第229回接近遭遇「桃子、雷を落とす」 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。 おっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ あれから2日後。 再び雑多な日常の生活が戻って来たが、 桃子はまだ甘い余韻に浸って、気持ちだけ現実から浮遊していた。 仕事帰りにコンビニに立ち寄り、デザートに手を伸ばす。 「太るぞ」 聞き覚えのある声に振り返ると、 同じマンションに住む大倉健人がニヤニヤして立っていた。 「それ、どうせ晩メシのあとで、また食うつもりだろ?」 その通りだから言い返せない。 大倉健人は桃子とは大学時代からの友人で、 偶然にも最近になって引っ越して来たのだ。 以来、何故か遊太郎とも気が合うらしく、 ご近所付き合いというものを続けている。 肩を並べてマンションまで歩きながら、健人が訊いた。 「桃子。2日前、どこか行ってた?」 「え?」 「夕方、お前んちに寄ってみたら留守で。ケータイもずっとつながらないしさ」 咄嗟に答えに詰まった。 携帯電話などつながるはずがない場所に居たからだ。 しかしまさか、自分も遊太郎も、 月の裏側にある銀河連盟ステーションへ飛び、 異星人だらけなパーティーに出席してました、とは言えない。 「ごめん。ちょっと2人でウチの実家へ行ってたの。 なんか用事あった?」 さりげなく嘘をつくと、彼はホッとしたように顔を柔らかくした。 「そうか。いや、ちょっと心配してたんだ」 「心配?」 「ほら、この間来てた金髪の派手な外人」 「ああ……」 「また押しかけられて、困ってんじゃないかって」 そういえば先日、大倉健人は遊太郎の親友、 サーフィスと部屋の前で顔を合わせてしまっていたのだ。 もちろんあの時はなんとか誤魔化したが、 あのキラキラした外見や、馴れ馴れしさは、大倉健人が怪しんでも仕方ない。 「ああいう男と遊太郎君が友達っていうのが、よくわからないけど」 エレベーターの中で、大倉が首をひねる。 桃子もその点では大いに同感だ。 ホスト顔負けな女好きでナルシスト、 さらに空気を読まないセレブ系異星人だからだ。 同じ星の人間とはいえ、真面目な遊太郎とは真逆過ぎて未だ謎である。 「よく考えりゃ、桃子なら男でも殴り飛ばすだろうし、 二度と寄り付かないから、心配するだけムダかな」 「なにそれ。ムカつくなあ」 口を尖らせていると、大倉は笑って膨らんだ彼女の頬を人差し指でつついた。 何気ない仕草だが、一瞬、2人は固まった。 「ご、ごめん」 「あ、うん。……別に」 部屋の前まで来て、お互い顔を少し赤らめる。 テレ隠しに、彼が早口で言った。 「今度、ウチの編集部へ遊太郎君が遊びに来てくれるみたいなんだ。 時間とか、またメールするから、よろしく伝えといてくれよ」 「へっ?」 一瞬、桃子の目が泳いだが、 彼は、じゃあと手を振って自分の部屋の方へ行ってしまった。 開いた口がふさがらないまま、カギを開ける。 ( 遊太郎と大倉君。いつの間にメル友に。 ……っていうか、編集部に遊太郎が遊びに行くって、どういうことよ? なに考えてんの、あのバカ! ) ちょうど先に帰宅をして、夕飯の支度をしていた遊太郎が、 レモンイエローのエプロン姿で、お帰りなさいと微笑んだところに、 ドカンと雷を落としてしまう。 「遊太郎っ!」 「はい」 「そこで大倉君と会って聞いたんだけど。 宇宙人情報誌の編集部なんかに、何で行く約束したのよ?」 遊太郎は彼女の剣幕にフライパンを取り落としそうになる。 「大丈夫ですよ。僕ならバレません。この姿ですから」 と、まん丸メガネをかけ直す仕草をするが、言い返された。 「だから。そういう問題じゃないっつうの。 宇宙人をスクープするような記者がウヨウヨいるのよ? 呑気なあんたが不用意にポロッともらした言葉で、 怪しまれるかもしれないじゃん」 鈍感なヤツ。 2日前の甘い余韻が一度でぶっ飛んでしまった。 〜第230回をお楽しみに♪〜 |
by yu-kawahara115
| 2009-12-23 21:53
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