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ようこそ、川原 祐です♪
by yu-kawahara115
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「プロポーズへの決意」第288回接近遭遇

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

現実的なOL・五十嵐桃子と、
まん丸メガネの森田遊太郎(異星人レン)。

表向きはイトコ同士でルームシェア歴一年。
お互い惹かれあいながらも、
異星人との恋愛は難問だらけなようで。。。?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ねえ、女からプロポーズっていうの、アリだよね?」

ある日の昼休み。
会社近くの遊歩道のベンチで、
おにぎりを食べていた桃子はなにげなく同僚の清美に訊いた。
清美は目を輝かせ、サンドイッチを膝の上に置いた。

「え?ついにあの超美形彼氏と結婚するんだ?桃子」
「違う。例えばのハナシ」
誤魔化しきれないのはわかっていながら、ムスッと否定し、
桃子は一般的な話だとでも言うように訊いた。

「例えば女から切り出す場合、ストレートに言った方がいいのか、
遠回しに言った方がいいのか、どう思う?」
すると清美は、キャハハと笑い飛ばした。
「オトコなんて遠回しで通じるわけないじゃん。
そんなの桃子には向かないし、ハッキリ言ったら?
あたしと結婚して、新婚旅行で世界一周しましょって」
「新婚旅行、世界一周……」

桃子は目の前がチカチカした。
彼女がベタ過ぎることを言ったからではなく、
全く予想外のイメージをしてしまったからだ。

(あの遊太郎と新婚旅行いくなら、世界じゃなくて、
天の川銀河の方がリアルかも……)

そうなのだ。
イトコの振りをして同居する森田遊太郎を、
どういうわけだか好きになって1年。
両親も早く結婚しろとうるさく騒ぎたて、
彼女自身もその意志を固め始めたものの、
あの仕事バカでストイックな遊太郎が、
はいそうしましょうか、などとプロポーズを承諾するとは思えない。
桃子は、あからさまにため息を吐き出した。

「なになに?彼氏、結婚とかする気ないの?」
清美が真面目に質問する。
「桃子のことは好きなんだよね?」
「たぶん」
「たぶん?なにそれ。」
曖昧な桃子の返事に清美は眉をよせながらお茶を飲み、
次に知ったような顔で結論づけた。

「あれじゃない。まだ女ひとりに束縛されたくないんじゃない。
桃子より、かなり若いんでしょ、その彼氏」

相変わらずズケズケと言われて、桃子は清美を睨んだ。
しかし彼女は携帯をいじり、無邪気にメールをチェックしているだけだ。
客観的に見たら、男が結婚するつもりなどないのに、
女の方は捕まえようと焦っている風に見えるかもしれない。

でも、ずっと一緒に暮らしたい。
それは、ちゃんと伝えたいのだ。

桃子は決めた。
ストレートに言ってみよう。もともと色々と考えて行動するのは苦手だった。
直感を信じて遊太郎にプロポーズをしてみよう。

桃子はちいさく拳をあげた。
「よっしゃ!」
そんな彼女に、清美は一瞬引きながらも、ニヤニヤしていた。


〜第289回をお楽しみに♪〜

※お詫び:しばらくお休みしてしまい、すみませんでしたm(_ _)m
引き続きまたよろしくお願いします(^o^)/
# by yu-kawahara115 | 2010-12-23 16:44

「桃子、遊太郎に詰め寄る」第287回接近遭遇

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜

現実的なOL・五十嵐桃子と、
まん丸メガネの森田遊太郎(異星人レン・ソリュート)。

表向きはイトコ同士でルームシェア歴一年。
お互い惹かれあいながらも、
異星人との恋愛は難問だらけなようで。。。?


