第193回接近遭遇「連続傷害事件の秘密調査命令」 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。 おっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 遊太郎は携帯電話を切った。 上司からの緊急コールだ。 桃子を怒らせたままだが、ステーションへ戻らねばならない。 それでも、彼女が飲み散らかしたテーブルやキッチンを片付ける。 家事全般は、遊太郎の分担だからだ。 やがて彼は自分の部屋に入り、まん丸メガネを外すと、 ついさっきまで情けなくも桃子にやりこめられていた、 頼りなげな遊太郎から、本来の姿へ戻ってゆく。 地球時間では深夜に差し掛かるが、 平凡な営業マンから裏の顔へと、鮮やかに切り替わる瞬間だった。 ……彼、レンは速やかに瞬間移動した。 「他エリアのメンバーだが、調査員が数名、連続してやられた」 月の裏側に浮遊する銀河連盟ステーション。 その円形ミーティングルームでは、 上司ロータスが事件の概要を説明していた。 やや遅れて入室したレンは、29名の視線を一瞬だけ受けてしまった。 メンバーの中で最年少のレンが、 先輩より遅れて登場したため、多少呆れた表情も見て取れる。 彼がデスクの空席に座ると、ロータスが咳払いをして続けた。 「何者かに急襲された調査員は、一様に身に覚えがないと言う。 身辺には充分な警戒をしてもらいたい」 そこで、誰かが質問をした。 「不法侵入者の仕業ですか?」 すると、ロータスは首を振る。 「まだ不明だ。調査員ばかり狙われているとすると、 その可能性は高いが……」 「ある特定の調査員に恨みを持つ、エイリアンかもしれませんね」 そう言った者が、レンの方を意味ありげにチラリと見た。 「凄腕な彼のやり過ぎで、痛い目に遭った侵入者は多い。 報復として、他の調査員を無差別に狙っていると考えても、 おかしくないと思います」 他にも同意するメンバー達が一様に、レンを見やる。 迷惑な話だと、不穏なざわめきがミーティングルームを揺らした。 当の本人、レンは相変わらずクールな顔をさらして、 動揺もなく黙って座っていた。 優れた身体能力、さらに特殊能力者である彼は、 短期間で数々の不法侵入者を摘発し、 その圧倒的な強さに、中には危惧するメンバーも多いのだ。 今回の事件も、レンに逆恨みを持つ者がいるからだと、 安易に考えてしまう者がいてもおかしくはない。 「犯人はまだ特定されてはいない」 ロータスがやんわりと釘を刺し、ざわめきが静まった。 幾つかの定例報告のあと、解散を告げたロータスは、 それぞれのエリアへ散ってゆくメンバーを後目に、 レンにのみ、サインを送った。 中枢センターに呼ばれたレンは、詳細な事件データを渡された。 自分に向けられる周りの批判は慣れているかのようだ。 「頭部強打、全身打撲、背後から急所を外した狙撃。 このデータを見る限り、エイリアンの匂いはしません」 あっさり分析してのける彼へ、 ロータスは苦笑をして肩をそびやかせた。 「さすがに、君には誤魔化しは効かないようだな。レン」 「え?」 次に聞いた一連の話は、耳を疑うものだった。 「今回の事件に見え隠れするのは、別の調査員」 「別の?」 「やられた者は例外なく、ある調査員と何度か接触を持っている。 その者の名は、笹川夏希」 「!」 初めてレンの表情が動いた。 笹川夏希。 先日、再会したばかりの女性であり、 別の管轄に所属する派遣調査員だと言っていた。 ロータスは、思慮深い眼差しでレンを見つめる。 「やはり、知り合いかね?」 「……昔の話です」 視線を落としたレンは、苦いものを感じて黙り込んだ。 そんな彼にロータスは抑えた声音で言った。 「この情報は君にしか流していない。 まだ、関わっていると決まったわけではないからだ。 ……秘密裏に、笹川夏希を調査してもらいたい」 しばらく考えたのち、レンは頷いた。 「承知」 〜第194回をお楽しみに♪〜 |
by yu-kawahara115
| 2009-08-19 23:50
|
<< 第194回接近遭遇「海ツアーは... | 第192回接近遭遇「桃子に白状... >> |