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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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第174回接近遭遇「立ち向かう勇気」

~あなたのとなりに宇宙人が住んでいたら?~

★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★
地球に派遣された銀河連盟調査員。
超童顔メガネのおっとりした新人営業マンは仮の顔。
その正体はプラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★
遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

居酒屋の片隅で、
桃子は、ソリュート王の悪意のある言葉に唇を噛んでいた。
ビルの屋上で、一部始終をスキャニングで視ていたレンは、
すぐにも駆けつけたい衝動にかられたが、
神崎がそれをやんわりと止めた。

「桃子君は、これしきの事で負ける女性ではないぞ」
「しかし…」
「君のお父上は桃子君を絶望させて、
君達を引き離そうとしているのかもしれんが、
彼女の想いの方が強い」
「……」

とはいっても、このままに1人で立ち向かわせるわけにはいかない。
レンは、桃子の波動に合わせた。
精神を同化させてみようと考えたのだ。
こうすることで、肉体的には離れていても、
意識は一緒にいて、彼女の心を支えることが出来るかもしれない。


見えないコードが伸びたように、
ずっと緊張していた桃子の身体が、ふんわり温かくなっていった。

「?」

…何だろう。この感じ、なんだかよく知っている気がする。
内側からパワーが湧いて出て来るようだ。
桃子は落ち着きを取り戻し、王に向かって正直に言った。

「遊太郎が、あたしの事を思い出せなくたって関係ない。
遊太郎は遊太郎だし、
過去よりも、いまの時間が大切だから」

すると、王が馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに鼻先で笑った。
「過去よりいまが大切だと?青臭い、ふざけたことを」
「おじさんは過去の出来事しか見えてないから、
いま、この時間の大切さが分からないだけだと思うんです」
「なんだと?」
ソリュート王は、彫り深く険しい眉をさらに潜ませた。
「過去を重んじて、何が悪かろう。
私の何を知っていて、そのような不遜な口を効くのか」

王は数年前の過去を引きずっていた。
悲運にも、最愛の妻と娘が死んだ、あの忌まわしい事故。
当時、レンのサイキックの制御が効かなかった事が原因であり、
ソリュート王は、その事で未だ彼を責め続けている。
それを知る桃子は、あえて言った。

「昔の、事故の事は聞いてます。
おじさんが辛かったように、遊太郎もずっと苦しんでる」
「……」

一瞬。
ソリュート王は、桃子と重なるように誰かの気配を感じた。
彼女を通し、己の息子がこちらを静かに見つめている気がしたのだ。
王は立ち上がり、執事ラグローシュを驚かせた。

「陛下?」
「車を回せ。ラグローシュ」

賑わう他の客たちが、不思議そうに見る中を
王と執事は店から出て行った。
桃子も慌てて追いかける。
繁華街を抜ける2人に追いつき、必死に王の腕を捕まえた。

「逃げるんですか」
「逃げる?無礼な。私が何から逃げていると言うのか」
手を振り払われ、鋭く睨みつけられたが、怖くなかった。
「遊太郎から逃げてるんです。でも本当はすごく気になっていた。
だから、彼のことを探るために、
あたしに逢おうと思ったんじゃないんですか?」
「黙れ」
「黙りません。意地張らないで、彼といっぱい話して下さい。
ケンカになってもいいじゃない。
ちゃんと、ありのままの遊太郎を見てあげて下さい」
「……」

真っ直ぐな桃子の瞳が直視出来なかった。
…なんたることだ。
王は、半ば呆れていた。
銀河の外れにある惑星の、騒がしい街で、
息子が好いたらしい未開人の娘に、言いたい事を言わせてしまうとは。
全く調子が狂う…
「地球見物は飽きた。ステーションに戻る」
そう命じ、ソリュート王は迎えのロールスロイスへ乗り込んだ。
ラグローシュも深々と頭を下げて、桃子の視界から消えてゆく。


雑踏の中に残された桃子は、
一気に緊張感が抜けて腰が砕けそうになった。
そんな時、ふわっと誰かが後ろから支えた。

「遊太郎…?」

答えがない。
でも振り向かなくてもわかる。
このぬくもりは、彼以外考えられない。
やがて、優しい声が彼女の心に響いた。

「ありがとう。桃子さん」

その言葉を聞いて、彼女は震えた。
…いま、何て?
桃子さん。そう名前を呼んでくれた。
まさか彼は、記憶を……?


~第175回をお楽しみに♪~
by yu-kawahara115 | 2009-06-03 22:15
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