「プロポーズへの決意」第288回接近遭遇 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 現実的なOL・五十嵐桃子と、 まん丸メガネの森田遊太郎(異星人レン)。 表向きはイトコ同士でルームシェア歴一年。 お互い惹かれあいながらも、 異星人との恋愛は難問だらけなようで。。。? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「ねえ、女からプロポーズっていうの、アリだよね?」 ある日の昼休み。 会社近くの遊歩道のベンチで、 おにぎりを食べていた桃子はなにげなく同僚の清美に訊いた。 清美は目を輝かせ、サンドイッチを膝の上に置いた。 「え?ついにあの超美形彼氏と結婚するんだ?桃子」 「違う。例えばのハナシ」 誤魔化しきれないのはわかっていながら、ムスッと否定し、 桃子は一般的な話だとでも言うように訊いた。 「例えば女から切り出す場合、ストレートに言った方がいいのか、 遠回しに言った方がいいのか、どう思う?」 すると清美は、キャハハと笑い飛ばした。 「オトコなんて遠回しで通じるわけないじゃん。 そんなの桃子には向かないし、ハッキリ言ったら? あたしと結婚して、新婚旅行で世界一周しましょって」 「新婚旅行、世界一周……」 桃子は目の前がチカチカした。 彼女がベタ過ぎることを言ったからではなく、 全く予想外のイメージをしてしまったからだ。 (あの遊太郎と新婚旅行いくなら、世界じゃなくて、 天の川銀河の方がリアルかも……) そうなのだ。 イトコの振りをして同居する森田遊太郎を、 どういうわけだか好きになって1年。 両親も早く結婚しろとうるさく騒ぎたて、 彼女自身もその意志を固め始めたものの、 あの仕事バカでストイックな遊太郎が、 はいそうしましょうか、などとプロポーズを承諾するとは思えない。 桃子は、あからさまにため息を吐き出した。 「なになに?彼氏、結婚とかする気ないの?」 清美が真面目に質問する。 「桃子のことは好きなんだよね?」 「たぶん」 「たぶん?なにそれ。」 曖昧な桃子の返事に清美は眉をよせながらお茶を飲み、 次に知ったような顔で結論づけた。 「あれじゃない。まだ女ひとりに束縛されたくないんじゃない。 桃子より、かなり若いんでしょ、その彼氏」 相変わらずズケズケと言われて、桃子は清美を睨んだ。 しかし彼女は携帯をいじり、無邪気にメールをチェックしているだけだ。 客観的に見たら、男が結婚するつもりなどないのに、 女の方は捕まえようと焦っている風に見えるかもしれない。 でも、ずっと一緒に暮らしたい。 それは、ちゃんと伝えたいのだ。 桃子は決めた。 ストレートに言ってみよう。もともと色々と考えて行動するのは苦手だった。 直感を信じて遊太郎にプロポーズをしてみよう。 桃子はちいさく拳をあげた。 「よっしゃ!」 そんな彼女に、清美は一瞬引きながらも、ニヤニヤしていた。 〜第289回をお楽しみに♪〜 ※お詫び:しばらくお休みしてしまい、すみませんでしたm(_ _)m 引き続きまたよろしくお願いします(^o^)/ |
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by yu-kawahara115
| 2010-12-23 16:44
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「桃子、遊太郎に詰め寄る」第287回接近遭遇 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 現実的なOL・五十嵐桃子と、 まん丸メガネの森田遊太郎(異星人レン・ソリュート)。 表向きはイトコ同士でルームシェア歴一年。 お互い惹かれあいながらも、 異星人との恋愛は難問だらけなようで。。。? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 遊太郎が桃子につれて行かれたのは、 社内に設置されているドリンクカウンターだった。 