たちを選んだのは、いつか異星間の交流を経て結婚をしてほしいと、 私が望んだからだ」 桃子は目を大きく見開いた。 反対どころか、神崎は2人がいつか結婚するように、 望んで同居をさせていたと言うのだ。 「銀河連盟調査団の規則には、 派遣先の現地人、つまり地球人との結婚を禁止する条項はない」 彼女の疑問を払拭するように神崎は説明した。 「私も昔、地球人女性と結婚した経験もある。 むしろ結婚こそ、地球人を知る上で貴重な経験になると、 我々は考えているのだよ」 しかし、と神崎はそこで桃子にやや真剣な眼差しを向けた。 「森田くんも結婚を望めば、の話なのだがね。 彼にはもう話したのかな?桃子くん」 「それは……」 桃子は答えに詰まった。 〜第285回をお楽しみに♪〜 |
by yu-kawahara115
| 2010-10-17 17:00
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