第283回接近遭遇「桃子、神崎部長に相談する」 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。 おっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 桃子はイライラして残業も手につかないでいた。 遊太郎は外回りで帰って来ないし、 文句を言いたい係長の高山も接待の名目で、 ちゃっかりと遊びに出かけたようだ。 「どいつもこいつも、ムカつく!」 桃子は勢いつけて書類箱をデスクにドンと置き、 まだ居残った他部署の社員たちを震え上がらせた。 桃子が怒っている理由は、ひとつ。 高山が遊太郎、正しくは遊太郎の本来の姿である銀髪男の素性調査を、 探偵に依頼したという件だ。 遊太郎も遊太郎で、さほど慌てる様子もなく、 その探偵事務所からかかってきた電話に呼び出され、 仕事の帰りに立ち寄ると言って、 のんきに会社から出て行ったきり電話やメールの一本もない。 「まあ、もともと、あいつはマメにメールとかしないヤツだけど。 あたしがこんなに心配してんのに、 のほほんとしちゃって、どういう神経なのよ?」 ぶつぶつ文句をたれながら乱暴に仕事用具を片付け、 大股で更衣室に向かおうとした矢先、エレベーターから誰かが降りて来た。 ダンディにスーツを着こなした人物は、桃子を見て穏やかな笑顔を向けた。 「おや、こんな遅くまで残業をしていたのかね。桃子くん」 「神崎部長!」 桃子は天の助けだとばかり大きな声を出し、 慌てて他に誰もいないか辺りを見回した。 すると、神崎は静かに笑い、 せっかちに喋ろうとする彼女をまあまあと優しく制した。 「久しぶりに夕食でもどうかね? どうせ、森田くんは連絡無しで出歩いたままだろうし、 桃子くんも少し落ち着いた方がいい」 「……はあ」 桃子は顔を赤くした。 おそらく神崎は、桃子がイライラしている原因を見通しているのだろう。 地下駐車場で待っているので着替えて来なさいと微笑んだ。 それからほどなく、部長の神崎と桃子を乗せた黒いBMWは、 夜の街をスムーズに走り抜け、郊外にあるレストランに向かった。 そこはまるでドイツの古城のような荘厳な建物で、 桃子は高い天井やシャンデリアを呆気に取られながら眺め、 神崎の背中を頼りにおぼつかない足取りで、ついて歩いた。 神崎が貸切にしてしまった大広間に通された桃子は、 運ばれてくる様々なコース料理を驚きとともに、 その一級品の味わいを堪能することになった。 「お腹はいっぱいになったかね?桃子くん」 数本灯るロウソクの向こうで、 紅茶を飲みながら、神崎が柔らかく訊いた。 桃子はデザートを口にし、とびきりの笑顔を返した。 さっきまであんなにイライラしていたのに現金なものだ。 「はい。ありがとうございます。 とってもとってもおいしかった。ご馳走さまでした」 「満足してもらえて良かった」 「それにしても、部長はやっぱりグルメなんですね。 こんなに高そうなレストラン、あたし初めてです」 「地球の食べ物は、一応は全て味わってみることにしているのだよ」 そう語った神崎も、遊太郎と同じく異星人である。 チューリップ生命本社人事部長の肩書きは表向き。 実際は、銀河連盟調査団日本支部のキャプテンという顔を持つ。 しかしいまは、50代のダンディな男として、 桃子の良き理解者だ。 「桃子くんのイライラはわかっている。 どうも、地球人は我々とは違う意味で、 相手の弱みを探し出そうと考えるようだ」 神崎が桃子の抱えた問題を先に口にしたので、 桃子は安心したように喋り始めた。 「はい。高山係長がまさか探偵事務所なんかに、 遊太郎の事を調べさせていたなんて知らなくて。 遊太郎も探偵からの電話に平気で呼び出されて行っちゃうし。 あたし、気が気じゃなくて」 こうなったら、遊太郎の直々の上司に聞いてもらうしかない。 桃子は紅茶を一口飲んで、神経な眼差しで神崎に向き直った。 「あたし、どうしたらいいんでしょうか? 教えて下さい。神崎部長」 〜第284回をお楽しみに♪〜 |
by yu-kawahara115
| 2010-10-10 15:41
|
<< 第284回接近遭遇「上司に向か... | 第282回接近遭遇「幸せとは?」 >> |