夕刻のせいか、社員は誰もいない。 「遊太郎、あたしが何を訊きたいのかわかってるよね」 腰に手を当てて桃子が睨み付ける。お決まりのポーズだ。 遊太郎は、彼女をあまり怒らせてはいけないと思ったのか、 はいと素直に答えた。 「探偵事務所に呼ばれた件ですよね。 あれは知り合いの探偵で……」 「知り合い?」 眉をつりあげる。 下手に誤魔化すなよと迫る。 その迫力に圧されて、遊太郎はたどたどしく説明した。 「桃子さん。覚えてますか。時任さんですよ」 「時任?」 しばらく考えて、ああと桃子が気づく。 「確か、あたしが落としたモノを拾って、会社に届けてくれた人だっけ。 なに、あの人。探偵始めてたんだ?」 「はい。偶然にも時任さんの事務所に、 高山係長から、僕の身辺調査の依頼が入ったようで、 時任さんは気がついて僕に連絡を下さったんです」 「へ、そうなの?」 先日遊太郎にかかって来た電話は、時任探偵事務所からで、 先日、今回の件の対策を話し合って来たのだと説明した。 「ふうん。で?あんたのニセの情報を流したってわけか。 でもさあ、あのしつこい高山が納得すると思う?」 桃子はまだ疑うように遊太郎を見やる。 本当に大丈夫なの?と慎重に問い詰めた。 「もちろん連絡先は本物です。 いつでも『本当の僕』と会えるように、 アドレスを高山係長に渡してありますから」 「はあ?会うって、ちょっと」 つい声が高くなり、誰かがドリンクを買いに来たので、 作り笑いで誤魔化しながら奥へ遊太郎を押しやる。 「高山と会うって?」 「呼び出されれば、素顔の僕になって、会うということです」 サラッと答える遊太郎に桃子が噛みついた。 「バカなこと言ってんじゃないわよ。 素顔さらして妙なことになったら知らないからね」 「大丈夫ですよ。普通に話をするだけになるはずです」 「お話しあいが出来る相手かっつーの。 あんた、ほんっとにお人好しだよね」 あの高山のことだ。 何か低レベルなワナを仕掛けてくるに決まっている。 それを承知で、ノコノコ呼び出されて会いに行く気なのだろうか。 それとも、ぼんやりした遊太郎だが、何か考えでもあるのか。 いや、のほほんとしたまん丸メガネを見る限り、 特に何も考えていないように思える。 すると遊太郎がにっこり笑った。 「そろそろ帰りましょうか。 今夜は桃子さんの好きなものを作りますよ」 「ったく」 いつまでも居残っているわけにもいかないので、 桃子は仕方なく遊太郎と一緒にフロアへ戻った。 本当はこんな話をしたかったわけじゃない。 本当に訊きたかったのは、遊太郎の気持ちだ。 (遊太郎は、あたしとずっと暮らしたいと思ってる? あたしと一生いっしょにいていいって思う。?) しかし、それを口にする事が桃子にはまだ出来なかった。 〜第288回をお楽しみに〜 |
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by yu-kawahara115
| 2010-11-07 14:27
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第286回接近遭遇「見え透いた企み」 |
翌日の夕刻。 遊太郎は車の中で係長の高山の際限ないお喋りを聞かされていた。 「見ろよ。高い金を探偵に払った甲斐があるってもんだ。 ちゃんと銀髪野郎の素性がわかったんだからな」 話題は、探偵事務所に依頼した銀髪男の身辺調査の件だった。 「五十嵐の周りに影のようにまとわりついてる、 あの忌々しい銀髪野郎、フリーのルポライターだったんだぜ。 イギリス人で、旅先で五十嵐と出会ったらしい。 しかしよ、ルポライターって胡散臭い奴が多いから、 五十嵐もだまくらかされてるにちげえねえよな」 遊太郎は黙って聞きながら真面目に運転を続けていた。 取引先企業には全て足を運んだので、あとは帰社すれば良いのだが、 延々と高山のお喋りを聞く羽目になってしまったのだ。 「おい、森田。俺の話をちゃんと聞いてるのか?」 