第186回接近遭遇「宇宙人、合コンに誘われる」 |
~もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?~ ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★ 地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。 おっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★ 遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「俺が五十嵐を狙ってるの、前から知ってんだろ? あんな弁当なんか作りやがって、五十嵐の気を引くつもりか。 ドンくさくて超ウザい、のび太のクセによ」 社内の資料室。 係長の高山が因縁をつけるように凄み、 遊太郎のネクタイを引っ張った。 遊太郎はいきなりなことに、 まん丸メガネの下で子犬のような黒目をキョトンとさせる。 「あ、あの。すみません。高山係長。もう一度言っください」 「ああ?」 「いまの、聞き取れなかったんです」 「な……っ?」 普通、凄まれて、啖呵をリクエストをする人間はいない。 拍子抜けした高山は、 つかんでいた遊太郎のネクタイから手を放し、 小さな子供にするように彼の頭髪をクシャクシャにした。 「お前、若ぇくせに耳が遠いのかよ。ん? ほんっとに、しゃあねぇバカだなあ」 考えてみたら、と高山は思った。 五十嵐桃子とコイツは姉弟みたいなイトコだ。 弁当を作って彼女に渡したぐらいで、 2人の仲を勘ぐるのも大人気ない。 「ま。お前みたいなチビでガキで、垢抜けねえヤツ。 振り向くオンナもいねえよな。 その会議資料、早く会議室に運んどけよ」 仕事を押し付け、彼はくわえ煙草で、ぶらぶらと資料室を出て行った。 遊太郎は伸びきったネクタイを締め直し、 クシャクシャにされた頭をちょっと撫でた。 不思議だ。 地球人は、感情的になると早口になりやすい。 そうなると、本当にヒアリングが難しくなる。 それにしても、高山はまだ桃子を諦めていないようだ。 純粋に好きだからではなく、 女性は自分の所有物と思い込んでるようで、 今後、桃子の為に気をつけなければならないと思った。 その日の会議のあと、 営業部へやって来た数人の若い男性社員が、 遊太郎に声をかけた。 配属部署が違うが、同期入社の同僚ばかりである。 「森田。今週末、開けといて」 「はい。何かあるんですか?」 「合コンだよ。合コン。もちろん行くだろ?」 「合コン?」 あまり縁のない単語だ。 確か見知らぬ男女が一同に介し、 飲食をするイベントだったかと思う。 仕事ではないので、断ろうかと、遊太郎が口を開きかけた時、 彼らの1人が肩を強くつかんだ。 「おおっと。ダメダメ。 森田を入れた人数で店の予約してあるんだから。 当日も、ドタキャンはナシ」 「いや、あの。でも、僕は……」 「どうせ彼女いないんだし、チャンスじゃね? それにさ、同期のよしみで誘ってやっただけでも、 ありがたく思って、付き合えって」 じゃあな、と言って彼らは遊太郎から離れた。 なんで森田なんか誘うんだと誰かが訊いて、 バカ、引き立て役だよ、と嘲り笑っている声が聞こえた。 「へえ。あんたでも、合コン行くわけ?」 突然、女の声がして、遊太郎は振り向いた。 背後で桃子が睨んでいたのだ。 おそらく全部聞いていたのだろう。顔が怖い。 彼は慌てて弁解を始めた。 「すみません。桃子さん。付き合いで、断れなくて。 これっきりにしますから……」 「いいわよ。遠慮しなくても。初めてなんでしょ。合コン」 「桃子さん、怒ってるんですか?」 「別に。なんで?」 「顔が、あの、怖いです」 「失礼な」 眉と目尻をピンと上げ、フンと鼻息を荒くした桃子は、 遊太郎に向かって小声で言い放った。 「あんた、いつも仕事、仕事って。 あたしとは付き合う時間はないくせに、合コンには行くんだね。 せいぜい可愛い女と楽しく社会勉強して来れば?」 言い捨てて、桃子は自分のデスクへ戻って行ってしまった。 どうやら本気で怒らせたようだ。 遊太郎は困り果てた。 さて、この場合どうすれば良いのだろう? 当然、対地球人マニュアルには載ってはいなかった。 ~第187回をお楽しみに♪~ |
by yu-kawahara115
| 2009-07-26 11:55
|
<< 第187回接近遭遇「初めての合... | 第185回接近遭遇「宇宙人が作... >> |