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

遊太郎が桃子につれて行かれたのは、
社内に設置されているドリンクカウンターだった。
夕刻のせいか、社員は誰もいない。

「遊太郎、あたしが何を訊きたいのかわかってるよね」

腰に手を当てて桃子が睨み付ける。お決まりのポーズだ。
遊太郎は、彼女をあまり怒らせてはいけないと思ったのか、
はいと素直に答えた。

「探偵事務所に呼ばれた件ですよね。
あれは知り合いの探偵で……」
「知り合い?」
眉をつりあげる。
下手に誤魔化すなよと迫る。
その迫力に圧されて、遊太郎はたどたどしく説明した。

「桃子さん。覚えてますか。時任さんですよ」
「時任?」
しばらく考えて、ああと桃子が気づく。
「確か、あたしが落としたモノを拾って、会社に届けてくれた人だっけ。
なに、あの人。探偵始めてたんだ?」
「はい。偶然にも時任さんの事務所に、
高山係長から、僕の身辺調査の依頼が入ったようで、
時任さんは気がついて僕に連絡を下さったんです」
「へ、そうなの?」

先日遊太郎にかかって来た電話は、時任探偵事務所からで、
先日、今回の件の対策を話し合って来たのだと説明した。

「ふうん。で?あんたのニセの情報を流したってわけか。
でもさあ、あのしつこい高山が納得すると思う?」
桃子はまだ疑うように遊太郎を見やる。
本当に大丈夫なの?と慎重に問い詰めた。

「もちろん連絡先は本物です。
いつでも『本当の僕』と会えるように、
アドレスを高山係長に渡してありますから」
「はあ?会うって、ちょっと」

つい声が高くなり、誰かがドリンクを買いに来たので、
作り笑いで誤魔化しながら奥へ遊太郎を押しやる。

「高山と会うって?」
「呼び出されれば、素顔の僕になって、会うということです」
サラッと答える遊太郎に桃子が噛みついた。
「バカなこと言ってんじゃないわよ。
素顔さらして妙なことになったら知らないからね」
「大丈夫ですよ。普通に話をするだけになるはずです」
「お話しあいが出来る相手かっつーの。
あんた、ほんっとにお人好しだよね」

あの高山のことだ。
何か低レベルなワナを仕掛けてくるに決まっている。
それを承知で、ノコノコ呼び出されて会いに行く気なのだろうか。
それとも、ぼんやりした遊太郎だが、何か考えでもあるのか。
いや、のほほんとしたまん丸メガネを見る限り、
特に何も考えていないように思える。
すると遊太郎がにっこり笑った。

「そろそろ帰りましょうか。
今夜は桃子さんの好きなものを作りますよ」
「ったく」

いつまでも居残っているわけにもいかないので、
桃子は仕方なく遊太郎と一緒にフロアへ戻った。
本当はこんな話をしたかったわけじゃない。
本当に訊きたかったのは、遊太郎の気持ちだ。

(遊太郎は、あたしとずっと暮らしたいと思ってる?
あたしと一生いっしょにいていいって思う。?)

しかし、それを口にする事が桃子にはまだ出来なかった。


〜第288回をお楽しみに〜
# by yu-kawahara115 | 2010-11-07 14:27

第286回接近遭遇「見え透いた企み」

翌日の夕刻。
遊太郎は車の中で係長の高山の際限ないお喋りを聞かされていた。

「見ろよ。高い金を探偵に払った甲斐があるってもんだ。
ちゃんと銀髪野郎の素性がわかったんだからな」
話題は、探偵事務所に依頼した銀髪男の身辺調査の件だった。

「五十嵐の周りに影のようにまとわりついてる、
あの忌々しい銀髪野郎、フリーのルポライターだったんだぜ。
イギリス人で、旅先で五十嵐と出会ったらしい。
しかしよ、ルポライターって胡散臭い奴が多いから、
五十嵐もだまくらかされてるにちげえねえよな」

遊太郎は黙って聞きながら真面目に運転を続けていた。
取引先企業には全て足を運んだので、あとは帰社すれば良いのだが、
延々と高山のお喋りを聞く羽目になってしまったのだ。

