第227回接近遭遇「2人きりのコンパートメント」 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。 おっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ……動悸が早い。 レンの全身から急速に血の気が引いていき、 冷たい汗が額から一筋だけ流れ落ちた。 原因は、手の中にある数センチほどの石だ。 交流パーティーの席上で、あまりレンを良くは思わない評議会から、 直接渡されたのである。 もちろん普通の人間なら何も感じないが、 特殊能力者にとって、この石がもたらす心身へのダメージは計り知れない。 一刻も早く自分から遠ざけなければ。 強いマイナス波動を放射している隕石のカケラを…… パーティー会場のホールの外に出ると、 フロアの片隅に待機中のSPメンバーが居た。 同じ調査員としてはかなりの先輩だが、迷ってはいられない。 「急に申し訳ありません。 これを、キャプテン・ロータスに届けて貰えませんか?」 「何だ、その石。まさか新手の爆弾じゃないだろうな?」 相手は、当然ながら怪訝な顔をする。 「いいえ。パーティーの参加者から預かった希少な石です。 僕は、わけがあって、すぐには動けなくて……」 SPメンバーは首を傾げ、茶色と緑の混ざった小さな石を眺めた。 しかし、後ろから追いかけて来た桃子の姿を見たとたんニヤリとする。 「なるほど、そういうことなら了解だよ。 そこの旅行者用コンパートメントを使えばいい。 大丈夫。彼女の事は秘密にしておいてやるから」 勝手にカン違いをされたが、いまはそれに乗るしかない。 レンは礼を口にして、フロアに並ぶ個室へ向かった。 すぐに桃子が追いついて来たが、説明する余裕もなく、 彼女をコンパートメントに促し、内側から電子ロックをかけた。 「え? なに?ここ」 桃子は、知らずについて入った旅行者用の個室に目を丸くした。 天井まで10メートルと高く、 光源はないのに全体的に柔らかいクリーム色に発光している。 継ぎ目のない流線型の壁は半分以上が透明で、 その向こうにダイヤモンドのように輝く大宇宙が広がっていた。 絶景を楽しめるように、ソファが半円形に長く連なっている。 桃子が珍しそうに部屋中を見て回っている間、 レンはソファの端に、ふらりと手をついた。 乱れた呼吸を整えるために深く俯く。 石を握り締めていたのは、ほんのわずかな時間だったはずなのに、 体力が恐ろしく消耗していた。 「遊太郎?」 桃子が驚いて駆け寄ろうとしたので、レンは努めてさりげなく顔を上げた。 心配させたくはなかったからだ。 「すみません。少し疲れただけです」 「ホントに?」 「パーティーは苦手で」 すると桃子は疑い深く首をひねった。 「なんか隠してない?」 「何を、……ですか?」 「だって、さっき評議会の奴らに変なモノ渡されてたじゃん。 アレって隕石じゃないの? ほら、遊太郎が記憶障害を起こしたのと同じやつ。 あいつらなら、嫌がらせの為に持って来てもおかしくないし。 やっぱり、一発ぐらい殴っとくんだった」 拳を振りかざして憤慨している彼女に、彼は苦笑して、首を小さく振った。 「それは、思い違いです」 「ふうん。なら、いいんだけど」 (なんだ、あの超ヤバイ隕石じゃなかったんだ。 あいつらの手土産なら、絶対そうだと確信したんだけど) でも、あっさり否定されてしまった。 妙な違和感が残って、得心がいかぬまま、 ふと、桃子は目の前に瞬く果てしない星の海を眺めた。 冷静に考えたら、部屋に彼と2人きりである。 もし急にいなくなった自分たちをサーフィスが探しに来ても、 まず簡単には見つからないだろう。 (2人きり……?) スレ違いが多くて、最近はデートもままならなかったのに、 これは嬉しいハプニングかもしれない。 桃子は密かに淡い期待を抱いた。 〜第228回をお楽しみに♪〜 |
by yu-kawahara115
| 2009-12-17 23:25
|
<< 第228回接近遭遇「ダイヤモン... | 第226回接近遭遇「消えない彼... >> |