「聞いてますよ」 「少しは興味を持って相づちを打つとか、 質問をするとかしたらどうなんだよ? ったく、なんの面白味もねえ。 独り言してる気分だぜ」 「すみません」 「お前のイトコの五十嵐が、うろんな奴と関わってんだ。 お前だって気になるだろうが」 「はい」 遊太郎は仕方なく同意した。 気になるも何も、高山が目の敵にしている銀髪男は、 遊太郎の本来の姿なのだ。 しかし高山が依頼した探偵が遊太郎の知人であり、 うまくカモフラージュした銀髪男の素性を、 高山が信じているらしいので、内心安堵はしていた。 「銀髪野郎のパソコンのメアドもゲットしたし、 これでいつでも、奴を呼び出せる」 高山は好戦的に拳を握った。 そのあたりで遊太郎はさりげなく質問する。 「高山係長はその男を呼び出して、どうするんですか?」 「ブチのめす。わかりきったこと聞くな」 「すみません」 「お前、さっきからすみませんしか日本語知らねーのか? まあ、いいや。とにかくマトモにいくと、またやられちまう。 あいつ、カタギじゃねえみたいにクソ強ぇからな。 普通にケンカするんじゃ不利だ。 五十嵐の目の前で大恥をかかせる方法を考えないとな。 五十嵐の目を覚まさせて、俺の方に向かせるためにさ」 楽しげに笑い、探偵から渡されたらしい調査資料を眺めた。 もちろん遊太郎には何が書かれているか見なくともわかっている。 ダミーのプロフィールを考えたのは遊太郎自身だからだ。 高山がストレートに自分に連絡を取れるようにしておかなければ、 高山が懲りもせず別の探偵に調査を依頼しかねない。 「でもよ」 ふと、資料から顔を上げて高山が遊太郎を見た。 「お前、この銀髪野郎と、本当は影でつるんでたりしねえよな?」 鋭い勘ぐりに遊太郎は慌てることなく、 のんびりとした調子で訊き返した。 「つるむ?」 「いや、だってよ。イトコだし、 俺よりかは五十嵐のプライベートは知ってそうじゃね? なんたって弁当まで作ってたりするし」 「はあ」 「それくらい親しけりゃあ、五十嵐の男関係、なんとなくわかりそうなもんじゃねえか。 それにお前も、五十嵐に惚れてるみたいだしよ」 「そんなことないですよ」 あっさり否定するが、まるで信じてない高山は、 皮肉たっぷりに言った。 「どうせ、片思いだし、自分にゃかなわない。 けど、いつもイジメられてる俺を応援する気もねえ。 だとすりゃ、胡散臭い奴でも銀髪野郎の味方でいようとかさ。違うか?」 「違います。もうすぐ会社に着きますよ」 全く関心のないフリをして、 遊太郎は社有車をチューリップ生命本社の地下駐車場へ動かした。 社内にいる社員はまばらだった。 斎藤課長に帰社報告を済ませた遊太郎は、 待ち伏せしていたらしい桃子に腕を後ろからつかまれ、ヒヤッとした。 周りの目があるため、桃子の顔は事務的に笑みを作ってはいたが、 目は怖かった。 「お疲れ様、森田くん。 ちょっと事務処理で打ち合わせしたいことがあるんだけど」 「あ。は、はい」 首根っこを捕まえられた猫のように、 遊太郎は桃子のあとをついてフロアを出て、 自販機前のドリンクカウンターへ案内された。 彼女の話はわかっている。 スレ違いを理由に、今回の素性調査がどうなったのかを、 まだ桃子に話していなかったからだ。 〜第287回をお楽しみに♪〜 |
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by yu-kawahara115
| 2010-10-31 17:18
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第285回接近遭遇「彼氏のキモチ」 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。 おっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 部長の神崎から、 桃子と遊太郎の結婚には特に反対の理由もなく、 逆に望ましいとさえ言われたが、 問題なのは遊太郎の意思なのだと桃子は諭された。 