「おい、森田。俺の話をちゃんと聞いてるのか?」
「聞いてますよ」
「少しは興味を持って相づちを打つとか、
質問をするとかしたらどうなんだよ?
ったく、なんの面白味もねえ。
独り言してる気分だぜ」
「すみません」
「お前のイトコの五十嵐が、うろんな奴と関わってんだ。
お前だって気になるだろうが」
「はい」

遊太郎は仕方なく同意した。
気になるも何も、高山が目の敵にしている銀髪男は、
遊太郎の本来の姿なのだ。
しかし高山が依頼した探偵が遊太郎の知人であり、
うまくカモフラージュした銀髪男の素性を、
高山が信じているらしいので、内心安堵はしていた。

「銀髪野郎のパソコンのメアドもゲットしたし、
これでいつでも、奴を呼び出せる」
高山は好戦的に拳を握った。
そのあたりで遊太郎はさりげなく質問する。

「高山係長はその男を呼び出して、どうするんですか?」
「ブチのめす。わかりきったこと聞くな」
「すみません」
「お前、さっきからすみませんしか日本語知らねーのか?
まあ、いいや。とにかくマトモにいくと、またやられちまう。
あいつ、カタギじゃねえみたいにクソ強ぇからな。
普通にケンカするんじゃ不利だ。
五十嵐の目の前で大恥をかかせる方法を考えないとな。
五十嵐の目を覚まさせて、俺の方に向かせるためにさ」

楽しげに笑い、探偵から渡されたらしい調査資料を眺めた。
もちろん遊太郎には何が書かれているか見なくともわかっている。
ダミーのプロフィールを考えたのは遊太郎自身だからだ。
高山がストレートに自分に連絡を取れるようにしておかなければ、
高山が懲りもせず別の探偵に調査を依頼しかねない。

「でもよ」
ふと、資料から顔を上げて高山が遊太郎を見た。
「お前、この銀髪野郎と、本当は影でつるんでたりしねえよな?」
鋭い勘ぐりに遊太郎は慌てることなく、
のんびりとした調子で訊き返した。

「つるむ?」
「いや、だってよ。イトコだし、
俺よりかは五十嵐のプライベートは知ってそうじゃね?
なんたって弁当まで作ってたりするし」
「はあ」
「それくらい親しけりゃあ、五十嵐の男関係、なんとなくわかりそうなもんじゃねえか。
それにお前も、五十嵐に惚れてるみたいだしよ」
「そんなことないですよ」

あっさり否定するが、まるで信じてない高山は、
皮肉たっぷりに言った。
「どうせ、片思いだし、自分にゃかなわない。
けど、いつもイジメられてる俺を応援する気もねえ。
だとすりゃ、胡散臭い奴でも銀髪野郎の味方でいようとかさ。違うか?」
「違います。もうすぐ会社に着きますよ」

全く関心のないフリをして、
遊太郎は社有車をチューリップ生命本社の地下駐車場へ動かした。


社内にいる社員はまばらだった。
斎藤課長に帰社報告を済ませた遊太郎は、
待ち伏せしていたらしい桃子に腕を後ろからつかまれ、ヒヤッとした。
周りの目があるため、桃子の顔は事務的に笑みを作ってはいたが、
目は怖かった。

「お疲れ様、森田くん。
ちょっと事務処理で打ち合わせしたいことがあるんだけど」
「あ。は、はい」

首根っこを捕まえられた猫のように、
遊太郎は桃子のあとをついてフロアを出て、
自販機前のドリンクカウンターへ案内された。
彼女の話はわかっている。
スレ違いを理由に、今回の素性調査がどうなったのかを、
まだ桃子に話していなかったからだ。