「その様子では、まだ森田くんには話してないようだね」 「……はい」 桃子は勢いを失って下を向いた。 言うタイミングがわからないし、実のところ勇気がないのだ。 ひょっとしたら、遊太郎は何も考えてなくて、 結婚したいと思っているのは自分1人なのではないか。 何故なら、遊太郎は前に言ったからだ。 誰ともそうなる気はない、と。 神崎はワインを一口飲んで、優しい表情で桃子を見た。 「桃子くん」 「はい」 「森田くん、いや、レンをそれほどまで好きになってくれて、 私は嬉しい。礼を言わなければ。本当にありがとう」 その言葉を聞いて桃子は真っ赤に顔を染めた。 慌てて両手をバタバタさせる。 「なんで、お礼なんて。そんな……神崎部長!」 「いや。今まで本当に色々な事件に巻き込まれながらも、 桃子くんは一途に彼を思いやり、信じてくれたのだから。 異星人という壁を超えて、愛を育んで来た桃子くんは素晴らしい」 「素晴らしくないですよ。 もっと女らしい地球人だったら良かったけど、 あたしなんか、自慢できるとこ1つもないし、 でも、出会って好きになっちゃったから、仕方ないというか。 遊太郎には、ずっとずっと、 そう、あたしがおばあちゃんになってもそばにいて欲しいんです」 穏やかな神崎が目の前だと、素直に本音が言える。 神崎はしばらく黙って、 何かの思念を読み取るように虚空を眺めたあと、口を開いた。 「森田遊太郎。つまりレンは、幸せとは程遠い場所に身を置いて、 長い間、孤独だった。 そんな彼の心をつなぎとめるには、 生半可な感情や意志では太刀打ちできない。 本気で、ぶつからなければ伝わらないのだよ。 それだけ、レンという男の中には喪失感が在るということだ」 「喪失感」 桃子は息を呑み込んだ。 それは遊太郎、いや、レンがいまだ過去を背負って苦しんでいるからだろうか。 それを完全に克服できる日が来るのか。 克服しなければ、彼は幸せにはなれないというのだろうか。 「桃子くんが本気ならば、レンを地上につなぎとめられるかもしれない。 私はそう信じているのだがね」 「あたしが?」 「そう。全身全霊をこめてぶつかれば。 あるいは、自己犠牲に傾きやすいあの男の心を、 暖かく人間らしいぬくもりで満たすことが出来る可能性はある。 桃子くん次第だな」 応援しよう、と神崎が大きな手をさしのべ、 桃子はおずおずと自分の手をそれに近づけた。 ぐっと強く握られ、彼女は暖かいメッセージを受け取った。 それは、まるでレンの父親のように深く大きな愛情を込めたものだった。 ( レンを幸せにしてくれたまえ。 桃子くんなら、それが出来る。私は信じているよ ) 桃子は涙が出そうになるのをこらえた。 神崎がこんなにも自分たちを気遣い、支えてくれている。 なんて有り難いことなんだろう。 自分に出来るかどうかわからないけれど、 やれるだけやってみよう。 遊太郎、レンと幸せになるのだ。 「神崎部長、ありがとうございます。 あたし、なんか勇気が出た気がします」 桃子は強く手を握り返し、 茶目っ気たっぷりに笑顔を向けた。 〜第286回をお楽しみに♪〜 |
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by yu-kawahara115
| 2010-10-24 20:34
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第284回接近遭遇「上司に向かってカミングアウト」 |
〜もし、あなたの彼氏が宇宙人だったら?〜 ★森田遊太郎(23)=レン・ソリュート★地球に派遣された銀河連盟調査員。 普段は高校生のような童顔にまん丸メガネ。 おっとりした新人営業マンだが、 その正体は、プラチナの髪と青灰色の瞳を持つ美しき異星人である。 ★五十嵐桃子(26)★遊太郎の正体を知る、同じ会社の勝ち気で現実的なOL。 宇宙人やUFOには全く興味がない男前な女性。 この2人、表向きイトコ同士としてルームシェアをしているのだが.....? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「神崎部長。