〜第287回をお楽しみに♪〜
# by yu-kawahara115 | 2010-10-31 17:18

第285回接近遭遇「彼氏のキモチ」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

部長の神崎から、
桃子と遊太郎の結婚には特に反対の理由もなく、
逆に望ましいとさえ言われたが、
問題なのは遊太郎の意思なのだと桃子は諭された。

「その様子では、まだ森田くんには話してないようだね」
「……はい」

桃子は勢いを失って下を向いた。
言うタイミングがわからないし、実のところ勇気がないのだ。
ひょっとしたら、遊太郎は何も考えてなくて、
結婚したいと思っているのは自分1人なのではないか。
何故なら、遊太郎は前に言ったからだ。
誰ともそうなる気はない、と。

神崎はワインを一口飲んで、優しい表情で桃子を見た。
「桃子くん」
「はい」
「森田くん、いや、レンをそれほどまで好きになってくれて、
私は嬉しい。礼を言わなければ。本当にありがとう」

その言葉を聞いて桃子は真っ赤に顔を染めた。
慌てて両手をバタバタさせる。
「なんで、お礼なんて。そんな……神崎部長!」
「いや。今まで本当に色々な事件に巻き込まれながらも、
桃子くんは一途に彼を思いやり、信じてくれたのだから。
異星人という壁を超えて、愛を育んで来た桃子くんは素晴らしい」
「素晴らしくないですよ。
もっと女らしい地球人だったら良かったけど、
あたしなんか、自慢できるとこ1つもないし、
でも、出会って好きになっちゃったから、仕方ないというか。
遊太郎には、ずっとずっと、
そう、あたしがおばあちゃんになってもそばにいて欲しいんです」

穏やかな神崎が目の前だと、素直に本音が言える。
神崎はしばらく黙って、
何かの思念を読み取るように虚空を眺めたあと、口を開いた。

「森田遊太郎。つまりレンは、幸せとは程遠い場所に身を置いて、
長い間、孤独だった。
そんな彼の心をつなぎとめるには、
生半可な感情や意志では太刀打ちできない。
本気で、ぶつからなければ伝わらないのだよ。
それだけ、レンという男の中には喪失感が在るということだ」
「喪失感」

桃子は息を呑み込んだ。
それは遊太郎、いや、レンがいまだ過去を背負って苦しんでいるからだろうか。
それを完全に克服できる日が来るのか。
克服しなければ、彼は幸せにはなれないというのだろうか。

「桃子くんが本気ならば、レンを地上につなぎとめられるかもしれない。
私はそう信じているのだがね」
「あたしが?」
「そう。全身全霊をこめてぶつかれば。
あるいは、自己犠牲に傾きやすいあの男の心を、
暖かく人間らしいぬくもりで満たすことが出来る可能性はある。
桃子くん次第だな」

応援しよう、と神崎が大きな手をさしのべ、
桃子はおずおずと自分の手をそれに近づけた。
ぐっと強く握られ、彼女は暖かいメッセージを受け取った。
それは、まるでレンの父親のように深く大きな愛情を込めたものだった。

( レンを幸せにしてくれたまえ。
桃子くんなら、それが出来る。私は信じているよ )

桃子は涙が出そうになるのをこらえた。
神崎がこんなにも自分たちを気遣い、支えてくれている。
なんて有り難いことなんだろう。
自分に出来るかどうかわからないけれど、
やれるだけやってみよう。
遊太郎、レンと幸せになるのだ。

「神崎部長、ありがとうございます。
あたし、なんか勇気が出た気がします」

桃子は強く手を握り返し、
茶目っ気たっぷりに笑顔を向けた。



〜第286回をお楽しみに♪〜
# by yu-kawahara115 | 2010-10-24 20:34

第284回接近遭遇「上司に向かってカミングアウト」

〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜
★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。
普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。
おっとりした新人営業マンだが、
その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。

★五十嵐桃子(26)★遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。
宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。