あたし、どうしたらいいんでしょうか?」 高級レストランの大広間。 桃子はテーブルの向こうにいる神崎に、切羽詰まった表情で訊いた。 もう頼れるのは神崎しかいないと思ったのだ。 「桃子くんは心配性のようだ」 穏やかな笑みで神崎はワインを一口飲んだ。 いついかなる時もダンディで、受け入れる懐の深さを持つ上司である。 「そりゃ心配します。遊太郎はいつもぼやっとしてて、 自分の正体がバレそうになるかもしれないのに、 探偵に呼び出されてノコノコ行っちゃって、 あたしには電話もメールもして来ないんですよ?」 空腹が満たされてパワーが戻って来たらしい桃子は、 ドンとテーブルを叩いて、慌ててすみませんと謝った。 そんな彼女を微笑ましく観察しながら、神崎が答える。 「銀河連盟調査員は常日頃から、 あらゆるリスクに対応できるよう訓練されている。 従って、探偵やマスコミなどが調査しても、 まず真相にたどり着けないようになっているのだ。 何も心配することはないから、安心しなさい」 「そうですか?・・・・・・なら、いいんだけど」 上司である神崎がそう言うのなら、いたずらに焦る必要はないのだろう。 考えてみれば、彼らは地球人ではない。 細かい情報操作は朝飯前なのかもしれない。 豊富に並ぶデザートも終わり、桃子はひと呼吸置いてから、 神崎に真面目な表情を向けた。 「あの、ずっと前から相談したかった事があるんです」 「改まって何かな?」 「さっきの話とは別件で。……プライベートな事なんですけど」 「どうした。桃子くん。 そうかたくならずに遠慮なく話してみなさい」 柔らかく促されて、桃子は息を呑み込んでから、 思い切って溜めていた思いを口にした。 「・・・・・・あたし、遊太郎と結婚したいんです」 早口でそう言ってからキュッと目を瞑り、下を向く。 とんでもない事を、打ち明けてしまった。 でも止められなかった。 ずっと自分だけの胸に隠して、誰か頼れる人に相談をしたかったからである。 しかしすぐに後悔する。 普通に考えると、反対されないはずがないからだ。 恐る恐る顔をあげると、神崎がにこやかに桃子を見つめていた。 「よく言ってくれたね。桃子くん」 「え?」 「いつ決心してくれるのかと私は待っていたのだよ」 「は、はい?」 意味がわからなくて、桃子は目をぱちぱちさせた。 重大なカミングアウトをしたというのに、 神崎はくつろいだ様子で、新しいワインを持って来させ、 桃子にグラスを持たせた。 「神崎部長?あの、反対しないんですか」 「何故かね。結婚ほど素晴らしいイベントはない。 おめでとう、桃子くん。乾杯しよう」 「はあ」 のせられて乾杯をしてしまった桃子は、 神崎が満足そうに話すのを夢見心地で聞くことになった。 「実は最初から、こうなればいいと考えていたのだ。 というのは、調査員は通常1人で住居を構える事の方が多い。 しかし、あえて同居のモデルケースとして、 君たちを選んだのは、いつか異星間の交流を経て結婚をしてほしいと、 私が望んだからだ」 桃子は目を大きく見開いた。 反対どころか、神崎は2人がいつか結婚するように、 望んで同居をさせていたと言うのだ。 「銀河連盟調査団の規則には、 派遣先の現地人、つまり地球人との結婚を禁止する条項はない」 彼女の疑問を払拭するように神崎は説明した。 「私も昔、地球人女性と結婚した経験もある。 むしろ結婚こそ、地球人を知る上で貴重な経験になると、 我々は考えているのだよ」 しかし、と神崎はそこで桃子にやや真剣な眼差しを向けた。 「森田くんも結婚を望めば、の話なのだがね。 彼にはもう話したのかな?桃子くん」 「それは……」 桃子は答えに詰まった。 〜第285回をお楽しみに♪〜 |
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by yu-kawahara115
| 2010-10-17 17:00
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