この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「神崎部長。あたし、どうしたらいいんでしょうか?」

高級レストランの大広間。
桃子はテーブルの向こうにいる神崎に、切羽詰まった表情で訊いた。
もう頼れるのは神崎しかいないと思ったのだ。

「桃子くんは心配性のようだ」
穏やかな笑みで神崎はワインを一口飲んだ。
いついかなる時もダンディで、受け入れる懐の深さを持つ上司である。
「そりゃ心配します。遊太郎はいつもぼやっとしてて、
自分の正体がバレそうになるかもしれないのに、
探偵に呼び出されてノコノコ行っちゃって、
あたしには電話もメールもして来ないんですよ?」

空腹が満たされてパワーが戻って来たらしい桃子は、
ドンとテーブルを叩いて、慌ててすみませんと謝った。
そんな彼女を微笑ましく観察しながら、神崎が答える。

「銀河連盟調査員は常日頃から、
あらゆるリスクに対応できるよう訓練されている。
従って、探偵やマスコミなどが調査しても、
まず真相にたどり着けないようになっているのだ。
何も心配することはないから、安心しなさい」
「そうですか?・・・・・・なら、いいんだけど」

上司である神崎がそう言うのなら、いたずらに焦る必要はないのだろう。
考えてみれば、彼らは地球人ではない。
細かい情報操作は朝飯前なのかもしれない。
豊富に並ぶデザートも終わり、桃子はひと呼吸置いてから、
神崎に真面目な表情を向けた。


「あの、ずっと前から相談したかった事があるんです」
「改まって何かな?」
「さっきの話とは別件で。……プライベートな事なんですけど」
「どうした。桃子くん。
そうかたくならずに遠慮なく話してみなさい」

柔らかく促されて、桃子は息を呑み込んでから、
思い切って溜めていた思いを口にした。

「・・・・・・あたし、遊太郎と結婚したいんです」

早口でそう言ってからキュッと目を瞑り、下を向く。
とんでもない事を、打ち明けてしまった。
でも止められなかった。
ずっと自分だけの胸に隠して、誰か頼れる人に相談をしたかったからである。
しかしすぐに後悔する。
普通に考えると、反対されないはずがないからだ。
恐る恐る顔をあげると、神崎がにこやかに桃子を見つめていた。

「よく言ってくれたね。桃子くん」
「え?」
「いつ決心してくれるのかと私は待っていたのだよ」
「は、はい?」

意味がわからなくて、桃子は目をぱちぱちさせた。
重大なカミングアウトをしたというのに、
神崎はくつろいだ様子で、新しいワインを持って来させ、
桃子にグラスを持たせた。

「神崎部長?あの、反対しないんですか」
「何故かね。結婚ほど素晴らしいイベントはない。
おめでとう、桃子くん。乾杯しよう」
「はあ」

のせられて乾杯をしてしまった桃子は、
神崎が満足そうに話すのを夢見心地で聞くことになった。

「実は最初から、こうなればいいと考えていたのだ。
というのは、調査員は通常1人で住居を構える事の方が多い。
しかし、あえて同居のモデルケースとして、
君たちを選んだのは、いつか異星間の交流を経て結婚をしてほしいと、
私が望んだからだ」

桃子は目を大きく見開いた。
反対どころか、神崎は2人がいつか結婚するように、
望んで同居をさせていたと言うのだ。

「銀河連盟調査団の規則には、
派遣先の現地人、つまり地球人との結婚を禁止する条項はない」
彼女の疑問を払拭するように神崎は説明した。
「私も昔、地球人女性と結婚した経験もある。
むしろ結婚こそ、地球人を知る上で貴重な経験になると、
我々は考えているのだよ」

しかし、と神崎はそこで桃子にやや真剣な眼差しを向けた。

「森田くんも結婚を望めば、の話なのだがね。
彼にはもう話したのかな?桃子くん」
「それは……」

桃子は答えに詰まった。


〜第285回をお楽しみに♪〜
# by yu-kawahara115 | 2010-10-17 17:00